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人間の体が突然燃える「人体自然発火現象」の謎を科学的に検証する

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人体自然発火現象の謎/iStock
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 外的な熱源がないのに人体が勝手に発火し、燃え上がることなどあるのだろうか。この不可解な現象は長いこと議論されてきた謎のひとつだ。

 だが、過去300年の間に、200件以上の報告例があるのも事実だ。この現象は、「人体自然発火現象(SHC)」と呼ばれていて、いきなり人体の中から発火して死をもたらすという。

 数百件にものぼる報告記録は、似たようなパターンで起こっていることを示している。

人体自然発火現象の事例

 犠牲者はひとり暮らしの高齢者が多く、たいてい自分の家の中で死んでいる。だが、不思議なことに手や足先など体の先端部分は燃えずに残ることが多い。

 頭部や上半身は、本人と見分けがつかないくらい黒焦げになってしまうのに、内臓はまるで無傷という珍しいケースもある。

 犠牲者が亡くなっていた部屋は、家具や壁に脂の残滓が付着していた以外、ほとんど燃えていないことが多い。さらに、いぶしたような甘いにおいが残っていることもあるという。

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1951 年にフロリダ州で自然発火したとされる女性の彼女のアパートで処理を行う消防士たち / image credit:Youtube/Moonlit Sapphire

人体自然発火現象の歴史

 人体自然発火現象は、すでに中世の文献に登場するほど古くからある。聖書の中にも、この現象を示しているくだりがいくつかあると信じる者さえいる。

 1641年、デンマークの医師トーマス・バルソリン(1616~1680)が、奇妙な医学現象を集めた自著『Historiarum Anatomicarum Rariorum』の中で、ポロヌス・ヴォルスティウスの死について書いている。

 ヴォルスティウスはイタリアの騎士だが、1470年にイタリア、ミラノにある自宅で強いワインを飲んだ後で、突然、口から炎を吐き出し始め、全身が炎に包まれたという。これが、人体自然発火が報告された史上初の記録だと考えられている。

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image by:public domain

 1673年、フランスの作家、ジョナス・デュポンは、人体自然発火についての症例と研究をまとめた『De Incendiis Corporis Humani Spontaneis』を出版した。

 フランスでの有名な事件は1725年にさかのぼる。パリにある宿屋の主人が、煙のにおいに目を覚ますと、妻のニコール・ミレーの体が燃えて灰になっていた。だが、彼女が寝ていた寝床の藁は、まったく燃えていなかったという。

 慢性的なアルコール中毒だったニコールの体で残っていたのは、頭蓋骨、背骨が数本、下腿の骨だけだったという。周囲にあった木材の類は、まったく燃えていなかった。結局、夫が殺人罪で有罪になった。

 ニコールの遺体が発見されたとき、その宿屋にはクロード=ニコラス・ル・キャット博士という外科医が泊まっていた。

 彼の証言のおかげもあって、抗告審判で裁判官は、ニコールの死因は「人体自然発火」だったという弁護を認めた。のちに、ニコールの死は”神の思し召しの結果”ということになった。

 19世紀には、有名なイギリスの作家、チャールズ・ディケンズが『荒涼館』の中で、登場人物のひとりを殺すのに人体自然発火現象を利用したため、この現象が世間に知られるようになった。

 批評家は、ありえない現象を正当化しようとしているとして、ディケンズを批判したが、彼は当時、記録されていた30の事例を示す現実の研究があることを指摘したという。

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チャールズ・ディケンズの『荒涼館』の中の人体自然発火のイラスト / image by:public domain

人体自然発火現象のおもな共通点

 1938年、ブリティッシュ・メディカルジャーナルで、人体自然発火現象の話題が取り上げられたとき、L・A・ペリーは記事の中で1823年に出版された『法医学』の本を引用した。それによると、人体自然発火現象にはいくつかの共通の特徴があるという。

・犠牲者は慢性アルコール中毒。
・犠牲者は年配女性が多い。
・体から自然発火しているが、火のついたものに接触したケースもあった。
・手や足先は燃えずに残っている。
・遺体に触れていた燃えやすいものには、ほとんどダメージがない。
・体が燃えた後には、脂のようなものや強いにおいのする灰が残り、あたりに不快な空気が漂う。

 アルコール中毒が、人体自然発火に大きく関与しているようにみえる。

 ヴィクトリア時代には、アルコール中毒がSHCの原因の一部だと考えた医師や作家者もいた。

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iStock

科学的に有力な仮説:ロウソク効果

 アルコール中毒以外にも、人体自然発火の原因についてはいくつか説がある。燃えやすい体脂肪、多量のアセトン、静電気、メタンガス、バクテリア、ストレス、果ては神の介入などなど。

 科学的にもっとも支持されている説は、ロウソク効果だ。犠牲者の体がロウソクのような状態になって燃えたというもの。

 ロウソクは、中央の芯が燃えやすい脂肪酸でできたロウで覆われている。芯に火がつくと、脂肪分の多いロウを燃料として燃え続ける。

 この場合、人間の体脂肪が可燃性物質、つまりロウで、犠牲者の衣服や髪が芯にあたる。例えば、タバコの火が衣服についたとすると、皮膚の表面が焦げて、皮下の脂肪が露出する。

 熱で脂肪が溶けて衣服に吸収されると、ロウのような役目を果たして、芯が燃え続けることになる。燃料になるものがそこにある限り、火は燃え続ける。

 この説を支持する者は、犠牲者の体が燃えているのに、まわりのものがほとんど燃えない理由の説明にもなるといっている。

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ロウソク効果説の3つの段階 image by:arzbmad16 / Slideshare

その他科学的仮説

 生物学教授のブライアン・J・フォードは、人体自然発火の原因は多量のアセトンではないかという。

人はなんらかの病気になると、体内に自然にアセトンが増えることがある。アセトンは非常に燃えやすい化学物質だ。アセトンに浸した豚肉に火をつけてみると、焼夷弾のように爆発的に燃えあがるという。

ほかの多くの疾病と同様、アルコール中毒がこのアセトンの生成を引き起こした可能性がある。健康状態の悪い人の体内で多量のアセトンが作られ、それが脂肪組織に蓄積して、静電気やタバコなどによって引火した可能性がある

 考慮しなくてはならないのは、人体自然発火のほとんどは、屋内で、ひとりでいるとき、そして近くになんらかの熱源があるときに起こっているという事実だ。

 町中の通りの真ん中で、この現象が起きたという事例はほとんど知られていない。さらに、これは人間だけに見られる現象で、動物に起こったケースはない。

 ロウソク効果は、燃えている最中に犠牲者がもがき苦しんだりしない理由の説明にはならないようだ。また。周囲の家具などが炎の影響を受けない理由も、十分に説明できていない。

 人体を完全に灰にするには、摂氏1600度もの高温が必要だという。火葬にするだけなら、980℃ほどでいいらしい。

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iStock

現代の人体自然発火現象の事例

 人体自然発火は昔の話ではなく、現代でも起こっている。2010年、アイルランドでの例だ。

 76歳のマイケル・ファハティの焼死体が見つかったのは、彼のアパートの部屋で、暖炉に頭を向けて倒れていた。

 例のごとく、床や天井、そのほか室内はどこも燃えていなかった。検死官は、ファハティの死因は人体自然発火だと断定した。

 2017年には、70歳の男性がロンドンの通りの真ん中で突然炎に包まれた。消防署の調べでは、促進剤の類の痕跡はなにも見つからなかったという。

 説明がつかず、この男性の死は不明として扱われた。これも人体自然発火の一例なのだろうか?

 人体には、この地球上のさまざまな生き物の中で人間をユニークな存在にしている特徴がたくさんあり、私たち自身にもまだよくわかっていない人間の側面があると多くが信じている。そんな特徴のひとつが、いまだ謎だらけの人体自然発火という現象なのかもしれない。

References:Spontaneous Human Combustion: A Burning Mystery | Ancient Origins/ written by konohazuku / edited by parumo

追記(2020/11/03)本文を修正して再送します。

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この記事へのコメント 74件

コメントを書く

  1. 現代の人体自然発火現象の事例の部分、ミスなのか2011って書きかけで止まってる。
    もしやここを担当した人が自然発火したのか

    • +8
  2. 「déjà vu」の体験記事だね。
    捻りが効いてる。

    • 評価
  3. 小学校時代に何かの本で読んで大層怖かったなあ、その本ではナイロン生地に溜まった静電気の仕業では?という考察もあった。

    • +2
    1. >>5
      小学生時代のとき好きな人の前でよく自然発火してたわ

      • +4
  4. 23:00 現在、ページ内で相当重複するパートが存在しています。

    • 評価
  5. 「昨日体が燃えちゃってさ」なんてシャレにもならないよ。

    • +3
  6. う~ん………

    これはプラズマだな(・∀・)

    • +4
  7. 実際に実験するわけにもいかず再現しようがないからいつまでも予測しかできないんだよなあ
    まあアルコールを多量に含まなければ遭うこともないと思っておこう

    • +4
  8. アセトン臭って甘酸っぱいにおいがするっていうから…

    • +1
    1. >>16
      アセトンは、薬品として売られているよ
      脱脂作用があるので脂分を拭き取ったりするときに使われる

      消防法危険物第4類
      麻薬向精神薬原料対象物質
      有機溶剤中毒予防規則の第二種有機溶剤

      「眼の刺激性、中枢神経への影響あり」で大変燃えやすい物質

      • 評価
  9. >慢性的なアルコール中毒だったニコールの体で残っていたのは、頭蓋骨、背骨が数本、下腿の骨だけだったという。

    背骨が数本…。肋骨だろうな。

    • 評価
    1. ※21
      背骨って多数の椎骨の組合せで出来てるから、
      そのうちの何個かってことじゃないの?

      • +2
  10. この記事に限らず人体発火現象の話はヨーロッパの事例ばかりのように思える
    ヨーロッパ以外の例はないのかな

    • +1
    1. ※23
      いちおう江戸時代の絵にそのような絵はありますよ

      • +2
    2. ※23
      作家の景山民雄がこの現象で亡くなってるよ

      • +1
      1. ※63
        影山さんはプラモデル製作中気化したシンナーに当時吸っていたタバコの火が移って発火したのが原因とあるから
        この記事にあるような原因不明な自然発火じゃないよ

        • 評価
  11. 衣類に付着したなんらかの薬品なりがこれまたなんらかの原因で化学変化を起こして激しい酸化反応が起きた
    っていうのがほぼ大半なんだと思うよ

    • -3
    1. >>24
      君の名推理に、なんらかのご褒美をあげよう!

      • 評価
  12. 昔、ディスカバリーチャンネルの番組でプラズマによって人間が燃えた可能性もあると言ってたな
    ホントかどうか結局わからん

    • 評価
  13. アルコールがトリガーなのは間違いなさそうだな

    • +1
  14. ミトコンドリアの反乱じゃね(パラサイトイブ脳)

    • +4
    1. ※31
      書こうと思ったコメントほぼそのまま書かれてた

      • 評価
    1. ※32
      むしろ技に落雷でダメ出し食らった時のほうかも?

      • 評価
  15. 夢がある話。
    脂肪が自然に燃焼するんですね!

    • -1
  16. ポッケに入れた黄燐マッチが自然発火って事故があったから、これかと思っていたけど記事見ると説明つかないよな
    やはり、発火能力者†パイロキネシスト†の暴走だな

    • 評価
  17. 内臓に貯留したアルコールが気化してどーにかしたら引火しないかな…そしたら後は内臓を溶かして体腔から筋肉、脂肪と燃焼できると思うんだけど。
    それなら皮膚を燃やし尽くした時に残るのは灰だけにならない?
    周囲への延焼も少なそう。
    ただ、内臓が綺麗に残ってたケースが完全に矛盾するんだよね。
    さすがに素人考えすぎるか。

    • 評価
  18. スピキュール!
    うおおおおおおおお!
    あっちいいいいい!!!

    • 評価
  19. 前に体内でアルコールが作られてしまう人の記事あったけど、ああいう人も発火しやすいのかな…

    • 評価
  20. アル中でヘビースモーカーの俺はよく燃えそうだな

    • 評価
  21. 普通に可燃性の液体かけられて燃えてるんだろうよ

    • -1
  22. たしかMMRかなにかで取り上げられてて、現代での原因はケータイ電話の通信時の電磁波で発火するからアンテナを伸ばさないで通話してると危ないって見てケータイのアンテナは必ず伸ばすようにしてたなあw

    • 評価
  23. 女性に多いということは皮下脂肪が関係している…?

    • +1
    1. ※47
      年配の、アルコール中毒の女性に多いみたいだよね記事だと

      • 評価
    2. ※47 ※50
      年配で、女性(要するにお婆ちゃん)って
      灯火とかが引火しても素早く動けそうにないし、
      一瞬で表面を燃え広がりやすいフリース的な
      毛羽立った衣類をよく着てるイメージある。

      夜間の高齢者って、ふつうに突然死も多そうだし。
      アル中にしても、寝酒は血圧の乱高下に繋がるし。

      身も蓋もない あんまり面白味のない説だと、
      ランプや煙草が衣類に引火した高齢者が心不全などで気絶
      or 泥のように眠るアル中の寝タバコ等で
      火が落ちても感覚が鈍くて気付かないまま。
      ⇒ 密閉室内の不完全燃焼で長時間じっくりロースト
      ⇒ 低めの燃焼温度でも骨までモロモロに焼ける
      というのも聞いたことがある。

      路上でいきなり炎を噴き上げて燃えるタイプとは
      同じ人体発火で纏められているけど、原因が異なりそうな気もする。

      • +3
  24. これ周りが燃えないのが謎なんだよね
    人間がどれほど燃えやすくなろうが炎は炎じゃん
    なのに燃えた人が乗ってた絨毯や座ってたクッションは少しも焦げてなかったりするんだよ

    • +2
    1. ※48
      アルコールランプと同じです。蒸発燃焼といって、液体(アセトン)そのものが燃えるのではなく、蒸発(気化)した気体が燃える。同時に周囲から気化熱を奪うのでさほど温度が上がらず、あまり焦げない。

      ちなみに自分は、アセトンを含め日常的に可燃性液体を取り扱っている職種です。火災になりそうになったことも過去に何回かあるし、同業他社の作業場が全焼、なんてことも時折耳にします。

      • +3
    2. ※48
      夜間の室内だと、閉めきっていて空気の流入に乏しく
      人体ロウソクが酸素を使い果たす頃には
      足先とか未燃焼で残して火が消え、延焼まで至らない
      という説を聞いたことがある。

      倒れた人体の上側がじわじわ燃えている間、
      皮膚が破れて血液・体液が染み出してきて
      床側の接触面を濡らすと、不完全燃焼のトロ火だと
      そうそう引火しないってのもあるのかも?

      ※23
      温かい地域だと寝るときも窓が開け放たれていたり
      木造だとレンガ造りほど密閉性が無かったりして、
      完全燃焼で普通の火事になりやすかったりするのかね?

      • +3
  25. 暴れた様子もないし、たぶん死んだあとに燃えてる

    • +2
  26. アル中だし手が震えて衣服にこぼしてて静電気で発火したのかもな

    • 評価
  27. 「地獄先生ぬ~べ~」のJCキャラが服だけ燃えるというけしからん話で初めて知ったんだよなぁ・・・

    • +1
  28. 現代ではほぼ報告例はなく、一部は曖昧な憶測ばかり
    これが全てを物語ってる気がするけどな
    結局映像にでも収められんとオカルト話

    • -5
    1. ※60
      2017年と2010年の例が記事中にもありますがどこを読んでいるんだ…?
      あと1951年のメアリー・リーサー、1988年のアルフレッド・アシュトンの例もある
      ちゃんと調べないで現代には起きてないって言うのは流石にどうかと思う

      • +3
  29. 実は超能力なんじゃないの?
    力が暴走しちゃった的な

    • 評価
  30. 他に燃え移らないという点から考えて
    炎の温度が低いんだろう、60度ぐらいで燃えてるんじゃなのか?
    アルコール漬けの体内で何らかの理由で発火温度の低い物質が合成されて
    その結果人間が燃えちゃうの
    温度が低いから燃え移らない

    • +1
  31. 決して嘘でも超常現象でもないという視点があることに驚いた
    アルコール -> アセトン -> 静電気 -> 発火 -> ロウソク効果
    見事だね
    ファイアスターターには、どうやら起源がありそうだね

    • +1
  32. 原因が判っていたら
    完全犯罪が可能だな

    • 評価
  33. 完全に炎炎の話かと思いました。ラートム。

    • 評価
  34. なんか2009年の年末にも人体発火による死亡事故が起きたって話をナショジオもしてる
    今でもあるらしい(10年前だけど)

    • 評価
  35. 後は骨さえ灰化させる高温ということだが、体内から発火して炉のような状態になるなら高温になるのでは?

    • 評価

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