メインコンテンツにスキップ

茶トラ猫はなぜオスが多いのか?猫の毛色を決定する遺伝子の謎をついに解明

記事の本文にスキップ

14件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
image credit:unsplash
Advertisement

 猫の毛色は多種多様だ。しかも茶トラはオスが多く、三毛猫や麦わら、サビ猫のはほとんどがメスといったように、毛色によって性別に偏りがある場合もある。

 前回、オレンジ色の毛を持つ猫には、独自の遺伝的変異があるという未査読の研究結果を報告したが、今回正式に査読され『Current Biology』(2025年5⽉15⽇付)誌に掲載された。

 改めて60年来の謎だった猫の毛色に関する研究結果を見ていこう。解明の決め手となったのは、福岡市内で暮らす猫たちだったという。

猫のオレンジ色の毛色は特定の遺伝子に関わるDNAの欠損

 これまで、三毛猫やサビ猫のほとんどがメスで、オレンジと黒の毛色を決める遺伝子がX染色体上にあることは以前から分かっていたが、具体的な遺伝子は特定されていなかった。

 だが新たな研究により、オレンジ色の毛を作る遺伝子の正体は、X染色体にある「ARHGAP36」と呼ばれる遺伝子領域であることが判明した。

 九州大学をはじめとする研究チームは、福岡市内で暮らすさまざまな毛色の猫18匹からDNAを集め、解析した。

 その結果、ARHGAP36遺伝子領域にあるはずの5000文字分のDNA配列が欠けていることが判明したのだ。

 この欠けの有無は、オレンジ色の毛があるかどうかにピッタリ一致しており、そのことは海外のものを含むほかの猫のデータからも裏付けられたという。

この画像を大きなサイズで見る
Hiroyuki Sasaki/Kyushu University

オレンジ遺伝子はメラニン色素の合成を左右する

 ARHGAP36遺伝子領域の欠けは、合成されるメラニン色素の種類に影響を与えているようだ。

 皮膚の色や毛の色を決めるメラニン色素には、黒や茶色を作る「ユーメラニン」と黄色や赤を作る「フェオメラニン」の2種類がある。

 研究チームがオレンジ色の毛が生えている皮膚で発現している遺伝子を調べたところ、DNA配列の欠けがある場合にはARHGAP36遺伝子の発現量が増え、その影響でメラニン色素の合成に関わる他の遺伝子の働きが抑えられることがわかった。

 その結果、黒いユーメラニンではなく、オレンジ色のフェオメラニンが合成されるようになる。これが、猫のオレンジ色の毛色の秘密である。

この画像を大きなサイズで見る
Hiroyuki Sasaki/Kyushu University

60年前の仮説の正しさも証明

  また遺伝子の働きを弱める「DNAメチル化」という仕組みを調べたところ、X染色体が眠った状態(不活性化)になると、その影響でARHGAP36遺伝子領域が強くメチル化されることも明らかになった。

 1961年、メスの細胞では一対のX染色体の片方がランダムに選ばれて不活性化されるという仮説が提唱された。

 三毛猫やサビ猫の模様はこの仮説と合致する例として広く受け入れられてきたが、今回の研究で、オレンジ遺伝子の正体が突き止められたことで、この60年以上前の仮説の正しさが裏付けられたことになる。

 猫の毛色のミステリーは、私たちの身近なところにも深遠なる謎が隠されていることを教えてくれる。

 その謎の解明に貢献した九州大学生体防御医学研究所(研究当時)の佐々⽊裕之特別主幹教授は、「私たちの身の回りには未解決の問題がたくさんあります。生物学の面白さ、生命の神秘を少しでも感じていただけたら嬉しいです」と、ニュースリリースで述べている。

この画像を大きなサイズで見る
Hiroyuki Sasaki/Kyushu University

いつこの遺伝子変異は現れたのか? 

今回の研究では、この変異がいつどのように生まれたかについては明らかになっていない。

 しかし12世紀の絵画にはすでに三毛猫の姿が描かれており、この変異が比較的早い段階で現れたことを示唆している。

 佐々木教授は、「古代エジプトの猫の壁画や、ミイラ化された猫のDNAを調べることで、変異の起源に迫る研究を行いたい」と語る。

 今後の研究によって、猫の家畜化の歴史と遺伝の関係がさらに明らかになる可能性がある。

 なお、ほぼ同時期、スタンフォード大学の研究チームもまったく同じ結論に辿り着いたとのことだ。

 これらの研究は『Current Biology』(2025年5⽉15⽇付)に掲載されている。

 また論文の未査読版を紹介した時の記事も参照してほしい。

References: A deletion at the X-linked ARHGAP36 gene locus is associated with the orange coloration of tortoiseshell and calico cats / 三毛猫の毛色を決める遺伝子をついに発見 / Scientists solve mystery of how orange cats got their coats — and why so many are male

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 14件

コメントを書く

  1. 茶系統は新しい色味なんだね
    アフリカ在住のイエネコのルーツのリビヤヤマネコはキジトラっぽい色味だわな

    • +4
  2. 人間は毛色と性別は関連がないけど、毛髪の多寡には影響があるからこの研究が人類の幸福に……うん、ネコ様のことだから、人類の幸福に貢献するな

    • 評価
  3. オスにハゲが多いのも生物学の面白さ、生命の神秘なんやね・・・ ( ´・ω・`)

    • +3
  4. なお、全ての猫が可愛さ遺伝子を持っている模様

    • +31
  5. 三毛猫なことで有名な佐々⽊裕之特別主幹教授じゃないか
    あのニュース映像とても好き

    • +1
  6. こんな可愛い顔で色とりどりって遺伝子レベルで反則だわな…

    • +5
  7. そういや毛並みで性格がある程度決まるって言ってたっけ
    黒猫は臆病になりがち
    茶とらは好奇心いっぱいでイタズラしがち

    • +3
  8. 塩基の欠損って単発なら自然界では珍しくないけど、
    5000塩基のまとまった欠損が定着するのは
    なんらかの選択圧があった?…と思ってしまいますね。
    (茶トラは懐っこくて可愛い!とか)

    • +2
  9. 次は茶トラ男子が大きく育つ遺伝子の報告が待ち遠しい

    • +5
  10. 茶トラはX領域に空白が必要で、茶トラ要素を持った雌猫でももう一つのXによっては三毛とかが発現しがち的な?ってこと…だと三毛メスの子がオスの場合半分は茶トラになるってことかな
    猫界だと顔が丸くてでかいのが男らしさの特徴になるけど(去勢すると顎が尖って三角顔になっちゃう)、オレンジを膨張色と捉えるのは人間も猫も同じなのかしら。同じシルエットでも他の柄よりオレンジの方がモテるとかの淘汰圧はあるのかな。

    • +2

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。