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西暦8113年まで開けられない膨大なタイムカプセルが詰め込まれたアメリカの地下聖堂

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(著) (編集)

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 未来の自分に向けて、タイムカプセルに思い出の品を詰める。学校などで卒業生がよくやるやつだ。

 だいたいは大人になってから成人式とか、数十年後とかにもう一度掘り返されるのだが、アメリカ、オグルソープ大学の地下には、自分はおろか子や孫の代になっても開かれないタイムカプセル「文明の墓」が存在する。

 このカプセルが開かれるのは、なんと今から6,089年後の西暦8113年なのだ。

未来の人類に現在の文明の情報を残したい

 アメリカのジョージア州アトランタにあるオグルソープ大学の地下室に、そのタイムカプセルは存在している。

 地中や壁の中に埋められているとか、屋根裏部屋に置かれているとか、そんなありきたりな状況ではない。

 なんとこの大学にある地下室全体が「文明の墓」となり、膨大なタイムカプセルとなっているのだ。

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20世紀の情報を未来の考古学者に残したいという思い

 発端は1915年から1944年まで同大学の学長を務めた、ソーンウェル・ジェイコブス氏が、古代文明に関する情報の少なさに気づいたことだった。

 例えば古代エジプトに関する情報と言えば、碑文やパピルスに書かれた断片的な文書や後世の文献、墓所などから発掘された品々など、不完全で偏った情報源しかない。

 歴史学者でもあったジェイコブズ氏は、はるか未来の歴史家に、ある時代の科学的かつ徹底的な情報を残すことは、「考古学上の義務」だと考えた。

 そして20世紀初頭の世界の包括的な情報、いわばその時代の「切り抜き」を後世に残すため、タイムカプセルを作る計画を思いついたのだ。

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約6,000年後の世界に向けたタイムカプセル「文明の墓」

 まず、発明家であり写真家でもあるトーマス・キムウッド・ピーターズ博士を計画の責任者に指名。

 自分が学長を務めるオグルソープ大学の地下プールを幅3m、奥行き6.1m、高さ3mの密閉された部屋に改造した。

 この地下聖堂、「文明の墓」が完成するまでの間に、収蔵する品々の収集も行われた。収蔵品の多くは遺贈されたもので、中にはスウェーデン国王グスタフ5世から寄贈されたものもあるという。

 時代を表すものとして集められた品々には、衣類や日用品、当時最先端のテクノロジー、宗教関係の品々や書物なども含まれている。

 主な収蔵品は以下の通り。

日用品・ファッション:
万年筆、シャープペン、デンタルフロス、缶切り、おしゃぶり、歯ブラシ、ハンドバッグ、当時のファッションを着た男女の模型、服の型紙、種子のサンプル、バドワイザービール、ガム、食品サンプル

書物:
百科事典、古典文学、歴史書、聖書やコーランのマイクロフィルム

映像・音声:
レコード、映画フィルム、旅行記などのドキュメンタリーフィルム、豚呼びの声の録音

テクノロジー
蓄音機、映写機、マイクロフィルムリーダー、タイプライター、ラジオ、レジスター、電動ミシン、高度計、気圧計、電話、テレビ、トースター、機関車や飛行機、空調システムのミニチュアモデル

 中には「風と共に去りぬ」の原稿のマイクロフィルムや、ヒトラーやスターリン、ルーズベルト、ムッソリーニなど当時の指導者たちの音声録音といった貴重なものも収められている

 さらには万一この部屋を開ける人たちが英語を理解しないケースを想定し、ロゼッタストーン的な、未来人に英語を教えるための言語インテグレーターも。

 そして6,000年後に電気が使われていないことまで考えて、風車による発電装置も用意されているそうだ。

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1940年に封印、開封は8113年

 地下聖堂は古代エジプトの墓所を参考に作られており、エナメルで覆われた壁には、人類の歴史を示す絵文字が描かれている。

 すべての品々が収蔵された後、室内の酸素が抜かれ、不活性窒素に置き換えられた。そして1940年5月28日、いよいよタイムカプセルを閉じる式典が行われた。

 多くの参加者が見守る中、扉は溶接され、ジェイコブス氏からのメッセージを掘った銘板が貼り付けられた。銘板には次のように記されている。

この地下聖堂には、20 世紀前半に米国および世界全体に存在した文明の記念品が収められています。

空気を不活性ガスに置き換えたステンレス製の容器には、百科事典や歴史書、科学論文、新聞の特別版、旅行記、旅行談、映画フィルム、模型、蓄音機のレコード、および 1900 年から 1950 年にかけて存在した文明の状態や性質を確かめることができる同様の資料が収められています。

宝石や貴金属は含まれていません。

私たちはディカルブ郡、ジョージア州、米国政府、およびそれらの相続人、譲受人、後継者の法律、そして後世のスポーツマンシップに頼り、この地下室を 8113 年まで保存し、その時点で上記の政府機関およびオグルソープ大学の管理を代表する当局によって開錠されるよう指示します。

その時まで、この扉と地下聖堂の内容物が侵害されることのないよう、すべての人にお願いします

 ちなみに西暦8113年を開封の年としたのは、この計画が立案された1936年が古代エジプト歴元年から6,177年目とされていたためで、ジェイコブス氏は計画開始からさらに6,177年後の8113年に開封することに決めたのだ。

 彼はこの扉を開けた人々に向けて、次のようなメッセージも残している。

世界は人類文明を永久に葬り去ろうとしています。この地下聖堂で、私たちはそれをあなた方に残します

 約6,000年後に未来の人類がこの扉を開けたとき、彼らはいったいどんな感想を持つのだろうか。

DO NOT OPEN UNTIL 8113!!! The Crypt of Civilization at Oglethorpe University
Oglethorpe University Crypt | Travel Tales

References: There's a room-sized time capsule in Georgia that will be opened 6,098 years from now / Thornwell Jacobs: The Father of the Modern Time Capsule

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この記事へのコメント 25件

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  1. そんな地下室では核兵器さえ防御できないから役に立たないな

    • -9
  2. こういう文明のタイムカプセルは各国でもやってほしいな
    もし今の日本でやるとしたら何が入るかな

    • +11
    1. 戦争は人為的なものだから免れることは不可能ではないかもしれないけど地震があるからなぁ
      6000年は厳しいかも

      • +8
    2. 1970年の万博で埋めたタイムカプセル、ってのがあったはず。

      • +1
  3. こういうことを発想だけでなく実際にやる海外の熱さに憧れる

    • +19
  4. >この地下室を 8113 年まで保存し

    こういうメッセージはいつまで尊重されるんだろう
    例えば今謎の古い扉が見つかって「この地下室を 2050 年まで保存し」と書いてあったとしても準備ができ次第開けるよね?
    30年ぐらい前のものなら我慢するかもしれないけど300年ぐらい前のものならいそいそ開けそう

    • +11
  5. 真空にするとか窒素充填とかしないと保たんでしょうに…
    300年くらいならギリ解読してくれそうだけど、それ以上になると…う〜みゅ…

    • -3
    1. >すべての品々が収蔵された後、室内の酸素が抜かれ、不活性窒素に置き換えられた。

      • +16
    2. 真空や窒素でも容器自体が老朽化してダメになりそう。
      6000年となるとねえ。

      • +3
    3. 窒素充填して酸素がなくなると種子が死んじゃう。 バドワイザーのビールとかは炭酸分は残りそうだけど有機物は炭素とほかの化合物に分解してそうな気がします。
      紙が西洋紙だと酸性紙が多いかもだから分解してるかも? 和紙は中性子だから長く残るとか。 当時の紙はどうなんだろう? マイクロフィルムとかはフィルムが残ってれば読めそうだけど、今の CD とか DVD みたいな樹脂は仮にこういうところに入れても持たないだろうなと想像します。

      • -1
  6. 6,000年後、しっかり記録が残っていて開ける人が居るか、記録は失われて偶然見つかってもきちんと発掘する人が居るか、はたまた石器文明人が掘り当てて訳もわからず洞窟住居として使うか、もはや人類はほぼいなくなり虫やコウモリの巣窟となるか、さて未来はどのパターンだろうか。

    • +16
  7. >さらには万一この部屋を開ける人たちが英語を理解しないケースを想定し

    むしろ99%理解されないと思う。
    6000年前の言語を理解できる人がどれだけいるのかと。

    道具と一緒に使い方を説明した絵とか入れてるんかな?
    道具だけだと見当違いな使い方される恐れが大だよね。

    • -4
    1. 4000年以上前の言語も6つぐらい解明されてるから可能性は結構あると思う
      しかも英語でしょ
      アルファベットは3500年前ぐらい(雑)からあるし、世界の公用語だから例え言語インテグレーター的なもので理解されなくても、他の遺跡からロゼッタストーン的な解読がされそうだし

      • +7
  8. ロマンがあるけど、真空にしたところで残るやろか。
    結局、六千年ともなると石を掘った石板とかが一番残るのでは。

    • +5
    1. マイクロフィルムはさすがに無理そう。
      粘土板に刻んで焼くとか石に掘るのは実際に古代の文書が残った実績あるから可能性は高いな。
      他に現代で膨大な文章を未来に残そうとするなら劣化しにくい無機物にレーザー彫刻かな?と思うけど、ステンレスやチタンやガラスでも6000年後となるとどうなってるやら

      • 評価
  9. >古代エジプト歴元年から6,177年目とされていたためで、ジェイコブス氏は計画開始からさらに6,177年後の8113年に開封

    理由が適当すぎて笑った
    まあほぼ約束は守られないだろうね
    貴金属はないだろうけど貴重な資料、文化的価値で盗まれそう

    • -6
    1. これ以上ないロマン溢れる理由に見えたけどなぁ
      自分たちの最新技術がピラミッド並みの考古学として未来人に迎えられるとか最高じゃん

      • +6
  10. 窒素充填だけど、誰かが入った瞬間窒息するんじゃないか?現代人が見てるようなネットの情報も、文明が崩壊したら閲覧不可能になる。我々は石板を掘って残す必要があるのかもしれない。

    • -1
  11. 米国政府、およびそれらの後継者、、か。
    今の米国じたいが古代ローマの遠い後継者だからなぁ。

    • 評価
  12. おわかりいただけただろうか?
    収蔵品の映像・音声に”豚呼びの声の録音”があることを・・
    6000年後に残したい物に吟味され残ったんだな

    • +4
  13. タイムカプセルの技術にも進歩があるのがよくわかりますね…
    まだプラスチックは少なかったろうけど、紙とかフィルムとか、機械部品のゴムとか、おそらく部屋自体の塗装や防湿とか、どんなものからでも発生してくるアウトガスの概念とかあんまりなさそう…このあたりの知見は電子管・半導体・宇宙開発・医薬医療器具なんかのために研究されている。
    窒素充填、ステンレス容器にするくらいでは、たぶん不十分。
    1970年の大阪万博のカプセルだと、いろんな要素がかなり考慮されてきてて、記録を読むととっても面白い。検証用も用意されてて、そっちを30年で開封してチェックされてるしね。
    ロマンだけど、この感じだと6000年は厳しいかな。残したいなら100年あたりを区切りにいっかい現状技術で介入した方がいいのかも……趣旨からいって、開けちゃったらダメなんだろうけどね。

    • 評価
  14. 時間が来て開けてみたらカラだった、なんて事が起きなきゃ良いんだが。

    • +1

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