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魚界の托卵はえぐい。無関係の魚の卵とは知らず、口の中で育て続けるかわいそうなオスが発見される

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(著) (編集)

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 動物の習性のひとつに「托卵」が存在する。これは、なんの関係もない他者に自分の卵を押し付けて育ててもらう行為で鳥の托卵が有名だ。

 だが、魚界に存在する托卵はもっとすごい。口の中で卵を孵化させ稚魚を育てるマウスブリーディングを行う種の魚の口に、自分の卵入れちゃうのだから。

 オーストラリア、チャールズ・ダーウィン大学の研究グループは、口の中で自分の子供を育てているはずが、実は赤の他人の子供を育てている、そんな可哀想なオスを発見したという。この研究は『Biology Letters』(2022年5月4日付)に掲載された。

口の中で卵を孵化させ育てる「マウスブリーディング」

 口の中で卵や稚魚を育てることを「マウスブリーディング」(口内保育)と言い、両生類や魚類などで行われている。

 一般に魚や両生類の卵は外敵に狙われやすく、無事に孵化して大人まで成長できるものはごく限られている。

 大人まで成長する個体を増やすには、大量の卵を産んだり、親が卵を守ったりといった方法があるが、マウスブリーディングは後者がもっとも進化した事例の1つだ。

 受精卵を口に入れておけば、外敵に卵が食べられてしまう心配はなくなる(種によってメスもオスもどちらもやる)。ただしデメリットもある。

 その間親は何も食べられなくなるし、泳ぎが遅くなって親自身が外敵に襲われる危険性が高まるからだ。

ちゃっかり托卵されちゃったオスの魚

 今回の研究では、オスが口内保育をするオーストラリアの固有種「オーストラリアサメナマズ(Neoarius graeffei)」と「マウスオールマイティ(Glossamia aprion)」に光が当てられている。

 これまでの研究によって、マウスブリーディングをするオスは、ときに未授精の卵も口に入れていることが明らかにされていた。

 しかし今回、研究グループが知りたかったのは、卵の父親と母親だ。どうも子育てをするオスの中には、知らず知らずのうちに赤の他人の子供を育てているものがいるようなのだ。

 そこでマウスブリーディング中のオスを捕まえて、本人と口の中の卵のDNAを解析してみた。

 その結果、サメナマズのオスの場合、どの卵も間違いないく本人が受精させたもので、母親も同じだった。

 ところがマウスオールマイティの卵にはかなりバラツキが見られた。どの卵も自分が受精させたもので、母親も同一であるケースは75%ほど。そのほかは他人の子供が紛れ込んでいたのだ。

 かわいそうに、中には口の中の卵すべてが赤の他人の子供というケースもあった。

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卵の父親と母親を調べたもの。オーストラリアサメナマズのオスは、どの卵も自分の子供で、母親も同一だった(a)。マウスオールマイティの場合、卵すべてが自分の子供で、母親も同一なのは73.3%のみ(b)。残りは父母ともに複数なのが13.3%(c)、卵が自分の子供でなかったのが6.67%(d)、母親は同一だが、父親が複数なのが6.67%(e)/: / image credit:Credit: Biology Letters (2022). DOI

なぜ他の卵が紛れ込んでしまうのか?

 そもそもオスがマウスブリーディングするのは、卵が確実に自分の遺伝子を受け継ぐようにするためだと考えられている。

 なのになぜ、他魚の卵が紛れ込んでしまうのか? きっと何か理由があるはずだ。

 あくまでも仮説だが、例えば、たくさんの卵を口の中に入れたオスは、メスにとって魅力的に見えるのかもしれない。

 それで残せる子孫の数が増えるのなら、多少他人の子供が紛れ込んでいたとしても、結果オーライという考え方だ。

 それににしても托卵中は口の中は卵でいっぱい、餌も食べられず、きつい生活を強いられることになるわけで、口の中に卵がいっぱいステイタスを満たすには、かなりの試練となりそうだ。男はつらいよ、寅さん、ていうか魚さん。なのだ。

 托卵してもらった方はラッキーかもしれないが、托卵する方に何かメリットはあるのか?鳥と一緒でただの寄生なのか?今後の研究がまたれる。

References:A species of mouthbrooding male fish in Australia carries wildly different egg parentage in its mouth / written by hiroching / edited by / parumo

追記(2022/05/12)誤字を訂正して再送します。

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この記事へのコメント 17件

コメントを書く

  1. いつも面白い記事ありがとうございます!
    (c)のラベルと説明が間違ってますよー

    >残りは父母ともに複数なのが13.3%(b)、

    (c) brood with more than one mother (two mothers) and one father in a brood
    父親が1頭で、母親が複数(c)

    • +3
  2. マウスブルーディングじゃなくてマウスブリーディングね。ブリーダーと一緒。

    • +2
    1. >>2
      ブルーダー (brooder) とブリーダー (breeder) は別の単語だよ。
      孵化させるのがbrooderで、繁殖させるのがbreeder。この場合はbrooderで合ってる。

      • +7
  3. 子孫を残すことがこれほど重要なのにも関わらず、血縁認識能力が進化しないのは不思議だよね
    よっぽどコストがかかるのか、実はそれほど寄生によるコストが無いのか
    100%托卵されてる個体になにかベネフィットがあるのか…

    • +5
    1. >>3 人類もそうだけど総体で見れば「誰の子供かは関係なく生き残る能力を持った子供が多数生き残る」事が種の存続だからじゃないかな
      自分の遺伝子を残したいは、子孫を作るために組み込まれたプログラム
      それがないと種が即絶える
      しかしながら種としては「誰が生き残っても生き残ったものが能力のあるもの」でもあるから、認識能力は阻害されててもいいんだよ…
      弄ばれてるねw

      • +5
      1. ※7
        これも利己的な遺伝子の範疇ってことですかね・・・

        • +1
      2. >>7
        うーん、種の存続って遺伝プログラムが仮にあったとして、自身の存続のための遺伝子が変異で生まれたら速やかに集団中に広まって置き換わると思うけどね
        局所的な群淘汰が生まれるほどの社会性を持ってない限り…

        • 評価
    2. >>3
      親の方が識別能力を付けようとしても、
      この方がそれをごまかす能力を付けようとするから
      イタチごっこなんじゃないかな

      • 評価
  4. カッコウの托卵みたいなイメージで
    別種の魚類の卵かと思ったら、
    DNA解析ってことは、同種の別個体の子か。

    それならそれで、子沢山家庭に
    何人か養子も混じって一緒に育ててるようなもんで、
    種としての存続には問題なさそう。

    • +1
    1. ※4
      カッコウ以外でも鳥の間では「種内托卵」っていうのが普通にあるし、魚であっても全然不思議でない。
      また、「種の存続」なんてものはないよ。そもそも種なんてのが後付けで人間が決めたもの。
      似た個体が集まって「種」と認識できるグループになる。
      「生物学的種概念」っていうのを調べるといいですよ。

      • -2
  5. マウスブルーダーへの托卵はタンガにイカ湖のシノドンティス・マルチプンクタータスで以前から知られていたが、全く別の地域のナマズでも行われていたとは驚き。

    • +3
  6. ああ同種なのか
    パートナー持てなかったオスの横からぶっかけと近いのかな
    これなら纏めて育てる託児所くらいの考えで良い様な気もするが

    • +3
  7. 柴田かよ、まさにアンタッチャブルだなあ

    • +1
  8. 愛情が深いというか
    産みの親より育ての親というか

    • 評価
  9. 僕も赤の他人に搾取されてるかわいそうなオス

    • 評価
  10. ポジティブに捉えれば、つまりイクメンはモテるんだよって事さ!それでいいじゃん!

    • 評価

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