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古代メソポタミアの卓越した技術。紀元前25世紀のエビフ・イルの像の謎

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 メソポタミアの古代王国は、いまだに多くの謎に包まれている。遥か昔に存在していたため、その都
市や文明について、私たちの知識が完全に明確になることは決してないだろう。

 しかし、考古学によって、この時代の王や神官などの重要人物、そして彼らの信仰について多くのことを学ぶことができる。

 エビフ・イルの像は、セム系の人々の都市国家だったマリで見つかった、紀元前25世紀のものと思われる、もっとも見事な発見のひとつだ。

 類まれなほど精巧なつくりで、何世紀にもわたってほとんど無傷で今日まで残り、現代に再び日の目を見ることになった。

 この像は誰をかたどったものなのか? 像を制作した本来の目的はなんだったのだろうか?

貿易の中心地として栄えた古代都市「マリ」

 ユーフラテス川沿いの中部にあった古代都市、マリはセム系の人々の重要な都市国家だった。紀元前2900年頃、シュメールとエブラ王国の交易の中心地として繁栄した。

 だが、その豊かな歴史は、紀元前1759年にハンムラビ王によって破壊され、終わりを迎えた。

 全盛期には、マリは重要な交易路という地の利のおかげで、富と権力を享受していたが、旧バビロニア帝国の猛威を生き延びることはできなかった。

 破壊された都市は二度と本格的に復活することはなく、崩れ落ちた豊かな町の残骸が何世紀も埋もれることになった。

 20世紀の考古学者にとっては、失われた驚異の世界であり、マリは重要な発見が次々と出てくる貴重な場所であることが証明された。

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古代都市、マリの遺跡 / image credit:WIKI commons

重要な監督者だったエビフ・イルの見事な像

 エビフ・イルの像は、フランスの考古学者アンドレ・パロットによって発見された。マリ初のビッグな発見で、1934年1月22日、23日に発掘された。

 頭部は、かつてイシュタルの大神殿だった場所の外庭の歩道で見つかった。そこからわずか数メートル離れたところで、胴体部分が発見され、すぐにつなげられた。

 何世紀も埋もれていたわりには、全体としては良好な状態だった。腕は肘のところで折れていたが、損傷はその程度だった。

 専門家によって、像全体が復元され、大きな問題はなかった。残った疑問は、この像が誰を表しているかということだけだった。

古代の職人の熟練の技

 像の高さは52.5センチ、幅は20.6センチ、奥行きはおよそ30センチ。シュメールの古典的なスタイルで、紀元前2400年頃に作られたものだという。

 滑らかな半透明のアラバスター(雪花石膏)を削りだしていて、目だけ別の素材が使われている。

 目の制作には特別に細心の注意がはらわれていて、まるで生きているような、印象的な青い目を作ることに成功している。

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public domain/wikimedia

 まつ毛と瞼には片岩の破片、白目は貝殻、大きな虹彩には見事なラピスラズリが使われている。

 ラピスラズリは、入手困難な贅沢な貴石で、アフガニスタンからわざわざ輸入しなくてはならない貴重品だった。

 その他の部分も、相当高度な技術を駆使して、非常に細かい部分への気配りも怠ることなく作られている。

 この男性は、低い小さな藤椅子に座っていて、両手を胸に当て、祈るような姿勢をしている。

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 当時のこの地域によく見られる、長い顎髭を生やし、口ひげや頭髪はきれいに剃られている。

 やはり、当時の常として上半身は裸で、カウナケスという、シュメール様式の儀式用のスカート状腰巻をつけている。

 このような腰巻は、たいていヒツジやヤギの皮で作られていて、その動物の尾を後ろにたらしていた。

 残念ながら、像の脚は発見されていないが、小さな連結部分が残っていたことから、もともと脚がついていたことがわかる。

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public domain/wikimedia

 では、この人物は誰なのか? これがもっとも重要な謎だ。

 幸いなことに、比較的簡単に謎を解くことができた。像の肩の後ろに、原始的な楔形文字の碑文が刻まれていて、それによると、これは小像という形で奉納物を作った男性を表したものだということだ。

“dul, Ebih-il, nu-banda, dI?tar Nita, sarig”と刻まれていて、「この像は、監督者であるエビフ・イルがイシュタルに捧げたものである」という意味だ。

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エビフ・イルの像に刻まれていた碑文 / image credit:JastrowTranscription: Pataliputra/ CC BY 2.5

メソポタミアの女神イシュタルに捧げられたもの

 謎はすぐに解けた。この像は、メソポタミアの主要な女神「イシュタル」の神殿遺跡で発見された。だから、このエビフ・イルの像は、この女神に捧げられたものだ。

 女神は碑文で「Ishtar Virile」と表現されていて、豊穣の女神だったことがはっきりわかる。また、エビフ・イルが、マリの監督者であったこともわかっている。

 彼は、この都市で傑出した高い地位にあったため、このような高価な奉納像を作る余裕があったはずだ。

 エビフ・イルの像は、古代都市国家マリで見つかった、もっとも重要な発見のひとつだ。

「卓越した見事な職人技、保存状態、表現力豊かな様式を併せ持つ傑作」と言われていて、メソポタミア独特の芸術作品であり、古代文明を物語る重要な遺産のひとつだと言える。

追記:(2023/05/16)本文を一部訂正して再送します。

References:The Exquisite Statue of Ebih-Il, an Important Heirloom of Ancient Mari / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 20件

コメントを書く

    1. >>1
      新商品のストロング ザ・ワンパウンダーはいかがてすか?
      ボリュームたっぷりのパティで食べごたえ満点ですよ

      • -3
  1. 「奥さん毎度~ 三河屋でーす!」
    とでも語りかけてるような表情ですね

    • -3
  2. 俺の名を言ってみろで有名なジャギのメソポタミア版だ

    • -1
  3. エビフ・イルが捧げたと書いてあるけど、
    エビフ・イルの像だとは書いてない説

    • +1
  4. ひげの表現がすごい
    4500年前にもうこんなものを作ってなんて人間ってすごい

    • +9
  5. スクロールして画像が出たとき変な声出た
    びっくりした

    • 評価
  6. ひげの造形や、乳首までしっかり再現されている出来に驚いた。
    これが紀元前25世紀からずっと残っていたとは・・・

    • +4
  7. 目力がすごい、と思って本文を読んでいたら、めちゃくちゃ凝った作りだった。
    昔の職人さんすごい。

    • +4
  8. 今のアラブ人と比べて鼻が幅広なんだよな・・・顔立ちはセム系のアラブ白人というよりはエチオピア辺りの人に似ている気がする。

    • 評価
  9. 高位職の人間を女神にささげた
    高位職の人間がもったいないので、代わりに
    人間大の精巧な彫像を作って女神にささげた
    材料がもったいないのでサイズを52センチにした
    (女神には「従来より持ちやすくしました」と説明)
    ...といった経緯を妄想してみる

    • +2
  10. この分野の知識はあまり無いのだが
    メソポタミア
    シュメール
    バビロニア
    イシュタル
    アラバスター
    ラピスラズリ
    なんか物語が動き出しそうなワードてんこ盛りだ

    • +1
  11. すみません、これコメントに反映しなくてOKなんですけど、本文中の目の部分についてです
    白目の部分は角膜ではなく強膜だと思うのでよろしければ反映お願いします

    • 評価
  12. 現代からキリストの生きていた時代の倍以上の年月か…途方もない

    • 評価

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