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死んだペットのハムスターのタトゥにより、死刑を免れた男性の物語

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(著) (編集)

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 シンガポールは薬物に関する厳しい罰則がある。ある男性は、大麻密売の罪で警察に逮捕され、無罪を主張し続けたものの、死刑を宣告された。

 だが今年に入り、一転して無罪となった。奇妙な偶然が重なったことで疑いが晴れたのだ。決め手は刑務所で知り合い、友人となった囚人が指に入れていた死んだペットのハムスターのタトゥーだったという。

 いったいどういうことなのだろう?順を追って説明しよう。

薬物所持と密売で死刑宣告を受けた男性

 2015年9月、ある月曜の午後のこと。ふたりの男がひと目を忍んでシンガポールにある工場団地にやってきた。

 ひとりがもうひとりの車に赤いビニール袋を投げ込み、その現場を警察が目撃していた。その夜遅く、このふたりは麻薬取引の罪で逮捕され、2キロ近い大麻の包みが発見された。

 裁判の間、袋の受取人であるラジ・クマール・アイヤチャミは、一貫して無罪を主張した。

 彼が言うには、「バタフライ」という噴霧タバコを注文したはずなのに、なぜかそれがホンモノの大麻の袋と入れ替わっていたのだという。

 だがこの主張は受け入れられず、ラジは2020年に死刑判決を下され、絞首刑を宣告された。

 取引の相手、ラマダス・プヌサミーは、同じ夜にマレーシアへと戻ろうとしていたところ、国境付近で逮捕され、15回叩きの刑と終身刑を言い渡された。

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photo by iStock

仲良くなった囚人のハムスターのタトゥがきっかけで無罪に

 だが、ラジたちが逮捕されてから7年後の2022年、信じられないような展開になった。シンガポ
ール控訴裁判所によって、両者とも一転、無罪となったのだ。

 いったいなにが起こったのだろう?

 ついこの間まで死刑囚監房にいたラジを救ったのは、所内で友人になった囚人の指に入れられていた小さなタトゥーだった。このタトゥーは、その囚人の最愛のペットのハムスターが死んだ日付を表わしていた。

 裁判所は、この件を「驚くべき偶然の一致」と呼んだ。

 「間違った包みを受け取っただけ」というラジの証言が、友人となったこの囚人、マーク・カライヴァナン・タミララサンによって裏づけられた形になったのだ。

 ラジが死刑判決を受ける前の2017年、ふたりは毎日一時間、刑務所の庭で顔を合わせるようになり、2018年には同房になった。

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Photo by Karsten Winegeart on Unsplash

間違って大麻を受け取ったことを証言してくれた囚人仲間

 ラジがマークに、自分が逮捕されたいきさつについて話すと、マークはその同じ日のまさに同じ場所で、”ガンジャ”(上質のマリファナ)を回収したはずが、中身は「バタフライ」だったと明かしたのだ。

 裁判所は、この取り違えの日、9月21日をマークが鮮明に覚えているのは、彼の最愛のペットのハムスター、パトリックがその夜に死んでしまったせいだという事実を知った。

 その死を悼んだマークは、数日後に左手の中指に、”RIP 21.9.15 PAT”とタトゥーを入れたのだ。

 2020年、検察側はこのふたりの囚人の出会いとマークのタトゥーの件は、あまりに偶然すぎて、とても信じられないと主張。裁判所もふたりの囚人が共謀して話をでっちあげたチャンスは大いにあったとして、検察の主張を支持した。

 ところが、シンガポールの首席裁判官サンダレシュ・メノンが、「何かをする機会があるということと、それを実際に行うことには大きな違いがある」として、マークの証言を却下すべきではないと述べ、まったく違う展開になった。

マークはかなり深刻な犯罪に関与していましたが、証言を行った時点では、捜査も起訴もされていませんでした。

すべてがでっちあげの話だったとしても、こんな証言をしても彼は多くを失うだけで、なにも得るものはなかったと思われます

 ラジの弁護士、ラメッシュ・ティワリーは、マークの証言はまさに思いがけない幸運だったと語っている。

この証言がなければ、ラジの死刑判決を覆すことはとてもできなかったでしょう。今回のケースは、死刑のような重大で、逆転不可能な刑罰を宣告する場合、被告に公正な法的手続きを与えることの重要性を痛感させられるものです。

たとえ、法的に正しい原則を適用したとしても、ときに、同じ事実を見ているふたりの人間が、異なる結論に達する可能性があることがあります

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photo by iStock

奇跡の偶然が重なり冤罪事件が解決

 シンガポールで、死刑廃止運動を進める組織「Transformative Justice Collective」のメンバー、キルステン・ハンは、この裁定は”大きな慰め”になると言う。

 「ラジとマークが出会い、話をし、彼らが同じに日に同じ場所にいたと気づいたこと自体が、信じられないほどの偶然でした」ハンは語る。

 「マークの証言がなかったら、まったく別の結果になっていたかと思うと、本当に恐ろしいことです」

 シンガポールには、世界でもっとも厳しい麻薬法がいくつかあり、500グラム以上のマリファナ取引には死刑が科せられる。

 しかし、死刑廃止運動が拡大する中、この1年で死刑制度に対する批判がますます高まっている。

 少量の麻薬取引の冤罪で別々に有罪になった、今回のふたりの囚人の死刑執行については(ひとりは、境界型知的機能障害があるとみなされた)、国内外で物議をかもした。

 ハンは、この裁定が、国が死刑制度に対する揺るぎない姿勢を変えようとしている証拠だとはいえないと言う。

 しかし同時に、このケースは麻薬犯罪に対する極めて厳しい刑罰の正当性に疑問を投げかけているともいえる。

この裁定は、国が死刑制度を考え直す気になったことを示しているわけではないと思います。今回の事件は極めてまれなケースでした。

とはいえ、この国の麻薬法が、人生の不変の事実ではないことを示しています。所詮、人間が作ったものなのですから。

死刑制度があると、生きるか死ぬか、そういう決断を迫られる状況に行きつくことになります

 マークは法廷で、別の知人の代わりに、無料のマリファナ100グラムと引き換えに大麻を回収することになっていたと証言したが、彼の運命はまだ不透明なままだ。

 また「バタフライ」取引における罰則についても、ラマダスとラジが違法なタバコ製品取引の罪に新たに問われるかどうかも不明だ。

 ラメッシュ弁護士は、シンガポールには、誤って有罪判決を受け、のちに無罪になった人たちに対する補償制度がないと指摘する。

 恩赦は歓迎すべきことだが、長年の死刑囚監房暮らしがラジに与えた打撃は大きく、彼は口数の少ない人間になってしまったともつけ加えた。

「死刑囚には常に死がつきまとっているため、長い期間死刑囚監房にいるということはとても厳しいことです。それでも彼は、自分が無実だとずっと主張していました」

References:A Dead Hamster Just Helped a Man Get Off Death Row / written by konohazuku / edited by / parumo

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この記事へのコメント 29件

コメントを書く

  1. どうみても二人の作り話

    なぜマークは証言したのか?
    自分が死刑になるのに?
    二人の間で何かあったとしか考えられない

    作り話で判決が変わったら本当の犯人は無罪になる
    逆に冤罪増えるわ

    • -39
    1. >>2
      完全な第三者の君が記事だけ見て二人の間で何かあったとしか考えられないと断定するのもよっぽどやぞ。

      • +15
      1. ※11
        ※12
        なぜマークは証言したのか?
        自分が死刑になるのに?

        誹謗中傷する前に、まずこの説明をしてもらおうか?

        • -8
        1. >>18
          それは記事だけじゃわからないでしょって話。勝手に断定してるのはお前だ。
          更にいうと異論反論と誹謗中傷をごっちゃにしてるあたり、これ以上議論しても無駄だと思うよ。

          • +3
        2. >>18
          知るかよそんなもん
          本人に聞けば?

          • -1
    2. ※2 【どう考えても、どう見ても】は、私はどれだけ考えても一つの答えしか導き出せず、他の可能性を考慮出来ないアホです。って意味だから社会に出る前に使わないよう直した方が良い、会議で絶対に使ってはいけない言葉
      断片的情報から一つしか結論を導き出せず、決めつけてかかるその思考こそ冤罪を生む
      この話を思考停止で信じろと言う訳じゃない、ただ実際嘘のようなホントの話はあると言う事を心の片隅に覚えておいた方が良い

      • +13
      1. >>12
        どうでもいいことかもしれないが、レスは直接繋げてくれ。せっかくいいこと言ってるのに台無しだぞ

        • -7
      2. ※12
        そういう自分も思い込みの決めつけで誹謗中傷してるわけだがブーメランのでかいの刺さってんぞw

        • -7
      3. ※12
        そういう君も決めつけてない?
        社会に出る前に直した方がいいよ

        • -4
    3. >>2
      いや、だから証言したハム男が死刑になるんだよ?冤罪が増える、の意味がわからんな。
      罪を肩代わりするのは冤罪とは言わないし、既にありふれた話だろう。

      • +5
  2. ふたりのうち1人が知的障害ってのは、ラジかマークのどちらか?それとも、他の人??
    マークが知的障害なら、謎の証言をしても何となく分かるが…。

    • -12
    1. >>3
      マークが知的ボーダーだとしたら馬鹿正直に真犯人だと名乗り出たのも、気安く死刑レベルの犯罪に手を染めたのも納得できなくはない
      しかしそれはそれで悲しい話だ

      • +5
  3. 取引=死刑の国ってそういう巻き込まれ事故は達成コストとして予見してでもダメなものはダメ絶対の姿勢なんだよね。
    比較がシンガポールではそれなりに重いはずの密輸タバコだからわかりにくいけど
    悪意で自分の持ち物に麻薬を混ぜられてハイ死刑にハメられる可能性もあるから本当に怖い

    • +18
  4. う~ん
    タトゥーに関する本人からの証言のみで判決を覆したんだろうか?
    もしそうなら死刑判決に至る裁判の過程があまりにも軽視されすぎてる気がする。

    そうではなく、タトゥーをきっかけに、取り違えた商品の配達人から証言を得て判決を覆したのなら、なぜ最初から証言を得なかったのかと言う話になる。

    なにか色々と不自然なストーリーだな。もっと詳細な内容が知りたい

    • +8
  5. マークはなぜ証言したんだろう。ラジと友達になったから? ハムスターのタトゥーといい、夢みたいな話だ。だけど信じられないことがほんとに起こることだってたまにはあるのかも。

    • +4
  6. 麻薬を売った方は15回棒か鞭で叩かれて終身刑。
    なのに買った方は死刑?

    何で売った側より買った側の方が罪が重いの?

    同罪じゃないの?売人の彼は賄賂でも渡した?

    • +16
  7. 物証がひとつもない気がするんですが・・・?

    • +12
  8. 何が何だかわけわかめ
    くぁwせdrftgyふじこlp

    • +2
  9. っていうか、
    この程度のことで死刑にすんなよ。

    • +6
  10. マリファナ と取り違えられたタバコも脱法に近い薬物の類だろうから、どの道やましい事には変わりはないな。

    • +6
    1. >>13
      ですよねえ
      合法なものならなんでコソコソ取引してたんだって話になる
      刑に値するかはともかく

      • +1
  11. しかし大麻ってある国では所持も使用も合法である国じゃ取引すると極刑って不思議な物だなぁ

    • +7
    1. ※20
      合成タバコの取引をしていた二人がいて、何らかの拍子にその中身が合成タバコから麻薬に入れ替わっていて逮捕されて死刑宣告。「ぼくは無罪です!」って主張するも一切聞き入れてもらえず。

      執行待ちの時に仲良くなった囚友から「おれ麻薬の取引しようとしたのに合成タバコになってたことがあったんだよねー」って聞いて「それいつ?」「ハムスター死んだ日だからこの日」「ぼくと同じ日!」ってなって、ハムスター証言をもとに再審請求。
      検察などから「あほかそんな作り話信じるかよ」って言われたけどサイバンチョは「その囚友くんは証言をしても損するだけ。逆に言えば損しかないのに証言してるから信ぴょう性ある」として証言認定。無事に合成タバコの二人は死刑が撤回されて無罪扱いに。

      ただし、あくまで「合成タバコの取引をしていた二人の麻薬取引の冤罪が晴れた」ってだけ。
      記事元でも他のニュースサイトでも、合成タバコ自体は合法だったのかどうか、ハムスター証言をした友達のその後がどうなったのかは不明だって書いてあるからその後どうなったのかは分からない。

      • +13
  12. >両者とも一転、無罪となったのだ
    何で売人のほうも無罪になるんだよ
    間違えたんだとしても薬物持っていって渡したのは事実だろ

    • +5
  13. ハムスターの命日をいつでも目に入る指に刻むってめちゃくちゃ愛ハムスターじゃん、ヤクなんてやらずにハムスター吸えよ

    • +5

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