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SFの夜明け:H・G・ウェルズ『宇宙戦争』のすばらしい100年前のイラスト(1906年)

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 SFの父として知られているH・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説「宇宙戦争」は、、英国人男性による回顧録の形で書かれた作品で、宇宙から火星人が襲撃してきてイギリス南東部をほとんど破壊してしまう話だ。

 1906年に、ブラジルのアーティスト、エンリケ・アルヴィン・コレアが、『宇宙戦争』のフランス向け豪華限定版用に130点の見事なイラストを描いた。これらのウェルズと相談しながら生み出されたもので、約100年前のものにもかかわらず、SFの最高傑作のイラストとして今でも評価が高い。

 その中のいくつかが公開されていたので、ウェルズがこの本を書いたバックグラウンドと共に見ていくことにしよう。

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 ウェルズはこの小説を書くことによって、ケント州の重苦しい田舎町に意地の悪い復讐をすることができたといってもいいだろう。彼は子ども時代をここで過ごし、若い頃は服地屋でこきつかわれていたのだ。

 ウェルズは、小イングランド的中産階級の偏狭さを毛嫌いしていた。とはいえ、彼のものの見方の多くは、皮肉にもその最悪な小イングランド人の典型だった。

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宇宙戦争の着想は生物学者のトマス・ハクスリーから

 ウェルズが『宇宙戦争』の着想を得たのは、1880年代後半に汚らしい工業都市ストーク・オン・トレントで教師として働いていたときだった。

 夜に見える鉄鋼所の炉の赤い火や、容赦なく聞こえてくる耳慣れないガチャンガチャンという機械音に心底びっくりした。さらにそこから、生物学者のトマス・ハクスリーの本を読んだことで、想像力がますます膨らんだ。特に彼の自然淘汰に関する進化論の広まりに感化された。

 ハクスリーは、ダーウィン主義の観点から、善と悪の問題についての説を考えていた。善は神的創造主とは関係なく、単に文化的・社会的発展の結果だとした。

 この考えを力説するために、雑草や害虫を取り除いて庭を手入れして、植物を繁殖させるためになにがベストなのかを見いだす庭師との類似点を例として持ち出した。彼はこの考え方を、植民地化の例、特にイギリスがタスマニアに作った入植地の例を使ってさらに発展させた。

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“彼らはその土地原産の植物を根こそぎ取り除き、動物をほぼ絶滅に追い込んだ。そして必要な限りの穀物や果樹、イギリスの犬、ヒツジ、家畜、馬、そしてイギリス人そのものを持ち込んだ”

ウェルズが予測する未来

 ウェルズはハクスリーの考え方を吸収し、うまいこと『宇宙戦争』の中に組み入れた。だが、侵略した側にはイギリス人ではなく火星人軍団を登場させて、土着のイギリス人を徹底的に破壊粉砕させたのだ。

 ウェルズが、こうしたイギリスの植民地化を必ずしも悪いことではないと考えていたことには驚くかもしれない。彼はこれを、のちの著書『予想』(Anticipations of the Reaction of Mechanical and Scientific Progress: Upon Human Life and Thought:科学の進歩が人間に与える影響について述べたもの)の中で書いているように、進化のプロセスの一部であると考えていた。ここで、彼は極めて厄介な小イングランド人的考え方を示している。

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 『予想』の中で、ウェルズは未来への予測を詳細に語っている。町は拡大し、省力化装置が人に余暇の時間を与え、世界は現代的効率化をはかることができる新たな階級によって動かされていくだろうというのだ。

 ウェルズは、世の中から肉体的・精神的病、下層階級、黒人、浅黒い人、邪悪な白人、黄色人種など駆逐すべき集団はなくなることを期待していた。

 この本はベストセラーになったが、のちに強引なファシズムと酷評された。ウェルズ自身は労働党員(社会主義者)で、必ずしも人種差別を声高に叫ぶオルタナ右翼ではなかったが、イギリスのふたりのカトリック作家、G・K・チェスタトンとサー・アーサー・コナン・ドイルは、ウェルズをダーウィン説を誤って解釈して生み出された人種差別的思想をもった厄介な輩だとひどく批判した。

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 ウェルズはその長い生涯において、奇妙なほど行き過ぎた偏見や不寛容をたびたび示していたが、その作品は、ホルヘ・ルイス・ホルヘスが言ったように、伝説的になっている。

 たとえ英語という言語が忘れられても、彼の作品は未来永劫残っていくだろう。エイリアンの侵略(『宇宙戦争』)や、タイムトラベル(『タイム・マシン』)や、動物のかけ合わせ(『モロー博士の島』)といった彼のコンセプトは、広く文化に根づいていることは確かで、たとえ、H・G・ウェルズのことを知らなくても、作品を読んだことがなくても、すぐにピンとくるはずだ。

 ウェルズは、1895年に『宇宙戦争』を書き始め、1896年始めに書き終え、1897年には手直してしている。もともとは、1897年の《ピアソンズ・マガジン》で連載されていたが、1898年に本として出版された。それ以来、絶版になったことはなく、数多くの映画やテレビ、コンセプトアルバムにもなっている。

 1906年、ブラジルのアーティスト、エンリケ・アルヴィン・コレアが、『宇宙戦争』のフランス向け豪華限定版用に130点の見事なイラストを描いた。残念なことに、コレアは1910年に34歳という若さで結核のために亡くなり、第一次大戦中のドイツ軍侵攻のときに、彼の作品の多くは失われてしまった。この『宇宙戦争』のイラストは、ウェルズと相談しながら生み出されたもので、SFの最高傑作のイラストとして極めつけの作品だろう。

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via:Science fiction in its infancy: Fantastic illustrations for ‘The War of the Worlds’ from 1906/ written konohazuku / edited by parumo

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この記事へのコメント 53件

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  1. 初めの方は目が付いていてかわいいロボットみたいだけど
    後になるにつれて白黒さが逆に恐怖感を出しているな。

    • +8
  2. トライポッドがあさりよしとおのマンガのキャラみたいだw

    • +8
  3. あの映画は、雰囲気を上手に再現してたんだな

    • +16
    1. ※8
      だれかこのパロディで、大阪編のイラストを描かないかしら。

      • +2
    2. ※8
      アメリカ軍でさえ手も足も出なかった相手に、未だにどうやって日本人がトライポッドを何機も倒したのかがワカラン。

      日本ではエイリアンもイチコロの厄介な病気がはやっていたのか、東宝映画によく出るのスーパーウェポンでも開発したのか、終盤トムがトライポッドを破壊したように、カミカゼ的精神で爆弾抱えた人間を餌にして内部から撃破したのか……。

      • 評価
      1. ※47
        スピルバーグ版上映時の頃の2chの映画板で、どうやって大阪では
        撃退できたのか、というネタを上げる流れで出てきたレスで、

        甲子園が火星人に襲撃され、最初は逃げまどっていた観客が、
        阪神の選手に危機が及ぶのを目撃したとたんに激高し、みんなで
        トライポッドに殺到して内部に侵入して撃破、最後はトライポッド
        の残骸を前にみんなで六甲おろしを合唱する、というのがあった。

        何だか大阪らしいというか虎ファンらしいな、とw

        他に、通天閣が破壊されそうになったので、大阪のシンボルを壊されて
        たまるか、とこれまたみんなでトライポッドに襲いかかかって撃破する、
        ってのもあったなw

        • +4
  4. トムとダコタの宇宙戦争はこの雰囲気をよく再現してるよね

    • +7
  5. 百十年前に描かれたと思うと凄いな。
    スケール感がちゃんとある、異質なひょろ長くて高い物体の街に対する比較が上手いというか。

    • +9
    1. ※10
      素晴らしい絵を描く人はずっと昔にだって存在してたんだぜ。

      • +1
  6. 最後から数えて6枚目の、戦艦の吶喊でトライポッドを倒すシーンが好きだ
    最近のスピルバーグ版ではトライポッドを無敵にしすぎてそういう人間側の熱い反撃が描かれてないのが残念

    • +2
    1. スゴイね~、鉛筆メインでここまでセンスオブワンダーな世界を描き出すとは!

      ※11
      サンダーチャイルド号の激闘だね、あのエピソードは実に燃える。
      所謂「人類を無礼るな(舐めるな)」系エピソード。
      スピルバーグ版の火星人が強すぎるのは1953年版へのオマージュでは。
      あちらのウォーマシン(トライポッドの代わりに登場する火星人の兵器)は
      強力なシールドで核攻撃すら効かなかった程だし。

      サンダーチャイルド号の戦いの次の絵は、サンダーチャイルド号に助けられた避難船の
      人たちが目撃する火星人の飛行兵器だね。

      ※17
      「宇宙戦争」が初めてタコ型の火星人を登場させた作品。
      しかも口の描写はよくある漏斗型の口じゃなくて本来のタコの口であるクチバシ型。

      • +3
  7. ガチで絵がうまい奴だけが繰り出せる色の見える白黒素描だな
    早熟な天才は往々にして早死にするのね、残念だ

    • +9
  8. 昔のSF小説の挿絵は本当にイラストレーションだった。
    最近増えているマンガ・アニメもどきの絵ではなく、絵画的な趣があったよなぁ。

    • +5
    1. ※15
      生頼さんみたいな人は、もう現れないんかなあ。

      • +2
  9. トム・クルーズ主演のやつ、かなり原作に忠実だったんやな。

    • +10
  10. この頃から火星人=タコのイメージだったのかww
    蛸に捕まってる女の人のイラストをみて例の葛飾北斎の絵を思い出した

    • +3
    1. ※17
      自分は50代なのだが、『宇宙戦争』の映画(小説のイラストかもしれないが)が世界中に与えた衝撃で、宇宙人=タコ型が主流になったのかと思ってた。

      • 評価
  11. ラジオドラマになって、演出が秀逸でホントに火星人が攻めてきたと勘違いした人が続出してパニックになったって作品だなこれは。
    まあパニックになったってのは誇張だって話だが

    • +3
  12. なんかかわいい目が合ってコミカルなフォルムなのが逆に怖い
    意思疎通できなさそう

    • +3
  13. 火星人のトライポッドか?これ巨大ロボもののルーツなんだろうなあ しかし一世紀もまえにロボつうか歩行する戦車?的なアイディア考えてた人がいたとは

    1953年の映画「宇宙戦争」は当時の実写の技術で脚のあるトライポッドの再現は難しかったので触覚つきのエイみたいな赤い宇宙船(ウォーマシン)の三機編隊になった これも見事なアイディアで後続の作品群にパクられまくったな

    • +5
  14. 宇宙戦争やタイムマシンや動物のかけあわせの源泉がここだったのか
    ドラえもんで印象的に使われてる

    • +5
  15. ゴヤの絵みたいですね。不安を掻き立てる画面の構図にタッチが(・Д・)

    • +2
  16. なんでちょっとかわいいんだよwww

    • +5
  17. なんだか、ティム・バートンの原点を感じるようなイメージだ

    • +2
  18. 下書きのように見えるけど違うんだろうか…それにしては完成度が高いしこれが完成品なのかな。
    凄い興奮しながら鉛筆を振るうコレア氏と、原案というか下書きなのにとんでもなく書き込む彼にドン引きするウェルズを思い浮かべて楽しくなっちゃった。

    • +2
    1. ※26
      日本でもラノベで小説に対するイラストの立場が上昇する以前はそうだったんだけど、
      数十年前の挿絵のある本を手にとってみたら驚くよ?
      明らかにイメージに合ってない落書きレベルの絵が挿絵として使われていたんだ。

      当時の出版社の感覚は「絵は文章から想像する画の助けになる程度でいい」だったから。
      (絵を描いているのも売れない画家さんとかだったから妙にアートっぽかった)

      それと比べると、それよりずっと昔なのにこの挿絵は別次元で凄い・・・。

      • +1
  19. 素敵すぎる
    100年前のセンスとは思えない

    • +6
  20. SFの最高傑作のイラスト?

    どこが?

    ギーガーとか見たことないのかなw

    • -18
  21. 画集が出るなら買いたい!リトグラフでもいいな。

    • +3
  22. おお、ウェルズだ、ウェルズはオレの心の作家だよ

    そうそう、スピルバーグの宇宙戦争は、この雰囲気をかなり忠実に再現してるんだよ!
    ただ雰囲気は良かったんだけど、カタストロフを強調し過ぎる展開は残念だった…
    あとオチについては、執筆当時の帝国主義を批判する意味合いのものなので、それを把握しないと今読んでも意味不明なんだよね…

    • +3
  23. 目玉とモノトーンのせいで、ルドンの画みたい。
    好きだな~。

    • 評価
  24. 宇宙戦争と言いながら実際は地球の一部地域が一方的に襲われて
    人間はただただ逃げ回るだけだったりする

    • 評価
    1. ※36
      原題は War of the Worlds
      つまり「宇宙戦争」とは宇宙を股にかけた戦争という意味ではなく「異なる世界同士の戦争(接触)」という意味

      それにどんな戦争だって一市民の目線で見れば「一方的に襲われてただただ逃げ回るだけ」よ

      • +4
  25. 映画のカットまんまやな。
    イラストだと恐怖を感じるけど、映画だとそこまで恐怖を感じなかったな…

    • +1
  26. インディペンデンスデイの宇宙人も侵略船はローテーション組んで都市を破壊したというオマージュ入ってて
    地球の生物を雑草程度にしか思ってない宇宙人「帝国」から地球を独立させるという思想が
    ウェルズとの対比になってて百年の時代を感じさせる

    • +3
  27. すんごい上手い
    めちゃくちゃ上手い
    んだけど、目玉のせいでゆるキャラに見えてしまう…

    • +2
  28. 地球防衛軍なんて、これをモデルにしたのだろうけどオリジナルのほうがセンスがある。

    • +1
  29. 宇宙人の操縦する乗り物のデザインがレトロだな

    • 評価
  30. トム版は面白い
    興行はイマイチだったみたいだが、佳作だと思う

    • +3
  31. 目を消してみるとコミカルさが消えて不気味になるね

    • 評価
  32. スピルバーグ版のあのオチは当時は全く納得できなかった
    だが、パルモの説明を読んで納得できた
    原作読んだことないからわかんないけど、原作もああいうオチなんだろうか

    もし原作にあったとしても、ああいう形で腰を折るような終わり方は、スピルバーグの出自によるウェルズの作品に現れたファシズム的な考えへの拒否反応なんだろうな
    それにしてもこの挿絵は子供の頃に読んでたら夜トイレに行けないわ

    • +1
    1. ※53
       原作小説も1953年版もスピルバーグ版もすべて同じオチなんだ。
      けど、’53年版では最後のナレーションで「神がもたらした病原菌が侵略者を倒した」と語られてたなあ。主人公たちが最後に逃げ込むのが教会だしね。で、そこから覗いてみると火星人たちがウィルスにやられて死んでいる・・・と。
      逆にスピルバーグ版では最初のところに教会が破壊される場面が少し見える。トムとダコタちゃんがトライポッドに捕まるシーンでもいろいろな人種の人たちと一緒にだしね。
      おそらく9.11のイメージもあるんだろうな。
       こういう風に映画がリメイクされた時代背景を考えると、凄く面白いと思うよ。 

      • +2
  33. 結末に納得できないって人いるけど。
    自分は小学2、3年生頃に読んだけど、最後まで一気に読めて面白かった。
    主人公は何も出来ず逃げまどって、何も出来ないまま事態は収束する。
    子供だった自分には、現実に何か大きな事件に巻き込まれてもなにもできないだろうってのは同じだったから。

    そういえば、自分が読んだ本のイラストはこれではなかったな。
    同じようなデザインだったような気がするけど、トライポッドの頭に帽子はなかったような。。
    戦艦の名前も「いなづま号」だった。
    子供向けの翻訳だったのかな。

    • +2
    1. ※55
      自分も小学生の頃にこれ読んだけど、結末が不満とは思わなかったなあ
      むしろトリフィドの日とかが「俺たちの戦いはまだこれからだ」っぽい結末で、「これで終わりなの?」と思ったことはある。映画版先に観ちゃったからね(ラスト、トリフィドの弱点が海水であることがわかり全滅させられる)。

      • 評価
  34. 一方我が国では
    「イルカがせめてきたぞっ!!」

    • 評価
  35. 火星人とググルと・・・
    わたしたちが知らないうちに、世界119か国でレオンの「火星人」が活動中! …
    火星人」は1963年から活動を始めていた! …
    チーズ in ハンバーグ」は火星人の完成によって誕生したメニュー …

    • 評価

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