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ヒグマの個体を識別する顔認証AIを開発。季節による体型変化に左右されない新技術

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アラスカヒグマ Image by Istock Harry Collins
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 近づくのも命がけのクマの個体を識別するのは至難の業だ。さらに季節による体重の増減が激しく、外見が劇的に変わるため、専門家でも見分けるのは難しい。

 そこで、スイスとアメリカの国際共同研究チームは、アラスカに住むヒグマの個体識別を可能にする顔認証AI「ポーズスウィン(PoseSwin)」を開発した。

 この技術は、遠くから撮影した写真さえあれば、耳の位置や鼻先の形などの特徴を捉えて個体を特定できる。

 これまでのようにクマを麻酔で眠らせてタグを付けるといった接触が不要になり、安全な調査が可能となった。最新の機械学習により、冬眠前後の激しい変貌にも左右されない正確な個体追跡を実現している。

 この査読済みの研究論文は『Current Biology』誌(2026年2月2日)に掲載された。

クマの体型変化は個体判別を困難にする

 野生動物の保護において、特定の個体を長期間にわたって監視し続けることは、その生態を理解するために欠かせない。

 しかし、ヒグマを対象とする場合、専門家であっても個体を見分けることは容易ではない。

 ヒグマは冬眠に向けて大量の餌を食べるため、季節によって体重が劇的に変動する。冬眠前後の肉付きや毛並みの変化は、まるで別の個体であるかのように外見を変えてしまう。

 これまでは、クマを捕獲して麻酔で眠らせ、耳にプラスチック製のタグを付けたり、GPS送信機を首に巻いたりする手法が一般的だった。

 しかし、これらは動物に身体的な負担を強いる方法であり、より安全で負担の少ない調査手法が求められていた。

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Image credit:© B.Rosenberg

骨格の不変的な特徴に着目

 スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)とアラスカ・パシフィック大学(APU)の研究チームは、この課題を解決するために「ポーズスウィン(PoseSwin)」という機械学習プログラムを開発した。

このシステムは、APUの研究者であるベス・ローゼンバーグ氏が5年間にわたり撮影した、109頭のアラスカヒグマによる7万2000枚以上の写真データを学習材料としている。

 このAIの画期的な点は、体重が増えても変化しにくい解剖学的な特徴に焦点を当てたことだ。

 研究チームは、ヒグマの生理学的な知見に基づき、眉骨の角度、耳の配置、鼻先の形状といった、一生を通じて比較的安定している部位を特定した。

 これらの骨格的な特徴を、クマがとるさまざまなポーズや角度のデータと組み合わせることで、体型に惑わされない識別を実現した。

 EPFLのアレクサンダー・マティス氏は、体の画像のみを用いるモデルよりも、頭部の特徴とポーズを重視する手法がはるかに優れていることをデータが証明したと述べている。

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写真からポーズスウィンで個体識別されたアラスカヒグマ Image credit:© B.Rosenberg

離れた場所からの監視が可能に

 研究チームは、アラスカのカトマイ国立公園を訪れた一般の観光客などが撮影した写真を用いて、システムのテストを行った。

 その結果、ポーズスウィンは高い精度でデータベース内の個体と写真を一致させることに成功した。

 望遠レンズなどで離れた場所から撮影した画像さえあれば判定できるため、研究者がクマに接近して危険を冒す必要はない。

 現在、この技術はアラスカのマクニール川州立野生生物保護区に生息する100頭以上のヒグマの監視に活用されており、人間に捕獲されるストレスを与えることなく、個々の健康状態や移動パターンを把握できるようになった。

 今回対象となったアラスカヒグマは、日本の北海道に生息するエゾヒグマと生物学的に同一の種(Ursus arctos)である。

 そのため、この技術が発展すれば、将来的に日本国内のヒグマの監視や、人間との適切な距離を保つための管理にも役立つ可能性がある。

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Image credit:© B.Rosenberg

多様な種への応用と公開

 ヒグマは、植物から肉まで何でも食べる雑食性だが、アラスカの生態系では圧倒的な体格と力で食物連鎖の頂点に君臨している。

 同じ地域には強力なハンターであるオオカミも生息しているが、単独のヒグマがオオカミの群れを追い散らして獲物を奪うこともあるほどだ。

 成獣になれば天敵が存在しないこの「最強の雑食動物」は、生態系全体のバランスを保つ重要な役割を担っている。

 ローゼンバーグ氏は、アラスカヒグマの個体を正確に識別し監視を続けることが、健全な環境を維持するための鍵になると強調する。

 ポーズスウィンの能力は、クマ以外の動物にも発揮されつつある。

 初期のテストではオナガザル科のマカク属などの霊長類の識別においても高い精度を示しており、今後はネズミやチンパンジーといった他の種への応用も期待されている。

 このプログラムはオープンソースとして公開されており、世界中の研究者がそれぞれの調査対象に活用できるようになっている。

References: CELL / Actu.epfl.ch

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この記事へのコメント 8件

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  1. こういうのクマに限らず絶滅危惧動物にも開発されて調査に使われたらいいな、全部にタグ付けるわけにもいかないし

    • +11
  2. 中川「全部同じじゃないですか!?」
    AI「これだからしろうとはダメだ!もっとよく見ろ!」

    • 評価
  3.  へーすごい! 体の模様のない動物なのに区別がつくってすごくない? ポーズは姿勢というのかな、確かにそういう仕草とか座り方や立ち方で判定というのは理解できる気がします。 人間でも歩き方で誰であるとかわかることがあるらしいです。 
     個人的には AR グラスで目の前の人やテレビなどの画面上の人の名前や過去のやり取りがフキダシみたいに出てくれるとありがたいな。 もうね、人の名前が覚えられなくて、どこで会ったかなーとか大変なのよ。 さらに言うとテレビ見ても出てる人のテロップ出てないとアイドルとかみんな同じに見えちゃって……

    • +4
  4. ヒグマ「無断学習やめてほしいんですけど!」

    • 評価
  5. 🐻 「顔識別で電車に乗れるんですか?」

    • -2
  6. まあ熊はメイクしたり着替えたり髪型変えたり整形もしないから

    • 評価
  7. ビッグ・データのある人間でも誤認逮捕のようなエラーが起きてるが、クマ対象だと、制度はどれぐらいなんだろう? 人的被害のリスクを抑えられる、というのは分かるが、タグと比較して劣るんじゃないかと思う

    • 評価
    1. 全ての熊にタグをつけることなんて不可能に近いよ

      • -1

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