この画像を大きなサイズで見る心臓発作で人が倒れた場合、除細動を受けられないまま1分が経過するごとに生存率は10%ずつ下がるといわれている。だが都市部では救急車が渋滞や入り組んだ路地に阻まれ、現場への到着が遅れてしまうことも多い。
そんな問題に対して、台湾で新たな解決策が提案された。
それは街を駆け巡る食品配達員(フードデリバリー)を救急隊員として活用し、心停止患者へAED(自動体外式除細動器)を届けるという発想である。
台北市を対象としたシミュレーションの結果、この取り組みはAEDが現場に届くまでの時間をほぼ半分に短縮し、その結果、生存率を大きく高める可能性が示された。
この研究は『Canadian Journal of Cardiology』(2025年8月27日付)に掲載された。
一刻を争う心臓発作の処置
心臓発作による心停止は一刻を争う事態である。台湾は世界でも最先端の医療体制を持ち、市内に病院は数多く存在する。
しかし台北市の交通事情は複雑で、ラッシュ時の渋滞や細い路地が救急車の移動を妨げている。
国立台湾大学(NTU)の研究者たちは、この都市構造に目を付けた。
台北市の街には飲食店や屋台、食品配達員のスクーターがあふれており、配達員が常に動き回っている。
そこで「配達員がAED(自動体外式除細動器)を運ぶことで救急車より早く対応できるのではないか」と考え、シミュレーションを実施した。
AEDとは心臓がけいれんして血液を送れなくなったときに電気ショックを与え、正常なリズムを取り戻すための装置であり、街中の公共施設などにも設置されている。
この画像を大きなサイズで見る配達員によるAED搬送シミュレーションで救命率上昇を確認
研究チームは2017年から2019年にかけて台北市消防局が記録した病院外心停止(OHCA)のデータを使用し、公設AEDの設置場所とUber Eatsの配達パターン、注文集中エリアの情報を組み合わせた。
条件として、飲食店が集まる地域には必ず1人以上の配達員が存在し、半径2km以内なら対応可能と設定した。
配達員の平均移動速度は時速34.5kmに仮定された。
現状では救急隊がAEDを持って現場に到着するまで平均6.8分かかっている。
しかし配達員のわずか10%が対応すれば、AEDの到着時間は3.8分に短縮された。
これは従来のほぼ半分の速さであり、その場合、救命可能な割合は60%を超える。さらに30%の配達員が協力すれば、その数字は86%に達すると算出された。
この画像を大きなサイズで見る少数の協力でも効果があることが判明
研究の共同責任者である遠東記念病院(新北市)の孫仁堂医師は「少数の配達員でも有意義な時間短縮が可能であり、配達員が少ない時間帯でもモデルは有効だった」と述べている。
特に配達員が街に多く集まるピーク時間帯では、13%の参加だけで心停止事案の8割をカバーできるという。
また、NTU病院の陳冠誠医師は「除細動が1分遅れるごとに生存率は7~10%低下する。今回の提案は、都市に存在する労働力を活用して救命の弱点を補うものだ」と説明した。
この方法は費用対効果が高く、拡張性もあると研究者たちは指摘している。配達員は特定の地域を日常的に走り回り、狭い道を熟知している。
歩道に素早く停車できる機動力もあり、救命機材を運ぶ人材として理想的だ。
この画像を大きなサイズで見る実現に向けた課題と世界的な可能性
世界各地では、AEDをドローンで運ぶ試みも行われてきたが、配達員は都市の至るところに常に存在し、多くの場合は数百m先に待機しているため効率的だ。
配達業務そのものが迅速な行動を前提にしているため、緊急時に動きやすい点でも優れている。
一方で、この構想を現実に導入するには課題がある。
AEDの確実な供給や配達員の参加意思、交通事情を踏まえた移動速度の検証が必要である。
また、配達員には心肺蘇生法(CPR)とAEDの使用訓練を行い、緊急通報センターからの適切な指示が求められる。
さらに、安全性の確保、責任の所在、適切な報酬制度の整備も欠かせない。
それでも研究者たちは、病院や診療所の外でAEDをより使いやすくする世界的な流れとこの提案が一致していると考えている。
公共施設に設置されたAEDは建物の奥に置かれていることが多く、緊急時にすぐ見つけられないこともある。
配達員が直接現場に持ち込めば、救命のために必要な数分を稼げる可能性がある。
研究の共同責任者である国立台湾大学の陳佑宇氏も「配達員を救急体制に組み込めばAEDの到着時間を短縮でき、特にピーク時にはより多くの患者を救える」と強調した。
今回の研究は台北市を対象としているが、バイク配達が盛んな日本、ニューヨーク、パリ、シドニーなどの大都市にも応用できる。
アメリカでは年間35万人以上が心停止を起こし、そのうち9割が死亡している。従来の救急対応だけでは救命が難しい現状を考えると、この研究は世界中の都市にとって大きなヒントになるだろう。
編集長パルモのコメント

最近では日本でも、様々な場所にAEDが設置されているのを見かけるけど、実際に非常時に直面した時にその場所を思い出せるか?自分が使えるのかと躊躇してしまったりするよね。都市部ならフードデリバリーの配達員は至る所にいるので、彼らに使用方法を学んでもらって救急車が到着するまでに初期対応してもらえれば、救える命も増えるという考えもわかる。参加してくれるフードデリバリー員には、使い方を指導し、AEDの常時携帯が必須となるから、企業が国と連携して、それなりの報酬を支払うことで成立しそうな気もするけどどうだろう?
















バイクや自転車の機動性を活かした取り組みですね。
思い付きそうで思い付かない、画期的な方法です。
台湾は消防救急にはガチだよな
これでAED宅配した配達員にチップ名目で高額報酬設定とかしたら喜んで参加してくるのでは。
むしろ奪い合いか。
「Uber配達員はカネが出ないと動かないぞ
AEDの使用訓練も受けている間も機会ロスがある以上報酬がないと動かない
「人の命が~」という声もあるだろうが配達員だって「自分の生活が~」なんだ
Uberで普通に運べばいいので問題はない
報酬倍くらいに設定しても救急車のコストに比べたら誤差みたいなもの
カネが出ないと動かないということはカネを出したら動くよね
心肺蘇生法の講習受けてAEDの使い方にもある程度習熟したらなにかの資格を得た扱いにして資格手当つけるとか?
AEDって一回だけ研修受けたけど、ぶっちゃけ使い方なんてもう忘れた
ちゃんと高めの報酬払えよ
実際に使った場合だけじゃなく講習にも
金はかかるが、助け合いに近い形に戻るのはいいと思う
理念はいいけど制度が実用に耐えうるのか、協力したいという人がいるのかが最初の関門じゃないか。
いまだに日本人ですら、善きサマリア人の法が無いので自分が処置をして助からなかった場合の責任を負わされたくない。とか女性の急患に対して蘇生後に「身体を必要以上に触られた」と訴訟を起こされるのを過度に恐れているのだから。
配達員そんなに暇じゃないぞ?
カツカツで動いてる所もあるからすぐに対応出来るとは限らんやろ
それなりの余剰員がいないと救えないのでは?
あと報酬の奪い合いで混乱ならないようにシステム面での工夫がいるんじゃないかな
各区域にAED設置し、心臓発作の連絡が来たらすぐにドローンが自動で飛んで届けるような仕組みを作ったらどうかな。念の為に盗難防止として、救急隊員が来るまでドローンが上空で監視しながら、周囲の人達にもスピーカーで救助を頼むとか。