メインコンテンツにスキップ

巨大じゃがいも、米が3倍実る稲。人間の肥満遺伝子を作物に移植し大きく成長させることに成功

記事の本文にスキップ

42件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
Advertisement

 自然災害や疫病の流行はあるものの、世界全体の人口は増え続けている。2050年には97億人に達すると予測されており、食糧不足が懸念されている。

 それだけの人口の食糧を賄うにはどうすればいいか?効率的に作物を増やせばいいのだ。

 ということで新たに考え出されたアイディアは、人間の成長を促進するタンパク質を生成させるFTO遺伝子(肥満遺伝子)を移植し、大きく成長させることだ。

 『Nature Biotechnology』(21年7月22日付)に掲載された研究によると、この方法でじゃがいもは通常よりも大きく、稲は3倍の米を実らせたそうだ。

農地を広めて多くの作物を育てるわけにもいかない

 農作物の収穫を増やすには、単純に農地を広めて、多くの作物を育てればいいじゃん。と思うかもしれないが、そういうわけにもいかない。

 農業から排出される二酸化炭素は、世界の温室効果ガス排出量の10~20%を占める膨大なものだ。また無闇に化学物質を利用すると、病原菌や害虫が耐性を身につけてしまい、効果が薄くなる。さらに肥料は水質汚染の原因にもなる。

 だから単純に農作物の生産高を増やすのではなく、いかに効率的に増やせるかが重要になる。

この画像を大きなサイズで見る
photo by Pixabay

脂肪や肥満に関係する人間の遺伝子を植物に移植

 そこで中国、北京大学をはじめとする研究グループは、人間の成長を促進するタンパク質を作り出す遺伝子を植物に移植するという大胆なアイデアを閃いた。

 人間の成長タンパク質を生成するための遺伝子機構は「FTO」という。人間をはじめとする哺乳類の成長を制御し、脂肪や肥満にも関係しているもので、肥満遺伝子とも呼ばれている。

 その一方、植物にFTO遺伝子に相当するものはない。研究グループによると、植物はたった1つの分子によって全体の生理機能が破壊されてしまわないよう、その成長をかなり厳しく制御していると考えられるのだという。

 ところが、外部のタンパク質にはその監視の目が届かない。そしてFTO遺伝子の場合、驚いたことに生理機能を破壊してしまうどころか、植物を大きく育ててしまうのだ。

ジャガイモが大きく、米が3倍に

 実験として、稲にFTO遺伝子を移植してみたところ、ジャガイモは通常の寄りもの大きく育ち、稲は、3倍もの米を実らせた。

この画像を大きなサイズで見る
人間の成長タンパク質を生成するための遺伝子機構を備えたジャガイモは大きく育った スケールは4cm / image credit:Qiong Yu et. al.

 研究グループによれば、FTO遺伝子を移植された植物は基本的に、早く大きく成長できるようになるそうだ。さらに根を長く張り巡らせ、光合成が増え、旱魃にも強くなる。

この画像を大きなサイズで見る
FTO遺伝子を備えた稲は3倍もの実を実らせた / image credit:Qiong Yu et. al.

 これまでの遺伝子組み換え技術は、その期待に反して、作物の生産高を10%以上増加させることができていなかった。このことを考えると、今回の成果は桁外れのものと言える。

だが、実際に農地で育ててみないことにはわからない

 しかし注意も必要であるようだ。英ジョン・イネス・センターの植物生物学者ロバート・サブロウスキー氏は第三者の立場から、今回発表された大幅な収穫の増加は、通常の数%程度の増加に比べてはるかに高いと説明する。

 しかし、論文で発表されている通りの生産量が、現実の農業で収穫されることは珍しいとも述べている。

 植物は、病気から身を守ったり、悪条件への耐性を発達させたりと、状況に応じて成長の優先順位を変化させる。こうした複数の要因が絡むために、最終的な生産高を予測することは難しいのだそうだ。

 研究の中心人物ジア・グイファン氏も、非常に有効な方法であると述べつつも、まだ研究の初期段階にあることを認めている。

 人間のタンパク質を利用した作物が一般の食卓に並ぶまでには、安全性の評価を含め、まだまだ調べるべきことがあるとのことだ。

References:Researchers Transfer a Human Protein Into Plants to Supersize Them / written by hiroching / edited by parumo

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 42件

コメントを書く

  1. サムネの巨大カボチャ、Stardew Valleyで見たわ

    • +5
  2. マンアフターマンの収穫される食糧生産人間思い出しちゃった
    技術は素晴らしいと思うんだけど

    • +4
  3. それを食べると太る体質になるのでは・・・

    • +22
    1. >>3
      ならあんたは魚食ったら産卵するようになんのか?w

      • -7
      1. >>15
        遺伝子組み換えの場合は水平伝播が起きてる事例があるから、それを懸念してるんだろう。まぁ基本的には生で食べなければ、生産者や加工業者以外でそういうことが起きる可能性は無いけど。

        • +7
        1. ※21
          水平伝播って、GM作物と近縁種の交雑の話?
          食べたら伝搬ってことではないよね?

          • 評価
    2. >>3
      可能性は絶対ないとは言いきれませんよね。他の種から別の種にウイルス等を通じて遺伝子が取り込まれる「遺伝子の水平伝播」は前にカラパイアで記事にありましたし。

      • +6
    3. ※3
      太る体質も何も、人類の大半は消費する以上に食べれば太るという性質をすでに持っている。他コメのように「遺伝子の水平移動」で何を食べても激太りになるのでは、という心配なら、遺伝子組み換え作物と同じレベル。

      • +1
  4. FTO遺伝子を見て海外でも人気ある三菱の車がまず最初に浮かんだ
    3倍大きいものとイモの煮っころがし作るのが大変なので
    ちょっと困るな

    • 評価
  5. 肥満遺伝子が入ってるからって食べて太ったりはしないでしょ?
    とりあえずは救荒作物に役立てられると良いね

    • +4
  6. 人間の肥満遺伝子なら食べても問題ない??

    • 評価
    1. ※9
      「人間をはじめとする哺乳類」ってあるし豚牛にも入ってるんでねえかい

      • +2
  7. 「待てよ……この遺伝子を人間に移植し3倍に成長した巨人兵を作れば……」

    • +4
    1. ※12
      ウエストだけが3倍に成長した巨人兵「ポテトおいしいね~」

      • +13
  8. 諸星大二郎の「バイオの黙示録」が思い浮かんだ。

    • +3
  9. アラスカ農業で光の触媒を研究した方が効率的

    • 評価
  10. 動物から植物にまたいでも同じように機能する遺伝子もあるんだねぇ
    全体としちゃそう簡単にはいかない場合の方が多いんだろうけど

    • +7
  11. ややこしいんだけど
    人間の肥満遺伝子ってどういうこと?
    人間の遺伝子も入ってるってこと?

    そうなると、共食いってことになり得るのか?

    • -2
    1. ※17
      同じ哺乳類の豚どころか鶏や魚にも米にもミカンにも元々人と共通の遺伝子入ってるから安心して共食いしとけ

      • +10
  12. これも価値のある研究だとは思うけど、世界的な異常気象の中でちゃんと採れるとは思えないな。今、野菜めっちゃ高いよね。そもそも育たないんだよ。
    それと並行して廃棄をなくそうよ…見た目が悪いだけの農作物、どれだけ捨ててることか。

    • +4
  13. キラートマトが先かスカイネットが先か…。

    • +4
  14. 「肥満遺伝子」って言うから成長促進因子のようなタンパク系のホルモンみたいなものを想像したけど、原文読んだら、「RNA demethylation」だって。RNAのメチル化はよくわからないけど、翻訳調節や、あるいはmRNAの寿命とかに関係するのかな?
    教えて 

    いずれにしても、この遺伝子組み込んだ植物食べたからと言って成長ホルモン摂取するみたいな悪影響はなさそうだね。

    • 評価
  15. >じゃがいもは通常よりも大きく、稲は3倍の米を実らせた
    農業の事はよく知らないけど、作物が大きくなって収量が増えれば、
    その分土壌が痩せちゃうんじゃないのかな。
    肥料くわえるだけで回復するって単純なものでもないような気がするけど。

    • +6
    1. >>26
      土地は痩せる。化学肥料使って一時的に増やせても、その後、土地が枯れるから、水耕栽培でやればいいのかね。

      • +3
  16. 眼球をキョロキョロ動かすカボチャとか、触手をウゴウゴさせる大根とか、口をパクパクさせて奇声をあげるトマトが出来る訳じゃないんだから、

    そんなに心配いらないと思う。

    • +2
  17. 味はどうなの?大きくなりすぎた作物って大抵は美味しくないよね。

    • +7
  18. まあ水平伝播を気にしてもしょうがないと思うけどね
    そんなに頻繁に起きるものなら、そのこと自体は普通のことで生物史においては必須なものであった可能性すらある

    • +1
  19. 日本のお米に関しては1粒から500粒前後も収穫できるので
    わざわざ人間の遺伝子移植した稲を新規に作付けする必要無いよな
    現状でも画像のと同等かそれ以上収穫できてる
    理論上の収穫量が増えるのは良いけど実際はその分だけ土地が疲弊するから
    色々と克服しないといけない問題は多いだろうね

    • +1
  20. 肥満遺伝子っていうと情け容赦のない強力なものだと知ってるから、その分納得してしまった。

    • +1
  21. 人口増加すごいね
    1950年 今70過ぎの人が生まれた時は25億人しかいなかったのに

    • +5
  22. 二毛作の土地で作付すれば、更に2倍増えるよ

    • 評価
  23. 肥満っていうと人の場合脂肪が多いって事なんだけど
    野菜の場合何が多くなるんだろ。大きくても美味しくなければ受けないだろうし。

    • +1
  24. 稲なら「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の言葉の通り倒伏しやすくなって台風で全滅しそう

    • +1
  25. 稲に関しては株が大きくなる(穂が増える)上手な育て方読んだことあるぞ
    米に限らずまず廃棄量を減らそうよ

    • +1
  26. 「実験として、稲にFTO遺伝子を移植してみたところ」、ジャガイモと稲に
    影響を及ぼすとはホラー

    • 評価
  27. 植物を作り替えるより、遺伝子組換え技術で人類が小さくなるほうが食糧自給率はじめいろんなことに効果的。

    • +1
  28. というか単に土地の栄養食い尽くして不毛の大地にするのでは?

    • +2
  29. そのうち1粒の米を粉砕してご飯にする様な時代が来るのかな。
    逆に人間が小さくなってもいいのかも?

    • 評価

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

サイエンス&テクノロジー

サイエンス&テクノロジーについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

植物・菌類・微生物

植物・菌類・微生物についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。