この画像を大きなサイズで見るスローモーションは動きを際立たせ、美化されるといった効果がある。普通に走っているだけでも、水滴が飛び散るだけでも、人が殴られる瞬間さえ、全てが象徴的なシーンに見えてくる。昔から、多くの映画監督たちが映画にインパクトを加えるため、この技法を用いて撮影してきた。
今回は、映画史における「最高のスロモ―ション」映像トップ10とそのサイドストーリーを見ていくことにしよう。改めてこれらの映画を、スロモ中心にまた観てみたくなること請け合いだ。
第10位「マトリックス」
この画像を大きなサイズで見るスロモの撮影技法の1つ「バレットタイム」を語らずして、このリストを作成することはできない。“ウォンテッド” や “バッドボーイズ”などバレットタイムを使用した映画は多くあれど、やはりバレットタイムと言ったらこの映画だろう。
撮影当初は、俳優の周りを1つのカメラで高速移動しながなら撮影する、通常のスロモ撮影技法を使用する予定だったが、これがうまくいかず、「撮影カメラマンをロケットにくくりつけて飛ばしながら撮影しようぜ?」などという冗談が出るくらい撮影は難航していた。
その結果、苦肉の策として採用されたのが、1870年代に写真家エドワード・マイブリッジが発案した撮影技術だった。当時、エドワードは疾走する馬の脚が何本地面についているかを調べるために、16台のスチールカメラを並べ、連続で写真を撮った。そして、その静止画をパラパラマンガ的につなぎあわせ動画を作ったのだ。
この技術を用いて撮影された現場がこれだ。原理はエドワードと同じだが、この映画では、16台とは比べ物にならないくらいの大量のカメラが使用され、俳優はグリーンスクリーン上でアクションをし、それをCGで加工している。その集大成のマトリックスは、その後のアクション映画に大きな影響を与えることとなった。
第9位「ジャッジ・ドレッド」2013年公開版 (1995年のジャッジ・ドレッドのリメイク)
この画像を大きなサイズで見るスローモーションを使えば、普通の世界を別の角度から見る事ができる。特に、薬でハイになっている世界を映し出すには格好の技法だ。面白いことに、この映画では体感速度を遅く感じさせる、その名も「スローモー」という新型ドラッグが出てくる。
中でも最高のスロモシーンは、マーマ役のレナ・ヘディが高層ビルから突き落とされ処刑されるシーンであろう。優雅な曲が流れる中、多彩な色を織り交ぜながら落下していくマーマ。その最後は残虐的ながらも華麗なものに仕上がっている。
第8位「ウォッチメン」
この画像を大きなサイズで見る「300」や「ガフールの伝説」など、スローモーション技術で有名になった監督と言えばザック・スライダーだろう。彼は「マン・オブ・スティール」以外の全ての作品でスローモーションを使用するくらいスロモを愛している。スロモ美をふんだんに盛り込んだこの作品は、コミックの世界を忠実に実写化している。
各シーンに散りばめられた細やかなディテールはまるで一枚一枚が絵画のようだ。警察官が女性のシャツの中を覗き込んだするようなジョークシーンも満載だ。そして、一番の見所は、歴史的象徴となっている出来事や事件に、キャラクターたちが登場する点だろう。コミックを読んでない人は話の流れをつかむのが難しいかもしれないが、これはまさに実写化されたコミックの傑作と言える作品だろう。
第7位「ゾンビランド」
この画像を大きなサイズで見るスロモはオープニングで使っても効果的だ。オープニングでスロモを使う映画には「アポカリプス」の回想爆発シーンや「炎のランナー」のビーチを走るシーンなどがあるが、「ゾンビランド」ほど豪華にスロモを駆使している映画はないだろう。
スロモを使うと何でもクールに決まる。何の変哲もない、つまらないシーンもスロモ仕様にするだけで味が出てくる。コメディーとホラーが見事にマッチしているこの作品、スロモにかかると、街が破壊されていくカオスでさえ美しく見える。大量の血に、車の爆発、ガラスが割れるシーンや、ストリッパーのゾンビの走る姿、スロモ多発のこの作品は傑作である。
第6位「レザボア・ドッグス」
この画像を大きなサイズで見る「アルマゲドン」から「モンスターズインク」まで、大人数でカメラに向かって歩くシーンをスロモにしている映画は数多くあるが、「レザボア・ドッグス」のオープニングは不朽の名作だろう。
スローモーション動画の原理は実にシンプルだ。映画では、1秒24コマの映写が一般的である。通常24コマで撮るところを、倍の48コマで撮り、再生する時に24コマ数で再生すると、スロモが出来上がるというわけだ。この技法はオーバークランク撮影(早回し撮影)と呼ばれている。
今でこそカメラはモーター式だが、昔は手回し式だった。そのため、映画界では、手回しハンドル(クランク)を使った用語が多い。クランクインやクランクアウトなども、このクランクからきている。しかし、全てのカメラにこの機能がついていた訳ではない。噂によると監督を務めたタランティーノは、モーターカメラを使う予算がなかったため、同じコマを2回使うことで、スロモにしたという。なんとなく動きが少しガクガクして見えるのも、そういう理由なら納得だ。しかし、タランティーノはそれを感じさせないほど見事なオープニングを作りだした。
第5位「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」
この画像を大きなサイズで見るスロモがその真のパワーを発揮するとき、それは銃撃戦での破壊などのシーンだ。激しいアクションシーンでは、全てを追っかけるのが大変だ。何が起きてるのかを分かりやすく伝えるためにもスロモは効果的といえるだろう。
ジョン・ウー監督のこのハードボイル映画はおそらく香港映画史の中でも有名な作品のひとつである。彼は、銃(ガン)とカンフーを合体させた「ガンフー」スタイルを生み出したり、平和の象徴である白いハトを映画の中で使うなど独自のスタイルを築き上げてきた。ジョン・ウーが暴力を描くのはその酷さを伝えるためで、彼自身、暴力は否定している。本作品で有名な、階段の手すりを滑り落ちながら二丁拳銃をぶっ放すシーンは圧巻だ。他にも激しいアクションシーンに効果的にスロモを取り入れ、流れるようなリズム感を作り出している。
第4位「シャイニング」
この画像を大きなサイズで見るこれまで挙げてきた映画では、スロモは主に爆発やアクション、緊迫感、ユーモア表現などに使われてきたが、ここでホラーの登場だ。スロモで恐怖を描くことで有名な監督といえば、ザック・スライダー、タランティーノやマイケル・ベイなど挙げられるが、キューブリックが挙げられることは少ない。
しかし、実はキューブリックもスロモの達人である、「2001年宇宙の旅」や「時計じかけのオレンジ」でも彼のスロモ手腕は遺憾なく発揮されている。そんな彼の作品でも一番なのが、「シャイニング」のエレベーターから血が噴出してくるシーンだ。スロモで恐怖を表現するのは難しいが、これがうまくいくと、とんでもないものができる。3カットから構成されるこのシーンでは、約1000リットルの血糊が使われ、その準備には9日もかかったという。リアリティー感を追求し続けた彼の努力が映画史で一番不気味なスロモを生み出した。
第3位「オリンピア」
この画像を大きなサイズで見るスローモーションは何も近代映画だけではない、古典作品でも重宝されてきた。黒澤明の「七人の侍」の絶妙なスロモ使いも傑作だが、美を表現するために、スロモを極めたのが「オリンピア」だ。
ナチスからの全面の支持を受けていたため、レニ・リーフェンシュタールの作品はプロパガンダ映画と非難されることがあるが、彼女は誰もが賞賛するほど、たぐいまれなる才能を持っていた。人間の身体美を映し出したこの映画でも、スロモを駆使したダイビングシーンは息をのむほど美しい。
この作品は、撮りなおし映像なども含んでいるためドキュメンタリーとは言えないという人もいるが、「究極の美」のみを追求していた彼女には、そんなことはどうでもよかったのだ。
第2位「ドライヴ」
この画像を大きなサイズで見るスロモがバイオレンスにおいて凄まじい効果を生み出すことはもう分かっていただけただろう。映画監督もバイオレンスに美の要素を加わえる目的でスロモを使用していることは否定できない。「レイジング・ブル」から「ジャンゴ 繋がれざる者」まで優雅なバイオレンスはいたるところで描かれている。
しかし、こういったバイオレンス表現とは一線を越す作品が「ドライヴ」だ。衝撃的なエレベーターシーンでは、バイオレンスと美が対象的なものとして描かれている。惹かれあった主人公のドライバーが人妻アイリーンに最初で最後のキスをした直後、ドライバーは一緒に乗っていた刺客を残虐なまでに踏み倒して死に至らしめる。そんな彼の残虐さに呆然とするアイリーン。彼女に対する狂おしいほどの愛と、抑えられない狂気のコントラストが見事に描かれた場面である。それは、とめどない優しさに溢れるキスと、それに続く残虐的な暴力描写に見て取ることができる。そして、最後のスロモ瞬間はドライバーが振り返りアイリーンを見つめるカットだ。胸が引き裂かれるような美しい別れのシーンに仕上がっている。
第1位「ハート・ロッカー」
この画像を大きなサイズで見る堂々の第1位は「ハート・ロッカー」のオープニングシーンだ。爆発こそ完璧なスローモーションの使い方だろう。華麗なバイオレンスなどないが、この作品では、人間の恐怖、痛み、緊迫感がスロモを通してリアルに伝わってくる。
CGIも使わず、メロドラマもない、一人の男が戦場で自分を失っていく様を描いた作品だ。戦場では一秒一秒が生死の分かれ目、その事実が観ている側もヒシヒシと伝わってくる。生々しく胸がえぐられるような緊迫感をスロモにより見事に表現しているといえるだろう。












さ、参考動画を…
ペキンパーとクローネンバーグの「クラッシュ」が無いのが意外。
最近だと「ジャッキー・コーガン」でレイ・リオッタが死ぬシーンが良かったなぁ。
多分、多くの人が思っただろうが、
なぜペキンパーが入ってない!?
なんでパロられるぐらい有名な「アンタッチャブル」と「キャリー」がない?
どーよこのランキング。
バカな・・・・・
戦艦ポチョムキンが無い・・・・だと・・・・・・
オデッサシーケンス無いだけならともかく、デパルマの映画さえひとつも無いとか・・・・・・
一体全体どこのニワカに評価させたらこんなランキングになるの?
デパルマやヒッチコックの映画さえ未鑑賞なの?
普通のものも、つまらないものも、ひどい暴力も、
スロモにするだけで「美」になる。
もてはやされるのがわかるね。映画の本質がある。
いや、ここはgifだろおお
バーバーのアダージョが流れる中、エリアス軍曹が銃撃に追われ
ジャングルから逃れ出てくるシーンが忘れられない
『ジャッキー・コーガン』がないな!却下だ!!
最近やったシャーロックホームズにもあったよね?
確かにただ単に逃げてるシーンよりも見ごたえがあった
アンタッチャブルのベビーカーのシーンを真っ先に思い浮かべたが…
エックスメンは?
何人か書いてるけど、スローモーションといえばペキンパーだったのにな><;
アンタッチャブルはポチョムキンだろ。インパクトで言えばペキンパーと言う事になる。
アルマゲドンがない
ソードフィッシュがはいってないなんて・・・
※16
アルマゲドンは早送り(走馬灯)では?
ミッション8ミニッツ
ペキンパーとレオーネがないのは何故???
ロッカーは序盤のほうは良かったけど途中の敵を追っていく辺りから蛇足だった
爆弾に集中しとけよ
キュブリックは時計仕掛け~の海に落下シーンもいいよね
スローモーションはここぞってところで効果的に使わないと途端に陳腐になる地味に難しい手法だと思う。
ソードフィッシュのバレットタイムはスローモーションに入らないのですか・・・
アンタッチャブルの階段銃撃シーンは??
乳母車サイコーだったろ
ジョンウーの鳩とか
スレタイを見て真っ先に二丁拳銃の香港マフィアが台車に寝そべって走りながら銃乱射したり
鳩が飛んだりするスローモーションシーンが浮かんだが出てて安心した
好きな映画ばっかりで嬉しいな
「俺達に明日はない」は?
衝撃度と影響度でいったらハートロッカーが一位はないしマトリックスはもっと上だしペキンパーも入れろ。
ソードフィッシュはかなりなモンだよな。 入ってないなんてかなしい
“トランスフォーマー” シリーズもスローモーション結構使われてるし有りだと思う。
アンタッチャブルは殿堂入りか?
まさしくアンタッチャブルなんだな。
映画で一番有名なのはアンタッチャブルのような・・・
80年代くらいまでは、宇宙の無重力をスローで表現してたな。
今となっては恥ずかしい手法だが、
『007/ムーンレイカー』の宇宙ステーションのシーンは
スロー映像としては白眉だわ。個人的に。
自分が見た映画の中ではソードフィッシュだなあ
これスローのランキングじゃなくてスローの説明動画だろ。。
今年公開の「X-MEN」
クイックシルバーのペンタゴンのシーンはすごくよかった
あの場面に持っていかれた感じ
※37
>>今回は、映画史における「最高のスロモ―ション」映像トップ10とそのサイドストーリーを見ていくことにしよう。
と書かれているが?
レザボアのオープニングは、ただ歩いているだけ&まだ何も始まっちゃいない場面、なのに目に焼きついて忘れられないというシーンだ。スロモもだが、この映画の俳優陣や、シャイニングの母親役の女優さん、ドライブのR・ゴズリングとか、たとえそこまで有名でなくても一度見たら忘れられない顔(表情)をキャスティングするってのは、それ自体優れた演出効果なんだなと思う。
※38あれよかったな
CGI?1位の
第8位『ウォッチメン』の監督は「ザック・スナイダー」ですね。
ボブ・ディランが流れるオープニングでぐっとくる。
サム・ペキンパーの数ある名画に一票!
♪出ー会いはー スロォーモーションー
スウィングガールズのイノシシのシーンが…
ある訳ないか
新・男たちの挽歌に出てる國村隼さん、若いなw
スローって劇的な瞬間をコント風にする効果もあるよね
ペキンパーの「ガルシアの首」で、ニコニコ笑っているおじいちゃん、おばあちゃん
(実は極道)がマシンガンでぶっ飛ばされるスローは秀悦だよな
ラ・ジュテ入ってないね~
ラ・ジュテのあのシーンはスローモーションて言わないのかな?
映画ファンの性質がよく現れたコメ欄で
アンタッチャブルが無いとは…
ワイルドバンチェ……