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「なお、この素材は自動的に消滅する」任務終了直後に蒸発するスパイ大作戦みたいな新素材が開発される(米研究)

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(著) (著)

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 「なお、このテープは自動的に消滅する」というのはスパイ大作戦シリーズ(アメリカのテレビドラマ)にありがちなシーンなわけだが、その機能を実装した素材が登場した。

 新開発された「自己消滅ポリマー」で作られたデバイスはミッション終了後直ちに蒸発させることができるらしく、そうなると敵にスパイ活動を悟られることもないだろう。

 開発者である米ジョージア工科大学のポール・コール博士によると、1年かけてゆっくりと分解するようなものとは少々違い、日光にさらすなどすれば一瞬で消えてしまうのだとか。

 アメリカ化学会の秋季学会で発表されたこの「自己消滅ポリマー」は、米国防省の要望で開発されたもの。同省は使用後にわざわざ回収しなくても証拠が残らないセンサーやビークルなどに使用したいようだ。

一般的なポリマーは天井温度が常温よりも高くしっかり安定

Futuristic Spy Tech Self-Destructs in Sunlight | SciShow News

 ポリマー(重合体)とは、いくつものモノマー(単量体)が結合してできた化合物のこと。

 ポリ袋のポリエチレンやそこかしこのプラスチックに使われるポリスチレンなど、私たちにとってとても身近なものだ。

 ポリマーには「天井温度」というものがある。ポリマーがモノマーに戻る温度のことだ。

 天井温度以下ならば、高分子配列はきちんとしており蒸発してしまうようなことはない。しかし一度それを上回れば、ポリマーはモノマーに分解してしまう。

 とはいっても、ポリスチレンのような一般的なポリマーは、天井温度が常温よりも高い。そのため、普通の気温の範囲ならば、しっかり安定している。

 また天井温度以上に温めても、分解するまで時間がかかる。ポリスチレンの場合、数千もの化学結合がモノマーのすべてを結びつけているために、素材を分解するにはそのすべてを解かねばならない。

天井温度の低い環状ポリマーを利用することで跡形もなく解重合

 では、「自己消滅ポリマー」があっという間に消滅するのはどうしてだろう?その秘密は、まさにスパイグッズにおあつらえ向きといえる天井温度の設定にあるようだ。

 コール博士は天井温度の低い環状ポリマーを利用しており、たったひとつの結合を解くだけでそれ以外の結合すべてが分解するらしい。

 これで作られたデバイスでミッションを遂行したら、外付けか内蔵された熱源にスイッチを入れたり、感光性の触媒を使ったりしてピッと温度を上げてやる。

 すると、あっという間に解重合(ポリマーがモノマーに分解すること)される。跡形もなく消えてしまうのだ。

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常温で不安定なことからなかなか実現が困難だった自己消滅素材

 こうした使いやすい自己消滅素材は以前より開発が試みられてきたが、常温で不安定なことからなかなか実現が難しかった。

 しかしコール博士は、合成する際に形成される不純物すべてを入念に取り除くことで、問題を解決したとのこと。

 またフタルアルデヒドのような、すぐに環状ポリマーを形成してくれるアルデヒド類の発見も、新素材の開発につながったそうだ。

 さらに効率的に消滅させる工夫として、感光性添加物もくわえられている。これが光を吸収し、解重合を触媒してくれるのだ。

部屋の照明で消滅させられて時間も調整できる「自己消滅ポリマー」

 コール博士によると、当初、ポリマーの感光性は紫外線に対するものだけだったそうだ。

 これならば、屋外に出して日光に当ててしまえば蒸発する一方、蛍光灯で照らされた室内では蒸発しないで済むので、それはそれでいい出来だった。

 このポリマーで作られた車に乗って夜間出発し、日の出とともに車を消滅させるといった使い方ができる。

 だが、さらに波長の異なる可視光でも解重合が生じる新しい添加物が開発された。日光に当てなくても、部屋の照明で消滅させられるようになったのだ。

 また消滅までにかかる時間も調整できるとのこと。たとえば昼間の間、2時間だけミッションを行い、タイムリミットが過ぎれば証拠は隠滅されるといった作戦が可能になる。

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軍事利用だけでなく環境モニタリング用センサーなど平和利用も

 「自己消滅ポリマー」は、他の科学者によってすでに軍のデバイスに組み込まれているところだとコール博士は話す。

 だが軍事利用だけでなく、平和的な目的にだって応用可能だ。たとえば建築現場で仮止めを行える接着剤があれば便利だろう。

 環境のモニタリングを行うセンサーにも都合がいい。必要なデータを収集した後は蒸発させてしまえばいいので、センサーを置き去りにしてもゴミにならなくて済む。

 あるいは回収困難な場所にリモコン操作式のビークルを送り込み、現地で消滅させるといった使い方ができる可能性もあるという。

References:YouTube / Phys.org / Science daily / ACSなど / written by hiroching / edited by usagi

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この記事へのコメント 26件

コメントを書く

  1. サスペンス系でよくある潰れた低解像度の写真を超高精細にする技術はもうあるのかな

    • 評価
    1. ※1
      あると言えばあるし無いと言えばないよ
      出来るものは大きく3種類で一つはネガなどのアナログ媒体がある場合。解析次第で滲みを消して高解像化できることがある
      2つ目は動画の場合。一枚では足りない情報を前後のデータを合成することで高解像化が可能
      3つ目は分析式。特定の特徴、例えばメーカーロゴなどから個体を特定して差し替える方法で見えない部分まで再現できる反面、表情などは再現できないし前2つと違い違う画像になるため出来た画像は証拠にならない
      証拠になるのはあくまで解析前の写真

      ないという理由は、これらが出来ないもののほうが多いから

      • +1
    2. >>1
      めっちゃカッコいいよねアレ。
      超欲しい。

      • +1
    3. ※1
      逆に低解像度でパターンとって、車のナンバーとか解析できるようにしたらしいよ

      • 評価
  2. スパイグッズといえば水に溶けるメモ用紙

    • +3
  3. 釣り糸でも前からあるけど嫌われてるよな

    • +2
  4. 一発屋規格の 48DVD があったっけ・・・

    • +3
  5. 面白いよね。
    昔は壊れない劣化しないモノを目指して、プラッチックだのPCBだのシリコンだのを開発してるんだから(ちょうど有機化学の入門書を読んでるところ)。
    最近でも破れない紙として石から作った紙が出回り始めている(回収して再利用可能だが)。
    もちろん科学が進み全体に物事を見るようになり、未来のことまで考えるようになってから問題がわかったことだけど。

    貝紫の話をしよう。
    ある種の貝から取れる紫の染料はとても貴重で皇帝など高貴な人しか身に付けることを許されないものだ。
    欧州の人々はこれを採り尽くして絶滅させた。
    インディアンと呼ばれる人々もこれを利用して染色に使ったが、そのやり方は『手に染めたい糸を持ち海辺の浅瀬を歩く。時に貝を見つけると手に取り少し刺激して紫を吐くのを待ち、手にした糸に色を吸わせる。そしてお礼の言葉を口にして貝を海に戻す。』というものだった。
    アメリカなどではこの貝は生き残っている、水質汚染や開発などでかなり数は減っているが。
    そして少数だが、手に糸を持ち海辺を歩く人が今でも居るという。

    閑話休題。
    感謝の気持ちを持って、大きな世界のことを思って行動したいね。

    • +7
  6. 当局は一切関知しないので、そのつもりで

    • +8
  7. 良さげな物が次々と開発されていくが結局普及するか否かはコスト次第なんだよなぁ

    • +1
  8. 消滅してないし
    跡形もあるじゃないか

    • +3
  9. 実物は消えても録画されてるんだよなぁ

    • +1
    1. ※13
      って思うじゃん?
      実はカメラもこの後消えてます!

      • +1
  10. >このポリマーで作られた車に乗って夜間出発し、日の出とともに車を消滅させるといった使い方ができる。
    ほ〜 すごいな〜〜
    って、いやいや。エンジンやモーターには金属が必要じゃないの?
    仮に出来たとしても、始動したとたん、熱でポリマーが分解しちゃうんじゃないのかな。
    それに夜間走るには、ライトとバッテリーがいるし、
    どう考えてもポリマー車は無理そうだ。

    ただし、機械式時計のパーツに、シリコンが使われている例もあるので、金属部品をポリマーに置き換える事は不可能ではないと思う。

    • +2
    1. >>16
      目的地に着くまでに日が登ったらエライこっちゃ

      • 評価
    2. 昔からずっと構想され研究され続けた成果のひとつがここに
      実用に耐えるなら夢素材ではないですか(悪夢含む)

      ※16
      ここでいうビークル(ソースにある”A vehicle deployed at night would”)は無人観測・偵察・攻撃ドローンを指す、もしくは含むと思います。アンマンド・エアリアル・ビークル(UAV→無人航空機→俗にドローン)ですね。元の発言では同様目的の陸上、水上、浅い水中を往く物も含むのかな
      かつて相手国側で落ちてしまった小型航空機型ドローンがありましたね。もしあの時あれの翼、本体、電子部の基盤、チップの樹脂部などありとあらゆる金属以外のパーツが崩壊してしまうコレで構成されていたら…と思うとうすら寒くなりますね

      墜落したとしてもほぼ形を失うので、軍事衛星画像から墜落や密かに遺棄された人工物を探し続けるAIによる発見から逃れられるかも

      • +1
  11. まだ改善の余地はありそうだけど
    上手いこと開発できたらゴミ問題に光明もたらす存在になり得るかもなあ

    • 評価
  12. 箱の中の包装紙や緩衝材に使えばゴミがかさ張らなくて良いかも

    • +1
  13. 日本にも開封してから数時間すると読み取れなくなるCDがあったのを思い出した

    • 評価
  14. 昔、生分解性プラスチックでポリ乳酸ってのが流行ったけど、あれも時間経つとボロボロになって使えなくなっちゃうから、保存する容器とか数年使う様な備品には使えなかったんだよね。

    結局使い捨ての代物にしか使えない。

    • +4
  15. ポリマーというと
    どうしても破裏拳ポリマーを思い出す

    • +1
  16. 貝紫の話に飛んだことについて
    有機化学のくだりで人工染料の話が出ていたから。

    世界で最初に科学合成された人工染料は紫で「モーブ」と名づけられた。
    モーブはコールタールの合成によって発見されるのだが、これは全くの偶然だった。
    もともとは英国の学生が大金目当てに「マラリアの特効薬キニーネ」を作ろうとしていたという。
    天然のキニーネは高額のため安価な合成物を求めていたわけだ。
    この学生パーキンはこれで予定外(目的の?)大金を得るのだが、反応後の液が紫だったというだけでボロ儲けした。
    その後「この分野は金になる」と知られ、このことが有機化学の発展につながったという。

    当然、安価な染料や有機科学は貝紫始め生物資源の保護に繋がるのだが、それは公害による自然破壊のあとに来る。
    願わくは自然保護や再生にもっと力を。

    • 評価

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