メインコンテンツにスキップ

紀伊半島の地下に存在する巨大岩石「熊野プルトン」と地震の関連性

記事の本文にスキップ

36件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 地下に埋もれた山のように巨大な岩石が、日本の南で起きる巨大地震のルートに影響を与えているかもしれない。

 紀伊半島の地下には、長さ5キロの「熊野プルトン」と呼ばれる高密度の火成岩が存在する。それが鎮座する「ユーラシアプレート」の下には「フィリピン海プレート」が潜り、地球のマントルへ向かって沈み込んでいる。

 新たな研究によると、ずしりと重い熊野プルトンがこの沈み込みをさらに急なものにしているという。

熊野プルトンと地震の関連性

 「熊野プルトン」の付近では、1940年代に2つの大地震が起きている。1944年の「昭和東南海地震」と、1946年の「昭和南海地震」だ。

 この2つの地震は反対方向に進行したが、それによって熊野プルトンが断裂するようなことはなかった。

 「結局のところ、熊野プルトンのそばに震源地がありながら、これらの地震の地域が重ならなかった理由はわかりません」と、ニュージーランドの研究機関GNSサイエンスのダン・バセット氏は話す。

「熊野プルトンはこれらの地震の核生成点(地震が地殻を引き裂き始める地点)となり、それらが合体するのを防いでいるように思えます」

 熊野プルトンは比較的地表に近いところにあるが、マントルに流れ込む海水の動きに大きな影響を与えている可能性もある。

 熊野プルトンの重みのせいで、フィリピン海プレートが沈み込む角度は2倍も急だ。

 そのため、プレートには亀裂が生じて、そこ入った海水は、地殻のより深い部分やマントルに流れ込む。マントルの水は、火山噴火のような活動の原動力でもある。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:The University of Texas at Austin. Credit: Adrien Arnulf

日本の沖合は世界有数の地震研究所

 フィリピン海プレートは、日本の沖合でユーラシアプレートにぶつかり、年に4.5センチほどその下に潜り込む。これを「沈み込み帯」といい、地震や火山活動の引き金になることが知られている。

 こうした沈み込み帯の地質学的構造は、地震計によって解析が進められているが、海底に計測機器を設置するのは容易ではないために、一般にはばらつきのあるデータしかない。

 だが日本の沖合は、こうした計測がもっとも盛んに行われている地域だ。海洋研究開発機構(JMSTEC)や地震学者たちは、「南海トラフ」にいくつもの海底モニターやボアホール地震計(地震以外の振動の影響を抑えるため、地殻に埋め込まれる地震計)を設置してきた。そのおかげで、この辺りは世界でもっとも計測器が密集する地域なのである。

 「ここ数十年で膨大な量になったこの巨大なデータセットは、唯一無二のものです。このデータがあれば、沈み込み帯全体の高解像度三次元モデルを作成できるでしょう」と、バセット氏はLive Science誌で語っている。

3D model of the Nankai subduction zone

急角度で地下にダイブするプレート

 熊野プルトンが発見されたのは2006年のことだ。今回の研究では、それが沈み込み帯に与える影響のはっきりとしたイメージが示されている。

 それは驚きの発見だ。沈み込み帯に関する研究のほとんどは、地下へ潜り込むプレートの構造に焦点を当てたもので、その上にあるものは見落とされてきた。しかし今回、その上にあるものが想像以上に重要であると判明したのだ。

 「私たちはプレートが沈む角度についてよく考えますが、その上の地殻の性質が沈み込みに与える影響についてはあまり考えません」と、IRISの地質学者ウェンディ・ボホン氏は第三者の立場から話す。

 『Nature Geoscience』(2022年2月3日付)に掲載された今回の研究からは、熊野プルトンの役割について新たな謎が浮かび上がってくる。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:Arnulf et al., Nat.Commun., 2022

 1944年、熊野プルトン周辺を震源地とする「昭和東南海地震」が発生。マグニチュード8.1の揺れは北東部へと進んだ。さらに2年後、やはり熊野プルトン付近で、マグニチュード8.6の「昭和南海地震」が発生し、南西方向へ進んだ。

「 断層に沿って、小さな荒地があります。まあ、今回の場合は大きな荒地なのですが、それが地震を食い止めるのです」と、熊野プルトンの役割について、こうボホン氏は説明する。

 「地震が始まる核生成点としても機能しますし、地震を止めるバックネットとしても機能しています」

 バセット氏によると、熊野プルトンがこのように機能する理由ははっきりしないという。

 沈み込むプレートに大きな圧力がかかることで断裂が生じにくくなり、地震が抑えられるのかもしれない。あるいは、熊野プルトンによって歪められたプレートの形状に秘密があるとも考えられる。

 熊野プルトンがある位置では、プレートが沈み込む角度が2倍も急だ。これはフィリピン海プレートが普通よりも深く、かつ速く潜り込むということだ。

 一般に地震が起きやすいのは、地殻の温度が低く脆い、浅い場所だ。だからプレートが急激に深くまで潜り込むことで、地震の発生が抑えられるのかもしれない。

この画像を大きなサイズで見る
image credit:UT Jackson School of Geosciences

海水の地下への循環にも影響

 熊野プルトンによる急角度の沈み込みは、沈み込み帯の海水の動きにも影響を与える。

 そうした水の循環は、直接地震に関係しているわけではないが、マグマの生成や大規模なマントルのプロセスにとって重要だと、ノーザン・アリゾナ大学の地球学者ドナ・シリントン氏は、第三者の立場から説明する。

 このプロセスにおいて熊野プルトンは特に重要だという。

 重たい熊野プルトンの圧力のおかげで、プレートはより深く潜ろうとする。そのせいでプレートが歪んでヒビが入り、そこに海水が進入する。

 すると最終的に海水がたどりつく場所に影響し、海水に含まれる化学物質の反応も違ってくる。この地域の地震波を計測すると、劇的なまでにゆっくりになることが判明しているが、これが含水鉱物が豊富に含まれる蛇紋岩があることを示唆しているという。

 「こうした鉱物が安定できるのは、最大400~600度までです。だからプレートが熱くなり、水が放出される前に、下へ運ばれているはずです」とシリントン氏。「それがより大きな影響をもたらしている可能性が高いでしょう」

 地球奥深くの水の循環を探る地震学者は、地震そのものと同じくらい、沈み込みプレートにも注目してきた。今回の新しい研究は、地下へと潜るプレートだけでなく、その上にあるプレートも重要であることを示唆している。

追記(2022/03/15)挿入画像のキャプションミスを修正して再送します。

References:Mountain-size chunk of rock hiding under Japan is channeling earthquakes | Space / Big Data Imaging Shows Rock’s Big Role in Channeling Earthquakes in Japan – UT News / written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 36件

コメントを書く

  1. ウフ~ン ラムール ・・ あぁ~~ あの日愛した人の~ 墓に花をたむけるあした~~~♪

    • -3
  2. 地底に巨大怪獣がいるんだ
    ブラタモリじゃ取り上げてなかったな、熊野プルトン

    • 評価
  3. 画像の紀伊半島と四国の文字、場所が入れ替わってない?

    • 評価
  4. 対馬海峡じゃろが!Koreastraße場所がおかしい

    • +1
  5. デカい岩を祀るって古来からあるけど
    昔の人達はこれを感じ取っていたのかなって思うと捗る

    • +2
    1. >>9
      熊野のあたりにある神倉山、神倉神社というスポットはまさに巨大な岩石に注連縄を巻くタイプの信仰が続いている場所なのでおそらくこの熊野プルトンの存在とも無関係ではないかもしれませんね
      熊野速玉大社と直接的な縁があるところでもあり、非常に歴史深いところでもあるためにそういった原始的な信仰形体が残っているのだと思います

      • 評価
  6. 淡路島の向きからして合ってるように見えるけども

    • 評価
  7. 熊野カルデラだか紀伊カルデラだかというものを聞いたことがあるが、これはそれのマグマ溜まりだったものか?

    • 評価
  8. なまず岩ってのが思い浮かんだ
    これが破壊されるとマグニチュード9とかの…やめやめ
    徳島の海岸沿い在住で考えるモンじゃねーや
    とづまりすとこ

    • +2
  9. 地震をしずめるとされる「かなめいし」ってまさにコレじゃん

    • +9
  10. 地向斜とかに馴染みの無い人には感覚的にわかりにくい思うのだけれど、重いのではなくて軽いから沈み込まずに乗っかって、それが重しになっている感じ。
    ムースケーキに鉄球を乗せると鉄球自体が沈み込んでいくけれど、一ヶ所にフルーツを盛るとムース生地のほうが変形するイメージ

    • +2
  11. プルトンってなんかおいちそー
    外はカリカリっとして中はぷるるんと弾力があるんだ

    • +2
  12. プルトン言うたりプロトン言うてみたり

    • 評価
  13. 5kmばかりじゃないやろ 新宮市潮岬間直線でも50km弱あるのに
    と地元民が言ってみる

    • 評価
  14. こいつを回収できれば、今までよりもマシな状態になるのだろうか…。

    • 評価
  15. ”ニワトリが先かタマゴが先か”の話みたいだな。

    • +2
  16. この巨大な岩体が形成された火山はどこなんだよ?
    幅5Kmの溶岩が煮えたぎる火口か……
    幾千万の昔かねえ( 一一)

    • 評価
  17. 関東住みなのだが、関東フラグメントについても教えて・・・危ないの?

    • 評価
    1. ※34
      要は関東地方って、
      西からのユーラシア/南からのフィリピン海/北からの北アメリカ/東からの太平洋
      の4枚のプレートが順番に重なってる状態にある
      さらに大昔に太平洋プレートが割れた(フラグメント=断片))のが関東平野の中央部に埋まっていて、その下に太平洋プレートが沈み込んでいる、という「仮説」
      これだけプレートがあればプレート境界型地震も起きやすいよねっていう

      • +1

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

歴史・文化

歴史・文化についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。