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ローマ教皇レオ14世がAI時代の指針を示した初の回勅「壮大なる人間性」を発布

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Image credit:Instagram@pontifex
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 135年前、産業革命の波が世界を飲み込んだとき、バチカンは労働者の権利を守る回勅「レールム・ノヴァールム」を発布し、時代に立ち向かった。

 そして現代、ローマ教皇レオ14世はAIという新たな革命に対し、同じ覚悟で教会の声を世界に届けようとしている。

 レオ14世が初めて発布する回勅「マニフィカ・フマニタス(壮大なる人間性)」は「人工知能の時代における人間の尊厳の保護」に焦点を当てた内容で、発表にはAI安全性研究の第一人者であるAnthropicの共同創業者クリストファー・オラー氏も同席する予定だ。

 この回勅は2026年5月25日に発布予定だ。

参考文献:

人間の尊厳を守るため、バチカンが再び立ち上がる

 1891年5月15日、世界は産業革命の真っただ中にあった。

 工場では子どもたちが長時間労働を強いられ、労働者は劣悪な環境で働かされていた。

 そのとき、時のローマ教皇、レオ13世(本名、ヴィンチェンツォ・ジョアッキーノ・ラッファエレ・ルイージ・ペッチ)は「レールム・ノヴァールム(Rerum Novarum)」と題した回勅を発布した。

 回勅(かいちょく)とは、教皇が全世界のカトリック教会に向けて発布する公式書簡のことだ。

 労働者の権利・適正賃金・労働組合の正当性を教会の立場から擁護したこの文書は、近代社会における教会の役割を大きく塗り替えた。

 それからちょうど135年後となる2026年5月15日、第267代ローマ教皇レオ14世は一つの文書に署名した。

 タイトルは「マニフィカ・フマニタス(Magnifica Humanitas)」。ラテン語で「壮大なる人間性」を意味する、レオ14世が初めて出す回勅だ。

ナイキを履く教皇が、AIに向き合う

 教皇レオ14世の本名はロバート・フランシス・プレヴォストという。

 1955年、アメリカ・イリノイ州シカゴに生まれた史上初のアメリカ人教皇だ。数学の学位を持ち、熱狂的なシカゴ・ホワイトソックスのファンでもある。

 バチカンが公開したドキュメンタリー映像では、白い司祭服の裾からナイキのスニーカーがのぞいており、世界中で話題となった。

 伝統を重んじながらも現代社会に自然に溶け込む姿は、レオ14世その人を象徴している。

 そんな現代の教皇が、AIを「産業革命に匹敵する社会的転換点」と位置づけ、バチカン内にAI専門の研究グループを設置したのはそれほど意外なことではない。

 司祭たちにAIを使って説教を書かないよう指示し、「真の説教とは信仰を分かち合うことであり、AIには決してそれができない」と述べてきた教皇は、より大きな舞台でAIへの教会の立場を世界に示そうとしている。

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教皇レオ14世が初めてサン・ピエトロ大聖堂のロッジアに立った時の様子 Image credit:Edgar Beltrán / The Pillar / commons.wikimedia / CC BY-SA 4.0

「人間の尊厳の保護」を世界へ発信

 「マニフィカ・フマニタス」は2026年5月25日、バチカンのパウロ6世記念ホール内にあるシノドスホールで発布される予定だ。

 バチカンによると、回勅は「人工知能の時代における人間の尊厳の保護」に焦点を当てた内容となる見通しで、尊厳・労働・正義・平和といったカトリック教会が長年説いてきた社会的教えとAIを結びつけるものだという。

 この発表には、AI安全性研究の第一人者であるAnthropicの共同創業者クリストファー・オラー氏も登壇する予定だ。

 Anthropicは「Claude(クロード)」という生成AIを開発する企業で、AIの安全性と倫理的な使い方を最優先の理念として掲げている。

 教皇が宗教者ではなくAI企業の研究者を発表の場に招くのは極めて異例であり、バチカンがAIを技術的課題としてではなく、人類全体に関わる道徳的・社会的課題として捉えていることを強く示している。

 教皇レオ14世はこれまでの演説の中で、AIによる軍事的意思決定の自動化に繰り返し警鐘を鳴らしてきた。

 「機械が生死に関わる判断を下す時代」を「戦争の非人間的な進化」と呼び、各国政府に対して兵器開発の加速ではなく、外交・教育・平和構築への投資を求めている。

 AIが情報を処理し、答えを導き出す能力は認めつつも、何が正しく何が間違いかを判断する力や、人と人が心でつながる真の関係だけは、AIには生み出せないというのが教皇の一貫した立場だ。

135年の時を超えて受け継がれる覚悟

 135年前のレオ13世教皇が「レールム・ノヴァールム」に署名した日と同じ5月15日に、教皇レオ14世がこの回勅に署名したのは偶然ではない。

 かつて産業革命が人々の働き方や暮らしを激変させ、労働者の尊厳が顧みられない時代を生んだように、AIもまた同じ過ちを繰り返す危険をはらんでいると、バチカンは考えている。

 働くとはどういうことか。人間にしかできないこととは何か。そして、テクノロジーは誰のために存在するのか。

 バチカンはジュネーブで開催された「AI for Goodサミット」などの国際会議でもすでにその立場を示してきた。

 AIには人間の尊厳を中心に据えた倫理的な監視が必要であり、技術の進歩は人間を豊かにするためにあるという主張だ。

 「マニフィカ・フマニタス」は神学的な文書であると同時に、AIの方向性が各国政府やテクノロジー業界だけによって決められてしまう前に、人類としての指針を示そうとする試みでもある。

 135年前に労働者の声を拾い上げたバチカンが、今度はAI時代における人間の価値を問い直そうとしている。

References: ope Leo to present his encyclical on AI alongside Anthropic co-founder

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この記事へのコメント 4件

コメントを書く

  1. >司祭たちにAIを使って説教を書かないよう指示

    説教はだれが書いても同じ内容にならなければならないのにAIにそれを奪われたら困る
    既得権を守るのに必死だな

    • -2
  2. レオ14世がアメリカに居た頃の銀行口座の個人情報を変更しようと「法王ですが」
    電話したら信じてもらえなかったエピソードが好き

    • 評価
  3. AI「よろしい、、、ならば戦争だ!」

    • -1
  4. この方がホワイトソックスファンだという記事を見て以来
    村上が活躍した試合のニュース見るたびに
    教皇喜んでおられるのかなぁ…と思ってしまう

    • 評価

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