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地震が金塊作りに関与。石英で生じる電場に、金が高密度に集積される可能性

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(著) (編集)

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 するってーと地震大国はたくさんの金塊が生まれているのかか?と、ワクワクする研究結果が報告された。

 以前より石英の鉱脈で金塊が発見されていたが、新たな研究では、そうした金塊は地震が石英の中に電場を形成し、それが金塊の生成につながっている可能性があるというのだ

 『Nature Geoscience』(2024年9月2日付)に掲載された研究によると、石英脈でしばしば見られる大きな金塊は、「石英と金が天然の電池や電極」として働くことで形成されたものだという。

 そしてこの地球の錬金システムのスイッチを入れるのが「地震」なのだという。

なぜ石英鉱脈に金塊がよく発見されるのか?

 まばゆい輝きを放つ金は、古来より貴金属の王様だ。人間はその美しさに目を奪われ、豊かさの象徴として扱ってきた。

 地質学者たちは、また別の意味で金に目を奪われてきた。

 なぜかは不明だが、二酸化ケイ素 (SiO2) が結晶してできた鉱物である石英の鉱脈の中に時折、金塊が発見されることがあるからだ。

 一般的な仮説では、地殻内部を流れる熱水に金が溶けており、それが沈殿することで金塊になるとしている。

 そうした熱水が冷やされたり、化学的変化を起こすと、金が分離して石英脈に閉じ込められるのだ。

地球内部の熱水ではなく地震に目を付けた科学者

 だが、オーストラリア、モナシュ大学のクリス・ボイジー博士は、この説明に満足しなかった。

 というのも、熱水に溶けている金の濃度はかなり薄いので、大きな金塊ができるとは思えないからだ。

 ボイジー博士が疑ったのは、その背後に電気が関係している可能性だ。

 石英には「圧電効果」というユニークな特徴がある。つまり、外部から圧力を受けると電気を発生させるのだ。

 ちょっとした圧力で電圧を生じさせる圧電効果は、たとえばクォーツ時計(クォーツ=石英)や電子式ライターなど、身近なもので応用されている。

 ボイジー博士は、同じ効果が、地震によって地中で引き起こされているのではと考えた。

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再現実験で石英から金の粒子が生成されたことを確認

 この仮説を検証するために、研究チームは、地震が起きたときの石英の状況を再現する実験を行うことにした。

 具体的には、金をたっぷりと含んだ液体に石英の結晶を沈め、モーターで揺さぶってみた。

 それからその石英を顕微鏡で覗き込んでみる。「結果は驚くべきものでした」と、研究チームののアンディ・トムキンス教授はプレスリリースで語る。

 石英の表面に金が沈殿していただけでなく、金のナノ粒子までが作られていたのだ。

 研究チームが驚いたのは、ただ金ナノ粒子ができるだけでなく、それが元々あった金に蓄積していく傾向があったことだ。

 これは石英が絶縁体、金が導体であることが原因だ。つまり前者が電気をほとんど通さないのに対して、後者はよく電気を通す。そのため、ひとたび金ができれば、そこに”金メッキ”するように成長していく。

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(左)実験で石英に沈着した金を走査電子顕微鏡で見たもの。拡大図では、金の粒子がいくつも結合していることがわかる。(右)エネルギー分散型分光法マップ。サンプルの化学組成を示す。 image credit:Chris Voisey

石英の中の金塊は地震の電場形成による可能性が高い

 こうした実験結果は、「石英脈内にみられる大きな金塊のもっともらしい説明」になると、ボイジー博士は話す。

 つまり地震で石英が圧力を受けることで電圧が発生し、それが周囲の熱水に溶けていた金を還元し堆積させる。

 長い時間を経るにつれ、そうした金はだんだんと成長し、やがては地質学者や冒険者の目を奪う金塊が出来上がる(宇宙にはもっと壮大な錬金システムが存在する)。

つまり、石英が天然の電池、金が電極として働くことで、地震が起きるたびに少しずつ金を蓄積していくわけです(ボイジー博士)

 このプロセスは、地震によって形成された石英脈で大きな金塊がよく発見される理由を説明してくれる。

 それはただ長年にわたる地質学の謎を解明するだけでなく、地球の物理的・化学的プロセスの相互作用をも伝えているとのことだ。

 石英は地殻を構成する一般的な造岩鉱物だ。地震が錬金術師なら、地震の多い日本の場合、探せば金塊に巡り合える、なんてことがあるのかもしれない。

References: Electricity generated by earthquakes might be the secret behind giant gold nuggets - Scimex

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この記事へのコメント 24件

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  1. 金を作り出すのかと思ったら、元々土中にある金が集まりやすい、ってことか。

    • 評価
  2. 極東アジアに地震が頻発する島国があって、そこはかつて「黄金の国」と呼ばれていたらしい

    • +3
    1. なお、幕末に大量流出してしまった模様

      • +1
  3. 黄金の国はあながち間違いでもなかったんか…
    でも断層付近を掘らなきゃいけないってこと?

    • 評価
  4. 温泉からも金が取れるし、海からも取れたし日本は案外もっと金採取が出来る国かもね
    いまだに大規模な金の鉱山があるし

    • +2
  5. するってーと効率よく金を生成するには例えばピラミッドのような装置があれば・・・

    • 評価
  6. 掘り返せるところに鉱脈がないと手に入れられないんだよね
    砂金なら岩が砕けて川に流れてくるから採取するのは誰でもできるね

    • 評価
  7. iStockから持ってきた2枚目の画像は、金ではなく黄鉄鉱か黄銅鉱の画像だよね。

    • +1
  8. 金は永遠の象徴。腐食しない
    確かに日本にはいくつかの金山があり、腐食しない金の橋など夢のような建設物もできるのかもなぁ

    • 評価
  9. 地震で核反応が起こるわけはないので集まる話だとは思ったよ

    • 評価
  10. 石英の内、不純物の少ない三方晶系の水晶だけが圧電体です。
    石英全部が圧電体だったら金はありふれた金属だったのかも。

    • +1
  11. 確か 下北半島で金を含んだ熱水があるはず 金を抽出するにはコストがかかるらしいので 石英をぶち込んで揺らしてみれば安上がりにできないだろうか と素人考え

    • +2
  12. 海中で水晶を振動させる
    あるいは船🚢につけるのは?
    アイデアは前からあるが、吸着材の効率が悪く元が取れないそうだが
    コレならどうだ

    • +1
  13. 地中に金がある土地には、ある植物が自生しています。昔金山だった土地周辺一帯には、その植物がありました。私は見慣れていましたが、他県やよその土地でその植物を見たことはほぼ無かった。

    • +1
  14. 海水には元素周期表のほぼ全ての元素が微量に含まれているらしい。実験でやった事を海水でやったらどんな事が起こるんだろう?金銀プラチナなんかのプランテーションが出来たりして。

    • 評価
  15. つまり菱刈鉱山はかつて地震帯にあったのかな?

    • 評価
  16. 確かに佐渡も土肥も金だけでなく石英でも有名ね・・・・石英があるって事は火成岩つまり火山があったところでつまり地震も起きやすく熱水が・・・・・アレ?

    • 評価

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