
photo by pixabay
人類はいつの日か、失った手足を再生してしまう能力を手に入れるかもしれない。ハーバード大学の研究者によって、全身の再生を司る遺伝子を制御するスイッチが発見されたのだ。
今回判明したのは、無腸動物類の非コードDNAが、初期増殖応答(EGR)のスイッチとなる「マスターコントロール遺伝子」の発動を制御しているということだ。
広告
マスターウイッチは意味がないと思われた非コードDNA
非コードDNAは、ジャンクDNAとも呼ばれ、以前は役立たずであると考えられていたが、近年では大きな影響があることが認識されつつある部位だ。パンサーワーム(Hofstenia miamia)が再生をする際、細胞の中にぎゅっとまとめらた非コードDNAがほどけて、新しい領域を活性化させる。
ところがそこが働かないと、それに連なる下流の遺伝子のすべてが発動しない――つまり再生しないのだ。
「この遺伝子の活動を抑えると、EGRを発動させる能力があっても、何も起きないことがわかりました。再生しなくなのです」とハーバード大学のマンシ・スリヴァスタヴァ博士は話す。
パンサーワーム(Hofstenia miamia)
驚異的な再生能力を持つ生物
尻尾が切れてもすぐに元どおり生えてくるトカゲやヤモリのように、驚異的な修復能力を持つ動物がいる。プラナリア、クラゲ、イソギンチャクなどはさらに凄まじく、体を真っ二つに切断されても、体全体を再生させてしまう。
死んだ後に自分のクローンを作ってしまうような仲間すらいる。
2016年、日本の科学者によって、ペットのクラゲが死んでから3ヶ月すると、その死体からイソギンチャクのようなポリプが発生し、驚いたことにさらに若返ったことが報告された。
また1990年代にはイタリアの科学者が、ベニクラゲが幼生と成体を交互に切り替えることを発見し、不死身のクラゲという愛称が与えられたこともある。
The Strange But Incredible Immortal Jellyfish
人間にもEGRがある。クラゲとの違いは?
重要なのは人間もまたEGRを持っており、細胞がストレスにさらされたり、修復する必要がある場合にそれが作られるということだ。ところが、なぜだかほかの動物のような手足が生え変わったりといった大規模な再生は生じない。
その原因については、再生能力を持つほかの動物と人間では、マスター遺伝子の作りが異なるためだと考えられている。
研究チームのアンドリュー・ゲールケ氏によると、タンパク質を作るのはわずか2パーセントのゲノムなのだそうだ。
彼らが解き明かそうとしているのは、残りの98パーセントのゲノムが全身再生にどう関与しているのか? ということだ。
この研究は『Science』に掲載された。
References:A master regulator of regeneration | Science/ written by hiroching / edited by parumo
あわせて読みたい





コメント
1. 匿名処理班
今でも腸骨から間葉系幹細胞を採取して培養して身体に戻す治療あるしな
四肢麻痺寝たきり患者が3週間で歩いて退院できると
2. 匿名処理班
髪も再生する?
3. 匿名処理班
生まれる前からお前は人生おしまいだと公言される遺伝性疾患
もし発見されたら今の風邪程度の扱いになり、病院で治療薬を
もらっておけば数日で欠損遺伝子がささーと治る日も近い
4. 匿名処理班
不老不死が実現すると独裁者がいつまでも居座ったりしたり、食料問題が起きるから手を出してはいけない領域だ。
5. 匿名処理班
>>4
再生するのと不老不死は別物じゃね?
先天性や事故で体に欠損がある人の希望になるよ、問題は義手とかで食ってる人たちが反対するだろうなーってこと。
6. 匿名処理班
交通事故でちぎれた脚からもう一人の俺が生えてきたぜ
7. 匿名処理班
実用化急いで
8. 匿名処理班
仮にそのスイッチがオンに出来るとしても、やってほしくないな
加速度的に寿命が縮まりそう
9. 匿名処理班
人間でも爪や髪の毛、皮膚細胞何かは再生してるんだからやれそうな気がする
10. 匿名処理班
再生の方法を考えるよりも前に
なぜ再生しないように進化したのかを考える必要がある
11. 匿名処理班
※10
完全再生能力があるほうが、絶対に生存に有利なのに、
高等生物は完全再生能力を持たないのがほとんど全部だって事は、"種の保存"にとって、なんかヤバいリスクがあるのかもしれんよな。
12. 匿名処理班
※11
再生能力の高さが無意味なほど進化しただけでは
13.
14. 匿名処理班
人間のゲノムが全部解明されたと言われてきけど
そうではないということだな。
解明されたのは、コード化された部分だけということか。
15. 匿名処理班
ひとまず歯と目がどうにかならんかな
逆に何で回復しないんだって不思議
16. 匿名処理班
※2
”かみ”のみぞ知る
17. 匿名処理班
いつかは再生治療は良くなるんだろうか
しかしこの手のものにだすといつか痛い目にあうんだろうなぁ
全身ガンのようなものになったり
蔓延するものではないからまだ安心か?
18. 匿名処理班
指が生える魔法の粉(蟹パウダー)があるけど、この遺伝子はこの蛋白質を生産するのかも。
19. 匿名処理班
※10、※11
そうだよね。再生能力があって、かつ新しい命が次々と生まれてるのにもかかわらず、海がこのクラゲだらけにならないのは、やはりいくら再生能力があっても他の動物の餌になったりして数が減ってバランスが取れるようになってるからだよね。食物連鎖の頂点に立つ生き物が再生能力を持っちゃったら、いろいろと不都合なことがでてくるだろうね。
20. 匿名処理班
>>6
エラーで女の子が再生されたららら
21. 匿名処理班
応用すれば絶滅動物の復活も可能かもな
22. 通りすがり
>>5
1.両生類の再生能力は死なない限り再生を続ける
2.この機能は成長して陸上生活に適合すると失われる
3.成長を止めたまま繁殖能力と再生能力を持ち水棲生物として生きてるネオテニーも存在するが寿命はある
不死では無いし老化もするのだけど
同じような再生能力が人間に備われば
首を切り落として再生しても学習したものはリセットされる為に一人の独裁者の記憶を全て切り捨てて新しい独裁者に置き換える事は可能かもしれない
クラゲの場合は老化の後に繁殖する水クラゲが居ますが
老化=繁殖可能な成熟
500万年程前のクローンをコピーし続けて繁殖してます
コレと同じ状態を想定するなら人間全員同じ遺伝子
500万年前の最古の人類ぐらいから進化をやめてコピーで増殖してる
23.
24. 通りすがり
>>8
ウーパールーパーの再生能力を捨てて陸上生活に適合させた場合
陸上で活動するには不完全な身体なのでストレスをきっかけに寿命が縮まるらしい
生活環境が同じまま再生能力が追加されるとどうなるのか?
再生をコントロールする新しい手段が確立されてから実験出来る事なのでまだ不要な技術とは言いきれませんよ
25. 通りすがり
>>10
両生類の進化を遡ってエラ呼吸するトカゲを作り出す実験ですかね?
ひょっとしたら陸上脊椎動物の胎児の成長過程でその機能が付いてる可能性もあるかも知れない
26. 匿名処理班
各DNAがどんな機能を持っているかの解読はAIを使えば一気に進みそう。
例えば現在解っている部分を教師データにして残りの部分の解読させてみるとか。
それに翻訳の要領で上手く行かないかな?AIの翻訳能力は日進月歩で最近も「BERT」という新手法が発表され一部では人間の能力を超えたとも言われるから期待できそうだけど。
27. 匿名処理班
※16
また髪のはなししてる(´・ω・`)
28. 匿名処理班
役立たずと思われてたものに意味があったって話、よく聞く気がするよ
おっかねえなあ、もう
29. 匿名処理班
※21
淘汰された種をわざわざ現代で復元するのって複雑だわ
ただ観察してみたいとかのエゴなのでは
30. 匿名処理班
※11
完全再生能力を持っていなかったからこそ知能を発達させざるをえなかった、とも考えられないでしょうか?
31. 匿名処理班
>>19
ふと「バナナ型神話」を思い出した
バナナと石のどちらか選べって神様に言われて、人間の先祖がおいしいバナナを取ったから不死になれなくなったってやつ
複雑化して繁栄するのと、不死は両立しないようにできているのかもね
32. 匿名処理班
環境に適応するために必要性があって進化を重ねてきた遺伝子を下手にねじ曲ると、環境の方が壊れそう。凄いんでしょうけどちょっと怖いな。
それはそうと、千切れた腕や頭が生える絵面はホラー。
33. 匿名処理班
そろそろ不老不死になれるんだな
楽しみすぎてイカれちまいそうだ
34. 匿名処理班
>>33
お前には無理だ。諦めろ。
35. 匿名処理班
この不死の能力を高めた人が本当のマスターと呼ばれている