有名な心理学者、ジークムント・フロイトは1939年9月23日、モルヒネの過剰摂取によって83歳で亡くなっている。彼の人間の心に関する理論は、心理学に革新をもたらしたと同時に、今日まで議論の的であり続けている。その没後75周年を記念して、近代心理学の父フロイトの知られざる10の真実を紹介しよう。
1. フロイトの死は医師の幇助による自殺
1939年の夏、フロイトは酷く衰弱し、末期の口腔がんによる激しい痛みに苛まれていた。同年9月21日、彼は友人で医師であったマックス・シュールの手を取り、以前交わした「無駄な苦痛を与えない」という誓いに触れ、「最早、苦痛以外に何もなく、これ以上無意味だ」と伝えた。シュール医師はフロイトの娘アンナから許可を取ると、致死量のモルヒネを注射した。そして昏睡状態に陥ったフロイトが目を覚ますことは二度となかった。
2. ヘビースモーカーで30回以上もの手術を受けた
フロイトは20代で初めてタバコに手をつけて以来のヘビースモーカーだった。健康のため散歩を日課としていたが、タバコ屋がいつもの通り道だった。葉巻を口にするようになってからは1日に20本も吸っており、医師からも警告されていたが、フロイトは喫煙が生産性と創造性を高めると信じていたようだ。1923年、口内に悪性の腫瘍が発見されたため、手術であごの大部分を切除している。以降16年に渡り、33回も手術を受けて、人工のあごまで移植しているが、タバコを止めることはなかった。
3. コカインは奇跡の薬だと考えていたことがある
1880年代、フロイトはドイツの軍医が兵士の疲労回復に使用していた、当時は合法だったコカインに関心を持つようになった。試しにコカインを少量溶かした水を飲むと、消化がよくなり、元気も出た。そこで友達や将来結婚することになる女性にも分け与えたほか、1884年には彼が「魔法の物質」と呼んだ「コカインについて」という論文で、その薬効について論じている。
しかし、慢性的な疼痛を抑えるためにモルヒネを服用し中毒となっていた親友の心理学者エルネスト・フライシルに、モルヒネ使用を止めさせるためコカインを与えたところ、彼は逆にコカイン中毒になってしまった。こうしたことや、死に至るその危険性について知られるにつれて、フロイトがコカインの薬効を推奨することはなくなった。それでも1890年代中頃まで偏頭痛、鼻炎、うつの治療にしばしばコカインを使用していたという。
4. ハリウッドの大物からの10万ドルのオファーを断った
1925年にもなると、フロイトの名声は広く知れ渡るようになっており、これが大物映画プロデューサーのサミュエル・ゴールドウィンの耳に留まるようになった。ゴールドウィンは、「世界最高の愛の専門家」に「世界最高のラブストーリー」を書き、監修してもらうために10万ドルをオファーした。この破格の申し出にもかかわらず、シカゴ・トリビューンから受けたレオポルドとローブという当時世間の注目を浴びていた犯罪者の心理分析を2万5千ドルで引き受けたことを理由に、断っている。
5. 『夢判断』は商業的には失敗だった
フロイトの最も重要な著作である『夢判断』が出版されたのは1899年のことであるが、売れ行きは鳴かず飛ばずだった。出版後6年間で売れたのはわずか351部のみで、1909年になるまで重版されることもなかった。
6. 有名な長椅子は患者からの贈り物だった
1886年に開業したウィーンの病院でフロイトは催眠術を実施していたが、長椅子に患者を横たわらせリラックスさせると簡単に催眠状態にできると気がついた。心理分析の際に「会話ケア」を採用し始めた頃も、患者をペルシャ絨毯で覆った長椅子に横たわらせたが、これはベンベニスティ夫人という患者からお礼として贈られたものであり、フロイトも甚く気に入っていたようだ。
7. ナチスによって著作物を焼かれ、オーストリアからも追放された
フロイトは無神論者だったが、ユダヤ人であったためナチスの恰好の標的とされた。1933年にナチスによって自身の本を焚書されると、「なんという進歩か。中世なら私自身が焼かれるところだった。この時代の連中は本を焼くだけで満足してれくる」と冗談を飛ばしたそうだ。
後にナチスがオーストリアを併呑した際、娘のアンナがゲシュタポに拘束されているが、作家で精神分析学者マリー・ボナパルトをはじめとする友人や患者の助けで、渋るフロイトではあったが妻とアンナとともにパリやロンドンへ亡命することができた。
8. 妹4人をナチスの強制収容所で亡くした
ボナパルトの尽力にもかかわらず、4人の妹のビザが手に入ることはなかった。彼女は第二次世界大戦が開戦してから数週間後に亡くなってしまい、妹たちはウィーンに取り残された。結局、強制収容所へ送られ、そこで亡くなっている。
9. ウナギの生殖について研究
フロイトはウィーン大学の学生だったとき、動物学を研究していた。イタリア北東部にあるトリエステに調査旅行へ出かけたときは、ウナギの生殖器を研究している。これはウナギの精巣を探すという教授から与えられた課題であったが、このときの発見が数世紀に渡る謎を決着させている。
10. フロイトの遺灰を盗もうとした泥棒
フロイトの死後、遺灰はボナパルトから贈られた古代ギリシャの骨壺へ納められた。1951年に妻のマーサが亡くなると、彼女の遺灰も納められ、ロンドン北部の火葬場兼霊廟のゴルダーズ・グリーン・クリマトリアムに安置された。しかし2014年、ロンドン警察によって、これを盗もうとした者がいたことが発表された。盗難は未遂で終わったものの、2,300年前の骨壺は大きな損傷を受けてしまった。
via:history・原文翻訳:hiroching
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コメント
1. 匿名処理班
娘のアンナは催眠術について毛嫌いしてたんだよな。そのせいで精神医療への催眠術の導入が遅れてしまった。
2. 匿名処理班
葉巻ってものにもよるが一本吸い終わるまで1時間以上かかるぞ
3. 匿名処理班
この人、コカイン中毒にならない体質だったんだよね・・
自分が大丈夫だから人にすすめまくったっていう
4. 匿名処理班
症例『鼠男』のアノ刑罰って実在したのかな?内容よりそれが気になる
5. 匿名処理班
下ネタ大好きな人だったのではないかと疑っている
6. 匿名処理班
正直夢は全て性的欲求からくるものって言ってるあたり信用ない。
7. 匿名処理班
強そうな名前だな
8. 匿名処理班
※8
あなた、もしかして濁音が入ってると強そうに感じる?
ドイツ人の名前とか強そうに感じるのが多いのでは?
9. 匿名処理班
ていうか顔が強そう
10. 匿名処理班
精神面は間違いなく強いぞ!
11. 匿名処理班
8番の写真がシュールやね。
12. 匿名処理班
フロイトというか力動精神医学は日本の心理学をダメにしてる要因だと思う
13. 匿名処理班
長椅子だと催眠術がかかりやすいとな。いいこと聞いた。体外離脱もできるかな。
14. 匿名処理班
※6
むしろ性的な事柄の精神形成との関連性に対して真摯な人だったしむしろ安易に笑いの種にすることを嫌ってそうだと思うんだが。
15. 匿名処理班
スピルバーグに似てると思う
16. 匿名処理班
不思議なエピソードがあって、ある時、弟子のユングとシンクロニシティ(共時性)をめぐって口論になったそうだ(もちろんフロイトは共時性を否定)。ユングが「共時性はある。その証拠に今そこの戸棚から音が鳴る」と言った途端、横の戸棚の中から何かの爆発音が聞こえて、フロイトは衝撃のあまり失神したんだと。ユングとはそれっきり絶縁w
17. 匿名処理班
どうでもいいけど8番はうさ…ぎ…?
18. 匿名処理班
大学でフロイトのリビドー論を使った広告心理術に関するプレゼン行ったら教員からソースは?リビドー論?聞いたことないなって言われたの思い出した
自分の尺度で評価されたから胸くそ悪かったな
リビドー=性的衝動を発動させる力
って有名なのに
19. 匿名処理班
※11
ジークムントは伝説の勇者ジークフリートの父親の名前でもあり
勝利と勇気を意味する名
むしろ※8の感性が褒められるべき
20. 匿名処理班
性的衝動って言葉を誤解していた人は、手をあげなさい
21. 匿名処理班
あのなー
フロイトは心理学者じゃなくて精神分析学者な
なんでこういう勘違いしてるやつが多いんだろう
22. 匿名処理班
※7
ある時、いつものごとく葉巻を手に演壇に立ったフロイトは開口一番こう言った。「皆さんは私が男性器の象徴を手にしているとお思いかも知れませんが、これは単なる葉巻であるという事実も忘れるべきではありません」
23. 匿名処理班
ジークムントは、ジークンドウみたい。と勝手に関連付けたが、違うんだろうな🐭
24. 匿名処理班
※24
フロイトが著作の中で、自分のことを心理学者と定義付けてるんだよ。
25. 匿名処理班
※17
下ネタは笑いだけじゃなく性的な話題のことでは。つまり、真面目な下ネタだろ。
26. 匿名処理班
※29
「下ネタ(しもネタ)は、笑いを誘う排泄・性的な話題のこと。」
「性の話題でも学術的なものや相談事のように真面目な内容は対象外で、性や排泄の話題の中のみだらなもの、下品なものだけが下ネタと呼ばれる。」