メインコンテンツにスキップ

火星に海岸線の痕跡を発見。かつて水が流れる海があったことを示す有力な証拠

記事の本文にスキップ

10件のコメントを見る

(著) (編集)

公開:

この画像を大きなサイズで見る
古代の火星の海の想像図 ESO/M. Kornmesser
Advertisement

 かつて火星に広大な海があったことを示す有力な証拠が発見されたそうだ。その証拠とは、地下に残された「海岸線」の名残である。

 中国の火星探査車「祝融号」の地下レーダーがとらえたのは、川によって海に運ばれた物質が、波によって海岸線に広められて積もった堆積物で、地球の海岸でもみられるものだ。

 空気と水が接する海岸線は、地球では最初期の生命が存在したと考えられている場所だ。ならば火星の海岸線を調べれば、過去に存在した生命もまた見つかるかもしれない。

火星のかつての海岸の痕跡を発見

 海岸線が発見されたのは、火星の北半球にある広大な盆地「ユートピア平原」だ。ここは火星でもっとも大きな衝突盆地の1つで、かつて海が存在したのではないかとかねてから推測されている場所だ。

 祝融号は、2021年5月~2022年5月にかけてこの盆地を1.9km移動し、地下レーダーで最大80mの深さまで覗き込んだ。

 中国、広州大学をはじめとする研究チームがそのデータを調べたところ、その地下には分厚い層があることが判明したのだ。

 しかも重要なことに、この層には大昔の海岸だった疑いがある断崖に対して15度の傾斜があった。

 この傾斜が重要なのは、それと同じものが地球の海岸の堆積物にもみられるからだ。

 こうした堆積物は、川によって運ばれてきたものが、海の波によって散りばめられ、だんだんと積もって出来上がる。

 だが地球の海岸堆積物の場合、火星で発見されたものと同じくらいの厚みになるには、数百万年の時間がかかる。

 ここから推測すると、火星の海もまたかなりの長期間存在していただろうと考えることができる。

この画像を大きなサイズで見る
地球では、海の潮の満ち引きや風の作用によって、砂や泥などの堆積物が海岸に運ばれ、特徴的な傾斜角を持つ堆積物が形成される。火星もその初期の時代には潮汐や風によって波が発生し、海岸に堆積物が積み重なった海を持っていた可能性が示された image credit:Hai Liu, Guangzhou University, China

 また祝融号の調査では、地下の層に含まれる粒子が、砂と同じ大きさであることも明らかになっている。

 その一方で、堆積物の特徴は、火星の地表でよくみられる風によって形成される砂丘とはまた別のものだ。

 こうした特徴が海岸線の証拠だと考えられる理由について、この研究に参加したカリフォルニア大学バークレー校のマイケル・マンガ教授は、ニュースリリースで次のように説明している。

その構造は砂丘ではありません。衝突クレーターの跡でもなく、溶岩流でもありません。ならば海だろうと考えられます。その向きはかつての海岸線と平行であり、傾斜も適切です(マイケル・マンガ教授)

 こうしたことが、そこには長期間にわたって海があり、波の作用によって砂浜が形成されただろうことを物語っているのだという。

この画像を大きなサイズで見る
左の図は、祝融号の着陸地点において、過去に海岸の堆積物がどのように形成されたかを示している。右の図は、長期間にわたる物理的・化学的風化作用によって、岩石や鉱物の性質が変化し、堆積物が埋もれてしまった現在の状態を示している image credit:Hai Liu, Guangzhou University, China

数十億年前、火星には地球と同じような海が?

 現在は不毛の大地となっている火星だが、かつては地球のように水が豊かな惑星だったことを示す証拠がいくつも見つかっている。

 たとえば最近では、2025年1月、NASAのキュリオシティによって、ゲール・クレーターの岩石が波に打たれていたことを示す痕跡が発見された。

 これは、そこに液体の水が存在したことを示唆している。

 またパーシビアランスも、ジェゼロ・クレーターで水の痕跡や有機物を発見している。

 ただし、これら2つのクレーターにあったのは、海ではなく湖であると考えられている。

 一方、今回のユートピア平原で発見されたのは、海岸線の痕跡で、正真正銘の海が存在したことを告げるものだ。

この画像を大きなサイズで見る
約36億年前の火星を仮想的に再現した図。かつて火星の半分近くを海が覆っていた可能性がある。青い部分は、古代の海『デウテロニルス』の推定された海岸線まで水が満たされていた深さを示している。オレンジの星は、中国の探査車「祝融号」の着陸地点を示し、黄色の星は、それより数か月前に着陸したNASAの探査車「パーシビアランス」の着陸地点を示している。Credit: Robert Citron

 「今私たちは、凍っていない海があったと主張しています。そして波の証拠ではなく、ビーチを目にしているのです」と、マンガ教授は語る。

 火星にかつて海があった可能性が初めて浮上したのは、1970年代にバイキング探査機が撮影した画像がきっかけだ。そこにはかつての海岸線や海底らしき地形が映っていた。

 だが、そもそも水がないことは別にしても、その海岸線が不規則で、高低差が最大10kmもあったことから、それが海の痕跡であることを疑う意見もあった。地球の海岸線はそのような断崖ではなく、もっとなだらかなのだ。

 これについてマンガ教授は、40億年前、火星の火山平原「タルシス」が隆起したことで、自転が変化し、これによって海岸線の高さが今のような不均一なものになったのだと考えている。

 この研究は『PNAS』(2025年2月24日付)に掲載された。

References: PNAS / Ancient beaches testify to long-ago ocean on | EurekAlert!

📌 広告の下にスタッフ厳選「あわせて読みたい」を掲載中

この記事へのコメント 10件

コメントを書く

  1. すまん、教授の名前にすべてを持っていかれた…

    • +3
  2. あ~~ あぁ~~~ 川の流れのよぉ~にぃ~~~♪

    • -1
  3. 大気が何年かかって無くなったのか、海が無くなるまでどれくらいの年月がかかったのか、火星の地磁気が弱い理由やそれとの関連性などを研究してみた方が良さそうだけどね。
    将来地球にも起こりえる事だからね。
    自分は地磁気が弱くなる…そして大気が無くなる…同時に海も無くなる
    と考えているからそれが起こるまでの時間軸は気になる所だね。
    (現在でも地球の水素は宇宙に放出され続けている訳だけどね)

    • +1
  4. 教授の名前・・・はともかく火星が赤いのはただの酸化鉄ではなく水酸化鉄であるという研究結果が発表されているから海が存在した証拠は次々に増えていくな。
    しかし気になるのは鉄を酸化させた酸素はどこから来たのか。地球ではシアノバクテリアが酸素を創り出したが、果たして火星で大規模に鉄を酸化させた酸素が生命由来なのかどうかが解明されるといいなというか生命由来であって欲しい。

    • +8
    1.  酸素自体は宇宙でも比較的多い(水素 92% 、ヘリウム 8% の次、といっても酸素は水素の 0.07% とのこと)ので、その酸素だったかもですね。 あるいは水が何らかの理由で水素と酸素と分解されて酸素発生だったかもですし、今後の研究に期待してます。

      • +2
  5. 宇宙の話も地質学の話も両方好きなワイ、こういう惑星科学の話題ワクワクする。地球からメチャクチャ遠い星なのに、ここまで分かって来た事に感動、いずれ人類が火星に降り立つ日が待ち遠しい。

    • +4

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

自然・廃墟・宇宙

自然・廃墟・宇宙についての記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。

最新記事

最新記事をすべて見る

  1. 記事一覧を読込中です。