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動物界では近親交配がタブーではない。あえて避けずに行われているその理由とは?

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(著) (編集)

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 人間社会においては近親者の交わりはタブー視されている。その理由は、道徳的なことはもちろん、生物学的にも裏付けがある。遺伝的な欠陥が生じるリスクが上がるため、種の存続にとっては望ましくないからだ。

 だが動物界ではそうではないらしい。多くの種が近親交配を避けないことが、過去40年分の関連研究のレビューで明らかになったという。この研究は『Nature』(5月3日付)に掲載された。

なぜ動物たちは近親交配を避けないのか?

 人間的な考えだと避けるべきと思われる近親交配だが、スウェーデン、ストックホルム大学の動物学者ライッサ・デ・ブール氏によると、逆にそれが望ましいような状況もあるという。

 一番わかりやすいのは、ほかに子供をつくる相手がいない場合だ。赤の他人を見つけることが困難な状況では、たとえ相手が血縁者であっても、遺伝子を残せないよりマシだという考えだ。

 ほかにも近親交配が望ましい状況はある。それはある動物がとにかく自分の遺伝子をできるだけ多く残したいと考えているようなときだ。

 この場合、近親交配は素晴らしい手段となる。血縁者とは多くの遺伝子が共有されているために、それだけ自分の遺伝子を子供に伝えることができるからだ。

 まだできるだけエネルギーの消費を抑えたいときにも有効だ。

 たとえば近親交配を避けろというのなら、血縁者と非血縁者を区別する方法を身につけねばならない。

 動物界では省エネはとても大切なことなので、学習コストを支払ってまで近親交配を避けることが必ずしも最高の戦略になるとは限らない。

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photo by Pixabay

動物界における近親交配のリスクとベネフィット

 生物学者や動物学者たちは、ある動物の行動を説明するために、数理モデルを駆使してさまざまな状況におけるコスト(費用)とベネフィット(利益)を分析してきた。

 近親交配の文脈でいうなら、たとえば珍しい遺伝病を子供に伝えてしまうリスクがコストで、より効率的に遺伝子を残せることがベネフィット(利益)だ。

 そうした分析からは生息環境や個体数といった要因を考慮したとしても、許容範囲内の近親交配は動物にとってもっとも成功する戦略であるという結論が得られている。

 この仮説は、実験によってもさまざまな種で検証されている。そうした実験では、動物に血縁者と非血縁者とでどちらと交尾するか選ばせ、その選択に何らかの傾向や偏りがあるかを観察する。

 ただし、動物界全体を見たときに近親交配が忌避されるような傾向があるかどうかといった視点がこれまではなかった。今回デ・ブール氏らが明らかにしようとしたのはその点だ。

 そして過去40年で行われた139本の研究をレビューしたところ、一般に動物が血縁者と非血縁者を区別しているという証拠は得られなかったとのことだ。

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photo by Pixabay

多くの種で近親交配が普通に行われていることを確認

 レビューされた研究であらゆる動物種が扱われているわけではないが、それでもヘビ・クモ・魚・鳥、さらには齧歯類をはじめとする哺乳類など88種の動物が観察されている。

 そうした139本の研究のうち、近親交配が避けられていることが確認されたのはわずか17%のみだった。

 ただし、これらの研究はコントロールされた実験環境において行われたものだ。自然界に生きる動物たちは、そうした環境とはまったく違った状況や困難に直面する。そのせいで交配相手の選択が変わってきたとしてもおかしくはないという。

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photo by Pixabay

遺伝的多様性を重視するか?子孫を残すことのみを重視するか?

 今日、絶滅危惧種の個体数を増やすことを目的とした保全活動は、非血縁者と交配させて遺伝的多様性を増やすことが念頭に置かれている。

 だが、今回の研究結果は、そのことだけにこだわるべきではない可能性を示唆していると、ブール氏は説明する。

 遺伝的多様性といった意味ではあいにくかもしれないが、少なくとも次の世代を残すことはできるとのことだ。

Top image:photo by Pixabay /References:Incest isn’t a taboo in the animal kingdom – new study/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 53件

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  1. そうは言っても、ハプスブルク家は滅びたよね…。

    • +10
    1. ※2
      中世以来の他の貴族が軒並み没落した後、第一次大戦まで残ったんだから、むしろハプスブルグ家は「滅びなかった」方だと思うけど。

      • +6
    2. ※2
      王侯だから生き残れた
      あの時代庶民がやばい身体やら知的にアレで生まれたら
      子孫残す前段階で死んでる

      • +2
    3. >>2
      だから場合による、と書いてあるわけだ。

      • +1
    4. >>2
      アムールトラも近親交配を続けるから問題視されてるわけであって
      別に続けなければ問題ないと書いてあるんだけど読めないのかね?

      • +1
  2. 人間はこの星の生物ではないから関係ないよね

    • -11
  3. ヒトの場合長く生きすぎなのと基本的に散らばらない生活様態のせいで、
    問題が起きるほど濃くなっていっちゃうんだろうな。

    • +12
  4. そこまでヒステリックに忌避するほどのもんじゃないだけだろ
    奇形だって言うほど産まれないよ誤差誤差
    ただ人間は近親しなくても相手は選べるから遺伝子多様性のが重要だよね

    • +1
    1. >>7
      要は滅びそうだったり、周りに遺伝子異常な相手しかいないような状況なら、近親交配でもしなくちゃならないって話よね。

      • 評価
  5. 近親と言っても姉弟世代でのものと親子間のものではだいぶ違う気がする
    何ならグループ意識の強い動物ならイトコぐらいの距離感が都合がいいかもしれない

    • +3
      1. ※18
        違うゾ
        親子間は1親等だが兄弟姉妹間は2親等だ
        遺伝子型も親子間のほうが偏りが強くなる

        • +2
      2. ※18
        親子でも、兄弟姉妹でも
        血縁一致度が1/2という点では確かに同一だ。が、
        親子は必ず半分の遺伝子が一致し
        それ以上でも以下でもない(分散ゼロ)のに対し、
        兄弟姉妹だと 父方・母方それぞれの祖父母の
        どの染色体を受け継ぐかランダムで
        平均すると「確率的には一致度1/2になるが
        一定幅の分散がある」状態になる。

        遺伝子の一致度が高い兄妹・姉弟だと
        親子以上に血が濃くなるが、
        遺伝子の一致度が低い兄妹・姉弟だと
        親子ほどの近親交配でもなくなるというバラつきがある。

        • +7
  6. 人間だって遺伝子が遠いほど魅力的なフェロモンを感じるってだけだし
    野生動物みたく過酷なサバイバル的状況下で発情期が起きるんだとしたら種の保存本能へのブレーキは人間も変わらなくなるんじゃねえの

    • -1
  7. あえて近親交配してるんじゃなく、人間があえて近親交配を避けてるんだよ。
    一人産むのも育てるのも莫大なコストがかかる人間と、一度に何匹~何十匹と生まれる上に育てるコストは多くても育つまでの食糧だけな他の動物を一緒にするな

    • -4
  8. 近親交配というのは人間でも閉鎖された地域では結構あったわけでそれほど驚く話ではないが、これも悪い言葉で言えば、当たりはずれの差が大きすぎると言う面があって、当たりだと能力的に高いけど、ハズレだと能力的に落ちる面がある。
    人間みたいに医療や教育の状況とかがあればまだしも動物には当然ないし、種として生き残る為には能力の低いものは淘汰していかないといけないからこういう意味でフェロモンというか近親交配を避けようとするシステムがなかったのでは?

    • +9
  9. 連続して近親交配をするかどうかも重要な気がするね
    単発なら費用と利益で収支がとれるけど、複数回では費用が嵩むとか
    なんにせよ面白い研究だ

    • +7
  10. 人間であっても近親交配が問題だったのは貴族階級が何世代も重ねてやっていたり、閉鎖された狭い地域で少人数で暮らしていたりとちょっと特殊な場合だしね。近親交配=即問題発生ってほどシビアなものでもないし。

    • +5
  11. 今は知らないけど、昔学生の頃、文化人類学の講義で使っていた教科書(講師も執筆者の一人)のインセスト・タブー(近親相姦の禁忌)の項目に近親相姦が遺伝的な不利益をもたらすと言う科学的根拠は無い旨の記述があって、とても不思議に思った。
    不利となる現象がないのに人類のどの集団も近親婚をタブーにしてるから考察の対象になるみたいな話だった。今だにオレの聞き間違い読み間違いだったのではと思う。

    • +6
    1. ※17
      人類学のインセストタブーは、
      「集団間の交換」を維持するための手段として外部との血縁を作ろう
      というものじゃなかったっけ。
      基本的に人類の発展は「分業」で成り立っていて、
      それを成立させるためには集団間での交流が必須になるから。

      • +6
    2. ※17 ※24
      それは多分、レヴィ・ストロースとか交差いとこ婚に関する話だと思う。
      文化人類学者が調査したところ、世界中の近親婚タブーには生物学的な理由(遺伝子の近さ)とは関係無く決まってるタブーが多くあった。分析の結果、それは対象者が社会のルール上どの集団・一族に属してるかによって決まっていた。人間が近親婚を禁止するのは社会的な取り決めが基本的な理由だ、という調査結果です。

      • +5
  12. 雄と雌では近親交配忌避に差がありそうな気もするけどね。
    例えば父親は間男がいたりする可能性があるから娘は赤の他人かもしれないのでとにかくはらませたいとか。
    それに対して娘側から見ると父親がよっぽど価値ある雄の場合以外は近交弱勢のリスクのほうが高い可能性がある。

    • -10
  13. 近親交配で遺伝子疾患が多発するのは、絶滅を避けるための進化加速機能だと思ってる。
    一か八かで大きな変化を試みて起死回生を狙う遺伝子の戦略かな、と。

    • -2
  14. 友人に平家の直系がいるのだが
    平家の血を絶やさぬべく近親者での結婚ばかりで
    もの凄く頭のキレるタイプか色々とヤバいタイプかの両極端ばかり生まれてたらしい
    (彼女の祖父祖母の代くらいから
    外の血を入れるようになったらしい)

    ヤバいタイプは文字通り日陰者として
    屋敷にずっと引きこもらせていたそう。

    因みにその友人。もの凄く頭がキレるし
    子供の頃は神童と呼ばれてたそう

    • 評価
    1. ※21
      競馬のインブリーディングみたいだな

      • +2
  15. ハゲの遺伝子が消えないのと同じで多数の生死を分けるほどの影響が無いから淘汰や最適化がされないだけだと思う…

    • +2
  16. これ文化人類学者がいろんな部族を回って確認したところ、
    どの部族間でも近親交配はタブーになってたって興味深いレポートがある。

    • +7
  17. そもそも生物としての生態で違ってくると思う。虫や小動物は寿命が短い大量生産大量消費型の生き物だから生まれれば産み繋いでいけば良いが、人間はそういうわけにはいかない。近親交配だと知能的、精神的疾患率が高まると良くいうよね?それでは生き残れないから駄目なのではないだろうか。妊娠期間が長く寿命の長い象ってどうなのか気になった。

    • +6
  18. あれでも親子間はかなりまずかったはず
    何らかの影響が出るのが50%ぐらいじゃなかった?

    • +1
  19. 近親でのなにが忌避されるのは生き物的に不具合が出るのもそうだけど ヒトの場合は社会を壊す一因になるのが大きいのでは
    子が父から母を、母から父を奪う。他いろんな組合せで、奪う、独占するという場面が発生、争いがおこり小さな社会 家庭が壊れる。上位の社会にも影響が出る。こりゃいかんとルールができる。
    参考資料なし 漠然と思ってたことです

    • +3
    1. >>29
      というか、近親姦ってほぼ間違いなく親から子への性的虐待でしかありえないよね
      (あとはきょうだい間の虐待?)

      未成年じゃないとか合意があったとか関係ないよ
      家族間って閉鎖的で基本的に権力が均等じゃないし
      相手に逆らったら生活ができなくなるとかのリスクがあるんだから
      29の言うような家庭崩壊を恐れて、母親に助けを求められない娘もいるんだろうと思う

      今回は動物の話だから関係ないけど、永遠にタブー中のタブーにしておくべき
      万が一この記事に背中を押されたような気分になったペド親は100回去勢してこい

      • +4
  20. ゴリラってお互いに兄妹だと認識した相手とは夫婦にならないとか聞いたことあるな

    • +1
  21. 大量に生んでそれだけ淘汰される、という生存戦略環境なら相手を選んでいられないから有効だろう。人間の場合は社会や倫理の問題があるから、純粋に生物としての研究は難しいなあ。

    • +3
  22. なんかドクターストーン思い出したな
    分かってくれる人居る?

    • 評価
  23. ミクロネシアのとある島ピンゲラップ島は全色盲の人が人口の1割を占めるという。その昔台風で人口が激減し、近親婚が避けられなかった結果、このユニークな遺伝形質が島ではふつうになったらしい。おそらく桿体細胞だけで世界を見るため目が敏感過ぎて昼は出歩けないが夜目は効くので漁は巧みだとかいう。近親婚は遺伝形質を方向づけるには有利なようだ。

    • +2
  24. 同じ両親の兄弟姉妹でも一卵性双生児でない限り一程度遺伝子がランダムに組み合わさって違う遺伝子になるように、遺伝子側の戦略としてもある程度の近親交配は織り込み済みなのだろう。

    • +1
  25. 人の異性パートナー選びの好みとして、自分と遺伝子が近い近親者は避ける傾向にあるが、逆にあまり離れすぎていても避ける傾向にあると言う研究があった。
    実際に世の中を見るとそうなのかもしれないし、それで広く人類全体で見た場合の遺伝子の多様性が維持される面もあるんだろう。

    • +2
    1. ※43
      そうそれ
      結構有名だよね
      私も書いたんだけど反映されなかった

      • 評価
  26. 文化人類学では村落や部族間の同盟関係を保つために女性を交換するという習俗が原始的な社会に遍在していて、それが近親婚の忌避につながったという人類特有の理由を見いだしてるな

    • +1
  27. いや自然界でも可能な限りは避けてるぞ

    • 評価
  28. 学生時代に人間がなぜ近親交配をタブーにしたか授業で議論したんだけど、
    ちょっと面白い説が出てなるほどなーって思った。
    エジプト王家みたいに宗教的な物や権力が絡むケースは省いて、
    ある程度文明が発達した社会で近親交配に走るのって社会的な「負け犬」だって
    外に出れば異なる血の異性がいくらでもいるのに敢えて近親に走るのは、
    魅力も知性も力も財力も無くて他の異性に見向きもされない、または忌避されるような個体
    異性をゲットする事も出来ない無能や異常者が圧倒的に多い
    そんな血をどんどん濃くしていくのはその血統にも社会にも不利益になる
    だから近親婚がタブーになったんじゃないかって

    • +4
    1. >>51
      「異なる血の異性」をヨシ!とする前提ってどっから来るんだろうね
      逆さにすると「自分と似た遺伝子を持ち自分の特性を残せる可能性がより高くなる近親者がいるのにあえて遠い血に走るのは近親者に見向きもされない無能の証拠」とも言えそうだなと思って

      • +1
    2. >>51
      異なる血の異性と子を作るそしてそれが周りから反対されない場合って
      自分たちの一族とその異性の一族とに
      社会的なコネクションが出来ることでもあるもんな

      • +3
  29. 遺伝子の多様性は確保したいが選り好みしてても滅ぶだけだから近場で最低限種の保存を図るっていう生存戦略なんだろう
    植物の自家受精とかだともうクローンでいいやっていう徹底振りがイカす

    • +2
    1. ※57
      自家受精は、減数分裂を経た花粉と胚嚢が組み合わさって
      新たなパターンが出来上がるから、クローンではない。

      • +2
  30. しかし人間は、「種を残さない」という選択もできるから、どんなに切羽詰まっても近親交配はしない人が殆どだと思う
    そもそも種を残す意義があるのかって話になるんだし

    • +2
    1. ※59
      中絶理由の何割かが近親者による暴行だというからね

      • +3
  31. 聖書のロトはソドムから娘二人と脱出したあと洞窟で暮らす。ここで娘たちは父を酔わせ近親相姦し、男子を1人ずつ生んだ。長女の子は「モアブ(父親より)」と名付けられモアブ人の祖となり、また、次女の子は「ベン・アミ(私の肉親の子)」と名付けられ後にアンモンの人々の祖となった。

    • 評価
  32. 人間が近親相姦をタブー視したのは、単純に気持ち悪いからだと思う。家族を異性として認識するとか、頭おかしいわ。

    • +3
  33. >長命の種だと、健康知能に害あるから
    >近親交配を忌避る率がたかいのでは

    リンク先記事で、イギリスの調査だと
    ”そうした極端な関係により生まれた子供は、有病率が異常に高く、社会全体と比較しても44%の確率で肺機能や生殖能力の低下、認知機能および全ての疾患のリスクが高いことが判明した。”
    —イギリスでは13000人以上が極端な近親交配の可能性。それが健康に及ぼす影響についても調査(オーストラリア研究)
    2019年09月13日—

    • +1
  34. 自然淘汰が働いてる自然界でなら、近親交配での潜性遺伝子による異常個体は早々に排除されるからさほど問題にならないけど、そういった異常個体の排除が起こらない人間社会の場合は異常個体が排除されないままさらに交配し続けるので目に見えて弊害になる、というそれだけの理由じゃないの?

    • 評価

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