
シチリア島の古代都市「モティア」は一度滅ぼされたものの、また再建された。この人工池が作られたのは、紀元前5世紀半ば、再び町が繁栄した時期だという。
この聖なる池は、複数の神に捧げられた神殿や祭壇を擁する巨大な聖域の中心だったと考えられている。
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古代都市モティアで発見された人工池
「これは、巨大な宗教施設の中心にあった神聖な水鏡だったのです」この研究を行った、ローマ・ラ・スピエンツァ大学の中東・フェニキア考古学教授ロレンツォ・ニグロ氏は語る。ニグロ教授は、この解釈は60年近くにわたるモティアでの考古学調査のたまものだという。
『Antiquity』誌に発表された3月17日付の論文によると、この調査で池だけでなく、星を観測する道具や、天文学と関連する神々の像が発見されたという。

一度破壊されまた再建を果たすモティア
古代都市「モティア」は、シチリア島の西海岸にあった、広さ40ヘクタール弱の小さな町。青銅器時代、鉄器時代に、豊富な魚、塩、真水、ラグーン内の守られた立地条件によって、大いに繁栄したという。紀元前18世紀、交易などを目的に、東部から来たフェニキア人が定住し始め、地元民と共生して、この島に西フェニキアの文化をもたらした。
それからちょうど100年後、モティアは地中海の中央や西まで広がる貿易網をもつ、活気ある港町に成長したものの、北アフリカ沿岸にあったカルタゴに狙われ、対立することになった。
紀元前6世紀半ば、カルタゴ勢力がモティアの町を破壊したが、その後モティアは復活し、町は急速に再建された。

人工池は港ではなく星座を写し出す聖なる水鏡だった可能性
1920年代に発見されたこの謎めいた人工池は約2500年前に作られたものと考えられている。モティアの人工池は、カルタゴの人工軍港「コソン」と似ていたため、最初は軍港だと考えられ、1970年代には、船の修理のための場所でもあったと解釈された。
だが、2002年から2020年かけて、石が並べられた池の考古学調査行われ、違う解釈が見えてきた。

大きさ52.5メートル×37メートルのこの池で見つかったいくつかの手がかりから、これは夜空の星を映し出す聖なる水鏡なのではないかという説が浮上した。
これまでの発掘で、ギリシャのポセイドンに近い神、「バアル」の神殿が、池のほとりで見つかっている。この池が港ならば、神殿ではなく港仕様の施設があるはずだとニグロ教授は言う。
また、水を抜いて発掘を進めたところ、この池は海にはつながってはおらず、自然の淡水で満たされていることがわかった。
湖の中央にはバアル神の像が
さらに神殿だけでなく、祭壇や、ステラという彫刻が施された石板、宗教目的のための小立像などの奉納品、池の中央にかつて大きなバアル神の像があったと思われる台座などが見つかった。
ふたつの明白な手がかりが見つかりました。海の方向に向かって、池を塞ぐように作られた堅固な壁があったこと。さらに、この池は重要な星座を映し出すための水鏡だったこともわかった。聖域である空間のレイアウトに、天空の丸天井を再現していたのかもしれない。
そして、この池が地下の帯水層からくみ上げられた淡水で満たされていたことです。これは、神殿のため、あるいは地中海航海のための淡水貯水槽だったのです
この聖域には、秋分の日に北に上がる夜空で6番目に明るいカペラ座(馭者座α星)の位置を示す窪
みがある。一方、池の南側にあるステラは、秋分の日に南から上がる夜空でもっとも明るい星、シリウス(おおいぬ座α星)を示しているという。
最後に、フェニキアの神バアルと同じオリオン座が、冬至の日に東南東から上がる。バアル神に捧げられたモティアの神殿はまさにこの方角を向いているのです

また、バアルの神殿を発掘中に、古代の天体観測儀「アストロラーベ」のブロンズのポインターが発見された。
天文学に関係し、十二宮にもよく登場するエジプトの神「トート」を擬人化した、犬の頭をもつヒヒ像も発見された。
こうした証拠が、この人工物が船のための内湾ではなく、神に捧げた神聖な池だったという新たな解釈を裏づけていると、イタリア、サッサリ大学の考古学者ミケーレ・ギルギスは言う。
個人的には、ニグロ氏の説に賛成です。もし、彼が思い切ってコソンの水を抜かなかったから、古代モティアの人々が守ってきた宝である真水の水脈は見つからなかったでしょう。現在、この池には再び貴重な水が満たされ、発掘調査が終わったあと、バアル像のレプリカが中央の台座に設置されている。
ここから私たちは、貴重な教訓を学ばなくてはなりません。人類が発展してきたどの時代であっても、地球上で得られるもっとも貴重な必需品、真水をなんとしてでも保護しなくてはならないことを痛感させられます

References:The sacred pool of Ba'al: a reinterpretation of the ‘Kothon’ at Motya | Antiquity | Cambridge Core / Ancient sacred pool lined with temples and altars discovered on Sicilian island | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo
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コメント
1. 匿名処理班
カルタゴもフェニキア人が作った植民国家なのに同族同志で争ったのか
2. 匿名処理班
北海道で1番美しいと云われる美瑛町”青い池”も人工池
3. 匿名処理班
シチリア島は歴史の交差点なんだよな
4. 匿名処理班
カルタゴは家出娘が作った国だから本家ティルスとは餃子の王将と大阪王将みたいな関係
5. 匿名処理班
紀元前18世紀ってあるけど、そんなに古いの?
キリスト誕生の18000年前でしょ?
6. 匿名処理班
これが800年くらいのムスリム政権下の産物だったらどう扱われるんだろうな