
スウェーデンの研究グループが、印刷して作られた「人工ニューロン」を利用して、ハエトリグサの葉っぱの動きを制御することに成功したそうだ。
この成果は、ブレイン・コンピュータ・インタフェース(BCI)のような未来的医療機器にも役立てられるとのことだ。
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生体と親和性の高い人工ニューロンの開発
今日のコンピューターのようなシリコンを基盤とした回路や装置は、生体に組み込むことが難しい。複雑であり、生体への適応性が低く、かつエネルギー効率も悪いからだ。これに対して、『Nature Communications』(2022年2月22日付)で紹介された「人工ニューロン(人工神経細胞)」は、生体のものとよく似た電気シグナルを再現するために、有機電気化学トランジスタをベースにしている。
「人間の脳は、これまでに作られた最も高度なコンピューターの1つです」と、リンショーピング大学のシモーネ・ファビアーノ准教授は語る。
「膨大なメモリがあり、情報処理能力に優れ、しかもごく僅かなエネルギーで意思決定を行えます。それに対して、人間が作ったスーパーコンピューターはかさばる上に、大量のエネルギーを消費します」
そこで彼らが挑んだのが、自然の優雅さと生体への親和性、効率性を兼ね備えた人工ニューロンの開発だ。
普通のニューロン(すなわち神経細胞)は、電流で細胞内外の荷電分子(イオン)を緻密に制御しながら動作している。
一方、人工ニューロンは、同じことを行うために、イオン濃度スパイクで制御される有機電気化学トランジスタを利用する。
シリコンベースのものに比べて、生産が容易かつ低コスト。それだけでなく電圧が低くて済むために省エネで、生体のニューロンと直接やりとりすることまでできる。

Photo by Hal Gatewood on Unsplash
人工ニューロンでハエトリグサを操作
ファビアーノ准教授らは、この人工ニューロンを「ハエトリグサ」の細胞に組み込み、その葉を操作することにも成功している。言わずと知れた食虫植物のハエトリグサの葉の動きは、葉の内側にある産毛(感覚毛)がトリガーになっている。これが一定時間内(約30秒)に2度刺激されると、細胞内でイオンが放出され、葉が閉じるのだ。
実験では、高電流で人工ニューロンを刺激し、それによって高い「発火周波数」を作り出すことで、葉が閉じる仕組みが再現された。一方、低電流で刺激した場合、発火周波数は一定の閾値に届かないので、葉が閉じることはない。
Supplementary Movie 1
人工ニューロンの幅広い応用可能性
この人工ニューロンは、医療用インプラント、義肢、BCI(ブレイン・コンピューター・インターフェース)、さらには人工知能を搭載したソフトロボットなど、さまざまな応用が期待されるという。「人工的な機器を生体システムに結合する技術は、この分野が成功する上で決定的に重要である」と、論文では述べられている。
「神経細胞は、シナプスとともに、脳の基本的な構成要素です」と、ファビアーノ准教授は説明する。
「生物のニューロンの機能を電流で模倣できれば、人工知能技術の開発も可能になるでしょう」
「人間の脳に匹敵する効率性を実現するには、今後何年もかかるでしょう。それでも、印刷で作られた小規模な人工ニューラルネットワークの実証へ向けて、正しい道筋にあると考えています」
研究グループは、今後も人工ニューロンと生体ニューロンの通信をテーマに研究を進めていきたいと考えているそうだ。
References:Watch an artificial neuron control a Venus flytrap / written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
大きくならない息子スティックとかできそう
2.
3.
4. 匿名処理班
「トリフィドの日」
同じこと思った奴が何人か居るはず。
5. 匿名処理班
開閉を何度かやるとハエトリグサの葉はエネルギーを使い切って枯れる。
あまり突いてやるな。
6.
7. 匿名処理班
葉 葉 のんきだねぇ〜〜♪
8. 匿名処理班
宇宙から来た植物生物に野蛮で怖いからって地球ごと絶滅させられそう(さらばキー坊並み感)
9.
10. 匿名処理班
ハエトリグサにとっては拷問に等しい。
やめて差し上げろや(´・ω・`)
11. 匿名処理班
エグゾスケルトンはもう古い
これからはエグゾニューロンだ
12. 匿名処理班
ゴキブリとかハエトリグサとか人外へのサイボーグ化が捗ってるな