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「スパゲッティの木」1957年のイギリスのエイプリルフールネタから得られる教訓とは?

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(著) (編集)

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 4月1日はエイプリルフールだったが、今年は新型コロナウイルスによるパンデミックで世界が只事でない状態に陥っており、毎年この日のイタズラを楽しみにする風習のあるイギリスもロックダウン(封鎖)措置が敷かれていることから、それどころではなかったようだ。

 イギリスのエイプリルフールで有名なイタズラ伝説は、63年前の1957年にBBC(英国放送協会)が放映した「スパゲッティの木」に遡る。

 今、このエイプリルフールネタが、ある教訓を私たちに教えてくれているという。

BBC: Spaghetti-Harvest in Ticino

「スパゲッティの木」はカメラマンのアイデア

 毎年4月1日にエイプリルフールのHoax(でっちあげ、イタズラ)発信することで知られているBBC。その基盤となったのが、1957年のエイプリルフール・デーに放送された「スパゲッティの木にスパゲッティが大豊作」というデマだった。

 現在も放送されているBBCのテレビ番組『パノラマ(Panorama)』で、当時カメラマンをしていたオーストリア出身のチャールズ・ド・イェーガーは、子供の頃教師に「お前はスパゲッティが木になると言われてもそれを信じるぐらい馬鹿だ」と言われた経験があった。

 大人になってもその出来事を覚えていたイェーガーは、それをネタとして使えないものかと常々思っていたが、1957年にそのチャンスが訪れた。

 別の取材目的でスイスを訪れたイェーガーは、当時のスイス観光局広報部長アルベルト・クンツ氏に相談をもちかけ、撮影協力と同意を得た。

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木からスパゲッティを収穫するシーンを撮影

 イェーガーは、エイプリルフールのイタズラとして、『パノラマ』内で木にスパゲッティがなり、人々がそれを収穫するシーンを放映することにした。

 1950年代のイギリスでは、パスタは日常的食品ではなく、主に缶詰のトマトソースのスパゲッティが知られ、異国情緒溢れる食べ物という認識が国民にはあった。

 そこで、ハートフォードシャー州にあったパスタ食品工場とスイスのカスティリオーネで撮影を行ったイェーガーは、スイスの女性たちに木からスパゲッティを収穫するフリをしてもらうよう頼んだ。

「今年は暖冬でスパゲッティが大豊作」を信じた視聴者たち

 当時のイギリスでは、1580万世帯中700万世帯がテレビを所有しており、4月1日に放送したBBCの『パノラマ』を800万人が視聴したとされている。

 そしてついにイタズラが解禁となった。

 番組の最後でリチャード・ディンブルビーアナウンサーが、真剣にそして淡々と「今年は、例年に比べ暖冬で、害虫の影響がなかったため、スパゲッティが大豊作となりました」と報じ、視聴者を釘付けにした。

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 そこには、スイス南部のイタリア語圏ティチーノ州のルガーノに住む農家の人々が木になった大量のスパゲッティを収穫している映像が映し出されており、ディンブルビーアナは、このように報じた。

木から収穫されたスパゲッティは、暖かいアルプスの空気に触れさせ乾燥させます。

なぜ、どれも同じ長さのスパゲッティなのかというと、完璧なスパゲッティを目指して農家の人々が品種改良を続けたからなのです。

農家の努力の賜物で育った大豊作のスパゲッティ。やはり自家栽培に勝るものはありません。

BBCには視聴者からの問い合わせが殺到

 その後BBCには、この報道を見た視聴者たちから「どうやったら、スパゲッティの木を育てることができるのか」という問い合わせが殺到。

 それについてはBBCの電話オペレーターが「トマトソースの缶詰めにスパゲッティを添え木として差し、それが育つのを期待しましょう」と回答したとかしなかったとか。

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markusspiske/pixabay

 実際の撮影では、月桂樹の枝に茹でたスパゲッティをくっつけて、まるで実がホロリと落ちるようにスパゲッティが枝から滑り落ちるような感を出していたという。撮影後、協力者へのお礼にはスパゲッティが手渡されたということだ。

 このイタズラが4月1日に放送されることなど全く知らされていなかった当時のBBC局長イアン・ジェイコブ氏は、放送後妻と一緒に百科事典ブリタニカで調べてみたそうだ。しかし、当時の百科事典にはスパゲッティについての言及が一切ないということだけがわかったようだ。

 後にジェイコブ氏は、イェーガーに「あのアイデアは秀逸であり、様々な喜びをもたらした」と称賛の手紙を綴っている。

60年以上も前のエイプリルフールから学ぶ教訓とは

 結局、「スパゲッティの木」なるものは架空であり、騙されたと知った視聴者からは批判の声が相次いだ。

 だが、このイタズラはエイプリルフールの伝説として後に語り継がれることになった。スパゲッティの木の放映のために脚本を書いたウィーラー氏は、2004年にこのように語っている。

私は、あのイタズラは良かったと思っています。テレビで見たこと全てが真実ではないと気付かされたわけですからね。与えられる情報に少々批判的になることは、逆に大切だと人々に気付かせたのではないでしょうか。

 1957年以降、世界は様々な面で大きく変化した。特にSNSを介してインターネット全体に誤情報も急速に広まる社会になったことで、デマやイタズラ、陰謀説に晒される人も増え、日常生活において嘘が当たり前になってしまった。

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fancycrave1/pixabay

 今、世界はパンデミックの最中にあり、こうした誤情報は命を犠牲にする可能性もあり得る。

 当時、真面目な報道機関がこのようなイタズラをすべきではないという正当な議論がなされたが、今のこの状況において、「スパゲッティの木」のネタはこれまで以上に「真実を見極める大切さ」を学ぶ最も関連性のある教訓だといえよう。

References:arstechnica.comなど / written by Scarlet / edited by parumo

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この記事へのコメント 46件

コメントを書く

  1. 「第三の選択」という
    火星に生物が!
    世界中の科学者が忽然と!
    みたいな番組も当時日本で相当流行ったけど、あれもエイプリルフールネタなんだよね。
    「エイプリルフールネタだという事にしたがった陰謀だ」という人まで出る始末で。

    • +15
  2. 時と場所を考えた本気の悪ふざけは好き

    • +42
  3. もしや、、、コロナウィルスなんか流行ってはいないのでは!?

    • 評価
  4. この話大好き。
    昔、世界まる見えで紹介されたので初めて見て、子供ながらに衝撃を受けた。国営放送がこういうことやるっていうのもそのアイデアも。
    「ニュースでやっていいんだ!? でも本気にした人が逆ギレして責任問題とかになったりしないのかな?」と子供のくせにドキドキしたなぁ。
    合わせて「南極のペンギンたちがついに進化し飛び立ちました」って映像もあったな。

    • +25
  5. 笑った。こういうジョークはほんとうにうまいな。

    日本でいえば魚の切り身が泳いでいるニュースみたいな感じかね。
    さすがに騙されんかw

    • +18
    1. ※6
      「魚のエラの後ろには細い糸が生えており、これを引っ張ると・・ホラ、綺麗な生け作りになるんですよ。」
      「すご~い!もう包丁いらないじゃないですか、すご~い!」

      とかならどうだろう。

      • +12
  6. 虚構新聞は、これが元ネタだったのか。

    • +3
    1. >>7
      そういえば、「バームクーヘンの天日干し」というネタニュースが上がっていたなw

      • 評価
  7. 栗の花とかが身近だと思うけど、
    こういう垂れ下がった系の形状って、植物にたくさんあるから、
    なおさら「マジ?」感が強いよね。

    これが、「缶詰」がなりますとかだったら騙されなかっただろうにw

    • +7
    1. ※28
      たぶん、その時代だと
      「マス・メディアが流す情報 = 正」
      「写真や映像に収められた内容 = 真」
      みたいな素朴な信頼がまだ強かったんじゃないだろうか?

      「3本の棒のうち、どれが一番長いか?」みたいな
      一目瞭然の単純なテストでも、
      他のサクラ達が堂々と間違った回答をすると、
      半信半疑ながら、被験者(大学生≒当時はエリート層)
      も引きずられて自分の考えが誤ってた気になる、
      という心理実験もある。

      あと、>>10,>>24みたいな
      映像の出来栄えとしても、全力のおふざけで完成度が高い。

      • 評価
  8. 騙されると言えば、ドキュメンタリーかと思って見ていたら最後手前くらいから商品の宣伝が始まるあのテの番組もどうよ

    • +4
  9. 報道する側は、気軽に嘘を報道する事ができるって事だよね
    そして嘘を報道しても訂正は稀であると

    • -7
  10. 20年 くらい前 のニュースステーション
    で タクシーのなかの ラジオから ニュース
    の声だけ 聞こえてくる という演出 を
    して その時も 賛否両論 であったね
    僕は 面白い! と思ったけど

    • +2
  11. ミッキーマウスの木もあるから収穫よろしくね!

    • +1
  12. 教訓は「スパゲティは木には生らない。海で泳いでる物を捕獲する物だ」って事じゃない?

    • +7
  13. 子供の頃に読んだ絵本に、コルクがまるで木の実みたいに枝からたわわに実った「コルクの木」が描かれていてずっと信じていたな
    すごく好きな本だった

    • +2
  14. 結局、訂正はしなかったんだよな
    つまり、報道的には事実として報道しちゃったという記録が残ったわけだ
    その報道が嘘であるという前提が世間一般に広まったから問題視されてないだけで

    • -11
    1. ※20
      貴方のような思考の方にはもっと他にふさわしいサイトがあるので
      そちらをご覧になった方がよろしいのでは?

      • +2
      1. >>34
        そういう上から目線のコメントってどういう教育を受けると投稿できるんだろうね

        • -10
  15. 収穫した素麺は早く乾燥するように農家さんが軒先に吊るすのよ~
    日本人でも信じそう

    • +5
  16. 蛇口から緑茶やポンジュースが出るぞ

    • +7
    1. ※22
      そのジョークを逆手にとって、愛媛県の松山空港には「みかんジュースタワー」というオブジェと、蛇口からみかんジュース出す売店が本当に設置された
      ああいうの好き

      • +3
    2. >>22
      静岡には確か緑茶の出る蛇口あるよな

      • +3
  17. うそはうそであると見抜ける人でないと(掲示板を使うのは)難しい
    って言葉いつから使われなくなったんだろう。
    ひろゆきの事は好きでも嫌いでもないけどこの言葉は中々核心を突いてると思ってる。

    • +6
  18. なにげに出だしのイタリアンな音楽がいい感じ

    • +2
  19. >1950年代のイギリスでは、パスタは日常的食品ではなく
    とはいえ
    >子供の頃教師に「お前はスパゲッティが木になると言われてもそれを信じるぐらい馬鹿だ」と言われた経験があった。

    と、放映された何年も前には「スパゲティは木にならない」が一定の常識として膾炙していたんだろうから騙された人は……
    もちろん、1950年代の英国なんて貧富も身分も教育水準も格差バリバリだったろうが、少なくとも騙された人はTVを持てる身分であったわけで……

    • -1
    1. >>28
      テレビがあって、学校に通える裕福な日本でも
      魚は切り身で泳いでると思ってるひとがいますから、、、 

      • +5
  20. 本日、こちらの記事を見て衝撃を受けた。この話は伊丹十三のエッセイにて読んで知ったのだが、そこにはスパゲッティの木が「不作」だったと書いてあった。約40年間それを信じて疑っていなかったのだが、ホントは「豊作」だったんだねぃ

    • +4
  21. この話、モンティ・パイソンでみたような気がする。
    BBCだしパロディのパロディみたいなかんじだったのかな。

    • 評価
  22. 1957年のイギリス
    丁度ジョンレノンがポールと会ってジョージが加入してみたいな時期だ。
    彼らも引っかかったのだろうか。

    • 評価
  23. BBCは、保守政治家から「1日の最後に国家を流せ」といわれて、
    “God Save The Queen” Sex Pistols ver. を流したって逸話があるってみた。

    イギリス人は日本の落語の面白さもわかると聞いたことあるし、トンチをひねるのに理解あるんじゃない

    • 評価
  24. 『ビッグベンをデジタルに替えることが決定した。』と新聞記事でエイプリルネタを出したことがあったらしいよw
    英国のジョークはとんでもないことをやるのだと、某映画見て理解したw冗談と分かっていてもドン引きするレベルのネタをやるw

    • -1
  25. ギャグ漫画みたいな嘘ですねwwww

    • 評価
  26. スパゲッティが木になるだとぅ?な~に言ってんだか。

    木になるのはソーセージだ。パッと見アケビみたいに赤茶色い分厚い皮に包まれててな(まだ熟してない実は皮が緑なんだが)。

    バナナみたいに皮を剥いて食べるんだ。まあそんなことくらい、カラパイアを見てる皆は当然知ってるとは思うが。

    今年のソーセージの実は、まあまあの熟し具合いらしいぞ。

    • -3
  27. 『カラパイアという国がある』とかだと信じる人がいそう

    • +1
  28. 1985-86年ぐらいの珍しく夜更かしした深夜にコレを放送してて、当時父親と一緒に観てて二人一緒に騙されました。
    放送を観てなかった母親からは「そんなワケないやん」と一蹴。
    何年も経ちあれは夢だったのだろうか?とたまに確認しあうほど。
    さらにもう何年か経ち、世界丸見えでコレが紹介され
    「コレやーーー!!」と叫ぶ二人。
    モヤりつつもスッキリするという珍しい体験をしました。

    • +1
  29. 純朴でゆるーい時代がいいね
    パニクってトイレットペーパー買い占めちゃうような嘘は勘弁

    • 評価

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