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黄色の食品着色料を使って生きたマウスの皮膚を透明化することに成功、人間にも応用可能

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(著)

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 ごく一般的な食品の着色に使用されている、「食用黄色4号」を使用することで、生きているマウスの皮膚を一時的に透明にすることに成功したそうだ。

 お腹を切らなくても、体内の様子を観察できるくらいに透明になるという。

  驚くのは、この透明効果はマウスだけでなく、仕組み的には人間にも有効であることだ。

 将来的には、血管を見えやすくして採血を楽にしたり、レザーを使ったがん治療や刺青の除去をより効率的にするなど、医療への応用が期待されている。

なぜ黄色の食品着色料で皮膚が透明になるのか?

 生き物の組織には、タンパク質・脂肪・体液など、さまざまな物質がつまっている。それらは同じ体内にあっても、浴びた光の跳ね返し方がそれぞれ違っている。つまり「屈折率」が異なっているのだ。

 そのおかげで生き物に当たった光の粒子は、進行方向を変え、あちらこちらへと飛び散っていく。

 飛び散った粒子が私たちの目の中に飛び込んでくれば、そこに皮膚が”見える”。だから私たちは透明ではない。

 ならば、その屈折率をうまい具合に調整して、光の粒子が飛び散らないようにしたらどうだろう?

 今回の研究チームは、それを安全かつ手軽に行う方法を考案したのだ。

 透明化魔法の秘密は、食品に使われる着色料「黄色4号」だ。「タートラジン」とも呼ばれており、ゼリーや清涼飲料水、アイス、あめ類、菓子類、漬物などを黄色く染めるときによく使われる。

 今回の研究チームが注目したのは、タートラジンに青い光や紫外線をよく吸収する性質があることだ。

 これを水に溶かして皮膚に塗ると、赤い光の吸収率はそのままに、屈折率だけを上げることができる。

 結果として、生体組織の屈折率が一様に整えられ、光が散らばらず、まっすぐ通過しやすくなる。つまり透明になるのだ。

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黄色4号(タートラジン)の溶液を持つテキサス大学ダラス校のオウ・ヅゥハオ氏  Image credit: Guosong Hong/Stanford University

マウスの頭皮に塗ると、頭蓋骨表面の血管が透けて見えるように

 研究チームは試しに、文字の上に薄くスライスした生の鶏むね肉を置き、肉の表面に黄色4号の溶液を塗ってみた。するとその下にある文字がはっきり見えるようになったのだ。

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黄色4号の溶液の濃度が高くなるにつれて鶏胸肉の透明度も上がる Image credit: Guosong Hong/Stanford University

 こうしてその魔法の効果が確認されたところ、今度は生きているマウスで試してみる。

 黄色4号溶液をマウスの頭皮に塗ると、頭蓋骨の表面に流れる血管が透けて見えてきた。

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マウスの頭蓋骨の上を走る血管を撮影したタイムラプス映像を6枚の画像にしたもの。段々と透明にになっていく/Image credit: Stanford University/Gail Rupert/NSF

 研究の中心人物米テキサス大学ダラス校の物理学助教授、オウ・ヅゥハオ氏は、プレスリリースで次のように説明する。

透明になるまでには数分かかります

フェイシャルクリームのようなもので、分子が皮膚に浸透するスピードによって、透明化するまでの時間が変わります(オウ・ヅゥハオ氏)

 その後の実験では、タートラジン溶液をマウスのお腹に塗ると、数分後には肝臓・小腸・膀胱といった内臓まで見えるようになったという。

 さらに腸内の筋肉の収縮や、呼吸や心臓の動きによって生じるお腹の微妙な動きも確認されたそうだ。

 素晴らしいことに、その効果はミクロンレベル(0.001mm)で有効で、顕微鏡による観察まで楽にしてくれるという。

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黄色4号を塗ったマウスの頭蓋骨の真下にある脳の血管をタイムラプス撮影した画像。マウスに外的損傷を与えることなく中身が見えるように。 image credit:Stanford University/Gail Rupert/NSF

効果は一時的なもの。将来的には人間の医療への応用も

 透明化はあくまで一時的なもので、水で皮膚を洗えば元に戻る。また体内に吸収されたタートラジンも48時間以内におしっこになって排出される。

 マウスの皮膚にはごく軽い炎症もみられたそうだが、体重や血液検査の結果から言うなら、長期的な健康への影響はないという。

 ただし、今のところ透明人間は誕生していない。人間の皮膚は、マウスより10倍もぶ厚いため、タートラジンを奥深く浸透させるのが難しいからだ。

 また適切な使用量も今のところはわかっていない。

 だが研究チームに加わった、スタンフォード大学、ホン・グオソン氏は、将来的に医療の現場で大活躍してくれる可能性はあると語る。

A window into the body: New technique makes skin invisible

この技術が進歩すれば、採血時に静脈を見やすくしたり、レーザーを使ったタトゥー除去を簡単にしたり、がんの早期発見や治療を支援する手段になるかもしれません(グオソン氏)

 さらにその先には、完全な透明人間が誕生する、なんて映画のような展開もあるかもしれない。

 この研究は『Science』(2024年9月6日付)に掲載された。

References: Researchers Create Solution That Makes Living Skin Transparent - News Center | The University of Texas at Dallas / Live Mouse Turned Temporarily Transparent Thanks To Yellow Food Dye And Clever Physics | IFLScience / Turning mice’s skin transparent with just yellow food dye

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この記事へのコメント 16件

コメントを書く

  1. 「ペイフォワード」でさー
    主要キャラの息子が未来では反抗期で「頭半分、皮膚が透けてる」ってのがあったね
    (おそらくストロンガーの悪役の名前が多く出るだろうが)

    • +3
    1. 「体中に昆虫ゼリーを塗りたくった全裸中年男性が逮捕されました。本人は、『お前たちには俺が見えているのか・・・?』と発言しており、警察は事件と事故の両方の可能性を・・・」

      • +4
  2. 血管が出にくい人も、
    これで失敗の刺し痕つけられまくること無く
    一発ですんなり注射を受けられるようになるんだろうか?

    • +18
    1. ソレめっちゃ思った!
      採血下手な看護師さんに当たった時最悪だもんね

      • +7
    2. 私、血管出にくいんで、採血する看護師さんが苦労してるんよね。
      これちょっと塗って見やすくなるならいいなぁ。

      • +15
  3. いいなぁ
    一年前に左肩痛めて肩と言うより腕の付け根が泣けるほど痛くて荷の腕裏が腕捻る度に鋭く痛んで肘から人差し指と中指に軽い痺れがあったけどどこ行っても五十肩だって言われて
    出された湿布貼りつつ教えられた運動してたけどまだ完全に治らないどころか、先日鈍い音と共に全く同じ部分がちょっと外れて戻った感覚と共に激痛が走って元の木阿弥(痺れてる指は薬と子に移動したけど)なこの肩の筋と神経が見たいよ……マジで噛んでないのかよこれで…

    • +4
    1. 肩の腱が硬化して肉離れが進行中っていう可能性もあるからひたすら腕を上げて肩の負担を減らした方がいいかと……
      体に使わない筋肉だと思われると容赦なく捨てられるからマジで労って

      • +1
  4. >採血下手な看護師さん
    ごめんなんやで~あなたで練習させてもらいまっさぁ~

    • 評価
  5. 黄色4号の食紅あったからさっそく試したけど
    全然透けなかった がっかり…
    やり方がまずいのか?

    • +6
  6. 若者に脳を透かしたファッションが流行ります

    • 評価
  7. 採血の練習なんて、慣れすぎて遭遇すると
    ああ〜って位にしか思わなくなった。

    特別いってぇ!ってのは経験ないけど、それ絶対血管貫通してるよね?ってくらい深々刺す人は1名いたよ。あのひとはね、たぶん皮膚透明になったところで、大差無いと思うよ。
    一応名誉のためいうと、やっぱり対して痛くはなかった。あれは注射器の進化の賜物かもしれないけど。

    • 評価
  8. メラニンまでは透明にできないので
    人間でもメラニンが少ない薄い皮膚になら使えるかもしれないってことか

    • 評価

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