
image credit:IMDEA Energy
空の旅は良いものだが、飛行機から排出される二酸化炭素などの温室効果ガスは、地球温暖化を進める大きな要因の1つでもある。そこでスペインに建設されたのは、太陽と水と二酸化炭素からジェット燃料を生産する施設だ。まさにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる)な代替ジェット燃料である。
この技術自体は数年前からあったが、今回それを産業レベルにスケールアップできることが実証され、学術誌『Joule』(2022年7月20日付)で発表された。
スイス、チューリッヒ工科大学のアルド・スタインフェルド教授は、「完全統合型のソーラータワーシステム内において、水・二酸化炭素からケロシンまでの熱化学プロセスチェーンを実証したのは、我々が初めて」と語る。
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太陽と水と二酸化炭素で作るジェット燃料
飛行機は空を飛ぶためにジェット燃料を大量に消費する。人間の活動によって引き起こされる温暖化の5%は、それに起因するとされるほどだ。だが、長距離を飛行する商業線にふさわしい代替燃料はなかなか見つかっていない。
こうした状況を改善するべく、スタインフェルド教授らが取り組んでいるのが、太陽と水と二酸化炭素から「合成ケロシン」を作る方法だ。
その生産プロセスでは、空気に含まれている二酸化炭素が吸収される。だから合成ケロシンをジェットエンジンで燃焼させても、化石燃料のように新たな二酸化炭素が大気中に放出されることはない。
もともと大気に含まれていた二酸化炭素が排出されるだけなので、差し引きゼロ――カーボンニュートラルなのだ。
しかも合成ケロシンは使い勝手もいい。既存のジェットエンジンにも使えるし、従来のケロシンに混ぜて使うこともできるからだ。
SUN-to-LIQUID - Renewable Transportation Fuels from Solar Energy
次の目標は生産効率を上げること
合成ケロシンの生産施設は太陽の国スペイン、マドリードにある。メインとなるのは15メートルの塔の頂上に設置された「リアクター(化学反応を起こさせる装置)」だ。地面に敷き詰められた「169枚のパネル」で日光を反射し、リアクターに太陽エネルギーを集中する。
するとその熱によってリアクター内の「酸化セリウム」が化学反応を起こし、水と二酸化炭素を合成ガスに転換。これをさらに液化すると、ケロシンや軽油に似た燃料が出来上がる。

研究グループの目標は、これを15%まで引き上げることだ。これが実現できれば、反射パネルの数を減らしたり、燃料の生産量を増やしたりできるようになるそうだ。
References:An all-in-one solar-powered tower makes carbon-neutral jet fuel - Scimex / SUN-to-LIQUID project publishes successful thermochemical kerosene production using solar energy, water and CO2 in an integrated solar experimental facility in the scientific journal Joule | IMDEA Energy / written by hiroching / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
そーらぁ、ええわ (^_^)
2. 匿名処理班
そもそも石油以外を燃料にしようとすると暗殺されたり
圧力で潰される歴史があったという事を忘れちゃダメだよね。
最近やっと出てきたというよりも研究してる事を発表する
事すら恐れる時代もあった。電気自動車の完成祝賀会に
ふるまわれた酒に毒が入ってたり昔はとにかく脱石油そのものに
闇の圧力がかかったから。石油売りたい気持ちもわかるけど
そんな嫌がらせの仕方もねーだろって話でな。
3. 匿名処理班
電動化一辺倒じゃなくて色々な技術ができて選択肢が増えるといいよね。
4. 匿名処理班
どれぐらい出来るか知らんが、そのものが毒物の太陽光発電よりよほど良い。
5. 匿名処理班
残りの問題は製造コストかな?
天ぷら油からのバイオディーゼル燃料とかと同じでコストが重要問題になりそうやな
でもカーボンニュートラル構想としては応援したいね
6. 匿名処理班
砂漠や洋上でやる分には環境負荷も少ないだろうな
森を切り開き整地して設置されるソーラーパネルを見ると
クリーンエネルギーとは?って思う
7. 匿名処理班
4%ですか…
植物の光合成は99%以上の効率でエネルギーを有機物に変換できるようです
技術は確実に進歩しているようですが、まだまだ自然の力には及びませんね…
これからの研究に期待したいです
8. 匿名処理班
うーん
改めて植物の光合成の凄さを感じるんだけど
だってこのスペースに普通の植物を植えるのではダメなのか考えてしまうもの
9. 匿名処理班
肝心な水でヨーロッパ全体に使える水が少なくなってること
結局温暖化がすべて足を引っ張ってるし問題は奥深い
10. 匿名処理班
リアクターは技術の塊だけど、ただの鏡で集光するならそのあたりは楽そう。でも鏡を置くための敷地面積はやっぱり広く取るんだろうな。
11. 匿名処理班
>次の目標は生産効率を上げること
ここで大抵躓く
でも
頑張ってほしい
12. 匿名処理班
プラマイゼロ燃料は素晴らしいね
13. 匿名処理班
頭痛にケロリン
14. 匿名処理班
>>1
ハートはギリギリ押したくない
15. 匿名処理班
太陽光パネルなんて前時代的なもの使うより今流行の細胞産業で光合成する組織を一面に設置して酸素を工業生産する方が効率いいのでは
無機物で化学反応させる時代は終わって有機物で生産する時代が近いうちにくるよ
16. 匿名処理班
※7
>植物の光合成は99%以上の効率で
それってカルビン・ベンソンサイクルの効率見てるだけで光合成全体で見たらそんなに高いはずがない。
それと99%は言い過ぎ。約90%です。
17. 匿名処理班
商業化可能レベルまで漕ぎつけられたらこれ面白いね
でも、雨や曇りの多い日本では使うのが厳しそうな技術にも見えるな
18. 匿名処理班
記事の書き方だと、熱と二酸化炭素と水からケロシンが出来るように読めて、それって永久機関じゃん、って思った。まあ実際には温度差なり光なりを使うんだろうけど、不正確な感じがある。
19. 匿名処理班
※1
ちょっとふふっとなって悔しかったからマイナス
20. 匿名処理班
水と二酸化炭素、太陽光だけなんて書き方はおかしい
なぜ「酸化セリウム」も必要だと書かない?
「酸化セリウム」が化学反応を起こして作るのだから、「酸化セリウム」が化学反応しなくなったら終わり
化学反応の意味わかってんのかね?
21. 匿名処理班
※20
「酸化セリウム」は触媒だから減らないよ。多孔質セラミックに混入されてる。そのセラミックを太陽光で1500°Cにまで熱するとこによって触媒として機能する。
「「酸化セリウム」が化学反応を起こし」という書き方はわかりにくかったのかもね。
22. 匿名処理班
※20
酸化セリウムは触媒なのでは?
23. 匿名処理班
※14
顔文字が無ければギリギリ押してた
24. 匿名処理班
これ冬用の石油ストーブの燃料を夏に作れるからいいね
25. 匿名処理班
>>光合成全体で見ると、普通の植物で良くて数%だと思うよ。
26. 匿名処理班
化石燃料を一切使わなかった縄文時代の方が暑かった定期
最近は熱波とか言ってるけど地球の大半を占める海の温度は下がっていて寒冷化してる
実際、その影響で台風は昭和時代と比べて小さくなってる
27. 匿名処理班
「太陽と水と二酸化炭素」→ ジェット燃料
「部屋とYシャツと私」 → こども
28. 匿名処理班
※26
数万年かけて上がったり下がったりしてた気温が、ここ100年ぽっちで急激に変化してるから騒いでるんだから、縄文時代の話をするのは違うんじゃない?それに海水温の低下は地球温暖化によるものだし…
29. 匿名処理班
植物由来の石炭は何故か目の敵にされる模様