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雨に濡れると殻の色が変化。カタツムリのカモフラージュの仕組みを東京大学が解明

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(著)

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吸水すると白い斑紋が消え、 全体が暗色化する2種のカタツムリ左が乾燥時、右が濡れた時この画像を大きなサイズで見る
濡れると模様が消える2種のカタツムリ Image credit:©Yoshimura & Sasaki (2026) CC BY
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 木の上で暮らすカタツムリの中には、雨に濡れると殻の白い模様が消えて全体が暗い色に変わるものがいる。

 樹皮に紛れて敵から身を隠すこのカモフラージュが、どういう仕組みで起きるのかを、東京大学総合研究博物館の研究チームが解明した。

 殻の表面をおおう膜には目に見えない小さな穴が無数に空いていて、そこに雨水がしみ込むと光の通り方が変わり、下にかくれていた暗い色素が透けて見えるという。

 また、フィリピンと日本に生息する、系統的に大きく異なる2種のカタツムリが、それぞれ別々に同じ仕組みを収斂進化させていたこともわかった。

 この研究成果は『Zoological Letters』誌(2026年6月25日付)に掲載された。

参考文献:

濡れると殻の模様が消えるカタツムリ

 カタツムリの殻の色は、中にふくまれる色素で決まっている。

 だから外の環境が変わっても、貝殻の色や模様はそう簡単には変わらないというのが、これまでの常識だった。

 だが、フィリピンに生息するタケノコマイマイ類(Hypselostyla camelopardalis)と、日本にのみ生息するヒロクチコギセル(Reinia variegata)はなんと、殻の模様や色を変えていたのだ。

 どちらも木の上で暮らす樹上性のカタツムリで、乾いているときは殻に白っぽいまだら模様が出ている。

 ところが雨に濡れると、その白い模様がすっと消えて、殻全体が濃い茶色になる。乾けば、また元の白い模様がもどってくる。

 東京大学総合研究博物館の吉村太郎特任研究員と佐々木猛智准教授は、この不思議な色の変化がどんな仕組みで起きているのかを調べた。

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乾燥時と濡れた時の2種の樹上性カタツムリの殻の模様変化
水を吸い込むと白い斑紋が消え、 全体が暗色化する。 左が乾燥時、右が濡れた時。潤時。系統的に大きく異なる2種で、 共通した湿潤変色(収斂進化)が見られる。 A. タケノコマイマイ類 Hypselostyla camelopardalis (Broderip, 1841) 。 B. ヒロクチコギセル Reinia variegata (Adams, 1868) 。 スケールバー = 10 mm。 Image credit:©Yoshimura & Sasaki (2026) CC BY

殻をおおう膜の穴に水がしみ込んで色が変わる

 研究チームは博物館に収蔵されていたカタツムリの殻を、電子顕微鏡や、光の透け具合を測る装置を使って細かく調べた。

 すると、殻の表面をおおう有機物の膜(殻皮)が、二つの層に分かれていることがわかった。

 外側の層はスポンジのように小さな穴がたくさん空いた多孔質で、内側の層は色素をふくんだ暗い色をしている。

 外側の無数の小さな穴は、乾いている時は空気が入っている。

 空気と殻皮の素材は光の曲がりやすさ(屈折率)が違うため、光は殻皮の中でばらばらに散らばってしまう。

 この散らばった光が白く見えるので、乾いた殻は模様が白く浮かんで見える。

 ところが雨に濡れると、穴の中に水がしみ込んでいく。

 水の屈折率は空気よりも殻皮の素材に近いので、光が散らばらずにまっすぐ膜を通りぬけるようになる。

 光がそのまま通れば、下の層にある暗い色素が透けて見えてくる。

 こうして白い模様が消え、殻全体が濃い色に変わるのだ。

 実際に光の透け具合を測ってみると、乾いた白い部分では約37%だった透過率が、濡らすと約85%まで一気に上がった。

 水がしみ込んだ膜が、曇りガラスから透明なガラスに切りかわるように、下の色を見せるようになるというわけだ。

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共焦点レーザー顕微鏡によるタケノコマイマイ類の殻皮表面の吸水変化
A. タケノコマイマイ類の乾燥標本と観察部位。 B. 殻の色素領域(茶色部分)と白色領域の境界。C, D. 殻皮の微細な表面構造とトポグラフィー。 C. 色素領域。 D. 白色領域。 E–G. 水分吸収(加湿)過程における白色領域の殻皮表面構造の変化。 E. 乾燥状態。 F, G. 加湿開始からそれぞれ約3秒後および約6秒後の状態。 カラースケール(C, D): 表面の高さの変化を示す。 スケールバー: = 300μm, C, D = 20μm, E–G = 30μm。Image credit:©Yoshimura & Sasaki (2026) CC BY

樹皮の色に似せ、鳥から隠れるためのカモフラージュ

 では、これらのカタツムリはなぜ殻の色を変化させるのか?

 木の上では、雨が降ると背景になる樹皮も濡れて色が濃くなる。

 乾いた明るい樹皮の上なら、白いまだら模様のカタツムリはそれほど目立たないが、が雨で樹皮が暗くなると、白い模様のままでは浮き上がって、鳥などの天敵に見つかりやすくなってしまう。

 濡れると同時に殻を暗い色へ変えれば、暗くなった樹皮にそのまま紛れて身を隠せる。

 背景の明るさの変化に合わせて自分の目立ちやすさをおさえる、生き残るためのカモフラージュだと考えられる。

フィリピンと日本のカタツムリは収斂進化の可能性

 そして、ここからがこの研究のいちばんの驚きだ。

 フィリピンのタケノコマイマイ類と日本のヒロクチコギセルは、生息する場所も遠く離れていて、同じカタツムリでも種類が異なる。

 だが樹上という同じような環境で暮らすうちに、それぞれが別々に、まったく同じ「濡れると色が変わる」仕組みにたどり着いたとみられている。

 種類の大きく異なる生き物どうしが、同じ課題に対して同じような答えを独立に進化させることを「収斂進化(しゅうれんしんか)」と呼ぶ。

 濡れると体の色が変わる仕組みは、ヘラクレスオオカブトなど一部の昆虫でも知られているが、陸に棲む巻貝でこれほど高度な仕組みが見つかったのは、とても珍しいことだ。

 吉村研究員は、まったく違う生き物が自然選択によって同じ解決策にたどり着いた様子を目にできたことを、とても心躍る発見だったと語っている。

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系統的に異なる2種のカタツムリの貝殻の収斂進化 Image credit:©Yoshimura & Sasaki (2026) CC BY

電源のいらない調光素材のヒントになるかもしれない

 このカタツムリの仕組みには、もう一つ大きな特長がある。

 電気などの外部エネルギーをいっさい使わず、湿り気だけで見た目の性質を変えられるという点だ。

 研究チームは、この仕組みが次世代の技術開発に役立つのではないかと期待している。

 たとえば、湿度に反応して色や透け具合が変わる窓の材料や、電源のいらない環境センサー、医療用のセンサーなどだ。

 生き物が進化の中で身につけた仕組みをまねて技術に生かすことを、バイオミメティクス(生物模倣)と呼ぶ。 

 雨に濡れて身を隠すカタツムリの小さな殻には、自然が長い時間をかけて磨き上げた、電気を使わない賢い工夫が詰まっている。

まとめ

この研究でわかったこと

・木の上で暮らす2種のカタツムリは、雨に濡れると殻の白い模様が消えて暗い色に変わる。

・殻の膜にある小さな穴に水がしみ込むと光が透け、下の暗い色素が見えて色が変わる。

・種類の大きく異なる2種が、それぞれ別々に同じ色変わりの仕組みを進化させていた。

・今後の課題

・電気を使わず湿り気で色が変わるこの仕組み、窓の材料やセンサーにどう応用できるか。

References: doi.org/10.1186/s40851-026-00266-7

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この記事へのコメント 6件

コメントを書く

  1. 樹皮の方もまた何で濡れると色が変わるんだろう

    • +1
  2. 「そういうのが生き残っていった結果」って理屈はわかるけど……。
    わかるけど……わからん!!

    • 評価
  3. すごい、不思議と思う人が居るんだ
    それが学者さんの才能かもしれない

    • +4
  4. 結構模様変わるんだね。そして最近カタツムリ全く見てないことに気づいたよ…

    • +2
  5. 厚めの繊維に水が染みると濃いめというか黒っぽいと言うか、そんな変化をするけども…と、思ったら、より近いものとしてベージュや白のTシャツや水着の事を思い出した。
    水に濡れると裏の模様が透けてしまう…

    • +2
  6. 衣服も濡れれば透けて暗色になるね
    もしこの特徴を商品に活かすとすれば
    乾くと模様が現れるTシャツとか傘かな

    • +2

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