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ベンタブラック並みの光吸収率。漆黒の闇に溶けて生きる超黒の深海魚たち

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(著) (編集)

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 深海は太陽の光がとどかない闇の世界だ。そこでは光と言えば、主に生体発光で放たれる光のことだ。

 またそうした環境ゆえに、深海で生きる生物たちは光に超敏感で、ほんの数個の光子を反射してしまっただけでも、危険な捕食動物に発見される恐れがある。

 そんな特殊な環境を生きるために、彼らは超黒い体を進化させた。光の反射を極限まで抑え、闇に溶け込むためのカモフラージュだ。

 米デューク大学やスミソニアン自然史博物館の研究グループは、メキシコ湾とモントレー湾を調査し、その深海の闇に潜む超黒い魚16種を確認。その成果を昨年の『Current Biology』で発表している。

海の中でのカモフラージュ法

 海にはカモフラージュして周囲の目をくらます生物がたくさんいる。タコやイカが良い例だ。しかしその方法は1つだけではない。

 たとえば日光が降り注ぐ浅い海ならば、透明な体や鏡のような体が有効だ。透明ならばそもそも見つかりにくいし、鏡のような体もまた周囲の光をそのまま反射することでうまく背景に溶け込むことができる。

 あるいはあえて光を放つという方法がある。ある種の生き物はお腹の発光器で太陽に似た光を放つ。すると日光に紛れて、かえって見つかりにくくなる。これは光の迷彩(カウンターイルミネーション)と呼ばれている。

 また色素もよく使われる。色素の色をうまい具合に調節して、背景と同化してしまうのだ。

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photo by Pixabay

光の99.5%以上を吸収する、深海の超黒カモフラージュ

 しかし光に乏しい深海となるとそうした方法では身を隠せなくなる。そこで暮らす生き物はかすかな光でも察知してしまう。たとえ透明の体であったとしても、わずかに光を反射してしまうので無意味だ。

 そこで進化したのが光の99.5%以上を吸収してしまう超黒のカモフラージュだ。

 研究によると、メキシコ湾とモントレー湾で見つかった超黒い魚たちの多くは、体の大部分が真っ黒な皮膚でおおわれている。

 そのため、その主な機能は光の反射を極限まで抑えて、周囲の生物から見つからないようにすることだと考えられている。

 たとえば超黒い魚たちは、反射率が2%の魚に比べると、捕食動物によって視認される距離が6分の1も短いのだという。

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超黒の魚、オニキンメ / image credit:Karen Osborn, Smithsonian Institution

超黒に模様を組み合わせることでカモフラージュ力アップ

 だが単純に黒いだけではない生物もいる。「オオヨコエソ(Sigmops elongatum)」や「ホウライエソ(Chauliodus macouni)」は、お腹の部分に鏡のようなストライプ模様がある。これもまた超黒と組み合わせることで、敵の目に見つからないようにするためのものであるという。

 「ラクダアンコウ(Oneirodes)」、「ホテイエソ(Eustomias)」、「アストロネステス・ミクロポゴン(Astronesthes micropogon)」といった捕食動物の超黒は、獲物に気付かれないようにするためのものだ。待ち伏せしながら発光器を使って獲物を誘い込み、うかつにも近寄ってきた相手に襲いかかる。

 面白いのは、「センオニハダカ(Cyclothone acclinidens)」だ。この魚で黒いのは胃腸の部分だけ。その目的は、生体発光する獲物を消化している最中、その光が漏れて発見されてしまうことを防ぐためだ。

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オニハダカ属の魚/ image credit:public domain/wikimedia

光が反射されない秘密

 深海魚の超黒はぎゅっと詰められた「メラノソーム」(メラニン色素を含む細胞小器官)の層によって作られているという。

 メラノソーム層は、皮層の中で光の散乱が最小限に抑えられる最適なサイズと形になっている。これは光学的距離(光が進む距離と屈折率をかけたもの)を延ばして、できるだけ多くの光がメラニン色素に吸収されるようにするための工夫だ。

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超黒深海魚、ミツマタヤリウオ / image credit:Karen Osborn, Smithsonian Institution

ほかの魚や陸上動物たちとの違い

 彼ら以外にも黒い魚はいる。しかし、そうしたただ黒いだけの魚は、色が黒いメラニン保有細胞がコラーゲンなどの色素のない細胞で分けられている。

 その一方、超黒い深海魚たちの細胞は、色素のない細胞が混ざっているなどということはない。

 また地上で暮らす極楽鳥の仲間にも超黒を進化させたものがいる。そうした種は、光を吸収するために、色素とキチンやケラチンを利用している。

 しかし超黒い深海魚の場合、メラニン色素とメラノソームの配置だけで反射を抑えているのだという。

地上の生物に匹敵する黒さのラクダアンコウ

 にもかかわらず、今回調べられた深海魚の中でもっとも黒いラクダアンコウは、超黒い蝶よりも黒く、極楽鳥に匹敵する黒さだった。

 たとえば480ナノメートル(生体発光の光や深度200メートル以上の海にとどく日光の平均波長)の光だと、反射率は0.044%(つまり99.956%は吸収される)。可視光(350~700ナノメートル)ならば0.051%だ。

 対する蝶ならば0.06~0.5%、極楽鳥ならば0.05~0.31%である。

 ちなみに人間が作り出したもっとも黒い素材の反射率は0.035%なので、それには一歩及ばないかもしれない。しかしこうした超黒い魚の特性を研究すれば、また違う超黒素材を作るヒントが得られるかもしれないとのことだ。

References:Scientists Discover Ultra-Black Fish, Which Absorb Over 99.5% Of The Light That Hits Them / written by hiroching / edited by parumo

追記:(2021/08/10)本文を一部訂正して再送します。

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この記事へのコメント 17件

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  1. Chauliodus macouniはヒガシホウライエソのほうなのでは…

    • 評価
  2. ベンタブラックに少し及ばないとは言え
    生体で、しかも高圧の深海で実現するとか凄いな
    今は市販で超低反射塗料も売ってるけど、それも塗装が脆くて触ったら剥げる様なもんだし

    • +6
  3. 影の軍団というドラマ思い出してしまった

    • 評価
  4. 塗装ハゲの心配もなく動き回れるから
    深海魚の反射率の方が上かもね。
    塗料のアレは手で撫でただけでハゲる。

    • +3
  5. ベンタブラックの方は市販の塗料の方とは違って
    ロケットや航空機用途等激しい振動やら耐えられるから丈夫。
    BMWとか車に塗られた事もある

    • +2
  6. 腹だけ黒く進化するって凄いな
    食後腹が光ってた奴が食われて黒かった奴が生き残り続けたって事なんだろうか

    • +4
    1. ※7
      笑うと歯が目立つから深海ではだめだな

      • +6
      1. >>8
        チョウチンアンコウのように、疑似餌として使えるかもしれないぞ。

        • 評価
  7. 深海魚ってちゃんと理にかなった見た目をしていて、不気味なところもまた魅力的…

    • +3
  8. 深海魚が光るのはその方が下から見えないからだと聞いたが?

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  9. >そこで進化したのが光の95.5%以上を吸収してしまう超黒のカモフラージュだ。

    >.たとえば超黒い魚たちは、反射率が2%の魚に比べると、捕食動物によって視認される距離が6分の1も短いのだという。

    吸収率95.5%以上と反射率が2%、何れが光を多く反射するのだろうか。

    • +1
  10. そろそろシロナガスクジラを超える、化け物みたいなクラナガスクジラかホホグロザメあたりお願いします

    • 評価
  11. デメニギスも透明な頭ばかりが注目されるけど体は超真っ黒なんだよね

    • 評価

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