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水星は「死んだ惑星」ではなかった。表面の筋が示す地質活動の証拠

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水星 Image Credit: NASA/JHUAPL/Carnegie Institution of Washington/USGS/Arizona State University
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 水星は地質学的に「死んだ惑星」ではなかった。スイスの最新研究により、地表の斜面に刻まれた明るい筋が、今も続く地質活動の証拠である可能性が浮上した。

 地下の揮発性物質がガスとして噴出し、現在も惑星の姿を変え続けているという。太陽系最小の惑星は、今も脈々と活動を続けているのだ。

この研究成果は『Communications Earth & Environment』誌(2026年1月27日付)に掲載された。

水星が活動していないと考えられていた理由

 太陽に最も近く、最小の惑星である水星の表面は、月のように無数のクレーターで覆われている。

 かつては火山活動も盛んだったが、約35億年前にその活動は停止したとされてきた。

 惑星が冷却されるにつれて全体が収縮し、地球のような複数のプレートではなく、一つの大きな外殻が核を包み込む構造になったためだ。

 アメリカ・ノースカロライナ州立大学の報告によれば、この全体的な収縮がすべての火山活動を封じ込め、溶岩が表面へ到達することを不可能にしたという。

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水星 Image credit:NASA/Wikimedia Commons

水星の400本以上の明るい筋を画像から特定

 しかし、スイスのベルン大学宇宙居住性センターおよび国立惑星研究センターの研究チームは、この定説を覆す発見をした。

 ヴァレンティン・ビッケル博士が率いるチームは、パドヴァ天文台の研究者らと共同で、水星の斜面に見られるスロープ・ストリーク、別名リネアと呼ばれる明るい筋状の模様を初めて系統的に分析した。

 深層学習を用いた解析によって、探査機メッセンジャーが撮影した約10万枚の画像から、これまで数例しか知られていなかった筋を402本も特定することに成功した。

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さまざまな斜面リネア(明るい筋)の発生源の例 Image credit:Nature Communications Earth & Environment(2026). DOI: 10.1038/s43247-025-03146-8. 

水星は今も活動。地下ガスを放出していた

 分析の結果、これらの筋は主に、若い衝撃クレーターの太陽に面した斜面に集中していることがわかった。

 これは太陽放射が筋の形成に重要な役割を果たしていることを示唆している。

 以前の衝突で生じた岩石の亀裂を通じて、惑星内部から硫黄などの揮発性物質が表面へ漏れ出し、ガスとして放出されるアウトガッシング(outgassing)が起きている可能性が高いという。

 筋の多くはホロウ(hollows)と呼ばれる明るい窪地から発生しており、水星が今この瞬間も内部から変化している動的な姿を浮き彫りにした。

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水星の斜面リネア(明るい筋)形成に関する概念的仮説 mage credit:Nature Communications Earth & Environment(2026). DOI: 10.1038/s43247-025-03146-8. 

日欧の探査機ベピ・コロンボが活動の証拠を検証

 この「生きた惑星」としての水星の姿を最終的に証明するのが、2026年11月に水星軌道に到達する予定の日本とヨーロッパ共同の水星探査計画「ベピ・コロンボ」だ。

 この計画名は、水星の自転と公転の特殊な関係を発見したイタリアの数学者ジュゼッペ・コロンボ博士の愛称にちなんでいる。

 欧州宇宙機関(ESA)の表面探査機(MPO)と、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した磁気圏探査機「みお」(MMO)の2機体制で、水星の謎に迫る。

 実は、今回の研究を主導したベルン大学はベピ・コロンボ計画の主要メンバーでもある。

 同大学が設計・製造を手がけた高度計や分析計といった最新鋭の観測機器が、高度約1000kmの軌道から水星の地形や大気成分をかつてない精度で調査する予定だ。

 ベルン大学のチームは、自分たちが作成した最新の目録を活用し、以前の観測から10年以上が経過した現在の水星の筋を再撮影する計画だ。

 もし新しい筋が出現していれば、それは水星が現在進行形で活動している動かぬ証拠となる。

 日本の「みお」が捉える磁界データと、欧州の探査機MPOが描く3D地形モデルが合わさることで、水星が失い続けている物質の正体や、地底で今も脈打つ地質活動の全貌がついに明らかにされるだろう。

References: NASA / Mediarelations.unibe.ch

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この記事へのコメント 10件

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  1. >深層学習を用いた解析によって、…(中略)…、これまで数例しか知られていなかった筋を402本も特定することに成功した。

    記憶違いでなければ かつては、水星の表面に刻まれた皺は地質活動の終わりによって収縮した証、のように解釈されてたと思うんだが、丹念な研究によって覆され、解釈し直されたわけなんか。
    ディープ・ラーニングによって既存のデータが精査され、今までの説が見直される、というのも面白い。なんか感動があるな

    • +6
  2. なんだか最近の水星に関する情報更新が多くて混乱してきたな。
    10〜20年後の学生と水星について話す機会があったらとんでもないジェネレーションギャップが起きそうだよ……。

    • +7
  3. 最近の宇宙学説は天体望遠鏡の進化や探査機という目に見えての観察や分析により以前の計算から推定されていた学説を覆す事が多くなった気がする。やっぱ目で見えると正確性が増すのと分析工学も発達したからなもね。宇宙の研究は何れにしても長いスパーンで行われるから残念ながら何処まで見届ける事が出来るか分からないな。

    • +5
    1. 宇宙論も日進月歩だね
      ただ、「過去の定説を覆す」的な論説が増えるのってむしろ停滞期なんだよね
      新しいことを言わないと目立てない的な・・・

      • +3
  4. 太陽に熱せられているのが原因で
    太陽の潮汐力によりひび割れた部分から中身が漏れているだけで
    水星自体の活動とは言えないんじゃね

    • -2
  5.  収縮するってことはあんなに太陽に近くて炙られてるのに地表は融けてないんですね

    • 評価
  6. “ベピ・コロンボ”さん。ついに水星軌道に投入か
    内惑星…どころか太陽系内でも軌道投入難易度が高い水星で
    初めての軌道上からの探査だから、今までわかっていなかったことがどんどん更新されていきそう

    • +3

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