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14万年前の墓に埋葬された子供、ネアンデルタールと現生人類の混血だったかもしれない

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(著) (編集)

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イスラエルにあるスフール洞窟 / Image credit: Hanay via WIKI commons (CC BY-SA 4.0)
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 世界最古の墓の1つに埋葬されていた約14万年前の子供の骨は、現生人類(ホモ・サピエンス)とネアンデルタール人との混血であった可能性が高いという。

 この遺跡は、現在の中東地域にあたるレバント地域のスフール洞窟で、研究チームが頭蓋骨や下顎、内耳の構造をCTスキャンや3Dモデルで詳しく調べた結果、両者の特徴を併せ持っていることが明らかになった。

 この発見は、レバント地域における人類最古の埋葬文化が、ホモ・サピエンスだけではなく、さまざまな人類が交っていた可能性を示している。

・約14万年前に埋葬されたスフール洞窟の子供はネアンデルタール人と現生人類の混血だった可能性

・子供の骨にはホモ・サピエンスとネアンデルタール人双方の特徴が見られ、種の分類が困難だった

・最古の埋葬文化は現生人類のみのものではなく、複数の人類が共存・交雑していた可能性がある

 この研究は『l’Anthropologie』(2025年6月14日付)に掲載された。

人類はいつ、どのようにして埋葬文化を持ったのか?

 今からおよそ10万年前、東部地中海沿岸の「レバント地域」で、人類が死者を弔うために埋葬という行為を始めた。

 これは人類の認知や文化における大きな転換点とされている。しかし、そうした墓に眠る人々は、現代人とは少し異なる存在だった可能性がある。

 新たな研究によると、世界最古の墓のひとつとされるイスラエルの「スフール洞窟」で発見された子供の骨は、ネアンデルタール人と現生人類(ホモ・サピエンス)の混血である可能性が高いという。

 約14万年前に埋葬されたこの子供は女の子で、死亡時の年齢は3〜5歳と考えられている。

 発見当初はネアンデルタール人と現生人類の中間的存在とされていたが、のちに解剖学的にホモ・サピエンスに分類された。

 しかし、この見解には異論もあった。

 フランスやスペインで発見されたネアンデルタール人の子どもの骨との類似点が多く、本当にホモ・サピエンスなのか疑問視する声もあったからだ。

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Photo by:iStock

ホモ・サピエンスとネアンデルタール人の混血だった可能性

 そこでフランス国立自然史博物館やイスラエル、テルアビブ大学の研究チームは、この子どもの脳頭蓋と下顎をCTで測定するとともに、内耳の骨迷路の3Dモデルを作成。これに基づき、この子どもの出自に迫ることにした。

 その結果、頭蓋骨の形状はホモ・サピエンスに近い一方、下顎はネアンデルタール人に似ているということがわかった。

 また内耳の形状はホモ・サピエンスのそれだったものの、歯のアーチや犬歯・切歯の並びはネアンデルタール人のものだったという。

 こうした特徴は、この子どもがホモ・サピエンスとネアンデルタール人の混血であることを示唆している。

 つまり彼女はホモ・サピエンスにもネアンデルタール人にも属さない存在なのだ。このため、研究チームは「スフール古人類集団(paleodeme)」に位置付けるべきだと提案している。

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世界最古の埋葬墓の1つ、スフール洞窟 / Image credit:WIKI commons  (CC BY-SA 4.0)

太古のレバント地域には複数の人類が混在していた

 世界最古の墓の1つに埋葬された子供がホモ・サピエンスとネアンデルタール人の混血だったという発見は、当時のレバント地方がさまざまな人類が混ざり合った、生物学的にも文化的にも雑多な土地だった可能性を示している。

 そもそも埋葬という行為自体が、ホモ・サピエンスだけの話ではなく、ネアンデルタール人をはじめとする複数の人類種に共通する文化だった可能性もあるのだ。

 だが、そうした複数の人類種とは具体的に誰のことなのか?

 これについて、研究に携わった国立自然史博物館のアンヌ・ダンブリクール=マラッセ氏は、「複数のホモ属が交わったことは確かですが、系統までは不明です」と語っている。

 レバント地方では、問題の子どもほど古いネアンデルタール人の化石が見つかっていないため、「未発見の先住系統が存在した可能性」すらあるとのことだ。

References: Sciencedirect / Child From World’s Oldest Burial Was Neanderthal-Homo Sapiens Hybrid

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この記事へのコメント 13件

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  1. こうやって考えてみると、ネアンデルタール人は滅びたのではなくて、ヒトと共存しているうちに種がヒトに取り込まれてしまったのかも知れませんね

    • +20
    1. そういう意味では現代がネアンデルタールの全盛期という表現を何かで読んだなあ
      現代人が数%ずつ持つネアンデルタール由来の因子を合計すると彼らの絶滅前よりずっと多くなるというね

      • +5
    2. それって、「絶滅」なのかと思ってた。。。

      • +2
      1. ネアンデルタールと同様に現代の人類も単系統を維持できていないことがほぼ確実だから
        さかのぼって全ての古代の人類は絶滅していることになるね

        • +3
      2. 雑種が増えてるだけやで?
        和牛も黒毛和種・褐毛和種・短角和種・無角和種だけで、乳牛のホルスタイン種の交わると交雑種になって和牛とは言わない。
        ネアンデルタール人やデニソワ人の影響を受けていないホモ・サピエンスの純血種は、アフリカの黒人くらいやで
        日本人は、雑種のまた雑種や

        • +6
  2. 古代の人類は思ったより頻繁に種族間で交雑してたんだろうか

    • +17
  3. 太古の人類でさえ種の壁を越えて一つになろうとしていたのに…今の人類と来たら

    • +8
    1. 今も変わらず相手を取り込もうとしてる
      遺伝子が混じったからとって穏やかな話とは限らないよ
      何せ今の人類の先祖なんだから

      • +11
  4. 生活や文化や言語(?)など違っただろうに、出会って好意をいだき
    一緒に住み、子供をもうけ、子育てをし…….
    なんだかロマンチックだよ♡♡

    • -2
  5. 出自の異なる生物が交配できるのかという疑問がある。ホモサピエンスの先祖が、あらかじめヨーロッパに渡ってネアンデルタールになり、ホモサピエンスを待っていたのかもしれぬ

    • +1
  6. 違う人種のくせにやたら似てる同士を見ると現生人類ってどこかで混ざってんだろなーと思うわw

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