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天の川銀河の星間空間に「糖」が存在、生命の材料が宇宙で作られていた可能性

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天の川銀河の中心領域をハッブル宇宙望遠鏡とスピッツァー宇宙望遠鏡、チャンドラX線観測衛星の撮影した画像を合成したもの Image credit:NASA、ESA、SSC、CXC、STScI
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 糖は、生命のエネルギー源となり、遺伝情報を担うDNAやRNAを組み立てる材料としても欠かせない存在だ。

 だが生命が誕生する前の地球で、どうやって糖ができたのかは長く謎のままだった。

 スペインの宇宙生物学センターを中心とする国際研究チームは、天の川銀河の中心近くに浮かぶガスと塵の雲から、糖の一種を検出した。

 星と星のあいだの空間で糖が見つかったのは初めてとなる。

 研究者によると、生命の材料が宇宙で作られ、地球に届けられたとする説を後押しする発見だという。

 この研究成果は『Nature Astronomy』誌(2026年7月13日付)に掲載された。

参考文献:

生命を作るのに必要な糖はどうやってできたのか?

 糖とは、甘みや炭水化物のもとになる物質で、生き物が体を動かすためのエネルギー源として使われている。

 糖にはブドウ糖やリボースなどいくつもの種類があり、どれも炭素と水素と酸素が結びついてできている。

 エネルギー源としての働きに加えて、糖はDNAやRNAの部品でもあり、生命を作り出す材料にもなっている。

 DNAは、体をどう作るかを記した生き物の設計図で、親から子へ受け継がれていく。

 RNAは、DNAに書かれた情報を写し取り、体を作る材料であるタンパク質に組み立てる役割を担っている。DNAとRNAをまとめて核酸(かくさん)と呼ぶ。

 核酸は、糖がいくつも連なった背骨のような部分に、遺伝情報を担う部品が取り付けられた構造をしていて、糖がなければ組み上がらない。

 地球で最初の生命が生まれるときにも、核酸を作るための糖が必要だった。

 ところが実験室で、生命が誕生する前の地球の環境を再現して糖を作ろうとしても、ごくわずかな量しか生成されない。

 初期の地球に、生命が生まれるのに足りるだけの糖がどうやってできたのか、答えが出ないままだった。

 手がかりになったのが隕石だ。

 2019年、日本の東北大学の研究チームが、地球に落ちた隕石から糖を検出した。

 小惑星ベンヌから持ち帰られた試料からも糖が見つかっているが、糖がどこで作られたのかまではわからなかった。

 隕石のもとになった天体の内部で作られたのか、それとも天体が生まれるより前の、星と星のあいだの空間ですでに作られていたのか。

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ハッブル宇宙望遠鏡がとらえた「いて座」にある天の川銀河の中心部 Image credit: NASA, ESA, and G. Brammer

銀河の星間空間で初めて見つかった完全な糖の一種

 スペインの宇宙生物学センターに所属するイサスクン・ヒメネス=セラ氏が率いる国際研究チームは、天の川銀河の星間空間で初めて糖を検出したと発表した。

 見つかった糖はエリスルロースといい、炭素を4個持つ「ケトース」という単糖類にあたる。

 地球ではラズベリーや、塗るだけで肌を小麦色に見せるセルフタンニングクリームに含まれている。

  実は2012年にも、グリコールアルデヒドという分子が星間空間で見つかっており、当時は「単純な糖分子の発見」として紹介されたが、炭素を2個しか持たないグリコールアルデヒドは、いくつもの炭素がつながった糖の仲間には数えられないと、のちの研究で明らかとなった。

 糖と呼べる形をきちんと備えた分子が星間空間で確認されたのは、今回のエリスルロースが初めてとなる。

天の川の中心近くの分子雲G+0.693−0.027で発見

 観測の対象になった分子雲はG+0.693−0.027といい、天の川銀河の中心付近にあって地球からおよそ2万6700光年離れている。

 分子雲とは、ガスと塵が集まってできた冷たい雲で、G+0.693−0.027は銀河系の中でもとりわけ多くの種類の分子を含んでいる。

 研究チームは、スペインにあるイェベス40m電波望遠鏡と、ミリ波電波天文学研究所(IRAM)の30m望遠鏡を使い、感度を極めて高くした観測を行った。

 分子は種類ごとに決まった波長の電波を出すため、波長の並び方を調べれば分子の種類を見分けられる。

 チームはバスク大学の実験室で測定されたエリスルロースの波長データと観測結果を照らし合わせ結果、エリスルロースと一致する12組のスペクトル線を確認した。

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天の川銀河の中心部を撮影した合成画像。左下の分子雲G+0.693−0.027で、糖の一種エリスルロースが見つかった。円内はエリスルロースの分子模型で、灰色は炭素、赤は酸素、白は水素の原子を表している。Image credit:Credits: Ashley Barnes/Izaskun Jiménez-Serra/Juan García de la Concepción

2つの物質が結び付きエリスルロースを形成していた

 観測結果には予想外の点があった。同じ分子雲の中で、炭素を3個持つ糖はまったく検出されなかったのに対し、炭素を4個持つエリスルロースは、炭素3個の糖の少なくとも8倍以上の量で存在していた。

 これまでの天文化学では、星間空間の分子は炭素原子が1個ずつ順番に付け足されて大きくなっていくと考えられてきた。

 ヒメネス=セラ氏は、炭素3個の糖を飛び越えて、炭素4個の糖のほうが多く存在していたことに驚きを隠せないと語った。

 研究チームはエクストレマドゥーラ大学とオランダのラドバウド大学の化学者と協力し、エリスルロースがどのように作られるのかを調べた。

 すると、星間空間を漂う塵の表面をおおう氷の上で、炭素を2個持つグリコールアルデヒドと、同じく炭素2個を持つアルコールの一種、エチレングリコールが結びつき、エリスルロースが作られることがわかった。

 炭素3個の糖を経由せず、2つの物質が組み合わさって一度に炭素4個を持つ糖であるエリスルロースになったのである。

初期の地球に降り注いだ、宇宙生まれの糖

 分子雲で測定されたエリスルロースの量をもとに、研究チームは初期の地球に届いた糖の量を見積もった。

 41億年前から39億年前にかけて隕石が激しく降り注いだ後期重爆撃期のあいだに、50万トンから5000万トンのエリスルロースが地球の表面に到達したと試算された。

 エリスルロースは、水があるところでは別の種類の糖へと変化しやすい性質を持っている。

 地球に届いたエリスルロースが、生命の最初の代謝や自己複製の仕組みを支える糖になった可能性がある。

 共著者のカルロス・ブリオネス氏は、エリスルロースの検出によって、生命の起源にかかわる他の分子を宇宙で見つけられる可能性が開けたと述べている。

 今回見つかったのは生命そのものではなく、生命の材料になる分子であり、地球で糖が作られた可能性が消えたわけでもない。

 それでも、星間空間で糖が作られることが確認できたことで、生命の材料が宇宙からもたらされたとする説に信ぴょう性が帯びてきた。

まとめ

この研究でわかったこと

  • 天の川銀河の星間空間で、糖の仲間が初めて見つかった。
  • その糖は、氷におおわれた塵の上で小さな物質2つが結びついてできていた。
  • 生命の材料になる糖が、宇宙で作られていたとわかった。

まだわかっていないこと

  • 地球の糖が宇宙から来たのか、地球で生まれたのかは、まだはっきりしていない。
  • 宇宙で、RNAなど生命の他の材料も作られているのかは、これから調べる。

References: doi.org/10.1093/mnras/stag1136

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