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火山は木々を通じて秘密の信号を送っていた。NASAが人工衛星で観測し噴火予測

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 樹木は雄弁だ。その声に耳を傾ければ、火山の噴火すら予測することができる。

 火山の噴火が迫ると、マグマの上昇にともなって周辺の二酸化炭素が増える。すると周囲に生える木々はこれを吸収し、緑が色濃くなる。

 今NASAとスミソニアン協会の研究者たちは、このわずかな色の変化を宇宙から人工衛星で観測して、火山の噴火を予測しようとしている。

早期火山噴火予測の大切さ

 火山の噴火は、自然の力強さや壮大さを実感できる美しい現象だが、ちっぽけな人間にとっては破壊的な被害をもたらす畏怖すべきものでもある。

 今日では、世界人口の約10%が火山の被害を受けるリスクがある地域に暮らしているといわれている。

 そうした地域の住民にとって、噴火によるマグマや火山灰、土砂崩れや津波などは、簡単に命を落としかねない危険な代物だ。

 火山の噴火を止めることはできない以上、その前兆をいち早く察知することが命を守る鍵となる。

 噴火前には、マグマが二酸化炭素や二酸化硫黄などのガスを放出する。二酸化硫黄は衛星からも比較的容易に検出できるが、より早い段階で放出される二酸化炭素は、検出が非常に難しい。

 だがその分、この早期の二酸化炭素放出こそが、火山の目覚めを知らせる貴重な初期サインとなり得るのだ。

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コスタリカ、リンコン・デ・ラ・ビエハ火山付近の水たまり。マグマの上昇に伴って放出された二酸化炭素が泡となって湧き出している/Credit: Alessandra Baltodano/Chapman University

木々が語る火山噴火の兆候を宇宙から観測

 NASAとスミソニアン協会の研究チームは、それを宇宙から行おうとしている。

 マグマが地殻を押し上げながら上昇するとき、二酸化炭素などのガスが放出される。樹木はこの二酸化炭素を吸収し、葉がより鮮やかな緑に色づく。

 そこでこのわずかな色の変化を人工衛星で観測し、噴火の危険な兆候を検出しようというのだ。

 樹木の色ならば、さまざまな人工衛星で対応できるのも、この方法のメリットの1つだ。

 その有効性は、プロジェクトに参加するヒューストン大学の火山学者ニコール・ギウン氏らによって確認されている。

 彼女らは、NASAのLandsat 8やTerra、ESAのSentinel-2といった地球観測衛星が撮影した画像で、シチリア島沿岸にあるエトナ火山周辺の樹木の色を分析し、その色と噴火の兆候を告げる二酸化炭素に強い相関があることを証明している。

 さらにパナマやコスタリカで行われた地上での調査では、分光計で植物の色を解析し、衛星画像の正確さについても検証された。

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2008年5月2日、9000年ぶりに噴火したチリ南部のチャイテン火山。火山周辺の植生変化を人工衛星でモニタリングすることで、噴火を早期に予測できる可能性がある/Credit: Jeff Schmaltz, MODIS Rapid Response Team, NASA Goddard Space Flight Center

火山から直接二酸化炭素を検出するのが難しい理由

 二酸化炭素の増加を火山から直接検出できるのでは?と思うかもしれないが、宇宙から二酸化炭素そのものを観測するのは難しい。

 地球の空気にはすでに大量の二酸化炭素が含まれているからだ。そのため元々あるものと火山から噴出したものを簡単には区別できない。

 大きな噴火の二酸化炭素なら人工衛星の特殊なセンサーで検出できる場合もあるが、噴火の兆候となる微量な二酸化炭素となると、今の時点では現地で測定するしかない。

 では直接現地で調べればよいのでは?と思うだろう。

 世界には噴火する可能性のある火山がおよそ1350もあり、それらのほとんどは人里離れた険しい山岳地帯にある。そんな場所を、例えドローンを使っても、人力で調べるのには限界があるうえに危険なのだ。

 そこで二酸化炭素そのものの代わりに、その指標となる樹木の葉の色が注目されたのだ。

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リンコン・デ・ラ・ビエハ火山近くの熱帯雨林の樹冠に二酸化炭素センサーを設置する研究者/Credit: Alessandra Baltodano/Chapman University

植物の反応を利用した火山監視の試み

 この葉の色で噴火を予測する方法は万能ではない。

 たとえば火山の中には、肝心の森林が育たない気候の地域にあるものもある。

 また森林が育ったとしても、それぞれの環境によっては樹木の二酸化炭素への反応は異なるし、森林火災・病気・気象といった人工衛星のデータ解析を難しくする要因もある。

 したがって樹木による噴火予測は、地震波や地盤の変化といったほかの予測技術と組み合わせることで真価を発揮しそうだ。

 それでも火山由来の二酸化炭素を観測する有用性はすでに実証されている。

 2018年1月、フィリピンのマヨン山で大規模な噴火が発生したが、このときは二酸化炭素を検出することでその被害を未然に防ぐことに成功した。

 新たに設置された二酸化炭素・二酸化硫黄センサーによって1月前に噴火が予測され、5万6000人以上が避難。その甲斐あって、人的被害はまったく出なかった。

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プロジェクトには日本の研究者も参加している。写真の人物は、チャップマン大学客員教授、横山岳氏/Credit: Alessandra Baltodano/Chapman University

 宇宙からの樹木モニタリングという目下研究中の予測技術は、広範囲にわたる火山のモニタリングを可能にし、噴火の兆候の迅速な検出に役立つ。

 研究者は、この技術が噴火予測におけるゲームチェンジャー(革新的な手段)になると期待している。

References: NASA Satellite Images Could Provide Early Volcano Warnings

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この記事へのコメント 10件

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  1. そっかー、対象の火山は人里離れたところにあるものなのね。 都市近傍だと自動車の排ガスや人の排出する二酸化炭素と区別付かないものなーとおもったのでわかりました。 面白い切り口ですね。 日本だと地殻変動(傾斜とかから山体のふくらみを検出など)を測定しているけどこの方法なら上空を衛星が通ればいいものね。 うまくいくといいなと思います

    • +1
  2. 従来のセンサー類に加えて、こう言う部分でも窺い知れるから衛星も使って多角的に噴火を予知しようぜって話だよね。

    • +3
  3. 災害発生の予測材料が増えるのは良いことだ

    • +4
  4. いわゆる「宏観異常現象」のひとつでしょうね
    自然災害予知に役立つ可能性に期待

    • +1
  5. 近くに火力発電所とかがあるとそこから出るCO2で
    火山の影響が見えにくくなったりするのかな

    • +1
  6. この表題だと、まるで火山自身が能動的に木々へ信号を送ってるみたいな表現になってますが、そういう訳ではないんですよね?

    • +3
  7. 植物の根と菌類がネットワークを形成してる
    みたいな話かと思ったら違った

    • +2
  8. ということは桜島周辺の木々の緑は濃いいわけか

    • +1

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