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脳に電気刺激を与えるデバイスを埋め込み、抗うつ剤の効かないのうつ病を治療することに成功

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(著) (編集)

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UC San Francisco (UCSF)
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 うつ病を患う多くの人にとって、抗うつ剤は重要な役割を果たす。だが、薬を使った標準的な治療を一定期間行っても、病気が改善しない患者も存在する。

 そこで今回、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究チームは、脳に電気刺激を与え、特定部位の活動を抑えるデバイスを埋め込むという、新たな治療法を開発した。

 まだまだ開発初期の医療技術だが、抗うつ剤の患者の症状が改善されたという。

うつ病の3人に1人が抗うつ剤が効きにくい

 うつ病は、気分が強く落ち込み憂うつになる、やる気が出ないなどの精神的な症状のほか、眠れない、疲れやすい、体がだるいといった身体的な症状が現れることのある気分障がいの一種だ。その症状のあらわれ方で、大きく2つに分類されている。

 抑うつ状態だけが起こる「うつ病(大うつ病性障害)」と、抑うつ状態と躁(そう)状態の両方が起こる「双極性障害」だ。

 うつ病は、成人の5%が抱えていると言われるほど一般的な病気にもかかわらず、薬や治療が効きにくい治療抵抗性(TRD)を示す患者は3分の1もいる。

 今回、移植手術を受けたサラさんもそんな1人だった。子供の頃からうつ病を患っており、もう限界だったという。

 「こんな状態が続いて、ずっとこの先に進めないのなら、もうダメだと思いました。生きる価値ある人生ではありませんでした」と彼女は当時の状態を語っている。

脳インプラントで電気刺激を与える

 だが、サラさんは幸いにも、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校で行われていた研究に参加することができた。

 研究グループが行なっていたのは、脳の奥へ電極を差し込み、電気刺激でうつ症状を緩和する治療法(「脳深部刺激法」)だ。

 いわば「脳のペースメーカー」を装着するようなもので、「パーキンソン病」や「てんかん」などの治療では実際に効果がある技術である。

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患者にあわせてカスタマイズ

 ただし、うつ病はそうした病気よりもずっと複雑だ。これまでも脳深部刺激法が試されたことはあったが、結果はまちまちで、期待外れに終わることが多かった。

 そこで今回の研究グループは、脳の特定の領域をターゲットにするのではなく、サラさん個人にあわせた移植部位を探すことにした。

 彼女の脳を手作業で追跡して、うつ病が生じていることを示す脳波パターン、すなわち「バイオマーカー」を探し出す。

 そしてバイオマーカーが発生したタイミングで、患部に電気刺激を与えるような脳ペースメーカーを開発したのだ。

Personalized Deep Brain Stimulation Therapy (DBS)

 脳ペースメーカーの電極は2本ある。1本はバイオマーカーが発生する領域へと挿入される。これはうつ病の発生を検出するためのものだ。

 もう1本は、うつ病を引き起こしている「うつ回路」へと挿入される。バイオマーカーが検出されると、こちらの電極からうつ回路へ6秒間微弱な電流が流される。その電流の刺激によって、うつ症状が抑えられるという仕組みだ。

患者個人にあわせたうつ治療に期待

 今のところ、脳ペースメーカーの成功例は、サラさん1人しかいない。

 脳深部刺激法でうつを治療する試みはほかにもあるが、結果は確実なものではないし、今回の成果が今後もずっと続くとは限らない。

 それでも、移植手術は、サラさんに計り知れない変化をもたらした。

最初の数か月は、症状の改善があまりにも突然で、このまま続くのか自信がありませんでした。でもちゃんと続いているんです。脳ペースメーカーが、治療やセルフケアを補強してくれていると実感しています

 なお、サラさんで検出されたバイオマーカーは、人によってそれぞれ異なるものである可能性が濃厚だ。

 そのため、ほかの患者に脳ペースメーカーを試すには、人それぞれのバイオマーカーを突き止めなければならない。

 研究グループはすでに患者を募集し、個人向けにカスタマイズされた脳ペースメーカーの有効性を検証しているとのことだ。

 この研究は『Nature Medicine』(21年10月4日付)に掲載された。

References:Scientists solve ‘untreatable’ depression with personalized brain implant, in world first / written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 43件

コメントを書く

  1. ロボトミーの時もこんなふうに期待されていたんだろうなぁ、
    と、当時の空気を推察してみる。
    成功すれば「医学の進歩」失敗したら「非人道的な人体実験」
    医学ってそういうものなんだなぁ。

    • +19
    1. >>1
      いや全然違うんじゃないか?
      ロバート・ヒースという医者が1950年代に、ロボトミーに変わる、より人間的な治療法としてこういう電気刺激で精神病を治そうとした。

      しかし、そのロバート・ヒース自体も当時批判に晒されて、現代ではその名前を知ってる人も少ない。

      当時ロボトミー自体に批判は当然あったからこういう研究も出てきたんだろう。

      そしてその電気刺激は正解だった(もちろん技術的に早すぎたというのはあるが実験はうまくいっていた。)にも関わらず批判によって消えてしまった。
      現代になってパーキンソン病で電気刺激が使われて、やっと現代になってまた精神病にも使われ始めたという感じだ。

      そして、またこういう批判(気持ちはわかる)でこの研究は倫理的に頓挫するのかどうか。
      歴史は繰り返すとは言ったものだね。

      • +5
    2. ※1
      電気刺激療法は実際に広く運用されてますよー。昔てんかん患者に鬱病が少ないことに着目した人が、人工的にてんかんっぽい脳波を電極で送り込むことを思いついたのが始まりで、実際に効果てきめんだった。
      今現在も薬物療法が効果ない欝患者に対しての切り札として使われてるし、治療機器の開発も盛んにされてるよ。

      • +2
  2. なんか漫画「ホムンクルス」みたいに覚醒しそう。

    • +3
  3. うつ病は辛いけども、1970年代にうつ病に対してロボトミー手術を行って、無感情もしくは感情のコントロールが出来ない被害者を出したことを考えると少し怖い。

    • +9
    1. >>3
      凶暴な人に手術したんじゃなかった❓

      • 評価
  4. 昔の映画で見たものがまた一つ現実になったな

    • +1
  5. 代謝が良くなって痩せるスイッチとか
    やる気スイッチとか
    脳🧠に埋め込みたいわ

    • +2
  6. まぁ、薬が効かなくて自死するくらいだったなら、ここまでして治すのも有りなのかな…。

    • +8
  7. 別の病気発症し、元の性格に戻らないなんてあるじゃねえの

    • 評価
  8. 切除しないからロボトミーよりはマシ….
    なのかな?

    • 評価
  9. 「今日の仕事は楽しみですか」

    「ハイ!」(電極装着済み)

    • +11
  10. ロボトミーとは全く違うでしょう
    ロボトミーは脳の一部を切除や破壊してる
    ヒトの感情は脳の活動だと判明しているし
    脳の活動は神経伝達物質によるのもので最終的には電気信号
    うつは脳の回路が上手く働かない病気なのだから有効な手段だと思いますよ

    • +2
  11. うつ病で毎日しんどいくらいなら脳に電極埋めてもいいけど、この電気刺激も慣れて効かなくなるとかだったらやだなー

    • +6
  12. 双極ADHD愛着障害持ちだけど、
    受けれるなら、この手術即座に受けたいわ

    • 評価
    1. ※16
      ADHDそのものにも効くんだったら自分のポンコツ脳にも試したい

      • 評価
  13. 脳が悲鳴を上げていても
    電気仕掛けでむりやり元気にされる装置

    • +1
    1. ※17 ※20 ※39
      鬱「病」のことをちゃんと理解してるか?
      パワハラされて気分が落ち込む⇒上司が辞めたら自然に気分が戻る
      ってだけなら、単なる正常な反応で病気じゃない。

      鬱病までいくと、脳回路の異常で情動が悲嘆状態に固定され
      パワハラされて気分が落ち込む⇒上司が辞めても塞ぎ込んだまま
      って感じで、別途の介入が無いと元の状態に回復できなかったり、
      状況を改善するために
      例えば「転職する」といった行動に出る気力すら無く
      身動き取れない悪循環に陥ってたりするんだよ。

      • +10
  14. これは可逆的な処置か それならば中止したり改善も可能なんだとハードルも低くなりそうだ。

    • +3
  15. 別に上手くいかなかったら抜けばいいし、ロボトミーとの比較はちょっと。
    しかし、適切な所に挿せば第六感を呼び覚ませそうだ。

    • +2
  16. 一時的な治療にしかならないだろうな・・・
    万が一フラッシュバックが起きたらアウトだし、結局自分で自分を(鬱の原因から)助けたりしないと根治は難しい

    この治療法がその手助けになればいいけど

    • -1
    1. ※20
      確かに環境を変えないと根本的に解決できない人も多いでしょう
      でも、電気刺激で治る、あるいは症状が改善する人がいる可能性だってある
      重い荷物を持っても腰痛にならない人もいれば、荷物を持たなくても腰痛になる人もいる
      うつも同じで軽度のストレスで発症する人もいればストレス耐性が強い人もいる
      誰でもなる可能性がある点も腰痛と一緒
      うつは心の病ではなく脳の回路の不具合なのだから電気的な刺激で改善する人がいるのならば朗報でしかないと思いますよ

      • +5
  17. 脳に電極入れて
    脳の電脳化とネットワーク化したら
    誰かに操られそう

    • +2
  18. トランスフォーマーの麻薬って確か電気信号って聞いた

    • +2
  19. 抗うつ剤が効くうつは「大うつ病性障害」だけ
    それ以外のうつ症状を示す病気では、抗うつ剤は効かない

    あとは、自分と家族のうつ症状を見てると、もともとのうつになりやすい本人の傾向が一番の原因なんだと思う
    思い込みが激しい、傷つきやすい、鬱憤や感情を溜め込みがち、自己評価が低い、そのくせ妙な頑固さで人の意見をきかない
    それで自分をうつに落とし込んでるから治りかけてもまた戻るっていう…
    電極入れたらこの気質をポジティブでオープンに変えてくれるのかねぇ

    • +2
  20. ブラックジャックのアレじゃん
    やっぱ手塚治虫ってすごいな

    • 評価
  21. スイッチ一つで気分を変えられる時代がくるなら大賛成だけど、問題が起きたときはお手上げになりそう。

    • 評価
  22. 猿の脳の快感を感じる部分に電極を埋め込むと、電気を発生させるボタンを猿は押しまくるらしい。

    • 評価
  23. 人に自由意志なんてものは無いと改めて思ったわ。

    • 評価
  24. 鬱の症状をなんとかするんじゃなくて、原因をなんとかしようや。
    パワハラ上司にやられて鬱になったけど電極刺して鬱改善したからパワハラされても大丈夫ってなんか違うやろ??

    • -1
    1. >>39
      たしかにそのケースではごもっともな意見だけど、うつの原因はそれだけじゃないしな。
      大切な人を突然亡くしたり、失恋したり、資産を失ったり、戦争だったり…
      原因がひとつならそれを摘むことで事態は解決するけど、あらゆるケースに対応するためには、ひとつの結果に対する対処療法がてっとり早く多くの患者を救えるんだよ

      • +3
  25. 脳なんて臓器の一つでしかないんだから、ペースメーカーと一緒でしょ
    これが普及した将来が楽しみだ

    • +2
  26. 薬とかではなく自分の中に何かを埋め込むことで恒久的に感情に変化がもたらされるのだとしたらそれは本当に自分と言えるのだろうか?という、自分とは何か論争が自分の中で勃発してしまう
    脳も臓器の一つと考えればそれを健全に保つのは正しいことであるように思えるし、それに付随する感情も臓器のようなものと思えば健全に保つのは正しいのかもしれない

    しかし健全とはなにか?
    悩み苦しみ痛み憂いからの解放は本当に幸福なことなのか?
    まあやりたい人はやればいいのかな

    • -1
    1. ※43
      うつ病は脳の病気ですよ、決して心の病ではない
      健康ではない状態であり、日常生活が正常に行えなかったり苦しかったりする
      その病気の状態を治療するだけです

      • +1
  27. 極細の電極の針を脳に刺す深部脳刺激療法(Deep Brain Stimulation:DBS)は日本ではすでに多くの病院で実際に手術ができ、新しい治療法でも無いのだが、この記事は一体なんなんだ?

    • 評価
    1. ※45
      >「パーキンソン病」や「てんかん」などの治療では実際に効果がある技術である。
      >ただし、うつ病はそうした病気よりもずっと複雑だ。これまでも脳深部刺激法が試されたことはあったが、結果はまちまちで、期待外れに終わることが多かった。

      要は、「鬱病への適用」(そして1例のみながら成功者が出た)
      って点が、新しい試みだという話では。

      • 評価
  28. これで人格が変わろうがなんだろうが、鬱病でいるより無限に良い

    • 評価
  29. そもそも電気で動いてる人間に電気流して何がわるいのかってな
    より活性化できたらそれでもいいし
    たとえば、障害者が治療によって健常者より高いスコアを出すようになっても、そんなの社会的には得しか無い

    • 評価

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