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月に現れる一時的な謎の光の正体は?

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(著)

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Image by Istock chirawan
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 月の表面に時折あらわれる謎の光が、古くから天文学者たちを悩ませてきた。

 18世紀、イギリスの天文学者は、新月の暗い側に数時間続く光を観測した。その後、世界中で数千件の同様の記録が残されている。

 この現象は「一時的月面現象(transient lunar phenomena)」と呼ばれ、閃光のように瞬くものから数時間にわたって輝くものまである。

 科学者たちはその原因を、隕石の衝突、放射性ガスの放出、さらには太陽風との相互作用など、さまざまな角度から探っている。

月の表面で観測される一時的な謎の光

 月面の一部が短時間だけ明るく輝いたり、赤や紫の斑点として見えたり、ぼんやりと光る霧のように見えたりする現象は、「一時的月面現象(Transient Lunar Phenomenon:TLP)」と呼ばれている。
 
 このTLPに関する記録は、古代の文献にも残されている。

 中世ヨーロッパでは「月が赤く光った」「火のような点が現れた」といった目撃談があり、近代以降になると天文学的な観測も始まった。
 
 科学的な最初の記録は、イギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェル氏が1787年4月19日の夜、新月の暗い側に何時間も続く明るい光を観測したものだ。
 
 イギリス、アベリストウィス大学の物理学研究者、アンソニー・クック氏によると、古代から現代にかけて約2000年の間に、およそ3000件のTLPが報告されているという。

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一時的な月の光(TLP)は、古くから人々の興味を惹きつけてきた。この絵は1540年11月にドイツのヴォルムスで観測されたTLPをもとに描かれたとされるもので、月の顔の目の間に明るい光が見える。Image credit:e-manuscripta / Zentralbibliothek Zürich 

一瞬の閃光は隕石の衝突による発光か?

 日本、電気通信大学の名誉教授・柳澤正久氏は、1分以内に消える短い光は隕石の衝突で生じる可能性が高いと説明する。

 重さ0.2kgほどの隕石が月面に衝突すると、衝撃で岩石が高温になり、冷めるまでのわずかな時間だけ光を放つ。

 このような現象は「月面衝突閃光(Lunar Impact Flash:LIF)」と呼ばれる。

 科学者たちは長年この現象を予想していたが、実際に確認できたのは1990年代に入ってからだった。

 高速ビデオカメラの普及により、瞬間的な光を記録できるようになったためである。

NASAの自動月・流星観測衛星(ALaMO)で検出された月面衝突閃光(LIF)の映像。緑色の枠は閃光が観測された領域

 柳澤氏の研究チームは、1999年のしし座流星群の観測中にLIFを初めて確認した。その成果は2002年に『Icarus』誌に発表された。

 それ以降、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が支援するギリシャのNELIOTA計画でも、9年間で193件のLIFが正式に記録されている。

 観測データによれば、月の西に位置する広大な月の海の一つ「嵐の大洋」付近で多くの閃光が確認されている。

 だが、アテネ国立天文台の研究者アレクシオス・リアコス氏は「実際には月全体でほぼ均等に隕石が衝突している」と2024年に報告している

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月面衝突の閃光のGIFアニメーション。フレームの右上にちらつきが見える。Image credit:NELIOTA

数分間続く光は月の内部から噴き出たラドンの可能性

 数分間続く光については、月の内部から放射性ガスが放出されることが関係している可能性がある。

 2008年2009年に『The Astrophysical Journa』誌に発表された研究では、月の内部にたまった、ウランの崩壊によって生成される放射性の希ガス「ラドン」が、月震などの刺激で一気に噴出し、その放射崩壊によって光を放つ放つことがあるという。

 研究チームは、こうした光が観測された地点の多くがラドン濃度の高い地域と一致していることを確認しており、月の内部で今も地質活動が残っている可能性を指摘している。

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過去9年間に撮影された、月面衝突閃光が怒った場所を黄色の点で示した図。Image credit:NELIOTA

数時間続く光は太陽風によるものか?

 では最初の科学的記録となったハーシェル氏が観測した、数時間にわたる光の正体は何だったのか?

 2012年の研究では、太陽から吹き出す荷電粒子の流れ「太陽風」が月面の塵を帯電させ、高さ100kmにも達する塵の雲を形成する可能性があると示された。

 その雲が星や惑星の光を屈折させ、あたかも月自体が発光しているように見えるという。

 一方で、「長時間続くTLPは、月の前を横切る人工衛星の光跡である」と指摘する研究者もおり、科学者の間でも数時間続く光の正体をめぐる議論は続いている。

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地球磁気圏の周りの太陽風の流れをイメージした図 public domain / Wikimedia

月は今も生きている

 観測データが積み重なる中で、科学者たちは月が完全にに活動を終えた天体ではないと考え始めている。

 もし月面に光が見えたら、それはTLPである可能性がある。ますます月を観察してくなってきたぞ。やっぱり天体望遠鏡を買おうかな。

References: What Are Those Strange Lights People Keep Seeing on the Moon? / Wikipedia

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この記事へのコメント 7件

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  1. 確かに一瞬光るのは隕石の衝突だと思うし
    ある程度長いのはラドンの放出ってのも判るが
    塵が霧みたいになるってのが今一よく判らないな。

    塵を帯電させては判るがそれが100kmもの上空に舞い上がるってのが
    腑に落ちない。

    • 評価
    1.  無理やりリクツを考えてみると、月は地球の重力の 1/6 なので単純計算で 16.7km までのエネルギーで済むはず。 さらには大気がないので空気抵抗も温度による対流とかそういうのもなくて、地球で吹き出して高高度まで上げるエネルギーよりずっと少ない(もしかして 100 分の一とかのレベルかも?)エネルギーで舞い上がったりしませんかね。 地球上でも同じ極性に帯電していれば埃・塵レベルならその重力に打ち勝って浮くくらいですし。 まぁ、ヘリクツレベルですけど……

      • +3
  2. やっぱりお月様は神秘的だな。今の時代なら望遠鏡なりカメラなりで月の表面を観察できるけど、昔の人々は裸眼で、観察力と忍耐力が素晴らしかったんだね。もちろん太陽がないと地球では生きていけないけど、また月がなければ静かな自然現象もなかった。だから、私はお月様が好き。来月の満月の記事も待ってま〜す!

    • +11
  3. 結論は出てないようだが、時代からいって、ハーシェルが観測した光が人工衛星の光跡ではないのだけは確かだろう

    • +9
  4. 月面基地とか作って現場で観測と研究を始めない限りわからないだろうね

    • +1

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