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最大で数週間も遺体が腐敗しない、チベット僧侶の体の謎

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(著) (編集)

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 チベット仏教に帰依する僧侶の体には不思議な現象が起きることがある。チベット僧は死後数日、長い人で2~3週間も、その遺体が腐敗することないのだ。

 彼らはこの状態を、死んでいるのではなく、「トゥクダム」(thukdam)という深い瞑想状態にあるという。実際、心臓も呼吸も止まっているが瞑想の姿勢は保たれたままだ。

 特殊な例はあるものの、一般的に人体の腐敗は死後4分後には始まり、翌日以降はかなり顕著に現れるという。

 チベット僧の遺体が他の人間の遺体と同じように腐敗しないという事実は、非常に興味深い現象だ。

チベット僧侶の死後、体に何が起きているのか?

 死を出来事ではなく、プロセスだと考えるチベット僧は、肉体の死が訪れても、精神は終わらないということを身をもって示しているのかもしれない。

 彼らにとって、このトゥクダムという状態は、徐々に心が解き放たれ、最終的に肉体に執着しない普遍的な意識へと昇華していく「光明(クリアライト)」という瞑想と共に始まる。

 そのとき初めて、肉体は自由に死ぬことができるという。

 深い瞑想状態を意味する「トゥクダム」というプロセスでいったいなにが起こっているのか?

 これを科学的に解明することは、チベット仏教の最高僧であるダライ・ラマ14世も注目していて、その研究を支持している。彼は、20年にもわたって、この謎を解明してくれる科学者を探しているとも言われている。

 ダライ・ラマは科学の支持者で「仏教と科学は相反するものではなく、真実を探るという同じ目的に向かって、違う方面からアプローチしているだけだ」と言う。

ダライ・ラマ14世

トゥクダムの謎を科学的に解明しようとする試み

 これまでもっとも本格的にこの不思議な現象に取り組んだ研究は、ウィスコンシン大学マディソン校ヘルシーマインド・センターが行ったトゥクダム・プロジェクトだ。

 神経科学者リチャード・デヴィッドソンは、このセンターの創設者のひとりで、己の現在の状態に意識を向けて心を整えるマインドフルネスについて、たくさんの論文を発表している。

 デヴィッドソンは、2014年8月28日に、友人のチベット僧ルンドゥブ・ソパが亡くなったときに、初めてトゥクダムを目の当たりにした。死後5日たってから、その僧の姿を見たが、まったくなんの変化もなく、非常に驚いたという。

死後、脳活動は検出できず

 トゥクダム・プロジェクトは、この冬初めて年間報告書を発表した。最近の研究では、死後少なくとも26時間以上経過したトゥクダム修行僧13人の脳活動は、脳波計ではまったく検出できなかったという。

 死んでいるのだから、脳活動などあるわけないと言いたいだろうが、デヴィッドソンは、これは長い道のりの研究の最初の一歩にすぎないと考えている。

 哲学者のエヴァン・トンプソンは言う。「トゥクダムが脳内で測定することができるなにかだと考えているのなら、それは最初の一歩が間違っているということでしょう」

 いずれにしても、疑問は残る。なぜ明らかに死んでいる僧の肉体の腐敗がゆっくりとしか進まないのか?

 まわりの環境要因によって腐敗の速度が遅くなったり速くなったりすることがあるにしても、人体の腐敗は通常、その死を宣告されてからおよそ4分後にはすでに始まり、翌日以降にはかなり顕著になる。

 ダライラマはこう言っている。

科学が存在しないと認めたものは、存在しないものとして受け入れるべきだが、科学が単に見つけられないというのなら、それはまったくの別問題だ。

いい例は、意識そのものだ。人間を含めて感覚をもつ生き物は、長いこと意識というものを身をも
って体験してきたわけだが、実際に意識とはなんなのか、その完全な性質、機能についていまだに私たちはよく知らないのだ

Tibetan Monk: A Day in the Life of a Tibetan Buddhist Monk

死後の意識を探して

 トゥクダムの研究者たちは、死後の意識のなんらかの信号を相変わらず探し続けている。そもそも意識とはどんなもので、どこにあるのか?

 意識は量子レベルで起こる、意識はあらゆる場所にある、など新たな説が次々と登場している。

 しかし、トゥクダム・プロジェクトのメンバーでもある、チベット人医師のタウニ・ティドウェルは、これまでのところ、脳以外の場所に意識の兆候は見つかっていないと言う。

 多くのチベット人僧侶が、医学的な知識を得るためにアメリカに渡り、帰国していることは研究の励みになるとティドウェルは言う。

References:Do Tibetan monks die differently than other people? – Big Think / written by konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 41件

コメントを書く

  1. 日本でも、即身仏は腐敗せずにそのままミイラ化するけど、あれは地下にこもる前に徹底的に肉体の脂と水分落としてるって聞いたことある

    チベット僧の食生活と無くなる寸前の体脂肪率と水分とかを調べたり、っていう方向では研究やってないのかな

    • +24
    1. >>1
      僧侶なので普通の殆どの人は粗食だろうし、死ぬまでにおそらく水分取れてないかと。
      人間水さえあれば一週間生きるけど、無かったら2日が限度なんだと。
      まぁそういう事でしょ。

      • 評価
    2. >>1
      おまけに漆の汁飲んだりして腸内細菌減らすようなことまでしてたらしいぞ。
      入滅する箱に入る時点で、既に普通なら生きてるはずが無い状態だと聞いた。

      • +4
  2. 何が謎なのかわからない
    標高4000mのチベットで高地で平均気温が低いと腐敗が進まないのは当たり前の事じゃない?
    冷蔵庫に入れてるようなもんだし
    エベレスト遭難者の遺体が何年経ってもそのままなのと同じじゃないの?

    • +9
    1. >>2
      ダラムサラって街でも多くの例があるらしいけど、標高1,457mだよ。
      あと家の中とエベレスト一緒にしたらイクナイ。

      • +7
    2. >>2
      この街に住む人全員腐らないってオチかもしれない

      • -1
  3. 死ぬ時は決まってるんだろうね
    飲食を制限して死の直前は
    絶食に近いでしょう
    尊敬に値します

    • +4
  4. コメ1と2の両方の要素があれば別におかしい話ではないよな

    • +9
  5. 環境要因の乾燥・低温
    あとは日本の即身仏だと腐敗を止める漆を飲んだって聞いたことがある

    • +10
  6. チベット僧侶とチベット在住の一般人との比較での話なのかな?
    同一の条件・環境で極端に差があれば本物って感じがする

    • +7
  7. 腐敗しない理由は未知のままだけど、猊下の聡明さだけはとてもよく分かる記事

    • +11
  8. 個としての死を迎えた後、細胞は分解酵素を大放出するとか。
    その分解酵素の放出が抑えられてるとかかな?

    • +1
  9. チベットって遺体を土葬しても分解されないから鳥葬するんやろ?
    それくらいモノが腐らない環境ならさもありなんという感じ。

    • +1
  10. 流石に即身仏と同じく生前から身体の水気や油を抜いたり既存の天然の防腐成分を積極的に身体に取り込んでたりって事は無いんじゃないかなぁ、その場合はただの遺体保存法で謎でもなんでもないし…
    遺体保存技術分野ならロシアがトップレベルだったかな、見解があったら読んでみたいな

    • +3
    1. ※12
      むしろ即身仏って思想や技法が、チベット辺りから来たのでは無いかと思う

      • 評価
  11. この調査にコメント出してるのが神経科学者と哲学者?
    もっと別の相応しい分野の医学が有る気がするが

    • -1
  12. 朝、昼、晩ともコンビニ弁当で済ます俺も、いいだけ防腐剤漬けになっちまってるから、たぶんなかなか腐らないんだろうな?

    • +1
    1. ※15
      アパートの一室から腐敗臭で気づかれないところまで行けば
      きっと君もミイラになれる!(夏厳禁)

      • +1
  13. それこそ通夜葬式の為に冷房聞かせて安置されてる遺体だって見方によっては「腐敗が進んでいないように見える」わけだしなぁ

    • -2
    1. >>16
      亡くなって2日後にお葬式でご遺体を布団からお棺に移した時には、圧迫されている部分(背中とか腕とか)には、やはり明確な変化が出ていたよ。
      お顔だけだとほとんど眠っているようだったから、その時に「ああ、亡くなっていたんだな」と実感した。

      • +1
  14. こういう系は「神秘を解明」するんじゃなくて「神秘のまま解明」されて欲しい
    既知の科学で紐解かれても個人的にはあまり面白いと思えない

    • -5
  15. なんで腐敗が進まないかじゃなくてなんで腐敗するかから探らないとダメな気がする

    • -4
  16. あまり変な方向に考えなくても、即身仏と同じことでしょう。事前の食べ物飲み物の工夫、絶食による軟部組織の徹底削減、そして不潔にならない気候と環境、ですね。

    それに仮に脳が機能していたとしても、それと身体が腐敗するしないは関係ないですよ。普通に生きていたとしても、身体の一部の血流が途絶え組織のバリア機能が失われて細菌が増殖すれば、その部分は普通に腐敗します。

    • 評価
  17. 深い瞑想状態になって心拍や呼吸がものすごく緩やかに、悟りの境地みたいになったら、脳波も出なさそう

    • +1
  18. そういや「カラマーゾフの兄弟」に、ロシア正教の長老が亡くなりみなはその遺体からはいい香りが立ち上るだろうと信じてたら、やっぱり腐敗臭が始まったんでがっかりしたというエピソードがあった。どこの宗教でも聖者の遺骸は腐敗を超越するように期待されるんね

    • +3
    1. ※25
      うちのパパンは咽頭癌だったので死ぬ前半年は口から何もものを入れることができず
      点滴だけで栄養補給してたんね
      死後も腐敗臭はしないでアセチレンのような臭いしかしなかった
      人によっては「甘い」「芳香」に分類されるかもしれんです

      • +3
  19. 空気が乾燥しているから。
    風呂に入らなくても
    臭くならなかったよ。

    あとチベッと寒いから。

    • +1
  20. 火葬の是非って議論は、ワンピースのモデルにもなってるねえ

    • 評価
  21. 三途の河を渡る前から腐り切ってる俺最強

    • 評価
    1. ※29
      地獄の一丁目まで逝けずに
      新大久保二丁目に佇んで腐る。

      • 評価
    1. ※30
      まあ、適当なコメするのは即物だろうね。

      • -3
  22. >彼らはこの状態を、死んでいるのではなく、「トゥクダム」(thukdam)という深い瞑想状態にあるという。実際、心臓も呼吸も止まっているが瞑想の姿勢は保たれたままだ。

    つまり病気とかで床についたまま亡くなった僧侶は普通に腐るの?
    そしてそんなに何度もデータが取れるほど瞑想中に死者が出てるの?
    それはそれでやばない?

    • 評価
  23. 文脈的に即身仏の修行に入った人達でしょうね

    • 評価
  24. 科学を否定しないのがいいな
    「ふん。科学には到達できない領域さ」みたいなバキのような論調されるとなんだかなあって気分になる

    • 評価
  25. 素人の考えだが、食べてるものや体内の微生物に差があるのでは?
    遺体に関わる仕事をしてるけど、気温や湿気で腐敗のスピードは変わるし、その変化に影響してるのは微生物だからね

    例えばだけど人の体やタンパク質を分解する微生物が極端に少ないとかありそう

    • 評価
  26. なにがいいって、ちゃんと謎を謎のままにせず解き明かそうとする意思があること
    思考停止を促す宗教は好きになれないけどチベット仏教は尊敬に値する宗教だわ

    • 評価

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