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世界各地に伝わる人魚伝説と真実

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 数世紀前、謎めいたシーサーペントや人魚がこの広大な海のどこかにいると信じられていた。

 もちろん、人魚は、長年人間の想像力をかきたててきた半人半獣の海の伝説だが、世界中に様々な歴史がある。

 ここでは人魚族にまつわる神話と起源について見ていこう。

世界各地に伝わる人魚伝説

 人魚伝説の起源のひとつはアラビアン・ナイト(千夜一夜物語)に出て来る男性の人魚だ。そこには「人魚の顔はまん丸のムーンフェイス、髪形は女性のようで、腹から手足が出ていて、魚のような尾がある」と記述されている。

 英国王立外科医学校の元学芸員、チャールズ・J・ S・ トンプソンは、著書『The Mystery and Lore of Monsters』(2010年)の中で「こうした半人半獣の生き物の伝説は太古の昔から存在していた。バビロニアの神エラ、またはオアンネスなど、魚の神はたいてい、王冠を被った髭面の男性の姿だが、腰から下は魚だ」と書いている。

 ギリシャ神話には、人魚族の海の使者である「トリトン」の話があり、ヒンドゥー教やカンドンブレ(アフリカ─ブラジル系の信仰)など、現代の信仰でも人魚の女神を崇拝するものある。

 もっとも古い人魚伝説のひとつは、シリア・カナン神話からきている。

 シリアの女神アタルガテスはデルケトとしても知られていて、シリアの古代都市ヒエラポリス・バンビュケにおける半女半魚の神だ。

 しかし、多くの人々にとって、もっとも馴染み深い人魚は、ディズニーの「リトル・マーメイド」かもしれない。1837年に出版されたハンス・クリスチャン・アンデルセンのおとぎ話「人魚姫」をいくぶん無毒化したものだ。

 スコットランドやウェールズの伝説の中には、人間と仲良くなったり、結婚したりする人魚が出てくる。

 メリ・ラオは、著書『Seduction and the Secret Power of Women』の中でこう書いた。

スコットランドでは、人魚は海に棲む絶世の美女で、魚の皮膚を身にまとうことで、一時的に人間と魚をかけ合わせた姿になる。

陸上を歩き回るときは、魚の皮膚を失わないように気をつけなくてはならない。これがないと海に戻れなくなってしまうからだ

 伝承では、人魚は遭難した船乗りを誘惑して、浅瀬の岩場に誘い込んだりして、不幸や死と結びつけられることも多い。

 女性の人魚ほど有名ではないが、男性の人魚も嵐を呼んだり、船を沈めたり、船乗りを溺れさせたりと、同じように残酷なイメージがある。

 スコットランドの伝説によれば、特に恐れられているのは、スコットランド沖のアウターヘブリディーズ諸島に棲んでいる「ミンチの青人」という一団だ。

 見た目は普通の男性のようだが、青みがかった肌をしていて、灰色の髭を生やしている。

 人間の船を襲う前に、まずは船長に言葉の韻を踏む競走をさせるという。船長が機転を利かせて、素早く応酬することができれば、青人を負かし、船乗りたちは海の藻屑にならずに済むという。

 日本の伝説には、河童(カッパ)という水に住む妖怪がいる。河童は子供位の大きさで、全身は緑色または赤色。

 日本の湖、海岸、川に棲み、人間というより動物のようで、頭頂部に皿があることが多い。背中にはカメの甲羅のようなものを背負っている。

 ミンチの青人と同様、カッパもときに人間と関わることがあり、負けると死が待っているようなゲームを仕掛けてくる。

 とくに、誰もいない水辺でひとりで泳いでいる無防備な子供が好きで、新鮮なキュウリに目がない。

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享和元年(1801年)に水戸藩東浜で網にかかった河童の姿 / image credit:WIKI commons

 アフリカの西部、南部、中央部では、”水の母”という意味のマミ・ワタという水の精がいる。

 信者に美と健康と知恵を授けるとして、崇められていた。マミ・ワタは、人魚やヘビ使いの姿で描かれることが多いが、これはアフリカ先住人の水の精や、ヨーロッパの人魚、ヒンドゥー教の神々や女神の影響を受けている。

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水の母、マミ・ワタ / image credit:WIKI commons

人魚は実在するのだろうか?

 人魚が実在するという考えは中世の時代に想定され、クジラのような既知の水棲生物と一緒に平然と描かれていた。

 数百年前、世界中の船乗りや海岸部の住民たちは、人魚と遭遇したことがあると話していた。

 1600年代にさかのぼる話では、ある人魚が水路を伝ってオランダに入り込み、その途中で怪我をしたが、近くの湖で静養して元気になった。

 ついに、彼女はオランダ語を学び、生産的な市民になって、家事をこなし、カトリックにも改宗したと、テオ・メダーの『The Flying Dutchman and Other Folktales from the Netherlands』にはある。

 実話として伝えられている人魚遭遇話は、エドワード・スノーの『Incredible Mysteries and Legends of the Sea』の中のひとつにある。

 1614年、ニューファンドランド島の沖合で、ある船の船長が人魚が泳いでいるのを目撃した。

ジョン・スミス船長は、いかにも優雅に泳ぎ回る人魚を目撃した。その人魚は、大きな目、やや小ぶりだが美しい鼻梁、長すぎるが形のいい耳をしていたという。

長いグリーンの髪で、そこそこ魅力的な、元来の彼女の特徴がわかった。スミスは、この愛らしい女性に心を奪われたが、じっと見つめるうちに突然、彼女の腰から下が魚だと気がついて、大いに失望した

 シュールリアリストの画家、ルネ・マグリットは、1949年の作品「The Collective Invention」で、下半身が魚という通常の人魚の姿を”逆”にして描いている。

 1800年代になると、人魚に対する大衆の好奇心を満足させるため、たくさんの”フェイク”人魚がでっちあげられた。

 アメリカの興行師P・T・バーナムは、1840年代に”フィジー人魚”なるものを展示し、これが大人気の見世物になった。

 見物料50セントを払った客は、魚の尻尾を持つ美女が、すらりとした長い手で髪を梳く姿を期待してきたのに、きっと失望したことだろう。

 美女どころか、体長数フィートのグロテスクなフェイクの死体を見せられただけだったからだ。それはサルの胴体と頭と手に、下半身が魚という代物だった。現代なら、明らかにフェイクだとわかるが、当時は多くが騙され、大騒ぎになった。

 水棲人間という考えは、1960年に、イギリスの生物学者アリスター・ハーディが、人類の異様な進化を説明する新たな理論を提唱したことで、もっと深刻にとらえられるようになった。

 人類は毛がなく、大きな脳を持ち、海洋哺乳類のように、皮下に脂肪を蓄えていることから、ハーディは人類はサパンナに棲むサルの子孫ではなく、海洋環境から進化したと説明したのだ。

 ハーディと彼の水棲サル起源説を支持する者たちは、人類は食べ物を求めて陸地ではなく水辺に進出し、ついには水中で生活できるよう進化したとほのめかし、多くがこれを人魚が存在するという概念を不滅にするために利用してきたのだ。

 ハーディの考えは証拠に乏しく、いまだに議論が多いままだが、考古学的証拠の大半は、人類は水中ではなく、陸上で進化したという考えを裏づけている。

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Photo by Naja Bertolt Jensen on Unsplash

人魚目撃についての可能性のある説明

 人魚伝説の科学的根拠はあるのだろうか?

 マナティーやジュゴンのような、人間と同じくらいのサイズの海洋生物を目撃したことが、人魚伝説のきっかけになったと考える研究者もいる。

 これらの生物は、平らで人魚のような尾を持ち、ふたつのひれがずんぐりした腕に似ていなくもない。

 確かに、巷で言われている美女的な人魚とはだいぶ違うが、目撃されたのはかなり遠くからで、体のほとんどは水や波ではっきり見えないことが多い。

 水中生物の識別は、目撃者がその生き物のほんの一部しか見ていないということが、根本的に問題なのだ。

 夕暮れの薄暗い中とか、距離の問題もあり、既知の生物であっても識別するのはとても難しい。頭や腕や尾がちらりと見えただけで、すぐに波間に潜ってしまうため、人魚伝説が生まれたのかもしれない。

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Photo by Debby Hudson on Unsplash

 現代で人魚の目撃は非常にまれだが、ないこともない。例えば、2009年には、イスラエルのキルヤト・ヤムの海岸沖で人魚が目撃された。それは、日没前に目撃者の前でいくつかの芸を披露し、夜の闇の中に消えていったという。

 人魚を目撃したひとり、シュロモ・コーヘンは語る。

友だちと一緒にいたとき、突然、砂浜にひとりの女性が妙な格好で寝そべっているのを見ました。最初は、ただ日光浴をしているだけかと思ったのですが、近づいてみると、彼女は水の中に飛び込んで、いなくなってしまいました。私たちはみんな、ショックを受けました。彼女にはしっぽがあったんです

 町の観光局は、この生き物の撮影に成功したら、100万ドルの報奨金を出すと嬉々として勢いづいた。残念なことに、この目撃報告はいつの間にかうやむやになってしまい、報酬を要求する者もいなかった。

 2012年、アニマルプラネットの特別番組「Mermaids: The Body Found」で、人魚への関心が再燃した。研究者たちが本物の人魚の証拠を見つけたというのだ。

 これはフィクションだが、いかにも本当らしく見える嘘のドキュメンタリー番組形式で放映された。あまりに説得力があったせいか、番組終了後、アメリカ海洋大気庁(NOAA)に問い合わせが殺到したため、人魚の存在を公式に否定する声明が出された。

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 日本の福岡の龍宮寺には、1222年に海岸に流れ着いた人魚のミイラだと言われているものが所蔵されている。

 この人魚は、海底にあるという伝説の龍神の宮殿からやってきたと信じた僧侶の命令で、保存処理が施されたという。骨は800年近くも展示されて、その骨を浸した水は病気を防ぐと言われた。

 現在、骨は数個しか残っておらず、科学的な検証もされていないため、その正体は不明だ。

 更に岡山県の寺に保管されている江戸時代のものと思われる人魚のミイラは、最近CTスキャンがかけられ、今年の秋にその正体が明らかになるという。

 人魚は、いまだにさまざまな形で私たちの身近にある。

 映画、本、ディズニー映画、スターバックスまで私たちのまわりの至るところでその姿を見かけることができる。もっとよく目を凝らして見てみれば、海の波間にも見られるかもしれない。

References:Mermaids & Mermen: Facts & Legends | Live Science / written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 36件

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  1. 日本にも食べると不老不死になる人魚の伝説はあるんだがカッパのほうが有名だったのかな

    • +10
    1. ※1
      西遊記にもカッパいるし、かなり古いかもね
      しかも原作よりも日テレのあちらさんのほうが
      有名になってしまったし、河童も奥深い

      • -11
      1. ※3
        元捲簾大将沙悟浄「誰が河童だ失礼な!」
        いや、ガチで沙悟浄は元天界の高級役人だし?
        天界から放逐されて後に川を住まいにして人を喰らう妖怪化してたけど、河童とは縁もゆかりもありゃしない

        ※4
        シュメール神話の神様オアネスを描いた壁画の中には、人間が魚を被ってるというか、魚の着ぐるみ着てるみたいな感じで、足と魚の尾を両方描いてるのとかあるしね

        • +8
      2. ※3
        沙悟浄は河童じゃないぞ。
        というか妖怪ですらない。
        本名は捲簾大将といって、元天界の武将。
        ちなみにもう一人の猪八戒も天蓬元帥と言って、やっぱり元天界の武将。
        沙悟浄と猪八戒というのは、三蔵法師玄奘に新しく貰った法名なんだよね。

        • +10
      3. >>3
        沙悟浄が河童なのは日本のアレンジ
        元はただの入道

        • +3
    1. ※2
      自称同族一のハンサムさんはお帰りくださいw

      • +2
  2. 岡山のミイラって上半身が猿のミイラだと昔テレビで解明したような…あと、ドイツの学者の絵が衝撃的。脚と尾びれ両方あるw。

    • +2
    1. ※4
      >脚と尾びれ両方ある

      でも、海へ出戻り途中の
      後ろ足が退化する前のクジラやイルカを思えば、
      脚は脚として有って、尻尾が尾びれ化している造形のほうが
      哺乳類であるヒトベースとして自然といや自然な気もする。

      よく見ると、尾びれの向きも
      垂直に立ってる魚と違って、イルカみたいに水平になってる?

      • +1
  3. 韻を踏むバトルか、一船に1人R指定配備やな。

    • +4
  4. 河童の「負けると死が待っているようなゲーム」ってのはひょっとして相撲の事だろうか

    • +9
  5. 河童は人魚とは別種だよね、魚要素ないし
    ところで上半身がヒト形なら人魚(ヒト形の魚)で、上半身が魚形なら半魚人(魚形のヒト)って呼び名は、なんか逆だよなぁと常々思うところです

    • +1
    1. >>9
      日本語は縦書きだったから、
      上半身 人 魚
      下半身 魚 人
      でわかりやすくない?

      • +8
  6. 人魚伝説ってさ、世界各地の民話や伝承・マナティーやジュゴンの目撃等が、海洋民族の言い伝えや船乗りの噂話レベルで伝播しているから、ぐちゃぐちゃに混ざり合ってややこしいことになってるんすよ…
    それがおもしろいんだけど。

    • +3
  7. 人魚伝説ってさ、世界各地の民話や伝承・マナティーやジュゴンの目撃等が、海洋民族の言い伝えや船乗りの噂話レベルで伝播しているから、ぐちゃぐちゃに混ざり合ってややこしいことになってるんすよ…
    それがおもしろいんだけど。

    • 評価
  8. 江戸時代、猿の上半身に魚の下半身をくっつけていぶした物を、人魚のミイラとして輸出していたって、カラパイアの記事で読んだぞ。

    • +10
    1. ※15
      記事中に出てくるP.T.バーナムが展示した「フィジー人魚」がそれだね

      • +2
  9. 日本の人魚は仏教説話系(前世の業で転生)、食べる系(不死化、人魚化、竜宮土産)、水害系(津波、時化)、珍獣系など色々パターンがある 

    • +6
  10. カラパイアでも記事にあったガラパゴスアカグツ、遭遇したら人の顔っぽいから人魚のネタにされてたんだろうか。人の想像力ってすごいね。

    • +1
  11. 女で、しかも絶世の美女って時点で男の妄想の産物だとわかる
    リアリティを出すなら絶世の美男も同数出そうよ

    • -20
    1. ※18
      海に出る職業は圧倒的に男性が多いので
      それを捕食するために女性を模しているとか屁理屈付ければそこそこ整合性はある

      • +20
    2. >>18
      それだけじゃなく老人や子供の人魚もいるはずだよね。

      • +2
      1. ※26
        ポセイドン(二本足のケースも多いけど、魚尾型の)が
        そんな感じじゃね? >老人の人魚

        • +3
    3. >>18
      pixivの美麗イラストなら、私も見ました。

      • 評価
  12. 50年前の東京でも
    リヤカー引いて売っていたな。
    「にんぎょーえ、にんぎょー。」って

    • -5
  13. オアンネスの、魚の着ぐるみをかぶって頭と手足出したおっさんって姿はすごく気に入ってる
    その姿で海からやってきて人間に知恵を授けてくれるんだぞ

    • +3
  14. 人魚みたいな半「漁」人と
    河童やリザードマンみたいな半「爬虫類」人は分けて考えたいところ

    • +3
  15. >顔はまん丸のムーンフェイス、髪形は女性のようで、腹から手足が出ていて、魚のような尾がある

    いかにもな「人間の下半身を魚にしました!」的な神話の創作と違って、これに関しては、何らかの実在の海棲哺乳類を見て、珍しい特徴を必死に記述した雰囲気を感じる。
    特に「顔はまん丸のムーンフェイス」「腹から手足が出ている」あたりが。

    • +5
  16. 八尾比丘尼って人魚が日本にもいてな…

    • -19
    1. ※30
      八百比丘尼は、親が持ち帰ってきた人魚の肉を食べて不老長生になって仏門に帰依した、人間!
      人魚伝承と関わりはあるけど、人間だから!

      • +9
  17. スコットランドにアザラシ皮を被ったセルキーという妖精の伝説があるな
    これも人魚伝説に混じってそう

    • +1
  18. 見世物小屋ではそれ以外に半魚人みたいな人魚が展示された
    当時のチラシにも乗ってるいるし映像も有る
    ジュゴンと見間違える?現代人と違って目が良い昔の人がしかも良く見てる動物と見間違るか?漁に良く行くからこそ色んな動物に精通している 図鑑で見るのと実物じゃ
    全然違うのが生物だ 

    • -1
  19. 半分魚、半分人間という存在。これ日本の海女(海士)じゃないかな。古代・中世では泳げない人がほとんどだった。そういう時代に「潜る」ことが異常で「半分魚だ!」となったとか。昔の日本人は体中に刺青していて海に潜ると昔の中国の文献に書いてあったと何かで読んだ。この刺青が鱗ってことになるのでは?人から人へ伝わるうちに「鱗のような模様」が「鱗」に変換されてしまったとか。昔の海女さんは腰巻だけで潜ってたらしいし。知らずに目撃したら人魚に見えると思う。

    それと人魚の歌ってのも海女の磯笛って考えたらつじつまが合う。他のルーツと考えられるアザラシやジュゴン、リュウグウノツカイ(長い髪の毛・他の魚と違う縦に長い顔=人面)には歌う属性がない。砂浜より磯のほうが貝やエビが多いから海女が多いし暗礁も多くなって事故も増える。人魚の歌で座礁=海女の磯笛に驚いているうちに座礁だったとか。海女(海士)も元は船できた異民族だったと言われているからベンガル湾あたりからきてたりするとありうると思う。

    • -5

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