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人工卵殻でニワトリの卵を孵化させることに成功。絶滅種復活を目指して

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Image credit:Colossal Biosciences
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 ニワトリが産んだ卵の中身をすべて取り出し、3Dプリントで作った人工容器に移し替えて孵化させることに成功したと、アメリカのバイオテクノロジー企業「コロッサル・バイオサイエンシズ」社が発表した。

 この技術は、約600年前に絶滅した巨大鳥ジャイアントモアのように、現存するどの鳥の卵にも収まらない大型の絶滅種を復活させるために欠かせないものだという。

参考文献:

絶滅種の鳥類復活を阻む「卵の壁」

 絶滅した鳥類を現代に甦らせるためには、受精卵を温めてヒナを孵化させる手段が必要だ。

 通常であれば近縁種の鳥に代理母を頼み、卵を温めてもらう方法が考えられる。

 しかし、米テキサス州ダラスを拠点とするバイオテクノロジー企業「Colossal Biosciences(コロッサル・バイオサイエンシズ)社」が復活を目指す絶滅種、ドードージャイアントモアには、その方法が通用しない。

 ドードーはインド洋のモーリシャス島に生息していた飛べない鳥で、17世紀末に絶滅した。近縁種はハトの仲間だが、体格はかけ離れて大きい。

 ジャイアントモアはニュージーランド南島に生息していた飛べない巨大鳥で、体高は最大約3.6mに達し、約600年前に絶滅した。

 ジャイアントモアが産んでいた卵はニワトリの卵の約80倍、エミューの卵の約8倍の体積があったとされる。

 地球上に現存するどの鳥も、モアのヒナを自分の卵の中で育てることができない。だから、例えバイオ技術で胚を復元することができても、卵そのものは人工的に作る必要がある。

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ドードー Image by Istock duncan1890

ニワトリの卵の中身を人工卵殻に移し替え孵化に成功

 コロッサル社はこの課題を解決するため、人工卵殻を開発した。

 3Dプリントで製造したハニカム(蜂の巣状)格子構造の容器の内側に、シリコン素材の特殊な半透膜を張り巡らせたものだ。

 半透膜は自然の卵殻と同じ速度で酸素と二酸化炭素を通すため、従来のように高濃度酸素を外部から供給する必要がないため、理論上は、大気環境と湿度管理だけで胚の成長を継続させることが可能だ。

 また人工卵殻はほぼ全体が透明なつくりになっており、上部に観察用の蓋が設けられている。

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Image credit:Colossal Biosciences

 完成した人工卵殻に、実際のニワトリが産んでから36〜40時間以内の本物の卵の「卵黄・卵白・胚」のすべてを移し替えた。

 卵白より密度が低い卵黄は自然に人工卵殻上部へ浮かび上がり、卵黄の表面に付着した胚もその上に位置した。

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Image credit:Colossal Biosciences

 通常、胚の成長に必要なカルシウムは卵殻から少しずつ溶け出して供給されるが、人工卵殻にはそれがないため、カルシウムを別途補充し、孵卵器に入れて温めた。

 すると約18日後、孵化に成功し、人工卵殻の壁を自力で突き破って26羽のヒナが誕生した。

 なお、産卵から24時間以内の、胚がまだ卵黄表面の小さな細胞のかたまりに過ぎない段階で移し替えを行った場合でも、血管や心臓などの循環器官は正常に形成され、孵化できることが確認された。

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Image credit:Colossal Biosciences

人工卵殻で胚の連続観察が可能に

 従来の研究では、卵殻に小さな穴を開けて胚に操作を加え、テープで封をしてから胚を成長させるという方法が使われてきた。

 組織の除去、シグナル分子(細胞どうしが情報をやりとりするために使う化学物質)を染み込ませたビーズの埋め込み、細胞へのDNA注入などを行う際、観察できるのは操作した瞬間と実験を止めた時点の2点だけだ。

 その間に細胞がどのように動き、組織がどのように再配置されるかを連続して追う手段がなかった。

 たとえば脊髄は平板な神経組織として始まり、やがて管状に巻き上がる。細胞が成熟してニューロン(神経細胞)になると管の内壁から離脱し、別の場所へ移動してから軸索(他のニューロンに信号を送る突起)を伸ばしていく。

 胚の成長とはこうした細胞の動きと組織の再配置が絶えず続く動的なプロセスだが、卵殻がある状態では全体像を連続して捉える手段がなかった。

 だが透明な人工卵殻であれば、胚の発生を最初から最後まで連続して観察することができる。

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Image credit:Colossal Biosciences

 顕微鏡観察のために人工卵殻の下から光を照射できる設計にもなっており、一つの胚で細胞の動きを時系列として追うことが初めて可能になった。

 コロッサル社のCEO、ベン・ラム氏は、研究目的で利用したい研究者には無償で提供すると明言している。

復活への道のりと残る課題、そして批判

 査読論文の発表は現時点では予定されていないため、外部の研究者が成果を詳しく検証できる状況にはまだない。

 米ノースカロライナ州立大学の生物学者ポール・モジジアク博士はデータが公開されていない現段階では真の影響を判断するのは難しいと慎重な姿勢を示した。

 一方、英サウサンプトン大学の古生物学者ニール・ゴストリング博士は率直な驚きを示し、非営利団体リバイブ・アンド・リストアの生態学者ベン・ノバク氏は動物園や希少種の繁殖施設がすぐに活用できる技術だと評価した。

 とはいえ、絶滅危惧種の鳥類を復活させるには、まだ技術的な課題も残っている。

 鳥の胚発生は親鳥の体内にいる段階から始まるため、体外での初期発生をどう再現するかという問題が未解決だ。

 また、モアのような大型種では卵黄への栄養補充の方法も開発しなければならない。ドードーについてはミノバトが、モアについてはエミューやシギダチョウ科が代理の卵の提供者として検討されているが、いずれも最終的には人工卵殻への移し替えが必要になるとみられる。

 コロッサル社は次の段階としてエミューやダチョウの卵での実験を計画している。

 絶滅種の復活という目標に対しては、科学者や保護活動家から批判的な声も根強い。

 現存する絶滅危惧種の保護から資源が奪われるという懸念や、復活した動物が生きていける環境が果たして地球上に残っているのかという倫理的な問いも、依然として答えが出ていない。

まとめ

この研究でわかったこと

  • ニワトリの卵の中身を3Dプリント製の人工卵殻に移し替えても、正常にヒヨコが孵化できることが確認された
  • 人工卵殻は透明なため、これまで不可能だった胚の成長を最初から最後まで連続して観察できるようになった

まだわかっていないこと(今後の課題)

  • 鳥の胚は親鳥の体内にいる段階から成長が始まるため、体外での初期状態をどう再現するかが未解決
  • ジャイアントモアのような大型の絶滅種の胚を育てるために必要な栄養をどう補充するかが課題
  • 復活した動物が現代の環境で生きていけるかどうかという倫理的な問いにも、まだ答えが出ていない

References: Colossal

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この記事へのコメント 2件

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  1. うーん…絶滅種への応用に課題があることを考えると、やはり中学校などで胚の観察に使われるのが現実的か?

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  2. な、なんか未来には人間ですらこの方法に近い形で可能になりそうな気がして来た…(•́ω•̀)

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