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絶滅の危機から復活なるか?養殖したウーパールーパーが野生下でも繁殖できることが判明

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(著) (編集)

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Photo by:iStock
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 両生類の中でもいわゆるウーパールーパーは、そのユーモラスな見た目や飼いやすさから、ペットとしても人気である。

 だが、野生下では生息域が激減しており、絶滅の危機にある生き物だというのをご存知だろうか。

 今回、メキシコの研究者たちによって、飼育下で繁殖したウーパールーパーが、野生下でも生存可能だということが証明された。

 これにより、今後は人間の手で繁殖させた彼らを野生に戻し、その生息数の安定を図れる可能性が浮上してきた。

ペットとしては大人気、でも野生ではほぼ絶滅

 ウーパールーパーは、野生下ではその生息地は非常に限られており、メキシコシティの南部にあるソチミルコという湖とその周辺でのみ生息が確認されている。

 かつては他の湖にも生息していたのだが、埋め立てなどにより生息場所が次々と奪われて、現在はレッドリストに載せられた絶滅危惧種となっている。

 その生息数激減のスピードは、恐ろしいほどに急激だった。1998年には1平方kmあたり約6,000匹が確認されていたが、2004年にはこれが1,000匹になり、2008年にはなんと約100匹にまで減ってしまった。

 そして2013年に行われた4か月に及ぶ調査では1匹も確認されず、現在はおそらく数十匹ほどしか、野生では生息していないのではないかと言われている。

 だが、ペットとしてのウーパールーパーは話が別だ。世界中で人気なこともあり、ペットとしては相当数が流通しており、繁殖も行われている。

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野生のウーパールーパーは茶褐色

 ウーパールーパーは両生類で、サンショウウオの仲間だが、おとなになってもほとんどが幼体の姿のままなのが特徴だ。

 あのユーモラスでキュートな表情は、子供の姿のままで大きくなったから、と言えるかもしれない。これを「幼形成熟」(ネオテニー)と呼ぶ。

 また、私たちが良く知る、白くてピンク色のエラを持つウーパールーパーは、「白変種」で、もともとの野生の姿ではなく、人工繁殖の過程で現れた体色の変異を人為的に選んで繁殖させたものだ。

 本来、自然界に生息しているウーパールーパーは黒や褐色で、泥や岩の多い湖底に溶け込むような地味な外見をしている。

 これは、天敵から身を守るためのカモフラージュとして機能しているためだ。白い体色は自然界では非常に稀、もしくは生存が困難である。 

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Photo by:iStock

人間が繁殖させたウーパールーパーを野生に戻す試み

 今回のプロジェクトは、飼育下で繁殖させた茶褐色のウーパールーパーをもともとの生息地に戻し、野生での生息数を増やせないかという試みだ。

 だが、養殖された生物は、野生に戻されても上手く環境に適応できず、生きながらえることができないケースも多い。

 そこでメキシコの研究チームは、国立自治大学の大学の生態環境研究所で飼育されていた18頭のウーパールーパー(オス9匹、メス9匹)を選択し、ソチミルコ湖に8匹、人工湿地ラ・カンテラ・オリエンテの池に10匹を放流した。

 そして無線送信機とボランティアの協力を得て、40日間にわたり少なくとも1日2回、各地点で彼らを追跡した。

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image credit:photoAC

養殖ウーパールーパーはすんなり野生の環境に適応

 その結果、ウーパールーパーたちは野生での環境にあっさり適応し、中には体重を増やした個体も3匹確認されたという。

 自治大学の研究者アレハンドラ・ラモス氏は、この結果について次のように語っている。

ソチミルコでの最も驚くべき発見の一つは、若い個体よりも高齢の個体の方が、1日に移動する距離が短かったことです。

その理由はまだ解明されていませんが、高齢の個体は経験を積むことで、十分な餌のある質の高い縄張りを選んで守れるので、エサを探すために移動する必要性が減っている可能性があります

 残念ながら、この研究期間が終わった後、何匹かのウーパールーパーはサギなどの水鳥によって捕食されてしまったという。

 今後は野生化での繁殖を試みる際に、捕食者からどう守るかという点も課題になるだろう。

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Photo by:iStock

生息地の環境改善が野生での復活のカギになる

 また、ソチミルコ湖のあるソチミルコ地区は、人口2,000万人を超えるメキシコシティの南部にあり、「世界七大禁足地」の一つに数えられる人形島がある場所としても知られている。

 アステカ時代の名残を色濃く残している地域で、観光地としても人気なため、ウーパールーパーが生息する環境としては理想的とは言い難いのが現状だ。

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Anagoria, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

多くのサンショウウオやその他の水生動物は、生息地の喪失と汚染によって苦しんでいます。人間は水辺に住んでいることが多いため、これらの生態系は特に影響を受けており、ウーパールーパーのような両生類は特に脆弱なのです

 研究チームはウーパールーパーの野生での復活を実現するには、もともとの生息地であるソチミルコ湖の環境改善が欠かせないとしている。

 だがそれが期待できない場合、前述のラ・カンテラ・オリエンテのような人工の湿地を作って、そこでの繁殖を試みる「プランB」も視野に入れるべきだとしている。

「ウーパールーパー」という名前は日本だけのモノ

 実は「ウーパールーパー」という名称は日本独自のもので、一般的にはメキシコサラマンダーかメキシコサンショウウオ、あるいはアホロートルという名前が使われている。

 ウーパールーパーという名前は、この生き物が日清焼きそばUFOのCMに登場したときに、「アホロートル」では日本語としてちょっと…ということで、独自に考えられたんだそうだ。

 それが有名になってしまったもんだから、日本では一部の愛好家を除いて、一般的にはウーパールーパーという名称が広まってしまったというわけ。なのでここでもウーパールーパーという呼称を使っている。

 ちなみに前述の通り、ウーパールーパーが絶滅寸前であるのは野生下であって、ペット業界など飼育下では大量に繁殖されている。

 居酒屋なんかで食用として提供されているっていう話を以前お届けしたと思うが、チラッと見てみたら食べログには2024年8月の時点で写真が投稿されていて、今も食することができるかも。

 食用としての養殖を始めたと記事で紹介した会社は、あの後中国へ食用としてウーパールーパーの輸出を試みたようだが、今はどうなっているのかわからない。

 一応取り扱い生物として、ゾウリムシやヒドラなんかと並んで「アホロートル」との記載があったので、現在も教材・実験用としての販売はしているようだ。

 うちでも飼ってたたことがあるけど、のほほんとした姿はまさに癒しそのものだった。彼らが野生で復活を遂げられたら、それは素晴らしいことだと思うんだ。

 この研究は『PLOS One』誌(2025年4月30日付)に掲載された。

References: Movement ecology of captive-bred axolotls in restored and artificial wetlands: Conservation insights for amphibian reintroductions and translocations / Captive-Bred Axolotls Can Survive in the Wild, Sparking Hope for the Endangered Species

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この記事へのコメント 29件

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  1. 人間やイヌもそれぞれ猿とオオカミの幼形成熟だと言われてるそうだね。ウーパールーパーに魅力を感じるのは親近感という部分もあるのかな。

    • -6
  2.  改めて調べてみると 10cm-25cm とのことだけど、バイトで訪問したおうちにいたソイツは 30cm 位かもっと大きいように見えましたw きっと、びっくりして巨大に見えたのだと思います。 野生のものが数を減らした原因は水質悪化が原因なのかな。 環境が改善されて、サギの捕食などの淘汰圧に負けないくらい増えてくれるとちょっとうれしいな

    • +4
  3. 山椒魚は美味い と魯山人は言ったとか
    ゴールデンハムスターも復活させないとね

    • +3
    1. 魯山人が亀仙人に見えた…
      どうも疲れてるらしい

      • +8
  4. アホロートルのままだと悪口に悪口重ねがけしたような名前なので、日本では改名されたのも納得
    若い人は馴染みのない言葉かもしれませんがロートルは昭和の頃のスラングで「役立たずになった老害」的な意味

    • +15
    1. チョウセンメクラチビゴミムシにももっと穏当な名前が必要かもね

      • +9
        1. 別名:早乙女葛(サオトメカズラ)なんだけどね
          インドでは団子に混ぜて食べるとか写真家の紀行で読んだことがあるけど、最下層の人々が飢えをしのぐためで普通は食べないそうだ
          彼らはベジタリアンだったのかな?
          薬効はいろいろある植物だから体には良いだろう

          • +2
        2. その名前は妥当です。
          放置してると庭木が枯れるから駆除してるけど、むしると名前にふさわしい悪臭が本当にする(#`皿´)

          • +1
      1. デブスナネズミもどうかと思うが、メクラチビゴミムシの権威・故上野せんせいが「実際の差別と言葉は無関係。標準和名は学名に対応しており、変えると混乱を招く」おっしゃてるので・・・(でも聞いた本人はウッとくる→ 150cm)

        チビは「ヒメ」だと昨今ジェンダーに抵触?「マメ」はあるよね
        目の退化は表現むずかしい モウモク〇〇はだめか

        • +2
  5. ペットとして大人気で野生で生き抜くのは困難って、飼育が難しいわけでもなくインコや犬猫みたいに逃がして増えすぎの心配もなく、ある意味最高に環境適応してる

    • -2
  6. 両生類には住みづらい地球になってしまったのか?

    • +5
    1. オランダのファイア・サラマンダーが、一時4%まで激減したらしいね 涙
      カエルツボカビに近い菌が原因とか 

      (関係ないが色といい毒といい、とてもヨーロッパに広く住んでるように見えない)

      • +4
    2. レッドリストの記述がぶっちぎりに多い動物も両生類なんでまぁその通り…
      温暖化・未知の疾病・環境汚染と生来の弱点に致命的なレベルで相性が悪い

      • +5
  7. 検索したら「ツボカビを持つ可能性が高いので飼育したものを野生に返したり、遺体を土に埋めたりしてはいけません」と…
    まあきちんと検査してからやってるのでしょう

    • +6
  8. ウーパールーパーはアホの子っぽいけどサラマンダーはかっこいい大人っぽい

    • +2
  9. 「研究機関が終わった後」は「研究期間が終わった後」では?

    • 評価
  10. 確か、アホロートルは水温高めで、ヒーター付きの水槽で飼うらしいけど、どこかの高校の生物部に寄贈された何匹かのアホロートルは水が温かすぎて茹であげてしまったと言う話を聞いたことがある。

    • -3
    1. いや、寒いのは平気だけど夏の暑さが問題なのよ。
      ヒーターなしで八年くらい飼ってたよ。

      • +4
      1. そうなの?!
        じゃあ、事故だったのかな…

        • 評価
  11. こういう記事をみてペットを安易に放流する不届き者が出てこなければよいけど。

    • +6
    1. 研究してる方々による放流を目的とした繁殖個体でなければ遺伝子汚染(在来種でも起こるもの)ありますもんね。
      おまけに日本では外来種かつ、タイガーサラマンダーとの交雑もあるという。

      • +4
  12. 束ねられて出荷されてる画像を見たことがあったけど
    あれ中国だったのか・・・

    • 評価
  13. アホロートルって天然下だと変体するんじゃなかった?
    飼育下だとアホロートルの形状のままだけど

    • +1
  14. 山梨県でウーパールーパーの養殖やってて
    世界的レベルで有名って聞いたことがある

    • +1
  15. ウーパールーパーって タイガーサラマンダーがなんかとの混血やろ 駄目やん

    • 評価

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