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なぜ犯罪現場に無関係の人の衣服の繊維が残されるのか?その謎に迫る(英研究)

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(著) (編集)

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殺人現場に残された無関係な人の衣類の繊維の謎/iStock
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 あなたが来ている衣服の細かい繊維は、いたるところに付着する。これは「繊維の転移(fiber transfer)」と呼ばれており、目には見えなくても、あなたの痕跡をそこらじゅうに残しているのだ。

 こうした繊維は、犯罪捜査においてもっとも重要な証拠の1つとされる。被害者の衣服に付着したものなど、現場に残された繊維を元にしてこれまで数々の凶悪事件が解決されてきた。

 だが、繊維とその出どころとのつながりを明らかにしただけでは、問題の半分しか解決されない。まったく無関係な人の衣類の繊維が、犯罪現場に残されているケースもあるのだ。その繊維が一体どのようにしてそこに付着したのかを明らかにしなければ、冤罪を生み出してしまう可能性がある。

触れなくても起きる「繊維の転移」

 今日まで、「繊維の転移」が起きるのは、2つの表面が接触したときだけであると考えられてきた。たとえば、抱き合えばシャツとシャツが触れ合うだろうし、ソファに座ればズボンとソファが触れ合う。

 だが、どうもこれ以外の原因もあるらしいことが分かってきたのだ。

 『Forensic Science International』(8月14日付)に掲載された研究では、また別の形で繊維の転移が起きることを実証している。それは「非接触空中転移」だ。読んで字のごとく、触れることなく、衣服から衣服へと繊維が移るケースである。

 たとえば同じ部屋に2人の人物がいたとする。彼らが互いに触れ合うようなことはない。それでも繊維は空中をただよい、片方の人物からもう片方の人物に付着することがあるのだ。

 犯罪の捜査に関連して言えば、まったく無関係の人間の繊維が、図らずも被害者の衣服に付着してしまう危険性を示している。

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犯行現場/iStock

エレベーターを乗り合わせただけで起きる「繊維の転移」

 ノーサンブリア大学(イギリス)の研究グループは、日常的な衣服(ジャンパー、長袖シャツ、フリースなど)を蛍光染料で染めて、その繊維を追跡するという実験を行った。

 まず染めた衣服を着た参加者にエレベーターの角に立ってもらう。さらにもう1人、染められていない黒い衣服を着た参加者には、その対角線上の角に立ってもらう。そして、互いに触れ合うことなく、そのまま10分間待機する(このときエレベーターは普通に稼働しており、参加者以外の人たちも出入りしていた)。

 実験後、染色されていない黒い衣服を紫外線写真で撮影し、空中転移した繊維を探すと、接触がなくても繊維の転移が確認されたのだ。それも大量にだ。

 犯罪捜査ではほんの数本の繊維が発見されただけで、重要視されるのがしばしばだ。それなのに、この実験では最大66本もの繊維が触れ合うことなく転移してしまっていたのである。

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iStock

非接触空中転移しやすい繊維は綿とポリエステル

 なお、あらゆる状況でこれほどの繊維が転移するわけではないようだ。研究では、空中転移しやすい繊維があることも分かっている。

 たとえば、綿とポリエステルでは、それぞれ66本と38本の非接触空中転移が確認された。一方で、アクリルとウールはそれぞれ2本と1本だった。

 また衣服の種類のほか、人間の移動やドアの開閉といったことも影響しているという。

 コロナ禍が終わらぬ今、エレベーターのような狭く閉鎖された空間はできれば避けたいところだろうが、くわえて綿やポリエステルの衣服を避けると冤罪の可能性を防ぐことができるかもしれない。

A study on contactless airborne transfer of textile fibres between different garments in small compact semi-enclosed spaces – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0379073820302942

References:Forensic breakthrough helps explain how innocent people’s clothing fibres could end up at crime scenes/ written by hiroching / edited by parumo

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この記事へのコメント 19件

コメントを書く

  1. 研究結果が正しいとするなら、繊維片を証拠とした痴漢事件のいくつかはひっくり返るな。下手をすればかなりの割合が冤罪だったかもしれない。
    今から思えば精度が低すぎるDNA鑑定を声高に叫んでた、足利事件以上のことが起きるだろう。

    • +7
  2. 痴漢冤罪の証拠とかにもされちゃうんだろうな

    • +2
  3. パンツもズボンもちゃんと履いているのに,なぜ陰毛が床に落ちているのか,と同じぐらい謎

    • +13
    1. >>3 オークションで、商品と一緒に入っていたことがあるのを、思い出しました。

      • +4
    2. ※3
      解決方法は縮れているのがわからないぐらいに短くして、髪の毛と錯覚させることやで

      • 評価
    3. >>3
      陰毛かと思ったら脇毛ということもよくあるらしいよ
      縮れがよく似てるからね

      • +3
  4. そんな簡単なことが起こるのか。
    綿棒が製造過程で素手で箱詰めされていて、捜査でそれを使用したために、あらゆる事件で同一人物のDNA検出されて大混乱を引き起こした、的な話かと思ったら全然違った。

    • +5
  5. 毛が長い犬飼ってるとよくわかる
    毎日必死にガムテープしてるのに気がつくと人のものにまでいつのまにか毛がついてるんだ…

    • +9
  6. ポリエステルがそんなに浮遊することに驚いた
    絶対に肺にも入ってるよね・・・
    化学繊維は避けた方が良さそうだな

    • -4
  7. 冤罪を作り出してしまった検察や警察、そして裁判所はその事実をもっと重く捉えるべきだよ、それは無実の罪に問われた人が可哀想だからと言うより、真犯人を取り逃がしたからなんだよ。

    • +3
  8. >綿やポリエステルの衣服を避けると冤罪の可能性を防ぐことができるかもしれない。

    最後極論すぎでしょう。暴論に近い。

    • -2
    1. >>12
      まぁこれだけをもって冤罪から身を守るのはほぼ不可能、という逆説的なオチだと読み取りました。

      • +1
  9. これは、晴れた日に洗濯物を干すと良くわかる。

    お隣さんがベランダで布団を干して叩いている。お向かいでは掃除機を盛大にブン回している音がする。斜向かいではワンコのブラッシングをしている。

    そして自分も洗濯物を取り込む時に虫や花粉を落とすためにとちょいとパタパタとやると、ホコリが驚くほど舞い上がって、ご近所に流れていく。晴れた日にはよく見える。

    なのでウチのご近所の誰かが、例えば出張先で偶然知らない誰かとエレベーターに乗り合わせて、その誰かさんがタクシーに乗って降りたあとの次のお客さんが満席の新幹線に乗りその同じ車両にいた誰かさんがどこかで事件に巻き込まれたとしたら、

    現場からはウチの繊維くずが見つかるんじゃないかなと思うよ。

    • +4
  10. 繊維の痕跡が犯罪の証拠とはならないと証明されたな。
    この事実が浸透するまで時間が掛かるから、「綿やポリエステルの衣服を避けると冤罪の可能性を防ぐことができるかもしれない」というのもあながち誇張ではないだろう。

    • +2
  11. 繊維が飛び続けるならどれぐらいで服が駄目になるかの計算もできそう

    • 評価
  12. 犯罪捜査…凶悪事件…繊維……ホレイショ!
    繊維に詳しい設定あったよね、確か

    • 評価

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