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永久凍土で眠っていた3万9千年前のケナガマンモスから史上最古のRNAを解読

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ケナガマンモスのユカ Image credit:Valeri Plotnikov
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 シベリアの永久凍土で、3万9千年前に凍りついた若いケナガマンモスが地元のハンターによって発見されたのは2010年のこと。

 その後研究者に引き渡され、「ユカ」と名付けられたこの個体は、皮膚や筋肉、赤みを帯びた毛まで残る非常に良い状態だった。

 今回、ストックホルム大学などの研究チームはユカの冷凍標本から、これまでで最も古いRNAの解析に成功した。

 ユカは長らくメスと考えられていたが、遺伝子解析の結果、実はオスだったことも明らかになった。

 RNAは遺伝子を動かす役割を持ち、分解しやすい性質のため、数万年前のものが残ることは極めてまれだ。今回の発見は、絶滅動物の生命活動を具体的に知る新たな手がかりとなる。

 この研究成果は『Cell』誌(2025年11月14日付)に発表された。

永久凍土から出土したケナガマンモスの調査

 スウェーデン・パレオゲネティクスセンターの進化遺伝学者ラブ・ダレン博士を中心とする国際研究チームは、シベリアの永久凍土から発掘されたマンモス標本の中でも、特に保存状態が良いものには古代RNAの断片が残っている可能性があると考えた。

 そこで研究チームは、筋肉や皮膚などの軟組織がよく保存された10体のケナガマンモスから組織サンプルを採取した。

 チームはそれぞれのサンプルについて、現代のヒトやゾウのゲノムとも照合しながら、RNAやDNAがどれだけ検出できるかを詳細に調査した。

 しかし、マンモス標本10体のうち、RNAが十分に検出できたのは3体だけだった。

 そのうち2体のRNAは断片が小さく、詳細な配列解析には不十分だった。最終的に十分な量と質のRNAが得られ、分析が可能だったのは、2010年に発見された「ユカ」と呼ばれる個体だけだった。

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皮膚を取り除いた後のユカの脚の一部。下肢が非常に良い状態で保存されていたことがわかる。この保存状態の良さによって、古代のRNA分子を回収することが可能になった。Image credit: Valeri Plotnikov

世界最古、3万9000年前のRNA配列の解読に成功

  DNA(デオキシリボ核酸)は生き物の設計図として知られ、親から子へ体の特徴や情報を伝える。

 これに対しRNA(リボ核酸)は、設計図の情報をもとに「いま細胞でどの遺伝子を使っているか」を伝える役割を持つ。

 だがRNAはDNAよりもはるかに壊れやすく、古代生物の標本から検出できるのはごく稀だ。

 これまで記録されていた最古のRNAは、2019年にスウェーデンの研究チームが発表した、シベリアの永久凍土から発見された1万4300年前のオオカミの子「ツムル」の冷凍標本から検出されたものだった。

 マンモス標本でも同じような研究が進められてきたが、多くは長い年月の間にRNAが失われていた。

 ユカの冷凍標本は、皮膚や筋肉、赤みを帯びた毛まで良好に保存されていたため、世界最古となる約3万9000年前のRNA配列の解読に成功したのだ。

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ケナガマンモスの頭部の一部から採取された皮膚。右側には耳が見えている。Image credit:Love Dalén/Stockholm University

性別はメスではなく、オスだったことが判明

 ユカは発見当初、外性器とみられる部分や体の特徴を現生ゾウと比較した結果、「メス」と判断されていた。

 しかし今回、研究チームはユカのDNAとRNAを調べ、その中に「SRY遺伝子」があることを確認した。SRY遺伝子は哺乳類のオスの発生を決定する重要な遺伝子である。

 また、Y染色体上の他の性決定遺伝子や、それらから作られるRNA配列も確認された。これら複数の分子レベルの証拠がそろったことで、ユカはメスでなく「オス」であることが科学的に証明された。

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ユカはメスではなくオスだった。Image credit: Cyclonaut/Wikimedia CommonsCC BY-SA 4.0

筋肉や皮膚のRNAが「死の直前」の体内反応を示す

 研究チームは、ユカの筋肉組織から取り出したRNAを詳しく解析し、筋肉の収縮やストレス下での代謝調節に関わる遺伝子が活発に使われていたことを明らかにした。

 ユカが死の直前、筋肉を動かしたり体の代謝が激しく働いていた様子が読み取れる。

 また、ユカは歯の調査から5歳半ほどの若い個体だったことも分かっている。

 2021年のロシア科学アカデミーによる論文では、ホラアナライオンに襲われ、泥沼に逃げ込み、一部が食べられた後に冷凍保存された可能性が高いと推定されている。

マンモス特有のマイクロRNAも発見

 さらに、研究チームはユカの筋肉から「マイクロRNA」と呼ばれる、タンパク質を作らず遺伝子の働きを細かく調整する分子も発見した。これにはマンモスに特有の遺伝子変異も含まれていた。

 ストックホルム大学の研究者は、「RNA解析によって、絶滅動物が生きていた時の遺伝子活動や生命反応を直接調べることができる」と述べている。

 また今回の成果により、古代標本からインフルエンザやコロナウイルスのようなRNAウイルスの痕跡も将来的に研究できる可能性が広がった。

追記(2025/11/19)誤字を訂正して再送します。

References: CELL / Sciencealert

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この記事へのコメント 11件

コメントを書く

  1.  たしか新コロナのワクチンも RNA 使っていて壊れやすいという話でしたね。 それでも凍土の中からなら 39,000 年たっても 3 割もそこそこに使えるサンプルが採れるってのはすごいことのように思います。 素人考えだとそんなに時間が経ったら 1% にも満たなくて全然ダメって感じになるかなと思ってました。 まぁ、今回新記録なのでそれまではそういうことだったのかもですけどね。 解析の技術の向上もあるのかなとも思いました。 こういった苦労している技術開発している人たち、研究者、そしてお知らせしてくださるパルモ様に感謝です

    • +10
    1. RNAワクチンは、RNAを特別な脂質で包み込むことで細胞に吸収されやすくしているんだよ
      衝撃を与えるとその構造が壊れてしまうという問題もあるんだよね
      RNAが壊れたりせずに正確な量を細胞に届ける必要がある
      おかしなRNAから作られたおかしな抗原では
      ワクチンの効果が期待できないだけでなく
      望まない抗体がどんな反応をするかわからないんだよ

      • +3
  2. 10体しかないのか
    マンモスの牙が象牙の代わりに輸出されるくらいだから60〜80くらいあるかと
    まあ🦴だけ出土するのだほとんどだろうけど
    当局に言わないで盗掘隠蔽、当事者だけ徳をしてるのかも
    とつとう捕まったところをとくとくと…まあいいか

    あと象牙の芯、神経からはDNAは取れないのだろうか?
    たしかに細いが丈夫さからいえば残りそうだが

    • +8
  3. ホラアナライオン、冷凍保存して後で食べようとしたのかな。

    • +1
  4. 思っていたよりも垢抜けた色合いだった
    こういうのもやっぱり個体差があるんだろうな

    • +3
  5. ID: MmJh さんへの返信コメント
    この記事は、RNAを取り出せるかどうか調べたのが10体のサンプルで、その中の3頭が十分に検出できたということですよ。
    なお、ケナガマンモスのDNAの全ゲノムが解析できたのが2頭。
    2023年の論文『Genomics of adaptive evolution in the woolly mammoth』では、23頭のケナガマンモスのサンプルを調べています。
    また2024年の記事では、コロッサル・バイオサイエンス社とストックホルム大学のラブ・ダレン教授たちは60頭以上のマンモスの部分ゲノムを取得しているそうです。

    • +1
  6. 「これら複数の分子レベルの証拠がそろったことで、カはメスでなく「オス」であることが科学的に証明された。」の「カ」は「ユカ」だよね
    そのすぐ後の画像のキャプション、「ユカはメスではなくオスだたt。」の「だたt。」は「だった」だね

    • 評価

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