この画像を大きなサイズで見るアフリカ南部アンゴラの奥地で、千種以上の生物が発見され、その中には新種や新種候補とみられるものも数十種あった。
真っ暗な中で紫外線を浴びると青く光りだすクモ、本物そっくりにテントウムシへ化けるクモ、全身を硬い鎧で覆ったようなキリギリス。どれもユニークな愛すべき地球の仲間たちだ。
これらの生物は、アフリカの大自然を調査・保護するザ・ワイルダネス・プロジェクトのチームが発見したものだ。
長い内戦と地雷のせいで人がほとんど立ち入れなかったこの地は、生物が人知れず進化の実験を続けてきた研究室のようだ。
では、驚くべき姿をした生物たち(主に昆虫)の姿の一部を見ていこう。
参考文献:
- Dozens of New Species Discovered in Angola | The Wilderness Project
発見されたユニークな生物たち
2026年2月、 The Wilderness Project(ザ・ワイルダネス・プロジェクト)の研究チームは、アフリカ南部アンゴラの高地に広がるリシマ台地で生物多様性調査を実施した。
アンゴラはアフリカ大陸の南西部にあり、大西洋に面した、日本の約3.3倍の広さを持つ国だ。
その結果、昆虫を中心に、両生類や爬虫類、クモやサソリ、植物など多岐にわたる生物が発見され、中にはまだ新種確定したものや、新種候補の種も多く含まれている。
この画像を大きなサイズで見るその中で、私が特に魅了されちゃった6種を順に見ていこう。
紫外線を浴びると青く光る新種候補のクモ(新種候補)
このクモは、カニグモ科に属する新種の候補とみられている。
紫外線の光を浴びると、吸収して青く輝いて見える。これは、生物蛍光と呼ばれる現象だ。
ホタルのように体の中で光を作り出す生物発光とは違って、ライトを消せば青い輝きもふっと消えてしまう。
最近では多くの哺乳類やカモノハシ、ヒクイドリのとさかも生物蛍光することが明らかになっているが、なぜこのクモが光るのか、その理由はまだ不明だ。
この画像を大きなサイズで見るテントウムシに化けるクモ(新種候補)
まんまるい体に黒い筋と斑点。テントウムシに見えるけど、実はこれ、コガネグモ科のクモで、これも新種の候補とみられている。
日本にもツシマトリノフンダマシという近い仲間がいて、やはりテントウムシそっくりの姿で知られている。
毒を持つテントウムシのふりをすることで、鳥などの天敵に「こいつはまずそうだ」と思わせる効果があると考えられている。見た目で敵をだます、なかなかの策士だ。
この画像を大きなサイズで見る鎧をまとったキリギリス(新種)
全身を硬い鎧で固めたようなかっこいいキリギリス。今回見つかった3種の新種キリギリスのうちの1種になる。
バッタの仲間であるキリギリス科に属し、前胸部にとげをずらりと並べた、ちょっとパンクロックな世界観を演出している。
日本の草むらにいるキリギリスやバッタの遠い親戚にあたるが、身を守る装備が段違いだ。
アフリカ南部にすむ近縁の仲間は、敵に襲われると体液をビュッと噴き出したり、エサが足りないと仲間どうしで共食いをしたりする。見かけだけでなく中身もなかなかワイルドだ。
この画像を大きなサイズで見る緑の宝石のようなコガネムシ
樹皮にしがみついていた緑のコガネムシは、コガネムシ科のハナムグリの仲間だ。
新種候補ではないが、深い緑の体に金色の筋がすっと走り、まるで磨きあげた宝石のように輝く魅惑のボディだ。
アフリカには、世界一重い昆虫といわれるゴライアスオオツノハナムグリをはじめ、大型のハナムグリがたくさん生息しており、このコガネムシもそのうちの1種である。
この画像を大きなサイズで見る赤と緑の顔を持つハゴロモ
葉の上にちょこんととまっていたハゴロモも、新種ではないが仮面ライダーフェイスをした魅惑の種だ。
セミに近いカメムシ目の昆虫で、ストロー状の口で植物の汁を吸って暮らしている。
顔の正面に赤と緑の派手な突起があり、ぱっと見はどこが顔かもわからない。葉に紛れて敵の目をあざむいている。
日本の庭先でよく見かけるアオバハゴロモやアミガサハゴロモも、同じハゴロモの仲間だが、アフリカではこんなにカラフルな顔で暮らしている。
この画像を大きなサイズで見る鳥の羽根のような翅をもつ蛾
こちらも新種ではないが、思わず見入ってしまう美しさだ。
オレンジ色の翅を広げたこの蛾は、ニジュウシトリバガ科(Alucitidae)に属している。翅が細かく枝分かれする変わった蛾のグループだ。
蛾やチョウは前に2枚、後ろに2枚の合わせて4枚の翅を持ち、ふつうはその一枚一枚が平らな板のようにつながっている。
ところがニジュウシトリバガ科の蛾は、4枚の翅がどれも細い羽毛のような房に深く分かれていて、まるで鳥の羽根を扇のように広げたような姿になる。
前後の翅がそれぞれ6本に分かれ、左右を合わせると24本になることから、二十四鳥羽(ニジュウシトリバ)の名がつき、日本にもマダラニジュウシトリバという仲間がいる。
この画像を大きなサイズで見る内戦と地雷が人を遠ざけてきたアフリカの奥地
これほど豊かな生物がすみながら、 2002年まで27年も続いた内戦と、その後も各地に残された地雷により、リシマ台地の生き物はこれまでほとんど調べられてこなかった。
人が足を踏み入れられないあいだ、台地の自然は手つかずのまま残された。
リシマ台地から流れ出る水は、コンゴ川、オカバンゴ川、ザンベジ川、クアンザ川という、アフリカを代表する4つの大河の源になっている。
何千kmも離れた下流の町や草原で暮らす人や動物たちが、この台地の水に支えられている。
この画像を大きなサイズで見る発見された生物は千種類以上
地雷の除去が進み、道路が通りはじめたことで、ようやく本格的な調査ができるようになった。
とはいえ現地の環境は過酷で、調査チームの車列は一日中ぬかるみにはまり、マラリアにかかる隊員まで出たという。
それでも研究チームは、周りの湿地や湿原を丹念に調べ歩いた。
その結果、発見された生物は、確認されただけで千種をこえる。
トンボとイトトンボは103種が見つかり、そのうち8種が新種だった。
バッタやキリギリス、コオロギの仲間は47の分類群が記録され、3種が新種と確認された。チョウと蛾は1,000種以上にのぼり、蛾の最大6%が新種の候補とみられている。
両生類と爬虫類は47種(両生類24種、爬虫類23種)、植物は320点以上が採集された。
このほか甲虫やクモ、サソリも集められ、いまも実験室で詳しく調べられるのを待っている。
専門家が標本を一つひとつ確認していくにつれて、新種の数はこれから増えていくとみられている。
これまでの周辺流域の調査と合わせると、すでに70種以上が新種と確定し、さらに約300種が新種かどうかの確認を待っている。
調査と保全を急がなければならない理由
研究チームが急ピッチで調査を進める理由は、地雷が取り除かれて道路が通ったことで、これまで土地への侵入を阻んできた壁がなくなり、ダイヤモンドの採掘や焼き畑、森林の伐採が一気に押し寄せはじめたからだ。
森が削られれば川は土砂で濁り、生き物のすみかは少しずつ小さく分断されていく。
どんな生き物がどこにすんでいるのかを記録しておくことが、この豊かな自然を守る最初の一歩になる。
アンゴラ出身の生物学者ラウリンダ・デ・フラガ氏は、今回の調査を、次の世代のアンゴラ人へ自然の遺産を引き継ぐ仕事だと語っている。















