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まるでネズミの群れのよう。氷河の上を群れで移動する緑色の「氷河ネズミ」の正体は?(アラスカ)

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氷河の上を移動する緑色の氷河マウス image by:Ruth Mottram
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 アラスカの氷河の上には、緑色の球がたくさん散らばっている――そんな光景を目にしたらびっくりするだろうが、それらが移動することを知れば、その正体を突き止めずにはいられないだろう。

 アイダホ大学(アメリカ)の氷河学者ティム・バートロメウス氏は、アラスカをハイキングしていた最中、思いがけず真っ白な氷河に散らばる黄緑の球を見つけて、「何だこりゃ!」と思ったという。

コケが集まって形成される氷河マウス

 この不思議な物体は、じつは小さな塵のような不純物の周囲にいろいろな種類のコケが集まって形成されたものだ。

 1950年代、アイスランドの研究者が発見し、その「転がって、集まるコケ」のことを「jokla-mys」と呼んだ――「氷河マウス」という意味だ。

 柔らかくて、湿ったコケのクッションといった感じの氷河ネズミは、アラスカ、アイスランド、スヴァールバル諸島、南米などで見られる。

 どうやら5、6年は生きるらしいが、氷河ならばどこでも育つわけではなく、適切な条件が整わなければ育たないと考えられている。

 そして、バートロメウス氏や野生生物学者ソフィー・ギルバート氏が、『Polar Biology』(5月14日付)で発表した研究のテーマでもある。

Rolling stones gather moss: movement and longevity of moss balls on an Alaskan glacier | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s00300-020-02675-6

コケでありながら、群れで移動する不思議

 氷河ネズミのもっとも不思議なところは、コケの球でありながら、まるで群れのようにまとまって移動することだろう。

 「本当にネズミやリスのような小さな哺乳類が氷河を走っているかのように見えます。走るスピードはとてもゆっくりですけれどね」と、ギルバート氏は語る。

 コケは日光を浴びる必要がある。だから、氷河ネズミは転がっているはずなのだという。でなければ、底の部分が枯れてしまうからだ。

 また氷河ネズミが氷の台の上でグラついていたという目撃談もある。

 そもそもそのような台の上に乗っていた理由は、氷河ネズミが断熱材として働き、その下の氷が周囲よりも解けにくかったためだと推測されている。そうだとするならば、いずれは台から転げ落ちるはずだ。これが移動する理由なのだろうか?

Glacier Mice

氷河ネズミはどのようにして移動するのか?

バートロメウス氏らは、30個の氷河ネズミにタグを取り付け、数年間その動きを追跡してみた。

 その動きは奇妙だったという。氷台から転げ落ちて、それぞれデタラメな方向に移動すると予測されていたのだが、まるで示し合わせでもしたかのように、群れとなって1日に数センチ動いていたのだ。

 最初はゆっくりと南、それからスピードを速めて今度は西へ曲がり始め、再び歩みを遅めてはさらに西を目指した。

 たくさんの氷河ネズミが同じ方向に、同じ速度で移動する理由としてまず考えられたのは、ただ坂を転げ落ちているだけという可能性だった。しかし、きちんと計測された結果、この可能性は否定されている。

 風によって吹き飛ばされた可能性も考えられた。しかし、これも風の計測結果からそうではないことが分かっている。さらに日光のパターンとも関係がないという。

 じつは氷河ネズミがまるで動物のように移動する方法は謎に包まれたままだ。「まだ少々困惑しています」と、バートロメウス氏は話す。

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image by:@TimBartholomaus/twitter

生命で満ちあふれた氷の世界

 この研究に関心を持ったデンマーク気象庁の気候学者ルース・モットラム氏は、「氷河表面のエネルギーと熱が関係しているのではないでしょうか」と話す。

 氷河に潜む生命の研究が本格的に始まったのは最近のことだという。そこはかつて、凍てついた不毛の世界だとみなされてきたが、今ではバクテリアや藻類のような謎めいた生命で満ちあふれていることが知られている。

 モットラム氏によると、夏にグリーンランドで解ける氷の5~10%は、その表面にいる藻類やバクテリアの成長と関係しているのだそうだ。

 またある研究によると、氷河ネズミの中には小さな線虫やクマムシが生息しているという。

glacier mouse

今も氷河ネズミらしく転がっている

昨年、バートロメウス氏は、以前氷河ネズミにタグを取り付けた場所に行ってみた。ざっと見渡してみたところ、タグの付いたものは見当たらなかったという。

 だが、その場所に氷河ネズミはいた。だから「今でも氷河ネズミらしく、氷河の上を転がっているんじゃないでしょうか」と、彼は語っている。

References:Fuzzy Green ‘Glacier Mice’ Move In Groups And Puzzle Scientists : NPR/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 28件

コメントを書く

    1. >>1
      球状のマリモは波の力で回転している。

      • 評価
  1. 不思議やな、こんな研究する人も。
    だが楽しそう。

    • +10
  2. コケ撤収っていう位だからそりゃ動くさ🍃

    • +2
  3. タビネズミ(足が足袋型のネズミではなく旅をするネズミ)を思い出した。
    「ところがタビネズミは海を渡るんだな」

    • +1
  4. 一つの要因で説明できないなら、複数の要因が絡まって動くんだろう。
    日光の当たる方向と風の吹く方向と気温と湿度と他もろもろと、複合的な何かに植物が反応し、伸縮して移動するんじゃないかね。
    植物とて岩でできてるわけでもないし、そりゃ動くこともあるだろう。

    あるいは、アメリカのデスバレーとかいう荒野にあるらしい勝手に移動する岩と同じ原理とかね。

    • +6
    1. ※8
      あれも確か氷が一日の間に溶けたり凍ったりを繰り返すのが原因でしたっけ。

      • +1
  5. 苔だけに、転がったと言うより、一斉にコケたとか・・・。

    • +11
  6. なんて夢のある最後のコメント。
    見ようによってはメルヘンな世界。

    • +1
  7. 今度はGPS追跡機つけて移動範囲を測ってほしい。
    つけられるかはしらんけどw

    • +3
    1. 転がる石は苔むさず、と言うけれど、苔も転がるんだな。

      >>14 沽券に関わることゆーなw

      • +7
  8. 1.アラスカのような高緯度地域なら、太陽光は横から当たる
    2.そのためコケの主に南側面の温度が上がってその付近の氷が解ける
    3.ほかの箇所は逆にコケが断熱材となって解けない
    4.徐々に傾斜する
    5.そのうち氷が解けた凹みに転がり落ちる
    と、こんなとこかなぁ。

    あとは南面の方が成長早いのもありそう。

    • +8
  9. 思ってたより多くてビックリした!
    苔玉好きにはたまらないだろうなぁ

    • +2
  10. 中に住んでる線虫やらクマムシが苔と融合して、細胞に感染して融合したミトコンドリアみたいに機能を持って、本当に新しい生物が誕生したら面白いのにな。

    • 評価
  11. ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝ ⍨⃝ ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝ ⍨⃝ ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝
    動くのなら可愛いなあ

    • +1

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