
複数にゲノム解析企業がこのサービスを提供しており、23andMe社の消費者向け遺伝子診断は、2008年にタイム誌の「今年の発明品」に選ばれたほどだ。
唾液を郵送するだけで、誰もが手軽に自分の遺伝子を知ることができる。だがそこに罠があるという。
先日開催された安全保障に関するフォーラムで、米国の議員が個人のDNA情報が悪用される可能性を指摘した。「DNAや医療記録から、その人だけを狙って殺す生物兵器」を作れると警告しているのだ。
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特定の個人だけをターゲットにする生物兵器
この発言は、先日開催されたアスペン・セキュリティ・フォーラムで、ジェイソン・クロウ下院議員が口にしたものだ。クロウ議員は、他にもこうしたターゲット生物兵器で「戦場の兵士を倒したり、行動不能にすることもできる」と語っている。
個人向けの遺伝子検査サービスはこのところ人気が高まっており、自分の遺伝子を進んで企業に提供しようとする人が増えている。
またここ20年ほどでプライバシーを守るという意識が希薄になっており、特に若い世代ほどこの傾向が顕著であるという。

「その結果はどうか? 今やその人のDNAは私企業の所有物だ。これに関連する知的財産やプライバシーの保護を定める法律はほとんどなく、企業はそれを自由に売り払える」
23andMe社は、個人のDNA情報を売却することはないと繰り返し述べているようだが、同業他社が警察の求めに応じて提供した事例はあるという。
またWashington Examiner誌は、個人のDNAを利用して開発された特定の対象だけを狙う生物兵器は、犯人の追跡をよりいっそう困難なものにすると説明する。

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DNAがあれば作物や家畜を狙う生物兵器も開発可能
特定の個人をターゲットにした生物兵器だけでなく、特定の家畜や作物を狙うこともできる。米国の競合国がこれを利用して、食糧供給の破壊を試みる可能性があると、ジョニ・アーンスト上院議員は指摘する。
アーンスト議員は、国民や兵士の暮らしを支える特定の動物が狙われれば、食糧供給が不安定化し、食糧難を引き起こすだろうと警告。「食糧不足は、全世界を不安定にする」と述べる。
「生物兵器もさまざまだ。人間の安全を守るだけでなく、私たちを支える食糧も確保しなければならない」とアーンスト議員。

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現実に起きている国家による毒殺事件
アメリカ特殊作戦軍の司令官リチャード・クラーク陸軍大将は、特定の個人を狙うようなタイプではないが、ロシアが毒ガスによる暗殺を実際に行っていると指摘する。クラーク陸軍大将は、2018年英国でセルゲイ・スクリパリに使用された神経剤に言及しこう語る。
ロシアは、こうした毒薬を政敵にためらうことなく使う。自国の土壌にも使うし、NATO同盟国である英国でも使う。セルゲイ・スクリパリ氏は、ロシア連邦軍参謀本部総局の大佐まで務めた人物だが、2018年にイギリス、ソールズベリーのショッピングセンターで娘と一緒に倒れているところを発見された。
今後、我々は万一の事態に備えなければならない。だがそれについての議論は十分ではないし、対策も検討していないように思う
ロシアの神経ガス「ノビチョク」を使用されたものと考えられている。
また昨年、アメリカのマルコ・ルビオ上院議員は、ロシアと中国の研究施設が、米国の医療保険制度を利用して、アメリカ人のゲノムデータを入手できる状況について、次のように警鐘を鳴らしている。
中国共産党がアメリカ人のゲノムデータを入手できるなんて馬鹿げている。日頃から米国の安全保障を弱めようと試みる北京に、アメリカ人のゲノムデータを引き渡していい理由などどこにもない

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業界の自主規制ガイドライン
なお、2018年に23andMe社をはじめとするゲノム解析企業数社が、非営利団体「The Future of Privacy Forum」の協力のもと、責任あるゲノムデータの取り扱いを定めたガイドラインに署名したという。「消費者向けゲノム試験サービスのためのプライバシー関連ベストプラクティス(Privacy Best Practices for Consumer Genetic Testing Services)」と題されたガイドラインは、個人を特定可能か匿名であるかを問わず、ゲノム情報が法執行機関その他の第三者に開示される状況の指針を定めている。
例えば個人レベルの情報を開示するには、利用者から個別に同意を得なければならない。また法執行機関から要求されたデータ開示請求の回数や、実際に開示された回数についてよりいっそうの透明性を求めている。
ただしこれは業界の自主規制であって、同様の保護を定める法律は今のところ米国には存在しないない。
References:House intelligence committee speaks about new DNA bio-weapons that can target a single person / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
つまりリアルタイラントやリアルネメシスも作ろうと思えば作れるようになると
2. 匿名処理班
まあ逆に言えば、一人だけ狙って他人には無毒な兵器になるわけで
ウクライナじゃ地雷がまかれて、いつ一般人が手足吹き飛ばされるかわからんわけだし
独裁者だけを狙って攻撃できるなら戦争は早く終わるんじゃなかろうか
ディストピア監視社会ってSFじゃ怖いイメージがあったけど、ある意味で羊たちの楽園でもあると思うわ
3. 匿名処理班
>「DNAや医療記録から、その人だけを狙って殺す生物兵器」
同じ疾患の人はいっぱいいるのに、どうやってその個人だけを生物兵器で狙うのか?
不可能だろ
4. 匿名処理班
生物兵器は変異が怖い
作った当初は特定の誰かにしか効かなくても、その後紫外線だの他の菌との接触だので無差別に人に危害加える菌になりかねない
(なにせ菌とかウイルスとかは常に変異してる存在なので)
あと家畜作物向け生物兵器にしても、それが生物兵器を開発し敵国に放った国に帰ってきて蔓延するリスクがある
(つまり敵国だけのつもりが全世界に広まりかねない)
生物兵器は制御が困難で、後は野となれ山となれって態度だと本当に世紀末になりかねない
使われないといいね…
5. 匿名処理班
個人向け生物兵器なんてそんなコストかかるもの作るかいな?
6. 匿名処理班
フォックスダイ
7. 匿名処理班
>>6
そのフォックスダイも、MGS4じゃ老化したスネークの体内で変異して恐ろしい伝染病になりかけてたっていう
8. 匿名処理班
>>6
じゃな〜い
9. 匿名処理班
>>6
じゃない!(ガバッ)
10. 匿名処理班
※3
「疾病を狙う」んじゃなくて、
個人を特定できる遺伝変異の情報を盗む、ってことだと思うよ。
11. 匿名処理班
そんなめんどい事するか?
12. 匿名処理班
なんだってーーーーーーっ!
13. 匿名処理班
え…ナニコレ本気で怖い
民族ごとターゲットに出来るって事?
14. 匿名処理班
※10
まず、記事を読んでからコメントしてはどうか?
「DNAや医療記録から、その人だけを狙って殺す生物兵器」
「戦場の兵士を倒したり、行動不能にすることもできる」
どう読めば、個人を特定できる遺伝変異の情報を盗む、ってことになるんだ?
15. 匿名処理班
※5
その「個人」が、一国の元首や有力政治家だとか
特定団体の幹部だったりする場合には、ペイできるんじゃ?
16. 匿名処理班
※14
原文読んでね
"people willingly share their genetic mapping with businesses to gain insight on their genealogy and health"
「genetic mapping」はSNPsなどを用いた個人特定法そのものだよ。
で、そういった遺伝情報は遺伝子診断などの際に体系的に集められている。
17. 匿名処理班
10数年前に読んだトム・クランシーのジャック・ライアンシリーズで読んだな。特定の人物や民族、人種を攻撃・絶滅させるという暗黒ビジネスに使われていた。フィクションが現実になろうとは。
18. 匿名処理班
※16
???
横レスだけど、何を言ってるの?
記事全体の趣旨は、「現在、DNA分析(遺伝病のリスク検査や血縁的な同出身探し等の目的で)を扱う民間企業に、何の法規制もなく野放図に個人の遺伝子情報が集積されている。もしそれが漏洩して悪用されれば、個人を標的にした 特定の体質にのみ効く生物兵器への流用も可能だと、危惧されている」という話だろ? これについては、原文もここの和訳記事も同じ。
んで、※3は、後半の本題部分で「特定個人のみ狙うって、同じ体質の人は全員巻き添えになるんじゃねーの?」という疑問を呈している。
それに対して※10は、「特定体質を狙うんじゃなくて、個人の遺伝情報を盗むって話だよ」と前半の前提部分を答えていて、話が全く噛み合っていない。盗んだ後どう悪用されるか、という懸念が、この記事の本題なのに。
19. 匿名処理班
>>11
そんな面倒臭い事をしてでも始末したい輩は居るんだよ
某大国の独裁者とかね…
20. 匿名処理班
>>2
007でまさにこの兵器の話が題材になってる。特定の人種だけが反応して007は平気みたいな場面があるよ。まんざら夢物語でもないんだと思う。
21. 匿名処理班
>>11
原爆だって作るのは面倒くさかっただろうぜ
22. 匿名処理班
家や金庫の鍵を机の上に放り出しておくようなものだね
23. 匿名処理班
ブラックバスとか外来種対策ならあり。
一定の塩分や分裂回数で死滅するようにプログラム。
国内の治安回復にも。