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宇宙の形についての常識がくつがえるような新説が発表された。新しい研究によると、宇宙は平らではなく、巨大な風船のように湾曲しているのかもしれないそうだ。『Nature Astronomy』(11月4日付)に掲載された研究では、「宇宙マイクロ波背景放射」から得たデータを分析。その結果は、従来の見解とは異なるものだった。
宇宙はループしている?
もし本当に宇宙が湾曲しているのであれば、それは緩やかに曲がっている。そのために、私たちや太陽系、あるいは銀河といったものの周辺を移動する際には大した問題とはならない。しかし、それよりもっと向こうに広がる宇宙の闇の奥深くへと進むなら、真っ直ぐに進んでいるはずがループして最初の地点に戻ってくるという妙な事態が発生する。
こうした宇宙を「閉じた宇宙」という。
この概念自体は昔から存在するが、従来の宇宙理論に矛盾が生じてしまうのであまり支持されず、主流派の見解はどこまでいっても境界なく広がる「平坦な宇宙」だった。

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開いた宇宙と閉じた宇宙
研究グループの1人、ローマ・ラ・サピエンツァ大学のアレッサンドロ・メルキオーリ氏によると、閉じた宇宙と開いた宇宙の違いは、ベッドにまっすぐ敷かれたマットと膨らんだ風船との違いに似ているという。どちらの宇宙も膨張しているが、マットのような形が膨張したときには、あらゆる地点が互いにまっすぐ遠ざかることになる。
しかし風船のような形が膨張した場合、表面の各地点が互いに遠ざかるのは同じであっても、風船の湾曲のために遠ざかり方はもっと複雑になる。
また開いた平坦な宇宙では、ふたつの光が並行して移動するなら、どこまで行っても交わったりはしない。しかし、閉じた宇宙では、並行して移動する光が交わることもある。
インフレーション理論の平らな宇宙
従来のインフレーション宇宙理論は、宇宙が平らであることを示している。このモデルによれば、宇宙の膨張を過去にさかのぼり、ビッグバンから0.0000000000000000000000001秒後という始まりの時点まで巻き戻してみると、宇宙が無限小の点からグワッと爆発的に膨張する瞬間が見られると考えられる。
ほとんどの専門家が平らな宇宙を支持する最初の理由はこれだ。もし宇宙が平らでないのならば、この原始のメカニズムがぴったりと収まるように物理を細かく調整しなければならなくなってしまう。

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宇宙マイクロ波背景放射の異常で宇宙の湾曲がわかる
だが新しい研究によれば、そんな必要はなかったのだという。なぜなら宇宙マイクロ波背景放射に異常があるからだ。宇宙マイクロ波背景放射(CMB)は宇宙が誕生したときの名残りだと考えられている。宇宙で観察できるものとしては最古のもので、全宇宙を満たしている。
古くまた宇宙全体に広がっていることから、宇宙の歴史や振る舞いを調べるうえでは最重要なデータのひとつだ。
そして最新のデータから、これまで想定されていたよりもCMBの重力レンズが多いことが明らかになった。このことは重力がCMBのマイクロ波を従来の物理学で説明できる以上に曲げているらしいということだ。

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この最新データは、CMBの詳細な観察を目的とする欧州宇宙機関のプランク・コラボレーションからもたらされたもの。メルキオーリ氏らは、この想定外の重力レンズを解明するために、「Aレンズ(A_lens)」という新しいパラメーターを宇宙の形成モデルに付け加えることにした。
このAレンズは物理学とは関係がない――つまりアインシュタインの相対性理論にはないパラメーターだという。
その結果、正の湾曲を持つ宇宙ならばAレンズを説明することができた。そして、こちらこそが、一般相対性理論で説明することが可能なより物理学的な解釈と言えるのだそうだ。

image by: ESA and the Planck Collaboration
ただし別の最新結果は平坦な宇宙を支持
ただし、この見解は仮説であって決定的なものではない。物理学的に結論を出すためには、まだ統計の精度が足りないからだ。しかし、このこと以外にも疑わしい点があると主張する研究者もいる。そうした1人であるスタンフォード大学のアンドレイ・リンデ氏は、この研究は最近公開されたケンブリッジ大学の研究グループからの報告を考慮していないと指摘する。
その研究では、プランク・コラボレーションのデータに加えて、初期宇宙に関するまた別のふたつのデータセットをあわせて分析したが、その結果はむしろ平坦な宇宙を示唆するものだったという。
宇宙理論はくつがえるのか?
仮に湾曲した宇宙が正しいのだとすると、これまでの初期宇宙に関する観測結果とさまざまな矛盾が生じるようになるそうだ。これは天文学者としてはそう簡単に受け入れられないだろう。だが宇宙に関するホットなトピックが誕生したのだとしたら、それを端から見ている素人としては面白いかぎりだ。宇宙の常識がくつがえるのも悪くない。これからどんな激論が交わされるのか楽しみに待っているとしよう。
References:newscientist / livescience/ written by hiroching / edited by parumo
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コメント
1. 匿名処理班
平面説から球体説へ。人類は同じ事を繰り返す
2. 匿名処理班
無限ループって怖くね?
3. 匿名処理班
ははーん、なるほど
そういうことだったのね
4. 匿名処理班
そう囁くのさ、俺のゴーストが
5. 匿名処理班
惑星や衛星の軌道、銀河が円なのだから宇宙も球形していると考えるのは自然な事だろ。
6. 匿名処理班
別に新説でもないなぁ
昔から宇宙は空間的に閉じていて始めと終わりは一緒
最後は一点に収束し再び広がるって言われてる
彼らにとっては新しい理解だったんだろうか
7. 匿名処理班
曲率プラスで閉じた宇宙、マイナスで触れあわずに反り返った無限宇宙、ゼロの平面宇宙だと「どうなるか判らん、いつか釣り合うのかも知れない」
だったような気がしたけど私の知識も古いからなぁ。
8. 匿名処理班
???「何かおかしい…」
9. 匿名処理班
※5
球の形を取るためには、必然的にどこかに「中心」がなければならないが、これまでの観測では、宇宙は「一様、等方」つまりどこにも特別な場所が存在しないので、今のところ球形説とは整合性がとれないように思います。
10. 匿名処理班
いや、宇宙は薄っぺらの風船の表面に張り付いた2次元で
宇宙の果てを目指して旅をすると一周して地球に戻ってくる、という説は遥か昔からあるしその理論も提示されてきた。
ブレイン宇宙論も大筋はそこに立脚してるしな。
最近ではそこから派生した「2次元(我々にとっての三次元)は本来の宇宙の姿の投影である」というイデア論の復活のような説が真面目に研究されてるぐらいなのに。
何やら20世紀の記事のような古さを感じる。
11. 匿名処理班
ビックバンで爆発したなら、360度方向に急速に広がるよね?そしたら円になるんやないの?
片方向だけに広がるのは、へんやろ
原子から大きなものは星まで、丸くなってる物が多いよなぁ
基本は、丸くなんやないの?
例外はあるけど
12. 匿名処理班
いつか地球から地球が見える日がくるの?
13.
14. 匿名処理班
つまり始まりは終わりであり終わりは始まりである
ループをたたえよ
15. 匿名処理班
>>12
探してる人は本当にいるみたいね。フラットランドのスペースホッパーがそう言ってたよ
16. 匿名処理班
宇宙はドーナツ形状でその内部側の面に広がってる説とかあったな
17. 匿名処理班
わからんが、FCドラクエ兇箸靴離泪奪廚澆燭い淵鼻璽淵奪直とは違うんか。
18. 匿名処理班
大体分かった(わかってない
19. 匿名処理班
昔からあったってのは仮定としての話でしょ
今回は数学体にそれが証明できる公式と実験結果でたって話だと解釈してるけど
>>11
それは全方位的に圧力や力(重力)が付加されていないは間合いの話だから
ダークマターのように未知の要素が加わったり宇宙の外の話ってことだとこれまた話が変わってくる可能性も大いにあると思うよ
20. 匿名処理班
宇宙って本当に一体なんなんだろうな。
人間は何かの生き物の身体に住む微生物かなにかなのかね。
一生わからないのが悲しい。
21. 匿名処理班
釈迦の掌中の孫悟空
22. 匿名処理班
マリオブラザーズってこと?
23. 匿名処理班
宇宙が高次元で湾曲してても現代の三次元的な物理法則や観測結果とは矛盾しなさそうだけどな
24. 匿名処理班
全ては脳の中に
25.
26. 匿名処理班
脳内での推測による仮説と、
実験結果からの予測による仮説の違いを理解してコメントしろよ。
27. 匿名処理班
人類が思ってたより宇宙はずっとでかいらしいって話じゃないのか?
28. 匿名処理班
まず、宇宙よりも古い銀河が無数にある宇宙年齢問題をなんとかして欲しい。多分、時間が存在しないという結論に達するだろうけれど。
29. 匿名処理班
宇宙が平坦なら端があることになるけど、それでいいのかな。
球形に閉じていたほうが端がなく有限でスッキリしてるけどね。
30. 匿名処理班
スタンフォード大学のリンデ教授といえばマルチバース宇宙論の提唱者ですが、ソ連を訪れたホーキング博士の講演の通訳を務めたときのエピソードが本人には悪いけど今思い出しても笑える。
31. 匿名処理班
宇宙が閉じていても 開いていても いいけど
その外も 空間なんだろうか?
ビッグバンって、空間があるから 起こったと思うけど
ビッグバンって、空間つくりながら 宇宙つくったのかな?
32. 匿名処理班
なるほど!わからん!
33. 匿名処理班
ポアンカレ予想が解かれた結果ってたしか穴が無い球じゃなかったループって事はドーナツみたいな穴があるって事でしょ矛盾してるよね。
34. 匿名処理班
宇宙の端っこの方は光のスピードより速く外側に動いているわけだから観測しようがない。
35. 匿名処理班
※34
観測限界が宇宙の果てだと勘違いしている人が多そうだよね。
ボイド構造見たら予想つくが実際はその外側にも果てしない宇宙があるんだぜ…。
36. 匿名処理班
真面目なところ申し訳ないが、図が息子スティックにみえてしまった
37. 匿名処理班
※9
本当は一様等方ではないけれど、宇宙が果てしなく広いために、それが観測結果に目に見える形では表れないというだけなんじゃ?
昔の人類が地球が平面でないとは気づけなかったのと同じように。
……というか今でも、場合によっては地球を平面だと仮定して実験したりするからね。その誤差が無視できるレベルの場合には。
38. 匿名処理班
遮りなく永遠に広がり続ける無限な宇宙よりも
しっくりくる。
39. 匿名処理班
※37
その可能性も考えられます。観測可能な範囲を超えたら急に曲がり始めたり、曲率が極めてゼロに近いが、全体ではわずかに曲がっていることもあり得ます。
いずれにしても、もし宇宙がループしていたとして、マゼラン艦隊のように「宇宙一周」を目指して地球を旅立ったとしても、戻った頃には、地球はおろか銀河系すら残っていないでしょう。そう考えると宇宙の巨大さにめまいがしてきますね。