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5300年前の頭蓋骨に耳の手術の痕跡を発見。人類史上最古の外科手術の可能性

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(著) (編集)

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image credit:Navarro et al., Scientific Reports
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 5300年前と言えば日本では縄文時代中期にあたる。この時代、スペインの巨大遺跡から発掘された古代の頭蓋骨には耳の手術をした荒々しい痕跡が残っていたことが明らかとなった。

 この患者は、両耳とも耳の痛みや発熱を引き起こす急性中耳炎にかかっていたと思われ、人類史上最古の外科的処置の可能性が高いという。

最も古い外科的手術の可能性

 中耳炎は治療をしないと、鼓膜の奥に液体がたまって、頭蓋にしこりができたり、難聴になった
り、脳の外膜に生命にかかわる炎症を引き起こしたりする可能性がある。

 現在ではごく普通の治療だが、19世紀半ばの耳の手術は、人命を助けるために懸命に行われる大変なものだった。

 古代の文献によると、初めての外科的処置は1世紀頃にさかのぼることができると言われているが、確かな証拠はほとんどない。

 この頭蓋骨の発見は、数千年も前に外科手術が行われていたことを示す証拠となるかもしれない。

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耳の手術の痕跡 / image credit:S. Diaz-Navarro et al., 2022

荒っぽい手術ながら治っている痕跡

 この頭蓋骨が見つかったのは、紀元前4000年に使われていたエル・ペンドニスのドルメンと呼ばれる埋葬地だ。

 ここの巨石遺跡を管理していた古代の人々は、”個性をなくす”という儀式的な試みとして、多くの遺体の頭、四肢、骨盤を意図的に切断したと思われる。

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スペイン、エル・ペンドニスの遺跡で発掘された頭蓋骨 / image credit:S. Diaz-Navarro et al., 2022

 その仕事ぶりは優れていたといっていい。発見されているのは頭蓋骨だけなので、持ち主個人についてはなにも語ってくれない。

 頭蓋骨の主は女性ということはわかっているが、歯も手足もないので、彼女が何歳まで生きたのかもわからない。

 歯がないこと、頭蓋骨がくっついていることから、35歳から50歳の間の、この時代としては高齢の域に入る女性だったのではないかと考えられる。

 さらに、女性はかなり乱暴な初期の耳の手術を受けていたらしい痕跡があった。

 彼女の耳の感染症はかなりひどかったに違いない。麻酔などない先史時代の耳の手術は、耐え難い痛みを伴ったことが想像できる。

 耳の後ろの頭蓋骨に穴をあけるためには、女性を抑えつけて拘束するか、現実を意識させないような薬物を投与する必要があったはずだ。

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エル・ペンドニスの遺跡で発見された頭蓋骨の前面と側面/ image credit:S. Diaz-Navarro et al., 2022

 しかしながら、手術の効果はあったようだ。女性の両耳のそばの骨には劣化が見られ、どこかの時点で感染したことは確かだが、死んだときには感染症の痕跡は見られなかった。

 実際、治癒の過程でよく見られるように、きれいな骨が再生していた。

 両耳とも手術が必要だったはずだが、左耳サイドだけにナイフでV字に切り込みを入れた跡が残っていた。

 右耳に切り込みがないのは、女性が死んだとき傷はすでに治っていたことを示している。つまり、女性は生涯に二度、耳の手術で激痛を味わったということだ。

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耳周辺の骨のスキャン。(a) が右で (b)が左 / image credit:S. Diaz-Navarro et al., 2022

 両耳の骨の再生の違いに基づいてみると、まず最初に手術が行われたのは右耳だと思われる。先史時代のこの女性は、おぞましい手術が必要なほど耳の状態が深刻だったが、それを乗り越えて生きたようだ。

 その後、左耳の手術も行われたが、右耳の手術が終わってすぐ連続して行われたのか、数ヶ月たってからか、数年たってからかはわからない。

 だがこれは、両側頭部に外科手術が行われたことを示す最古の証拠で、人類史上初の乳様突起切除手術である可能性が高い。

 この研究は、『 Scientific Reports』に発表された。

References:Gruesome Skull Discovery Contains The Earliest Evidence of Ear Surgery / This 5,300-year-old skull shows evidence of the earliest known ear surgery | Ars Technica / written by konohazuku / edited by parumo

追記:(2022/03/14)タイトルを一部訂正して再送します。

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この記事へのコメント 20件

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  1. 知識のある人間・ない人間の持つ情報の質や量におびただしい偏りがあっただけで、その頃も高い医学的知見は存在したし、分野によっては現代との差は手技の洗練の度合い、医療器具の精緻さくらい、みたいな名医が存在したのかも知れないなあ。

    • +4
    1. ※2
      ???「私の手術代は高いぞ。バビロニア銀行の口座に穀物3年分を振り込んでもらうおうか」

      • +3
  2. 麻酔は当然のこと消毒の概念が無い時代の外科手術だから、2次感染で死んだとみなすのが常識でないかい?

    • -8
    1. ※3
      消毒法の発見前から、「傷口は綺麗にしたほうが治りが良い」「清潔なほうが病気にかかりにくい」の経験則はあったよ。
      江戸時代の焼酎消毒とか、ポーランドでスピリタスを消毒に用いたりとか。
      5300年前にこの経験則があったかどうかはわからないけど。

      • +5
      1. ※7
        日本じゃ江戸時代以前の戦国時代に消毒の概念があったのは流石ですね。
        惜しむらくは5000年以上前に、果たしてあったのかどうか・・・

        • 評価
  3. 考えるだけで怖い、、、首より上はやばい。
    中耳炎ってなったこと無いんだけど、けっこうやった事ある人いるよね。子供なんかは頻繁になる子もいるけど、あれは絶対自然には治らないものなのかな?

    昔は今より五感が衰えたり失くしたりするって事は死に直結する事だっただろうから、必死だったんだろうね。現代に産まれて良かったよ、、、

    • +3
  4. 中耳に膿が溜まるので鼓膜に穴を開けて膿を吸
    い出して中耳内を消毒して治療だったような
    幼稚園から小学生低学年時によくなる傾向があるんですよね。

    • +2
    1. >>6
      まさにその時期に罹ったけれども投薬と安静1週間、定期的な鼓膜空気マッサージで完治。膿は鼻へ抜けたっぽい。罹患後神経の配線が変わったのか中耳への空気の出し入れが自在になった。

      • 評価
  5. 外科手術が行われるほど高度な知識や技術があったのなら、麻酔も当然存在してたのでは?

    • 評価
    1. >>8
      酩酊状態にして手術とかはかなり昔からあったみたい

      • +4
      1. ※12
        蒸留酒の無い時代、低アルコールの醸造酒で患者を酩酊させるのは大変だったろうねえ

        • -1
        1. >>16
          酩酊状態にさせるにはアルコール以外にもあるよ
          薬草とか木の実とか

          • +2
  6. この手の古代の医療の話見る度に医療技術が発達した現在に生まれて良かったとつくづく思うわ

    • 評価
    1. ※9
      100年先ならどんな病気も怪我もカプセル一つで治せるようになるかもしれんぜ

      • +1
  7. 怖ー。昔リンパの病気でその辺りをドーンと切られたけど、麻酔切れた瞬間から「ころしてー!」って泣き喚くぐらい痛かったよ。麻酔なしなんて…。

    • 評価
  8. こんな手術絶対痛いの分かってるのにそれでもやらざるを得なかったんだから相当普段から酷かったに違いない
    かわいそうに

    • +2

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