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幻のクマ、「ゴビヒグマ」の母子の姿がカメラにとらえられる(モンゴル)

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ゴビヒグマ  / Image credit:Hunter J. Causey / WIKI commons
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 ゴビ砂漠に生息する幻のクマ、「ゴビヒグマ」は、砂漠という過酷な環境で、生き延びるために水を求めて長い距離を旅する、極めて希少な種である。

 Apple社が提供する配信サービス「Apple TV+」のドキュメンタリーシリーズ、「The Wild Ones」の制作チームは、このゴビヒグマを撮影しようと、彼らの生息地にカメラトラップをしかけた。

 そして奇跡が起こった。なんと彼らは母子のゴビヒグマの貴重な映像の撮影に成功したのだ。

危機的状況にある野生動物を探すドキュメンタリー

「The Wild Ones」は、絶滅の危機にある野生動物をテーマにしたアドベンチャー・ドキュメンタリーで、2025年7月から配信が始まったばかりの番組だ。

 このシリーズはアルド・ケインデクラン・バーレーヴィアネット・ジェンゲの3人の、野生動物撮影の専門家が秘境と呼ばれる地域を探検。

 絶滅の危機にある動物たちの生態を記録し、保護活動につなげようという趣旨の番組である。

 そのシーズン1の第2話ではモンゴルのゴビヒグマを特集。彼らの生息地であるゴビ砂漠ににカメラトラップを設置し、希少なゴビヒグマを撮影しようと試みた。

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BBC America / Youtube

ゴビヒグマとは?

 ゴビヒグマは、モンゴルのゴビ砂漠という極めて過酷な環境を生きるクマだ。

 体長は約150~180cm、体重は100~150kgと、他のヒグマに比べて小柄なのが特徴だ。これは過酷な砂漠環境に適応した結果と考えられている。

 雑食性で、植物の根や球根、野草、昆虫、小動物、腐肉など、入手できるあらゆるものを食べる。水場が少ないため、水分も食物から摂取する。

 現存する個体数は40頭以下と推定されており、IUCNの絶滅危惧種レッドリストでは、絶滅危惧の中でも最も絶滅のおそれが強い「深刻な危機(CT)」に指定されている。

 現在、モンゴル政府や国際的な自然保護団体によって保護活動が進められており、生息域の監視や個体識別、DNA調査などが行われている。

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BBC America / Youtube

 コンゴ民主共和国出身の映像作家ジェンゲ氏はこう説明する。

ゴビヒグマはモンゴル原産で、現地では「マザーライ」と呼ばれています。地球上のクマの仲間の中で最も希少で、過酷な環境に生きています。ゴビ砂漠は、極端な高温と低温の両方に見舞われる場所なんです

 また、英国海兵隊出身の冒険家、ケイン氏は笑顔で次のように付け加えた。

ゴビヒグマは、わずか数十頭しか残っていません。地球上で最も過酷な環境の一つで生きている大型のクマです。私が気に入っているのは、彼らがルバーブを食べて生き延びている点なんですよ

 ルバーブとはフキに似た植物で、茎の部分をそのまま食べたりジャムにしたりする。日本でも最近、高原地帯で栽培されて人気が出てきた植物だ。

 だが、ゴビヒグマの撮影は運頼みである。なんせ「フランスの2倍の広さがあるエリア」で、40頭いるかいないかのゴビヒグマを撮影しようというのだから。

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カメラにとらえられた子グマの後ろ姿

ゴビヒグマの撮影に成功!しかも子グマまでいた!

 極限を強いられる過酷な撮影が続く。そんな中、彼らの努力がついに実を結ぶ瞬間が訪れた。

カメラにはっきりと、ゴビヒグマの姿がとらえられたのだ。しかも親子だ!

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 さらに驚いたことに、夜間に撮影された映像には、はっきりと母親の後を追う子グマの姿が写っていたのだ。

 よちよちと走っていく子グマの愛くるしい姿に、映像をチェックしていた3人からは思わず歓声が漏れる。

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 絶滅の危機にある動物をカメラに収めることについて、ジェンゲ氏は次のように語っている。

撮影には極力目立たないように、ほとんど隠れるようにして臨みます。まるで自分が撮ろうとしている動物たちのように、自分自身も無防備な存在に感じられるんです。

彼らは長年にわたって迫害され、ほとんど存在しない状態になってしまいました。そんな彼らの世界に入り込む体験は、非常に胸に迫るものでした。

ドキュメンタリーという形を通して、視聴者が私と同じ感覚を共有できることはとても重要だと感じています。

なぜなら、これらのフィルムは、その種を記録する「最後の映像」になるかもしれないからです

 撮影されたゴビヒグマは、カメラのすぐそばまで近づいてきた。何かが怪しいと思ったのだろうか、ニオイを嗅ぐ音までしっかり聞こえて臨場感もたっぷり。

The Wild Ones — “Gobi Bears” Clip | Apple TV+

この映像が、彼らの最後の記録にならないことを祈る

 バーリー氏は今回のプロジェクトと、その制作を支えた現地のガイドや保護活動家への敬意をこめてこう語る。

この番組を観た人には、心を動かされてほしいと思っています。

そして、これまで存在すら知らなかった動物のことを学び、現地で彼らを守るために活動する人々の努力を高く評価してほしい。

彼らは文字どおり、自分の人生を動物たちに捧げているんです。願わくば、この映像が彼らの「最後の姿」にならないことを祈ります。

そして私たちが、このような形で彼らを記録する最初で最後のチームにならないことを願っています

 今回の映像は、研究者たちにとっても非常に貴重なものとなった。チームはこの映像を調査結果としてまとめ、ユネスコに提出してさらなる保護と支援を訴える予定だという。

 フルバージョンのの映像は、Apple TV+で配信されているので、興味のある人は視聴してみてはどうだろうか。

 尚、BBCチャンネルとBBC AmericaとAMC+でもゴビヒグマの映像が特集された。

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この記事へのコメント 10件

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  1. 現存数が40頭以下はちょっと絶望的な数値に思える
    それでも今回の子グマの映像は未来への希望を感じるね

    • +17
  2. 子供の時はどんなに恐ろしい獣でもかわいいな

    • +11
  3. おっさんの俺が子供のころに学研の科学でモンゴルのクマは絶滅したて聞いたことあるんやけどあれは誤報やったんか?

    • 評価
  4. 40ってもう種としての保存がギリギリだね
    DNAの多様性がもう持続出来ない

    • +2
  5. キンキンのビール飲ませてやりてえ
    いや、蜂蜜酒かな

    • +1
  6. 真面目な話、安全で超強力な精力剤とかあげてもダメなの?
    数が安定するまでの間だけでも
    休憩の時にちょっと休むベア(笑)みたいな冗談言うと思う

    • -2

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