この画像を大きなサイズで見る子供をSNSから遠ざけるための規制が、いま世界中に広がっている。
オーストラリアが16歳未満のSNS利用を法律で禁止する世界初の措置に踏み切ったのをきっかけに、英国やカナダ、ブラジル、インドネシアなど16の国とEU(欧州連合)が、年齢制限や年齢確認の義務化に動き出した。
ネットいじめや依存、心の健康への悪影響や犯罪に巻き込まれるのを防ぐのが狙いだ。日本もまた、規制のあり方をめぐる議論を本格的に始めている。
オーストラリアから広がった子供のSNS禁止の動き
子供のSNS利用を法律で規制する動きは、2025年12月のオーストラリアから始まった。
オーストラリアでは、16歳未満の子供がSNSのアカウントを作れないようにする世界初の法律を施行し、TikTokやInstagram、YouTube、Facebook、X、Snapchatといった事業者に、利用者の年齢を確認して16歳未満の登録を防ぐ対策を義務づけた。
各国が規制に踏み切る背景には、SNSが子供の心と体に及ぼす害への強い懸念がある。
SNS上では、ネットいじめや、見知らぬ大人が子供に性的な接触を図る被害が起きやすく、自傷を促すような投稿や暴力的な映像、ポルノに子供が触れてしまう危険もある。
さらに問題視されているのが、利用者を少しでも長く画面に留めておくために作られたアプリの仕組みそのものである。
好みに合わせた動画を次々に表示する機能や、画面を動かすと投稿が途切れず出てくる無限スクロールは、子供がやめたくてもやめられない状態を生み出しやすい。
長時間のSNS利用は、子供の睡眠や心の健康を損なうと指摘されており、各国はこうした害から子供を守るために規制へと動き出した。
オーストラリアが最初の一歩を踏み出したあと、世界各国が次々と続き、規制の動きは1年ほどで世界中に広がった。
この画像を大きなサイズで見るすでに規制に動き出した16カ国とEU
子供のSNS利用に何らかの規制をかける方針を打ち出したのは、2026年7月の時点で16の国とEU(欧州連合)、合わせて17の国と地域にのぼる。
すでに法律が施行された国から準備中の国、議論が進められている国など、段階には差があるものの、規制をする方向に向けて動きがあるのは事実だ。
法律がすでに施行・可決された国
- オーストラリア(16歳未満):2025年12月、16歳未満のSNS利用を禁じる世界初の法律を施行した。TikTok、Instagram、Facebook、YouTube、X、Snapchatといった事業者に、年齢確認と、16歳未満の登録を防ぐ「合理的な措置」を義務づけている。
- ブラジル(16歳未満):2026年3月、「子供・青少年デジタル法」が施行された。16歳未満の子供のアカウントを保護者と結びつけることを求め、大人向けの内容を見るには年齢確認を必要とする。動画が自動的に次々と再生されるような、子供が長くのめり込む機能の制限も事業者に義務づけている。
- インドネシア(16歳未満):2026年3月6日、16歳未満のSNS利用を禁じると発表し、3月28日から実施した。YouTube、TikTok、Facebook、Instagram、Threads、X、Bigo Live、Robloxといった「危険性の高い」プラットフォームで、16歳未満のアカウントを段階的に無効にしており、6月末までにTikTokとYouTubeだけで合わせて約470万件が無効化された。
- マレーシア(16歳未満):2026年1月に「オンライン安全法2025」が施行され、6月から本格的に運用が始まった。利用者が800万人以上いるSNS(YouTube、TikTok、Instagram、Facebookが該当する)で、16歳未満のアカウント作成を禁じ、年齢確認を義務づけている。長時間の利用を招く機能の制限も求めている。
- トルコ(15歳未満):2026年4月、15歳未満の子供がSNSにアクセスできないようにする法案を可決した。SNSでの年齢確認、有害な内容への事業者の素早い対応、保護者による管理機能の拡充を求めている。
- フランス(15歳未満):2026年7月21日、上下両院が15歳未満のSNS利用を禁じる法案を可決した。EU加盟国で一律の禁止を成立させた初の国となる。9月1日から新規のアカウント作成が禁じられ、既存のアカウントは2027年1月1日から利用できなくなる。TikTokやInstagram、Xなどが対象で、教育目的の利用は除外される。
法律の制定を発表し、準備を進めている国
- 英国(16歳未満):2026年6月、16歳未満の禁止を導入すると正式に表明した。オーストラリアと同じ仕組みを使う方針で、対象をライブ配信やゲームのサイトにも広げる考えを示している。既存の法律に基づく規則として年内に議会での採決を目指しており、2027年春の施行を予定している。さらに16歳と17歳の若者を対象に、深夜の利用を制限する案も検討している。
- カナダ(16歳未満):2026年6月、16歳未満のアカウント保有を禁じる「安全なSNS法案」を発表した。TikTokやYouTube、Instagramに加え、ChatGPTやGemini、ClaudeといったAIチャットボットを使う企業も対象に含めている点に特徴がある。ただし審議は始まったばかりで、実際に規制が動き出すのは数年先になる見通しである
- スペイン(16歳未満):2026年2月、16歳未満の禁止方針を発表した。首相は子供を「デジタルの無法地帯」から守ると述べ、違法・有害な内容について、SNS企業とその経営陣に責任を負わせる法案を準備している。だが2025年に議会へ提出した法案の審議が続いており、可決には至っていない。
- ギリシャ(15歳未満):2026年4月、首相が15歳未満の禁止法案を発表した。常にオンラインでいなければという圧力が子供の睡眠障害や不安を招いていると指摘している。年内の可決と2027年1月1日の施行を目指しているが、議会での可決には至っていない。
方針の表明や法案の準備という段階の国
- オーストリア(14歳未満):2026年3月、14歳未満のSNS利用を禁じる法案を発表し準備を行っている。。あわせて「メディアと民主主義」という科目を学校に新設し、偽情報や過激化を見抜く力を養う考えを示している。
- デンマーク(15歳未満):2025年10月、首相が15歳未満の禁止方針を表明した。法律は2026年中にできる可能性があるが、時期や詳しい中身はまだ決まっていない。13歳から保護者の許可があれば使えるようにするとの報道もある。
- ポーランド(15歳未満):2026年2月、教育を担当する閣僚が15歳未満の禁止方針を発表した。SNS事業者に年齢確認を求め、守らない企業には多額の罰金を科す方向で検討している。
- スロベニア(15歳未満):2026年2月、副首相が15歳未満のSNS利用を禁じる法案を発表した。
議論が進行中の国
- ドイツ:まだ規制を導入していないものの、政府が導入するかどうかを検討している。
- タイ:まだ発表はないものの、規制をめぐる議論が活発になっている。
EU(欧州連合)全体での規制を検討
- EU(欧州連合、加盟27カ国):加盟する各国とは別に、EU全体での規制を検討している。欧州委員会が13歳未満の子供を対象とする案を示しており、詳しい内容は4章で後述する。
この画像を大きなサイズで見る日本の対応は?
海外で子供のSNS禁止の動きが広がる中、日本も規制のあり方について本格的な議論を始めている。
通信分野を所管する総務省は、2026年6月2日の有識者会議で、SNSは子供同士の大切な連絡手段になっており、サービスごとに危険性も異なることから、年齢による一律の制限は望ましくないとの見解を示した。
この報告をもとに、子供政策を専門に担う官庁であるこども家庭庁が、具体的な対応策の議論を進めた。
こども家庭庁は6月26日、SNS事業者に対し、利用者の年齢を確認する対策や、長時間の利用を招く機能への対策を義務づける中間整理報告の骨子案を示した
利用者が生年月日を自分で入力する自己申告に任せてきた現状から、事業者側に確認の責任を負わせる規制強化へとかじを切る形になる。
オーストラリアやフランスのように年齢で一律に利用を禁じるのではなく、年齢確認の義務化という日本独自の対応を目指している。
現在の日本では、多くのSNSが利用の対象年齢を「13歳以上」などと定めているものの、その確認は自己申告に任されている。
こども家庭庁は、自己申告だけに頼らない確認方法を求める方向で、マイナンバーカードの活用も含めて検討している。
2009年に施行された青少年インターネット環境整備法を改正し、2027年の通常国会に改正案を提出することを目指している。
この画像を大きなサイズで見る規制により効果がでるのか?
世界で規制が広がる一方、最初に踏み切ったオーストラリアからは、その効果を疑問視する結果も出てきた。
英国の医学誌に掲載された研究によると、法律の施行から3カ月がたっても、16歳未満の子供の85%以上がSNSを使い続けていたことがわかった。
年齢の確認が自己申告のままで機能していないことが主な原因とされ、子供たちはVPN(接続元を隠す仕組み)や偽のアカウントを使って規制をすり抜けていたのだ。
オーストラリア政府は、違反した事業者への罰則を強化して対応を進めている。
国のかたちによって規制の進み方が大きく異なる例として、アメリカが挙げられる。
アメリカは国全体で子供のSNS利用を禁止しておらず、13歳未満の利用を禁じる法案が連邦議会に出ているものの、成立には至っていない。
そのため規制は州ごとに進み、これまでに少なくとも16の州が、年齢確認や保護者の同意を義務づける独自の法律を定めてきた。
ただし、その多くが言論の自由を保障する憲法に反するとして裁判で争われ、アーカンソー州やオハイオ州、テキサス州などでは法律の施行が差し止められた。
フロリダ州やニューヨーク州のように一部が施行されている州もあり、アメリカ国内でも州によって「施行中」「裁判で停止中」「未施行」とばらばらな状態が続いている。
今後さらに規制を広げようとしているのがEUである。
EUの政策を実行する欧州委員会は2026年7月、専門家の報告を受けて、13歳未満の子供のSNS利用を制限すべきだとする方針を示し、夏以降に法案を出す考えを明らかにした。
SNSだけでなく、AIや依存を招く機能を持つ他のサービスも規制の対象にしようとしている。
だがどの国も、ネットいじめや依存、心の健康の悪化から子供を守ろうとしている点では同じだ。
年齢確認を実効性のあるものにし、プライバシーや言論の自由と両立させるという課題は、まだ各国に共通して残されている。
References: Aph.gov.au / Bmjgroup















