日本だと漫画「動物のお医者さん」で獣医さんたちに興味を持った人も多いだろう。あの漫画を読んでシベリアンハスキーやモモンガにきゅんきゅんしたお友達も多いはずだ。
獣医は、欧米では子供たちが憧れる職業の1つにあげられるが、ドクター・ドリトルのようにすべてが穏やかなわけではなく、時として危険を伴い、また悲しい別れを目の当たりにしなければならない。もちろん動物たちを救うという、大変やりがいのある仕事なのだが、海外サイトにて、獣医という職業の裏側がまとめられていたので見ていくことにしよう。 以下はアメリカ、ルイジアナ州ニューオーリンズのベテラン獣医のスー医師や、ニューヨーク州ダッチェス群のベテラン獣医であるエレアノー・アックワース医師へのインタビューをもとにまとめたものだ。
1.常に危険と隣り合わせ
多くの人が「獣医」という職業を思い浮かべる時、かわいくてふわふわの子犬たちを助けるような職業を思い浮かべるかも知れない。スー医師はこう語る。「どんな犬でも噛まれる危険性はあります。特に恐怖や戸惑いを感じている犬には細心の注意を払わなければいけません。」
犬同様に猫も「ボディーランゲージ」が読み取りにくい為感情をくみ取る事が難しく、施術を施すのが困難な動物だという。「彼らに一回噛まれる事でその後の獣医生命が危うくなる場合もあります」スー医師は語る。狂犬病や伝染病をうつされる危険性があるのだ。
また一部の猿は人間にも影響を及ぼすヘルペスを持っている場合があり、感染した猿が人間の目に向けて唾を吐きかけてしまう場合もある。更に獣医は常に開いた傷口や、その傷口に蠢く蛆虫などを見る事になるので、強い精神力が求められるのだ。
2.どんな患者が運ばれてくるかわからない。予測不能な仕事である
ベテランの獣医になるには全ての状況に対する臨機応変な対応が求められる。日常的に見る動物の多くは一般家庭で飼われる犬や猫だが、ネズミ・鳥・爬虫類などはもちろん、予想外の動物が運び込まれてくるのも決して珍しいわけではない。
「一度足を骨折したハムスターが運び込まれてきて、添木が必要になった時がありました。その時は院内にあった注射器を使って小さなハムスター用の添木を作っていましたね」とスー医師は過去にあった出来事を語ってくれた。
3. 動物だけでなく飼い主のケアも必要とされる
動物の口からは情報を得られない為、多くの場合獣医は飼い主に質問をし、状況を把握する。「獣医は動物だけでなく、その飼い主もまたケアしなければならないのです。飼い主の多くは自身が飼う動物に強い愛情を持っているもので、そういった場合、飼い主の精神的負担を解消してあげながら治療方針を提示しなければならないのです。特に飼い主に金銭的余裕が無い時はつらいのです」
ニューヨーク州ダッチェス群のベテラン獣医であるエレアノー・アックワース医師によれば、動物に対して一番良い治療を飼い主に提示しても受け入れられない場合があるという。飼い主の中には、自分のペットの健康にお金を使うより、新しい携帯電話を買う方を優先する人もいるという。ペットの治療にはお金がかかるため、高額の施術を断る事もあるのだそうだ。
4. 獣医は動物を見て飼い主の嘘を見破る
時に飼い主は嘘をつくことがある。だが動物をみればそれが嘘だということがわかるという。「もし飼い主が自身の犬に対して毎日Xカップの食事しかあげていません、と私達に嘘をついても、犬の大きさを見れば大体の予想は付きます」とスー医師は語る。
5. 獣医だからといって完璧な飼い主という訳ではない
「私も獣医になったからといって完璧な飼い主になれたとは思ってません。医大に入る前は動物に対して丁寧に接していたのですが、獣医になってからは逆に大胆になったかもしれません。私のペットに何かあっても私が治せば大丈夫だ、とどこかで感じている事があるのかもしれません。
例えば私の犬が咳をした時があったんですが、その時私は「あぁ、あの風邪薬を飲ませればいいや」という感じで、仕事でするような診査を全く怠った状態で経験から自分の犬を治療していました。もちろん、私のコントロールできないような状況であれば直ぐに精密な診査をしますが、そこまで放っておくような事はクライアントに勧める事はできません」とスー医師は続けて語ってくれた。
6.「死」を何度も目の当たりにする
獣医になって最も辛いのは運び込まれてくる動物の多くが年老いており、重病であり、飼い主が治療費をはらえないケースがある事だ。
長年獣医をしているスー医師だが、一日の仕事で一匹も助ける事が出来ない事があったという。全ての患者が末期状態であり、手の施しようが無かったそうだ。スー医師によれば、獣医たちもこういった精神的負担に耐えられず辞めてしまう人も多いそうだ。
7.獣医にも好きな動物、苦手な動物がいる
アックワース医師は牛が好きで、彼女が一番診察をしていて楽しい動物は牛だそうだ。しかしそういった理由から除角が一番辛い仕事なのだという。もちろん苦手な動物もいる。ラマなどは施術する人間に向かって唾を吐きかける事から苦手だという。
8.犬は下着を食べる
「人は家の中で色々な物を放置するものです。しかし、犬がいる家庭では下着を脱ぎっぱなしにしない方が良いでしょう。犬は下着を見ると口に含み、遊んでしまう事があり、その結果手術が必要な程胃の奥まで入り込んでしまう事があるのです。また、薬物やタンポンなども犬にとって食べてしまう危険性がある物です」とスー医師は語る。
スー医師によれば飼い主はこういったケースでもまた嘘をつくようで、犬が大麻を食べてしまいぐったりとした状態で運び込まれてきた時「大麻を服用してしまった可能性がある」と指摘すると、飼い主は「そんな物は持っていない」とうそをつくようだ。
9.珍しい動物というのは獣医界では存在しない
一般的に見ると犬や猫、小動物以外の動物は「珍しい」と言えるかも知れない。しかし獣医の世界に足を踏み入れてから「珍しい動物」などという物は存在しない事に気づかされる、とスー医師は語る。
アックワース医師を例にあげるとラマなどを日常的に治療しており、牧場などで飼われる一般的な動物である為「珍しい」という感覚は無いと言う。しかし、アックワース医師が勤務する動物病院ではカンガルーが珍しい患者だったようで、カンガルーの尻尾が丸々筋肉で出来ているように硬かった事に驚かされたそうだ。
10. 手術はお腹が空く
スー医師は牛を手術する事が良くあるそうだが、ナイフで腫瘍を取り除く際に「ビーフの匂いがしてお腹が空いてしまった」と語っている。
11. 考えられているよりは給料が安い
これはアメリカのケースだが、獣医は大学を出るまでには10万ドル(約1080万円)にものぼる授業料を収めることになる。だがその高額な授業料とは裏腹に、稼ぎはあまり多くないようだ。
人間の医師と比べるとこの差は歴然でBureau of Labor Statisticsが2014年に発行した調査結果によると、獣医の年収の中央値が946万円だったのに対し、人間の医師の年収の中央値は2023万円だった。それでも多くのベテラン医師は獣医になった事に後悔はしておらず、自分の人生の夢が叶い満足している人が多い。
12. 獣医はサポートスタッフの助けにいつも感謝している
動物病院は受付業務や助手などのスタッフに支えられながら運営されている。特に受付カウンターのスタッフは、患者の飼い主と会話する最初の人物であり責任重大である。飼い主の感情をくみ取り、尚且つ状況の把握などを行う高いスキルが求められるからだ。全てのベテラン獣医の後ろにはサポートチームがあり、獣医は彼らスタッフに日々感謝しているという。
via:mentalfloss・translated riki7119 / edited by parumo
アメリカでは人間の医療費が高額なことで有名だが、それは動物でも同様のようだ。訴訟社会なので何かあると訴えられてしまうアメリカの場合には動物治療も高額になるのかもしれない。もちろんペット用の医療保険があるので、ある程度は抑えることができるそうだが、治療費が払えず助かる命も助けられない場合もあるということだ。
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コメント
1. 匿名処理班
10のナイフって熱でもって焼き切るタイプのやつなんだろうか、だとしたら確かに香ばしい匂いにはなりそうだけど
……てーか、すべての職業の裏側にこういう面はあるだろうけど、それでもなれて良かったって言える職業に就いてるのは素敵だな
2. 匿名処理班
命に携わる仕事はやっぱり大変だなあ
3. 匿名処理班
アメリカの場合は4年制の大学卒業後に各州に一つしかない州立の4年制獣医大学院の入試に成功して卒業しないと獣医師免許が取れない。
だからアメリカ社会ではエリートでもあるんだよ。
4. 匿名処理班
Xカップ最初虐待の話しかと思ったが、これ逆か。
ダイエットの話だなwww
>>一日で一匹も救えない日
せつねぇ(T:T)
5. 匿名処理班
日本でも獣医になるのは大変だよ
6. 匿名処理班
獣医って大変すぎじゃね人の医者なら外科内科パーツごとに担当が分かれてるのに
獣医は犬猫鼠鳥爬虫類なんでも怪我も病気もお構いなしで診なきゃいけない訳で
7. 匿名処理班
獣医の卵だけど、臨床の雇われ獣医年収は本当に人間の医者と比べると驚くほど低いんだと
機材は下手すりゃ人間のそれより高性能だったりするのにね
8. 匿名処理班
※10
動物病院って保険がきかないから高額の治療費ってきいた事があるけど
雇われ獣医はそんなにもらってないんだな
開業すれば儲かるだろうからそれまでの我慢だな
9. 匿名処理班
命を扱う仕事なだけに、切ないことが多そう。ってか、私にはとてもできない仕事だ頭が下がる。
10. 匿名処理班
開業医も結構ギリギリの治療費でやってらっしゃるところが多いと聞いた。
本当はもっと高くしたいけど、そうすると記事で言っているように、
治療費を払えないばかりに助けられないということになってしまうと。
行きつけの獣医さんが手の甲に生傷作ってらっしゃるのを見ると苦労がしのばれる。
いつもお世話になっています。私の大事な家族を診てくださってありがとうございます。
11. 匿名処理班
動物の医療の方が人間の医療よりもはるかに進んでるらしいね。
12. 匿名処理班
獣医ってこんなに大変なんだね…
13. 匿名処理班
うちのわんこは病院で亡くなったけど、獣医さんも悲しそうだったなぁ…まさに年老いてて、どうしようも無い状態だった。動物の死も、家族が悲しむ様子も何度も見てるんだろうな。
14. 匿名処理班
掛かり付けの獣医さんの肩に丸い傷痕が有ったので、どうしたんですか?って聞いたら
「ああ、動物園のラクダを診察中にカポッとね」だそうで…
鎖骨までイカれたよ、って笑いながら話してくれましたが、
獣医さんって大変なんだな、と感じました。
「人間と違って喋れないから、そりゃ痛い所を触られたらそうなるよ」って言ってました。
15. 匿名処理班
日本だとペット対象の動物病院には犬・猫以外は無理と言う所がまだまだ多くて
昔からポピュラーな小鳥やハムスターやウサギでも飼う前に診察可能な獣医チェックは必須だけど
アメリカの獣医は地球産の脊椎動物である限り「診れません」とは言えそうにない雰囲気
16. 匿名処理班
誇り高い職業だけど飼い主が治療費が払えないために見殺しにするっていうのはどうしても許せないな…。
17. 匿名処理班
昔行きつけだった獣医さんはすごい名医でとくに手術の腕が有名で
他の病院でダメだった子も運びこまれて助かっていた
でも手術代も治療費もはっきりと他の病院より安かった
先生は自分の腕がいいことを自覚した上で、値段を高くすると
安いうえに腕の悪い病院に連れていかれる子がいるのがつらかったらしい
動物に対する愛情と情熱だけで毎日かなりの数の患者を診ていた
その先生が病気でお亡くなりになってしまったのが本当に打撃
18. 匿名処理班
獣医はホント大変だと思う。
「動物のお医者さん」でも、結構ハードなエピソードが出て来るし。
相当タフでないと勤まらない仕事だね。
19. 匿名処理班
傷口とか看取るとかさぞ神経磨り減るんだろうと思ったけど
「牛のオペ中にビーフの匂いがして…」ってなにその剛胆っぷり
20. 匿名処理班
ペット保険って、最初から適用除外の病気がありすぎたり、条件が細かくて使いづらい。お金が工面できない人のためにあるのが保険というイメージだけど、むしろお金持ちが余裕もって入るものだと思う。私はお金持ちでないので、自分でベストと判断した餌を適量あげ、いっしょに遊んで運動とストレス解消をさせ、もしものための医療費を毎月積み立てる、という形にしました。
21. 匿名処理班
アニマルプラネットで
二の腕に「外科侍」と入れ墨入れてるアメリカの獣医ドキュメンタリー番組やってたね
22. 匿名処理班
※21
お金が払えないから諦めるってのは当然でしょう
獣医師に自腹を切れとでも言うの?
23. 匿名処理班
※27
自分だったら分割ででも払って診て貰いたいな。
ペットって、それだけ大切な仲間であり家族だから。
24. 匿名処理班
※11
保険がきかないと診療自体渋られるから儲からないよ
日本だと保険効くと3割で安いしまぁいいかぁって感じで患者が気軽に来るけど、診療費はちゃんと満額もらえるわけで
25. 匿名処理班
※9
ヒトも類人猿もそんなに変わらんのですがねー、逆にトンチが効いて外科的治療は獣医のほうがうまかったり……?
26. 匿名処理班
子供と動物の治療は本当に大変。薬の量も大人用にしか想定されてないし、勿論言葉は通じない。動物はその上に力も強いから本当に大変な仕事だと思う
27. 匿名処理班
もし動物が好きで獣医をしていたとしよう
だが獣医だということで動物からは嫌われる
自分だったら耐えられない……
28. 匿名処理班
うちの姉ちゃん10年目の獣医で。
昨日、患者(犬)の脚の皮膚移植について悩んでたから、背中から取りゃいいじゃんって適当に言ったら「毛質が違うから駄目。」って一蹴された。
獣医すげー!姉ちゃんすげー!!って思った。
29. 匿名処理班
私が獣医というものが大変だというのを知ったのは、姉に勧められて読んだ「動物のお医者さん」だった。
30. 匿名処理班
獣医さんて動物を愛してるから就く人が多いのに、一番動物に嫌われちゃう職業だよね。
そして学生時代の勉強がすごく辛いと思う。動物好きで勉強してるのに、オペの練習では結果的に すことになってしまうから。
31. 匿名処理班
ビーフのにおいがしてお腹がすくって…
32. 匿名処理班
知り合いに獣医さんいるけど、やっぱ大変な仕事なんだな、陰ながら尊敬します
33. 匿名処理班
※23
動物のお医者さんはほんとに名作だと思う。
ただ、あの作品の中では、誰も死なない。危ない場面はいくつかあるけど(ちょびが山に取り残されるとか)。
唯一、死に関する話は、新年早々、動物園のゾウか何かが死んで、今から解剖だってぇんで、晴れ着で大学に来ていた学生たちがげんなりする場面ぐらいかと。
獣医になるためには生体解剖とかもいろいろやらざるを得なかったり、患畜が死ぬことだって当然あるという状況は、あの作品ではあえて避けたのだと思う。
34. 匿名処理班
米33
馬の剖検だね
35. 匿名処理班
レーザーメスで牛をジューってやったらいい匂いするだろうなそれはw
36. 匿名処理班
初めての手術、ポメラニアンの大腸ガンを取り除くやつだったけど、生ぬるい血の匂いがすごくて吐き気を我慢するのに必死だったなあ…
37. 匿名処理班
最後の馬がどういう状況なのか気になる