
だが不思議なのはそれほどまでに硬い歯を持ちながら、それを支えているのは柔軟で柔らかい組織だ。構造的に強いとは思えないのに、岩をかじっても大丈夫なのは何故なのか?
米ノースウェスタン大学をはじめとする研究グループが、その秘密を調べたところ、歯の組織から、希少な鉄鉱物が発見されたという。生物からその鉱物が見つかったのは史上初めてのことであるという。
ヒザラガイの一種の歯から希少な鉄鉱物
『PNAS』(6月8日付)に掲載された研究で調べられたのは、ヒザラガイの中でも最大の仲間「オオバンヒザラガイ(Cryptochiton stelleri)」だ。ヒザラガイは軟体動物の一群、多板綱で扁平な体で、背面に一列に並んだ8枚の殻を持っている。
オオバンヒザラガイの大きさは36センチほどで、「さすらいのミートローフ」 なんて愛称まであるキモかわいいヤツだ。

photo by iStock
その歯を透過電子顕微鏡やCTで分析してみたところ発見されたのが、「サンタバーバライト(santabarbaraite)」という希少な鉄鉱物だ。

オオバンヒザラガイの歯舌。硬く丈夫な歯がずらりと並んでいる
(image by:Northwestern University)
生物からこの鉄鋼物が発見されたのは初めて
「これまで地質学的試料の中にごく少量しか見つかっていないもので、生物から発見されたのは初めてのことです」と、研究グループの1人であるデルク・ジョースター氏は語る。サンタバーバライトが含まれていたのは、硬い歯と柔らかい歯舌(ヤスリのような舌に似た器官)の膜をつなぎ合わせている長い中空構造の中だ。人間で言えば、歯茎に突き刺さっている歯根にあたる。

電子顕微鏡のスキャン画像 image by:Northwestern University
その部分は小さなナノ粒子で構成された頑丈な素材で、人間の骨のように生体高分子でつくられた繊維性マトリックスとなっている。ジョースター氏によると、サンタバーバライトは水分を多く含んでいるために、密度が低くても非常に頑丈なのだという。
ヒザラガイがそれほど重量を増加させることなく歯を頑丈にできたのは、このためだと考えられるそうだ。

オオバンヒザラガイの口 image by:Northwestern Universit
ヒラガイの素材を再現
この素材を再現した3Dプリンター用のインクまで開発されている。それは鉄とリン酸イオンをヒザラガイから抽出した生体ポリマーに混ぜたもの。強力かつ粘性の高い素材だが、プリントして乾かせば硬い物質に仕上がる。
image by:Northwestern University
ジョースター氏はヒザラガイに長い間魅せられてきたという。きわめて硬い物質を柔らかい組織に結合するのは、現代の製造業においても難題とされる。「だから私たちはヒザラガイのような生物を調べています。数百万年という時間をかけて自然が一体どのようにしてそれを成し遂げたのか理解するためにです」
Youtube動画にはオオバンヒザラガイを堪能できる映像が上がっているが、いろんな意味で興味深いがグロっぽくもあるので、興味のある人は見てみよう。
Top image:photo by iStock / References:Rare Mineral Discovered in a Living Organism for the First Time/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1.
2.
3. 匿名処理班
へぇ〜そんな貝おるんや。からのジョースターって苗字の人実在するんや!
4. 匿名処理班
海辺にあるアワビっぽいやつのお仲間か
5. 匿名処理班
貝おいしそう…
と思ってしまった
6. 匿名処理班
おお!サンタバーバライトが!
すまん!知らん!
7. 匿名処理班
ジョースターさん!?
8. 匿名処理班
カラパイアにのっているせいで卑猥なものに見えてくる…
娘フラワー
9. 匿名処理班
ミネラルは生体金属結晶
10.
11. 匿名処理班
で、味は?
12. 匿名処理班
※5
ヒザラガイならバター焼きで食ったことあるけど実際に美味いぞ
美味いのに流通してないのは岩からはがすのが面倒だから
13. 匿名処理班
歯よりも殻の柔らかさが気になる
14. 匿名処理班
動画見たら人間の舌みたいなのがうごめいてて変な声出た
15. 匿名処理班
※11
日本の海岸にいるさほど大きくない普通のヒザラガイは、殻を剥くのがめっちゃキツいが、美味いらしい
が、アレルギーの原因だったりするらしいので注意
このでかいサイズの味はわからん
16. 匿名処理班
ミートローフ先輩、夢に出て来そうです…
17. 匿名処理班
おぉ…
肉の塊が動いてるみたい…
知らずに見つけたらドン引きそうだわ…
18. 匿名処理班
ミートローフさんかわいいじゃないか!
なんか猫っぽい!
19. 匿名処理班
この手の貝はだいたいアワビっぽい味。昔はおやつ感覚で食べてたよ。ここまでデカイのはいませんでしたが
20. 匿名処理班
「さすらいのミートローフ」ってネーミングが素敵
21. 匿名処理班
ミートローフからのスタンド使いで草
22. 匿名処理班
かなり娘フラワー
23. 匿名処理班
ああいう平べったい貝がガッチリ岩にくっついていられる仕組みも気になる
24. 匿名処理班
>>23
足糸っていう糸状のタンパク質を分泌してるのです
岩だろうが鉄だろうが木だろうがガッチリとくっつくので外来種のムラサキイガイとかの除去がそりゃもう大変
数が多いと死骸による水質汚濁はヤバいし用水路は詰まらせるしって感じなのにガンガンハンマーとかで叩かないと剥がれないのよ
おまけに素手で剥がそうとすると紙で手を切るみたいに殻で手がズタズタになる
凄いね!貝類!!
25. 匿名処理班
>>5
ヒザラガイって名前からして初めて見たからとりあえずググったらサジェストにまず 食べ方 って出て来てびびったんですが
もしかして多くの皆さんが美味しそうだと見てらっしゃる……?
何この生き物怖!と思った自分が少数派なのか……
26. 匿名処理班
技術的に再現できたら、研磨の世界が変わりそうだね。
27. 匿名処理班
ウニ、アワビもそうだが、これを食べようと思いついた人はよっぽど腹が減ってたんだろうか
28. 匿名処理班
>>8
同じ事思ってる人がいて安心した。
29. 匿名処理班
貝自体はきっとヒトデやバフンウニみたいな触り心地だと思うんだ
30. 匿名処理班
>>24
足糸じゃ移動できなくなるじゃないか。知ったかぶりはやめろ。
31. 匿名処理班
BMネクタールを思い出した
32. 匿名処理班
意外と美味しいぞ
33. 匿名処理班
この鉱石は自分で分泌して作ってるのかな
34. 匿名処理班
ファスナーやん!!!!
35. 匿名処理班
リンクのwikiみたらサンタバーライト自体は鉄のリン酸塩鉱物らしいので、材料は自力で集められそう
構造はどう作ってるのかねぇ
36. 匿名処理班
※15
味噌汁の具だねイイ出汁出るぞ
37. 匿名処理班
レアアースを持つ貝よりも「さすらいのミートローフ」のインパクトの強さよ
38. 匿名処理班
ちなみに日本のヒザラガイの歯も磁鉄鉱が含まれてて、磁石を近づけるとくっつく
39. 匿名処理班
さすらいのミートローフ!海に戻してあげたあと、ポンポンしてる辺りに、ミートローフへの愛を感じた。
40. 匿名処理班
酢飯に乗せたい