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ゾンビ・ネクロパンツなど、アイスランドに伝わる不気味な魔術儀式

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(著)

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 人間の皮膚で作られたネクロパンツや、肋骨で召喚する寄生虫の怪物のような”ティルベリ(tilberi)”など、アイスランドに伝わる魔法の儀式の印象ってかなり不気味である。そもそもアイスランドの魔法使いたちは一体どこからやってきたのだろうか?

 アイスランドの異端信仰について紐解いてみることにしよう。

 アイスランドの民間伝承儀式は、何世紀も前の異教徒の儀式に由来する。西暦1000年頃のアイスランドの人口は非常に小なかったが、アイルランドやスコットランドなどからのキリスト教系移民のほかにも、異端信仰を持ち込んだ北欧からの移民も多数流入していた。これによる宗教紛争を避けるために、同国の議会はキリスト教を国教と定めると同時に、北欧の異端信仰をも認めることにした。

 それから数世紀もの間、この異端信仰は続いた。そこでは秘密の儀式と”隠れ人”(あるいは”エルフ”)が重要な役割を担っており、これに関連したシンボルや名称が同国に浸透している。そして、その一部はキリスト教の教義と混ざり、混成宗教が作られた。

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 異端信仰は、17世紀にアイスランドへキリスト教宗教改革が波及するまで生き残った。教会は異端宗教を追いやるために、今日的な意味の”魔術”の概念を導入する。こうして、それまで伝統的な伝承であった事柄は、魔法使いと魔女の業へと貶められた。

 アイスランドの異端宗教にハンマーを振り下ろす口実を得た支配者側のキリスト教会は、人々に魔法使いや魔女の疑いをかけ火炙りに処すなど、彼らに迫害を加えるようになる。古の世界は陽の当たる世界から追いやられるが、それでも滅び去ることだけはなかった。

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 今日に至っても、異端とキリスト教教義との間の軋轢は続いている。例えば、最近掘られたトンネルの入り口にエルフの守護像(エルフ文化は今でもアイスランドで広く見られる)が建てられたが、キリスト教徒からはこうした冒涜的な生き物に対する苦情が寄せられている。

 それでも、アイスランドの厳しい自然環境の中で発達した儀式やまじないの多くは、きちんと生きている。冒頭のネクロパンツもそうした一例である。これは亡くなった友人の皮膚から作るタイツのようなもので、未亡人から盗んだコインを陰嚢の中に入れると無限の富をもたらすと信じられている。

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 ティルベリは、死んだ男性の肋骨を手にできた女性だけが召喚できるとされる。これを懐に隠し、教会のワインに忍ばせ、灰色の羊毛で包むと、双頭のイモムシのような生き物が出現し、大量のヤギ乳を盗み、バターを作ってくれる。

 だが、こうした儀式は実際に行われていたわけではなく、いわば民話的な位置付けにあったようだ。魔法でアイスランドの先人たちが作り出していたのは、実のところ希望だったのだ。

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 儀式の中には、死人を蘇らせるものもあったという。アイスランド異端信仰において、亡くなった友人や親族の魂はかなり一般的な話で、悪意を伴うものではないが、死人を蘇らせる方法についてはかなり事情が異なる。

 死人を蘇らせるには、呪文を墓に向かって叫ばなければならない。そして、教会の墓地を歩き回り、その墓石に唾を吐きかける。これは実に危険な方法だ。なぜなら、蘇った屍体は生前の9倍も強くなっているのだ。

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via:atlasobscura・原文翻訳:hiroching

 首尾よく屍体が起き上がったら、その鼻や口から流れ出る体液を全て自らの舌で舐めて、清めなければならない。こうしなければ、屍体を手懐けることはできない。しかし、これさえ済めば、頼みを聞くようになるだろう。一度死人を怨敵の許に送り込んだら、その相手のみならず、7代に渡って仇をなすというのだから、凄まじい復讐だ。

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この記事へのコメント 44件

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  1. ネクロパンツ?と思って写真見てひぃぃぃぃぃ

    • +42
  2. 比較的歴史が浅い土地にも関わらず、
    なぜか先史時代的な匂いを感じる。
    でも、込み入って具体的なハウツーが伝承されてるってのは
    歴史時代のものだという傍証でもあり…

    • -5
  3. なるほど、希望だったのかー…(‘∀`)って、やっぱり禍々しいよ!!

    • +13
  4. 手間がかかるわりにはやることが可愛いな、ティルベリ

    • +24
  5. タマに盗んだコインを入れるとかどういう理屈だよ…

    • +13
    1. ※7
      カロンもこれには苦笑いでしょうね(笑)
      渡し賃、そこから出すか!?って(笑)

      • +4
    2. ※7
      子種の子を金に変換すると・・・
      異界からモノを産んだり呼び出すには女性的シンボルが必須だけども未亡人なのはどうしてだろう。夫がいないから死者の下半身と因縁を結び付けても大丈夫だろう的な発想かな?
      ティルベリも男の骨を魂にワインの血を与えて羊毛の皮をつけて面白いねぇ

      • +1
    3. ※7
      いや、でも日本だってそこには「金」が入ってるんじゃないのかね?

      • 評価
  6. わあい、こーゆー話大好きー
    パルモたんありがとー
    しかしネクロパンツ…
    ねくろぱんつ
    ねくろぱんちゅ

    • +2
  7. ティルベリ、死んだ男性の肋骨を手に入れられた女性だけが召喚できる双頭の芋虫のようなそんなおぞましい感じのクリーチャーが何をしてくれるのかといえばバターを作ってくれるときた

    • +38
    1. ※9
       >肋骨、女性、ワインの杯、羊毛、イモムシ、 バターを作ってくれる(上下運動)
      これは繁殖行為の例えに見えるよ

      • +5
  8. アイスランド流ゾンビはブードゥーのゾンビが労働力だったのに比べて戦士って感じだね
    かっこいい!

    • +7
    1. ※10
      ダークヒーローっぽいね
      この設定で映画作ったらターミネーターみたいなのになりそう

      • +3
  9. やはりテレビのない時代の人は発想が豊かですね。

    • -2
  10. なんとなく犬神とかそれ系の呪術に似てるな。
    こっそり他人のもの盗んできたり、対象者の家を何代にもわたって祟ったり。

    • +10
    1. ※12
      移民という強い集団に押し込められる原住民、それ故の秘術って感じだよね
      日本も段階的に四方から移民がきて上書きされてるから、あちこちにブツ切れの伝承が残ってるのだと思う

      • +4
  11. キリスト教と辺境の土着宗教の融合って禍々しくなるのがデフォなのか? 

    • +7
    1. ※14
      多神教はなんだかんだ言って神様が増えたり、似た神様と融合する訳だけど、
      一神教は完全に刷新しようとするから反感をかったりするものでしょ。

      • +7
  12. 「人を呪わば墓場まで」を地で行く呪いだね。
    ネクロパンツが「ね そパンツ」に見えたので呪われそうです
    そういえば破壊された様な寺院風の建物跡が多かったなー、って思いました。
    この記事と何らかの関係がある様な気がして来たので、個人的に調べてみたくなりました。

    • +5
  13. 日本に来たのが仏教で本当に良かったと思った

    • +8
    1. ※18
      どうだろう。
      仏教伝来により、日本には「浄・穢」という観念が入り、それまでにあった「貴・賤」という観念と合わさり差別という観念が醸造された、という説もあるよ。

      • +1
  14. >これを懐に隠し、教会のワインに忍ばせ、灰色の羊毛で包むと、双頭のイモムシのような生き物が出現し、大量のヤギ乳を盗み、バターを作ってくれる。
    設定とっちらかりすぎだろw

    • +21
  15. 教会が異端派に長年寛大だったのは気候風土が厳しくて
    人口が少ないアイスランドで宗教弾圧をやったら
    労働人口が減るのを危惧してだろうね

    • +1
  16. 人間の肋骨を使った末に手に入るものがバターて。バターて。

    • +8
  17. 呪法の類いは弱く、面と向かって歯向かう事が出来ない故に生まれたものである。
    ケルト信仰やバイキングにとって重要な場所の上に教会を建てたりしている訳で、
    「明日からキリスト教!」と言われても今まで信じて来た教えを簡単に捨てれたとは思えないのである。
    呪いとはいわば願望なのだと思う。

    • +6
  18. 蘇った屍体は9倍の強さ…リッチーなみの強さってこと?w

    • +5
  19. ティルベリはこれ仮にゲームとかで苦労して材料集めて作った結果
    バターが作れると知った瞬間にマウス投げる自信あるわ
    しかも屍人はオイ、なんで9倍なんだ、キリよく10倍とかで良いんじゃないか

    • 評価
  20. えーっと、ネクロパンツって下半身丸ごと生皮剥がして作ってるの?
    写真は本物なんだろうか・・・もし本物ならタマヒュンものだが><

    • +2
  21. ネクロパンツ・・・やだーモシャモシャしてるじゃないですかーw

    • +5
    1. ※32
      同意。
      7代にわたって仇をなすってのも、何で7なのかなって思った。
      こういった数が彼らにとって何らかの意味があったのかもしれないね。

      • +3
      1. ※36
        なんでそんな苦労して得られるのがバターって思ったわれわれ日本人は幸せなんでしょうね
        バターがまさに一家の生き死にを左右するからこその儀式だったのかも

        • +2
  22. 寒い地域でバターがどれほどの価値か知らんが

    • +4
  23. ネクロパンツの次の画像こええよゾッとするわ
    これがそのワームみたいな召喚獣のイメージ?

    • +1
  24. イスラム教はとか言うが、キリスト教も一部分の教徒は現在進行形でえげつないからな…………
    アイスランドには、負けずに文化を語り継いで守って欲しい

    • +5
  25. どうやらキリスト教視点で書いてるんだろうけど、
    偉そうに「異端信仰」とか
    エルフを「冒涜的ないきもの」とかいちいち鼻につく。
    なんかそういう思想の方が怖い。
    そゆこと言って排他的なことするから
    7代まで恨む儀式とか編み出されるんだよ。って思った。
    代々守ってきた大事な土地や神様冒涜されたらそりゃ怒る。
    死者を生き返らせる云々は
    「このくらいリスクがあるんだからそんな自然に反すること願っちゃダメ」
    って言い聞かせるためのものに感じた。

    • 評価
  26. 中世北欧の神聖な数字って9だからそれで9倍なのかね?

    • +5

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