
しかし14世紀のラテン語で書かれた文献から、驚くべき記述が発見された。イタリアの船乗りたちは、コロンブスの発見より150年も前に、すでに新大陸の存在を知っていたというのだ。
そもそも大昔の話ともなると、タイムトラベルで過去に行くことが叶わない以上、残されたわずかな記録に頼るしかない。また、その記録が恣意的に書かれたものである可能性も否定できないし、解釈の仕方によっても変わって来る。
果たして、アメリカ大陸発見の歴史は塗り替えられるのだろうか?
最近発見された修道士が記した14世紀の古文書
そのラテン語で書かれた古文書『Cronica universalis』は2013年に発見されたもので、ミラノに暮らすドミニコ会の修道士ガルバネウス・フランマ(Galvaneus Flamma)によって1339年から1345年に記された。ミラノの領主の家系に生まれたガルバネウスは、主に歴史をテーマにしたラテン語の文献をいくつか残している。
その1冊であるCronica universalisは、彼が晩年に書いたもので、おそらく遺作と考えられる。未完ではあるが、天地創造から出版されるまでの世界の歴史について詳しく述べたものだ。

コロンブスが発見する150年前から船乗りたちは知っていた
中世ラテン語の専門家であるミラノ大学のパオロ・キエーザ教授は、その内容を調査し、『Terrae Incognitae』(21年7月16日付)で発表した。それによると、コロンスブスが新大陸を発見する150年前に、ジェノバの船乗りたちが、すでにその土地のことを知っていたことを示す記述が見つかったという。
彼らの間では、アメリカ大陸は「マルカラーダ(Marckalada)」と呼ばれていた。その名称は北欧の資料などにも言及があり、北アメリカ大西洋沿岸(一般にはラブラドール地方やニューファンドランド島)を指していることが特定されている。

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新大陸の存在は北欧の船乗りからイタリアの船乗りに伝えられていた
ジェノバの船乗りは、交易相手だった北欧の船乗りからマルカラーダについての噂を耳にしていたようだ。キエーザ教授によると、14世紀のジェノバやカタルーニャで描かれた海図には、北方の地理がかなり詳しく記されている。
それができたのは、地中海の船乗りたちが、北欧と直接やりとりをしていたからだと考えられるという。
「当時のイタリア人やカタルーニャ人の船乗りが、アイスランドやグリーンランドに足を伸ばしていたという証拠はありませんが、北欧の商人から現地の品々を手に入れ、地中海に持ち帰ることはできたでしょう。」
ガルバネウスが記した内容はこうした状況に一致していると、キエーザ教授は言う。
「ジェノバ人は、交易相手であるスコットランド・イギリス・デンマーク・ノルウェーの船乗りから耳にした新大陸に関する断片的な話を、事実や空想的なものも含めて、ジェノバに持ち帰ったのではないでしょうか。」

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古文書に記されたマルカラーダ
ガルバネウスは、マルカラーダについて、木々が豊かで動物が住んでいると記している。これは『グリーンランド人のサガ』(中世アイスランドで成立した散文作品の1つ)で語られるマルカラーダと同じような描写だ。こうした記述は、典型的な”良い土地”の描写かもしれないが、キエーザ教授によれば、取るに足らないことではないという。
「なぜなら、一般に北方の土地といえば、ガルバネウスが記したグリーンランドや、ブレーメンのアダム(中世ドイツの年代記編集者)が記したアイスランドのように、荒涼とした不毛の地であるからです。」
マルカラーダが新大陸と認識されていなかった理由
キエーザ教授は、全体的に見れば、ガルバネウスの著書『Cronica universalis』は信頼できると語る。というのも、ガルバネウスはその話をどこで耳にしたのか明らかにし、さらにさまざまな土地に関する過去の伝承から引き出された要素などで彼自身の主張を裏付けているからだ。
ただ、「そうした噂はとても曖昧で、地図や学術的に辻褄を合わせること」ができないものだ。当時、マルカラーダが新大陸とみなされなかったのは、それが理由であるとキエーザ教授は考えている。
それでも、コロンブスの新大陸発見より150年前に、イタリアに北欧からアメリカ大陸の話が伝わっていたという見解に、『Cronica universalis』はかつてない裏付けを与えているとのことだ。
References:Full article: Marckalada: The First Mention of America in the Mediterranean Area (c. 1340) / Italian sailors knew of America 150 years before Christopher Columbus, new analysis of ancient documents suggests / written by konohazuku / edited by parumo
追記:(2021/10/14)本文を一部訂正して再送します。
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コメント
1. 匿名処理班
150年前どころじゃないだろ
西暦1000年前後で既に認識されてた
2. 匿名処理班
コロンブスが発見したこと自体
大したことじゃないと思う
だって既に原住民がいたのだもの大陸を渡りね
大騒ぎしたり話題になるのはある意味
欧州圏の知識の影響だと思う
3. 匿名処理班
人類が北アメリカ大陸に渡ったのは2万年以上前
つまり、2万年以上前に人類は新大陸を知っていたということ
4. 匿名処理班
アメリカ大陸発見はヨーロッパ人目線で語っているだけで何の意味もない
インディアン/インディオの祖先は、約2万5000年前にシベリアに進出したモンゴロイドである
5. 匿名処理班
世が世ならマルカラダ合衆国だったのですね
・・・なんとなくポッチャリ系が多そう(´・ω・`)
6. 匿名処理班
「発見」X
「到達」○
「遭遇」◎
「接触」◎
「会合」◎
元々、インディアン(注1)が住んでいたのだから
「発見」という言葉を止めないとね。
すでにバイキングの血が入っているし。
7. 匿名処理班
北欧商人→ジェノヴァ船乗り→ガルバネウス
伝聞の伝聞レベルの話だからなぁ。
当時の人たちにとっては眉唾モノだと思う。
この記事中では「Cronica universalis」は1945年に記された、とあるけどもガルバネウスは13~14世紀の人なので1339~1345年と思われます(Wikiに記述有)。
8. 匿名処理班
知ってたでしょうね。ある程度文明をもった人類がそこにいるのだから、ごくまれに往来などがあったとしても不思議ではない。その時の話が尾ひれや時代の変化で関係者やその地域の文化に残される。伝説とはそんなもんだ。少なくとも無名の船員たちはそのような伝説を耳にしていたり、実際に行った人も居たんじゃないかな?ただ無名だったから歴史に名を残していないだけで。
9. 匿名処理班
まあおこがましいよね「コロンブスが発見した」って言い張るのは
10. 匿名処理班
11世紀にヴァイキングが北米に到達していてヴィンランドと名づけ植民したけど、インディアンに負けて撤退している。遺跡も見つかっている。
11. 匿名処理班
※6
注1 200を超える民族がいて、様々な言語で自分たちを呼んでいた。
12. 匿名処理班
※6
間違えた。
民族じゃなくて氏族。
13. 匿名処理班
おれはコロンブスより151年前には知ってたけど?
14. 匿名処理班
むしろこの話はジェノバの航海者や商人等の間ではある程度知られていた、西に行けば新天地があるという話を、ジェノバ人のコロンブスがぜんぜん気にせずインディアスが西にある!と思い込んで航海してしまった点だろう。
15. 匿名処理班
コロンブスが偉いのは
ちゃんと国をスポンサーにして航海に乗り出し、それを成功させたこと
エジソンやライト兄弟の業績もそうだけど、実際には誰が一番早かったかではなくて
自分の成功をどうやって客観的に証明し、世の中に周知させたかが重要
16. 匿名処理班
コロンブスの株がどんどん下がるな。
子どものころは偉人だと思ってたのに。
17. 匿名処理班
※6
インドでお茶を発見した()
18. 匿名処理班
既に中国人コミュニティがあったらしいしね
19. 匿名処理班
まぁ、北欧の船乗りにはヴィンランドとしては知られてたんだし、
北欧と地中海の交易も物品としては証拠が残ってるんだから、
そら、伝承として話は伝わってても何も不思議じゃない。
今回のは想像じゃなくそのエビデンスになる記述を発見した、って事だろう。
なんか、歴史学畑の人達の話ってそういうのがウザいというか、普通に考えたら別におかしくないじゃん?って事を決定的な証拠が出るまでは否定するのね。
まぁ、それが学問ってやつなんだろうけど。
そのせいで昔の人って実態以上になんもできないアホみたいに認識されてると思う。
だから、歴史は好きだけど、歴史学者は嫌い。
20. 匿名処理班
まあインデイアンを「トゥルーアメリカン」と呼ぶ世の中に変わらないとダメですね。
自分たちを「レッサーアメリカン」と呼ぶまではしなくていいけど。
21. 匿名処理班
コロンブスでいいんじゃないの?
侵略、強奪に成功したんだから (皮肉)
22. 匿名処理班
アメリカ大陸沿岸部の部族はコーカソイドの血が混じってる部族も多いらしい。
ヴァイキング達との交雑があったとしてもおかしくない。
23.
24. 匿名処理班
新大陸発見って違和感あるよな
メガテリウムが絶滅したのは一万年前で、その頃に人類が南米に入っていったという事らしいのに何故かつい最近に新大陸発見www
25. 匿名処理班
>「ジェノバ人は、交易相手であるスコットランド・イギリス・デンマーク・ノルウェーの船乗りから耳にした新大陸に関する断片的な話を、事実や空想的なものも含めて、ジェノバに持ち帰ったのではないでしょうか。」
記事にも書かれているように北海帝国のあったブリテンやノルドでは昔から知られている情報をイタリア人が地中海に持ち帰ったってだけの話だよね
26. 匿名処理班
あるあるだよなこういうの
地元の人にとっては当たり前の物でも外から来た人が珍しがって広めていく
いいことでもあるんだけどね
27. 匿名処理班
>>2
彼らは既に地球は丸いと思っていて、それを実証しようとした。
ただコロンブスも、もっと地球が小さいと思っていたからインドと勘違いした。
再発見って言われるのはその為よな。
まあレイフ・エイリークソンが既にアメリカ大陸には行ってたしね。
28. 匿名処理班
日本人的には同じヨーロッパで一緒にしがちだけど
ヴァイキングの北欧と中世の地中海諸国って文化的にも縁が薄かったんですかね?
29. 匿名処理班
コロンブスはアメリカ大陸の経度と緯度を確定したわけで(インドと思い込んでたが)
以降、安心して航海計画たてられるようになり、多数のヨーロッパ人の移動が始まった
歴史的には重大な契機ではある
30. 匿名処理班
※27
あーそれで
インド原住民のことはインディアンだけど
アメリカ原住民までインディアンにしたのか。
31. 匿名処理班
>>19
歴史だけじゃないでしょ。推論だけで語ることが許されたら学会は大変なことになる
32. 匿名処理班
>>28
ヴァイキングVSブリテン、フランク王国という感じが当時の情勢なので、地中海世界にはあまり干渉できてない。それに帝政ローマ以降しばらく、地中海周辺は存在感も無かったしね。
33. 匿名処理班
>>13
不老不死の人を発見!今何歳になりなすった?
34. 匿名処理班
結局、大西洋を舞台としていた船乗りはコロンブス以前から少なからず北米大陸に到達して同業の間では知られていたという話だが、ライト兄弟より早く飛行機を!って話と同じでそこからつながる社会への影響があって初めて意味を持つんだなあと。
コロンブスはアジアとの貿易が盛んになっていた時代にスペイン王がスポンサーだったということで、一気に西欧社会への影響が出たんだろうなと。
新大陸発見という言葉が適していないという話は同意するが、自分が興味ある論点はそこじゃないなあ。
35. 匿名処理班
※19
その歴史を提供してくれるのは歴史学者だけどな。
米は好きだけど、米農家が嫌いって言ってるようなもんだぞ。
36. 匿名処理班
※20
もしトゥルーアメリカン以前に住んでた人がいたことが明らかになったらどうするんです?
37. 匿名処理班
そもそもコロンブスは大陸を発見していない。
最初の大西洋横断はカリブの島々をヨーロッパ人として発見したもので。それが新大陸への入口だと気づいて、コロンブスの次の航海より先に、ヨーロッパ人として初上陸しちゃった人がいるから。
先住民曰くコロンブスは、海で迷子になった間抜けな白人だそうだ。
38. 匿名処理班
※36
もし、その子孫が現在のアメリカに住んでいたなら、その名は彼らに冠されるだろうね。
僕自身のことを言えば、この名前に固執してないし、一つの案だから否定も無視もかまわないよ、みんなで考えればもっとよい名前もあるだろう。
貴方に教えて欲しいのは、今住んでるかい?ということだけ。
ただ、アメリカの社会が彼らに敬意を払うなら、変わっていくだろうと思う。
私たちが「彼はジャパニーズです」と紹介されると「あーニホンの方ですね」と返された経験は無いかな?
認知が上がりジャパニーズ→ニホンジン(ニッポンジン、前者はヤパンでもいい)と変わりつつある一例だ。
だいじなのは変わりつつあるで、変わったわけじゃない。
「○○行ったけどそんなことはない」とか「XXではまだだ」とかいう批判は意味が無いよ。
お わ り。
39. 匿名処理班
※10
カナダ東端の島、ニューファンドランド島ですね。
40. 匿名処理班
>>4
もちろんそれはそうなんだが、
当のアメリカ先住民にとってはむちゃくちゃ大きな意味がある。
欧州から略奪されるのがいつ道ができていたのか、
に関わるからね
41. 匿名処理班
※35
いや、わからない事は「わからない」って言えばいいだけで、
証拠が無いだけでどう考えても当たり前の事まで顔真っ赤にして「無い」って事にしちゃうから嫌いなんだよ。
米農家が麦は食いもんじゃないって言ってたら米は好きでも米農家嫌いになるだろ?それと同じ事。
42. 匿名処理班
ヴァイキングの子孫であるノルマン人は11世紀には地中海に進出してイタリア南部とシチリア島に勢力を築いている。同胞によるアメリカ大陸への移住への試みからまだ100年も経っていない時代だ。
だからイタリアの地で伝承が受け継がれていたことにはなんの不思議もない。