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418年前に錬金術師が作った蓄光鉱物が新たに見直され、照明として未来の都市を照らす可能性

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 1603年頃、イタリアの靴職人でアマチュア錬金術師のヴィンチェンツォ・カシアロロは、ボローニャ近郊のパデルノ山の斜面で見つけた密度の高い鉱物を錬金して金を作ろうと試みた。

 残念ながら、彼が期待したように金が生成されることはなかったが、かわりに面白いものが残された。それを日の光に当ててから暗いところへ持ち込むと、光ったのである。

 当時は見向きもされなかったが、環境に配慮したエネルギー源が求められている今、このような蓄光材料は、将来、照明にかわって都市を照らし、しかも涼しくしてくれる大きな可能性を秘めているという。

錬金術師が偶然作り上げた蓄光鉱物、ボローニャの石

 418年前、ヴィンチェンツォ・カシアロロの錬金術で偶然作られた持続発光する鉱物は「ボローニャ石」と言う。世界で初めて人工的に作られた発光材料である。

 ボローニャ石は「重晶石」の一種で、当時の錬金術師らを大いに魅了したが、特に役に立つような代物ではないと、見向きもされなくなった。

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photo by iStock

再び脚光を浴び始めた環境にやさしい発光材料

 それから3世紀が経過し、1990年代になると、ストロンチウムとアルミニウムを含む無機化合物「アルミン酸ストロンチウム」のような、何時間も強い光を放つ新しいタイプの蓄光材料が誕生した。

 それらは今、装飾・緊急用の照明・道路の目印・医療用の撮像技術などに利用されている。

 だが、それだけではない。現在都市で使われている照明にとってかわり、しかもコンクリートのせいで暑くなりがちな都市部を涼しく保ってくれる可能性まで秘められているのだ。

 米ローレンス・バークレー国立研究所のポール・ベルダール氏は、「環境に優しいものです。この技術が改善されれば、省エネにつながります。やるだけの価値はあります」と語る。

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重晶石 photo by iStock

将来的には都市の照明として利用される可能性も

 こうした材料は、「光子」のエネルギーをとらえ、それを光として再放出することで輝く。これを「フォトルミネセンス」という。

 蛍光灯のように、すぐに光を放つタイプもあるが、エネルギーをしばらく蓄えておき、ゆっくりと放つ「残光性」と呼ばれるタイプもある。

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250種以上の発光材料が知られている。それらは、a) 発光中心として働く痕跡物質、b) ホスト化合物、c) 光の色によって分類されている。

 こうした数時間にわたって明るく輝き続ける発光材料なら、都市の照明として利用できるかもしれない。

 世界で消費される電気のおよそ19%は照明のためのものだ。街灯の一部を電気がいらない発光材料にかえることができれば、その省エネ効果は大きいと、「最新の研究」で述べられている。

 今のところ、一晩中光ってはくれないという課題はある。だが、イタリア・ペルージャ大学のアンナ・ラウラ・ピセッロ氏によれば、もっと優れた材料を見つければ解決できるという。

 また既存の発光材料でも、電気式の照明と組み合わせて使えば、路面の標識として十分に使える。

 発光材料をペンキのように塗るというアイデアもある。ピセッロ氏らが、駅付近の道を発光塗料で塗ってみたところ、照明に使う消費電力を27%少なくできることが確認されたという。

光害の心配もなく、都市を涼しくする

 一晩中光で照らされることで「光害」が起きるのではと懸念する人もいるかもしれない。だが、ピセッロ氏は、その心配はいらないと話す。

 発光材料は、もともとあった照明に置き換わるもので、新しく追加されるわけではない。

 また、発光材料の光にはさまざまな色(波長)がある。野生生物に悪影響があるとされる青い光を放たない素材を選ぶこともできるのだ。

 さらに発光材料には、「ヒートアイランド現象」を緩和する効果も期待できるという。

 都市では、アスファルトやコンクリートが日光を吸収し、それを熱として放出するために、周囲の地域よりも暑くなりがちだ。

 これは健康被害につながるし、室内を冷やすために、それだけ多くの電気が消費されることにもなる。

 対策としては、白いペンキや明るい素材などで日光の熱を反射する方法がある。だが発光材料を使えば、さらに効果的になる。

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発光物質のサンプルとそれを埋め込んだ敷石 / image credit: ANNA LAURA PISELLO

合成ルビーなら最大3.3度温度が低下

 たとえば、ベルダール氏らは、発光材料である「合成ルビー」でその効果を確かめている。

 これでコーティングした物体をひなたに置いたところ、合成ルビー入りでないコーティングよりも低い温度が保たれたと報告している。

 ピセッロ氏はさらに一歩進み、残光性材料(蓄えた光をゆっくりと放つ)でコンクリートをコーティングして実験を行なった

 すると晴れた日では、同じ色の”非”残光性材料よりも最大3.3度温度が低いことが確認されたという。

より長く、明るい発光材料を求めて

 現時点で、250種の発光材料が知られている。しかし、その多くは実用化へ向けての研究がそれほど行われていない。

 そうした中には、より長く、明るく、色が豊富なものがあるだろうと、ピセッロ氏は語る。

 しばらくのうちは、すでにあるものを改良するのがいいようだ。だが長期的には、より優れた人工発光材料の登場が期待できるという。

 そうした次世代の発光材料として、すでに生体撮像技術に利用されている「量子ドット」や、光合成を模倣するためにも使われる「ペロブスカイト」などが考えられるそうだ。

References:Long Persistent Luminescence: A Road Map Toward Promising Future Developments in Energy and Environmental Science | Annual Review of Materials Research / Will glow-in-the-dark materials someday light our cities? / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 27件

コメントを書く

  1. 金を精製しようとした副産物で生まれたの!?
    その錬金術の技術が知りたい・・・

    • +10
  2. 発行する石で照明にするとか、なんかファンタジーの世界みたいでワクワクしてくるね(笑)

    未来の都市では夜の照明も今では考えもつかないようなアートなものになるかも?

    魔法エネルギーが発見される(応用につぐ応用で偶然魔法が開発される)のも時間の問題か?!

    なんて、あるわけないか

    • +8
  3. 医療に使える程明るく出来るならホントに使いで有りそうだな
    後はまぁ新技術の何時もの壁、コストの問題が解決すれば…

    • +5
  4. いわゆる蓄光材の技術が進化して一部の照明の代わりになるかもしれないって話ね。
    これまでの蓄光材は停電時の非常口の表示みたいな補助的な役割に留まってたけど、これから用途が増えていくかもね。

    • +8
  5. こういう記事読むといつも思うんだが、
    よくもまあ、丁度良く夜の闇を照らしてくれる、
    照明みたいな『お月様』が地球の衛星として存在するものだよな。
    これぞ、天文学的な確率!w

    • +4
  6. 発光材料はホタルの光と同じでほとんど電力は得られないし
    蓄電能力もないことが分ってるはずなのに?

    太陽光発電したほうが遥かに効率的で電力量が大きい

    • -16
    1. ※11
      そういう話じゃないだろ。
      昼の太陽の光(10万@夏至真昼~1万lx@雨天)の一部を熱に変えずに蓄えて月ぐらいの光(0.02@半月~0.25lx@満月)を一晩はなってくれる(安く造れる)物質があれば、昼間の冷房と夜の街の照明の電気が節約できるぞって話だ。満月の光ぐらいだと生物は光感応せずに夜と見なすから環境にやさしいで。このぐらいの話だぞ。

      • +15
  7. 「光を溜め込んで暗いとこで光る変なもの」に全然興味をひかれなかった昔の人、すごい!

    • +6
    1. ※12
      記事中にもあるが、興味は大いに惹かれたぞ。

      ただ、その方向性が「神秘的な石! これぞ錬金の材料!」
      という方向性に行って、結果 徒労で、後世に残せるような
      功績は出ず、研究過程は歴史の波の中に消え去ったのと、
      せいぜいネタ的な「夜光る珍しい装飾品」ぐらいしか
      日常生活での実用の用途を思い付けなかっただけで。

      例えば「磁石」だって、存在自体は紀元前から知られていたけど、
      「砂鉄がくっ付く変な石」という知識人のトリビア程度の存在で、
      羅針盤への利用が見出されるまでは特段 重視されていなかった。

      • +8
  8. 金より余程すごいと思うんだが何で400年前に大騒ぎになってないんだろ
    蝋燭でOKだったんか

    • +3
    1. >>13
      たしかに。
      これ使えば蝋燭で火事になる心配はないし半永久的に使えるから経済的なのになぜ使わなかったのか。
      調べたら面白いかも。

      • 評価
      1. ※17
        ある種の視野狭窄に陥ってたのかもね
        「金を作る」が目的だったから、「金以外ができたことは失敗である」と決めつけちゃったと

        • +3
    2. ※13
      「都市の照明として利用できるかもしれない」とはあるけど…、
      ボローニャ石の光り方を見た感じ
      せいぜいネオンサインみたいな明るさで、
      燭台みたいに「卓上に置いたら部屋全体が薄明るくなる」
      って感じではなさそうな気がする。

      • +4
  9. 安く作れるようになるなら、太陽電池式の庭照明の代わりとして良いかもなぁ。

    • +2
  10. 暗い夜もいいもんだよ。
    まあ商売とか仕事とか安全とかいろいろあるけど。

    前に書いたかもしれないけど
    うちの田舎は年に一回、夜8時から一時間、家族が一部屋に集まって過ごすというのをやってる。
    他の部屋は明かりや電化品を極力消して過ごすんだ、まあ冷蔵庫他はそのままエアコンとか止める。
    その一部屋はエアコンとか可、照明は出来るならハンディライトなど、TVやケータイはなし、あとは話したりカードゲームでもいい、おやつや果物もいい。
    帰省したときがこの日で暗い中アルバム見て笑って過ごしたよ。

    まあそれだけなんだけど、家族のつながりや節電、過多な情報の遮断と選択、災害時の練習、もろもろだ。
    商店や飲食店もこの日は早めの閉店したり、してるようだ。

    これは絶対じゃないし自由なんだ、仕事で遅い人も居るしコンビには閉めない。
    でも慣れてくると仕事を半日にするとかコンビニはガラガラとかになるそうだ。
    そう聞いた。

    • 評価
  11. これでアクセサリー作ったら素敵かも♪

    暗闇でペンダントとか指輪やブレスレットがホワッと光るのって、何か良いと思う☆

    • +1
  12. 単に昔の練金術師が蓄光素材を見つけてたよ、ってだけの話題で
    それが夢の素材かどうかは別な話やろ

    高輝度蓄光テープとか塗料なら既にホームセンターに普通に売ってるから興味あるなら買ってきて有効に使えばいいじゃん?
    せいぜい夜中にトイレ行く時に足の小指ぶつけずに済む程度の明るさだけどな

    • -1
  13. 値段が安く提供できるなら、この時期クリスマスツリーの電飾とか街路樹の飾りつけにいい。夜遅くになったら勝手に消えるというのも光害対策になるし。ルミナリエとか光のページェントとかやっているところ電気代がかかんなくなっていいんじゃない?

    • +2
    1. >>27
      すでに兵庫県の摩耶山では蓄光セラミックを敷いたイルミネーション、光の小径があるみたいだよ
      暗い所でないと蛍光(燐光)の光は見えにくいから街灯のピカピカした街中で使うには光量が少なすぎるかもしれないので燐光が映えるくらい静かで暗くてそれでも安心な街になるのが一番良いのかもしれないなと思ったり思わなかったりするよ

      • +2
  14. なんつーか、今ある照明と、あらゆる面で同じ性能じゃないと使えねー、てっのは違う気がする。
    蓄光材料で照明を補強してその分電気の使用量を減らすとかから始めればいいんじゃないか?

    蓄光材が多量に採掘できるのかとか、製造できるのかとか、気になることはあるけど…

    • +2

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